2016年7月28日 社長の再定義と会社の種類

 

日本企業の業績が不振なのは、本来不適正な社長が就任しているからであり、最近、流行のプロ経営者も事業を理解しないケースが多く、ましてやコンサルタント出身は論外だとエルピーダ前社長の坂本氏が「ウェッジ8月号」に寄稿している。http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7289

 

 御自身も、シャープやJDIの社長就任の依頼があったが、半導体は専門でも液晶は知らないから受けなかったとのことである。同じ製造業であっても、業種によって全く異なるのに、就任している場合が多いからダメになる場合が多いという。まったくの正論であり、ほぼ同意する。

 

 この主張に関連して、少し補足すると、社長の再定義が重要であり、また、経営重心®的な視点から会社を分類すると、専門外でも良い社長になる場合はあるし、アナリストの先輩で成功されている幾つかの実例も知っている。少し前に、社長の再定義とレジチマシーに関して記したが、6種に分けていて多すぎたので少し整理する。http://www.circle-cross.com/2015/09/24/2015922-制度が変われば再定義が必要な社長/

 

社長の分類

 

 社長といっても、以下の3種類があり、期待されている役割は大きく異なる。坂本氏の主張が該当するのは下記の③である。

象徴・司祭型(一部調整機能

 規制産業安定産業なら有効である。いわゆる経歴家柄が立派な方であり、人格者でなければいけない

②資本家・ファンドマネージャ型(一部調整機能)

 コングロマリット企業やファンド企業であり、資本家としての厳しく客観的な事業評価、ポートフォリオ管理能力、ファンドマネージャのセンスが必要となる。GEのジャックウェルチ氏などだろう。

③事業型

 これは、通常のセットやデバイスなど製造業であり、日本の多くの社長、台湾韓国、欧米の多くのケースが該当する。事業の広さでは4以下だろう。これがまさに、坂本氏が指摘しているケース。社長のバックグラウンドが、社員の平均のキャリア(学歴、経歴、専門、出身)に近いと価値観・常識も近く、管理も容易だろう。

会社の分類

 次に、会社の種類を横軸に実業的か虚業的かで分け、縦軸を経営重心®事業の広さとして、分類すると下記のようになる。実業、虚業と書いているが、製造業、非製造業でもいいが、製造業自身がサービス化もしており、実業・虚業という方が近いかもしれない。なお。虚業と言っても、重要であり、実虚が合わさった「複素数」経営が重要である。

 ここで、事業領域が広いコングロマリット、商社、ファンドの場合は、社長の分類で②であり、事業に精通しているだけではダメであり、ファンドマネージャ的センス、M&Aなどの目利きも含めて、養うことが、大事だ。

 また、面白いのは、コンサルと証券、SI、ソフト、金融が近く、証券出身でSIのトップで成功しているケースも多い。コンサル会社のトップやリサーチ会社のトップが、コンサルタントやアナリスト・エコノミストであるのは当然な面もあるが、コンサルタントがSI会社のトップもあり、実際、トップだけでなく、転職も多い分野である。SIやソフトは、人材派遣なども近い。また、商社、ファンド、通信キャリアも近く、ソフトバンクなどはまさにここである。

 大学で、文系科目は授業聴講が主だが、理系の科目が実験・演習で時間と手間暇をかけないと身につかないことと似ている面もあろう。