2022年10月~12月

為替は金融だけに閉じない

多くの「専門家」「理論」とは、違って、円安が進んでいる。為替や金融の専門家ではないがファンドマネジャーという実務家の経験から、為替についてコメントしている。2022年春の時点で、150200円の円安がありうると「デジタル列島進化論」でも書いた。ファンドは株式市場が中心だが、為替相場にも多少関わらざるをえず、エコノミストから意見を聞いたが、それなりに自身でも理解し見解を持っていないといけない。

専門家の「理論」によると日米金利差などから、いまの水準はオカシイという。しかし、そのオカシイという水準が2年以上、政府日銀の介入にもかかわらず続いている。本来、理論というなら、新たな視点を入れ、修正するか、外れた理由を述べるべきだ。専門家でもない小生が、円安を論じているのは、金利差だけでなく、日本のファンダメンタルズ、政治や国家安全保障なども考慮している。

すなわち、識者の言う「理論」は、金融とう閉じた系だけでの理論であり、実際には、開いた系で考えなければならない。

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東芝リストラとキオクシア上場報道

 日経新聞などに東芝のリストラ報道が記載されている。報道機関により、人数やニュアンスは異なるが、JIPその他、関係者のアドバルーンであろう。上場廃止ゆえに、IR室は廃止となり、当然、説明会もなく、アナリストもいない。広報が「当社より発表したものではない」とあるだけだ。こうしたマスコミと関係者の体質は不変だ。東芝が5000人削減、デジタルに資源集中 国内社員1割弱 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 関係者か広報が作戦をたて、マスコミを操作し、反対意見をいう識者は排除するやり方も、変らない。4月上旬から、「落ちた巨象」として、シリーズを出していたのも、広報戦略をコンサルが仕切っているのだろう。落ちた巨象、東芝が挑む改革 再出発支える現場から 東芝再出発〜デジタル敗戦の向こうへ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 多くのマスコミ報道は、上場廃止のメリットを喧伝し、小生は、財務負担や社員エンジニアを保護する視点や情報開示から、一貫して反対を唱えてきた。最終的には「マグロの解体ショー」でなく、島田社長のプラットフォーマモデルを前提に、ベターな選択と評価した。今になって、マスコミや識者が財務負担からリストラが必要といい、情報公開不透明を指摘しないのは、いかがなものか。

 ポイントはリストラの中身であり、技術者でない間接部門であれば、プラスだろう。表面的な、コストカットでなく、この際、非連結だが、人的に深い関係にある様々な関連会社の「みなし人件費固定費」や不平等条約的な契約を切るべきだろう。当然ながら社外経営陣やコンサルに払う費用もカットすべきだ。報道では今回数百億円の固定費削減というが、MBOなどに際し、コンサルにそれ以上の費用を支払っていることはIR資料にも開示済みだが、マスコミは批判もしない。

 また、ほぼ同じタイミングで、キオクシア上場の観測記事が出ている。当然ながら、東芝記事とも連動しているだろう。キオクシア、24年内にも上場へ 半導体市況回復で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

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債券のリスクとR&Dのリスク

以前から、資産運用とR&Dは、リスクとリターン、投資期間、損切りEXIT、などに於いて、多くの共通点があり、そこから、R&Dのポートフォリオに、金融工学のポートフォリオ理論が適用できることは論じてきた。違いは、R&Dではシナジーもあるが、資産運用ではシナジーは無いことだ。これまでは、株式のポートフォリオで論じてきたが、債券や為替などもある。

 

 他方、近年、東大が債券を発行、さらに、2024年は、GX債が発行されるなど巨大な資金がいる社会課題に、債券が利用され、興味深い。

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環太平洋に中国脅威

今後、世界で人口ボーナス効果が大きいのは、アフリカ以外ではインド、インドネシア、フィリピンなどである。同時に、これらの国は、環太平洋圏であり、国家安全保障上、サプライチェーンの上で、重要である。

 

ところが、アジア太平洋諸国のデジタルインフラを考える場合に、4G/5G基地局の設置では、Huaweiなどの中国系メーカーのシェアが高い。米が安全保障上の懸念から中国排除にも関わらず、アジアアセアン、ではコスト面から官民連携するケースが相次ぐ(インドネシアはHuawei、タイはZTEHuaweiなど)。ここから、DCや防災無線等席巻されるリスクがある。

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合併会社のPMIにアメーバやWILL~表面反応理論

M&Aや企業合併で難しいのは、PMIであり、特に、企業文化の差異が大きな障害になる。通常、合併しても、元の組織が残っており、元の会社が混じりあうことはない。例えば、本部が一つになったとしても、ぞれぞれの会社を継承する二つの部が並立している。あるいは部が一つでも課が異なったりする。もちろん異なる文化が残っていてもいいが、それが対立状態にあり、イノベーションを起こす障害になるのではシナジーも生まれない。

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台湾のレジリエンス~半導体だけでない多くの学び

台湾で3日午前に深度6強、過去25年で最大だが、前回は1999年の921地震だ。当時、台湾半導体各社はかなりの被害をうけた。当時はまだTSMCは巨大ではなくDRAM各社が注目された。酷かったのは、石英管の破損で、日本の装置メーカーが協力した。DRAMLCDの市況に影響した。この25年で、半導体における台湾の存在は大きくなったが、半導体だけでなく、国全体が教訓から学び、そのレジリエンスには驚く。921地震からの25周年間における台湾の防災システムの軌跡 (dri.ne.jp)

 

TSMCの熊本誘致では、半導体だけでなく、こうしたレジリエンスや学びや教訓を生かせるだろう。日本は毎年地震があるが学びもなく、25年どころか50年以上、同じ、体育館に避難である。

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政策実装には問と仮説と実装者の一気通貫と伴走者モデルを

ここ数年、政策プロセスについて、間近に触れる機会が増えており、また、政治家や役人も含め、議論して、うまくいく場合とそうでない場合の差異を考えてみた。

 政策には、民間や大衆からの陳情もあるが、他方で、大所高所からのトップダウンの場合も多いだろう。その「問=テーマ」は有力政治家や官僚やアカデミアとの勉強会などから生まれる場合が多い。もちろん、民間も参加するが、経団連トップや、大企業の著名な経営者、TVに登場する著名起業家、多くの有識者会議の常連コンサルタントなどであり、中堅企業の技術系経営者や最前線の現場の研究者は、彼らが実は実装する当事者になるにも関わらず、参加は少ないだろう。そうした「問」の検証は、常連のアカデミアや経営者を中心に、人数を増やし、有識者会議が開催され、あるいはアンケート調査でEBPMを踏まえ、成される。しかし、社会実装の担い手は、これらの政治家や官僚、有識者会議メンバーの大企業経営者や学者、コンサルタントではなく、大企業から中堅中小の民間企業である。すなわち、問や検証をする者と実装者が別々であり、それゆえ実装の5W2Hの境界条件が異なり、さらに、PDCAの主体も別々になる。

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インテルの巨大ファウンドリ赤字とUMC連携

インテルは、TSMCやサムスンとビオンド2nmGAA開発を競い、あるいはファウンドリ事業に挑戦してきたが、ここに来て、新たな動きが出てきた。

2023年のファウンドリ部門の営業損失が69.6億㌦(1500億円)となったことが明らかになった。ファウンドリ部門の赤字は前年から大きく膨らんでいる。ファウンドリ売上は189億㌦(2.9兆円)ゆえ赤字率37%と厳しい。2022年度は売上274.9億㌦(41600億円)、営業赤字51.7億㌦(7800億円)から31%減収、赤字拡大である。投資家向けのプレゼンでは、同社のパット・ゲルシンガーCEOは「2024年はファウンドリ事業にとって、最悪の営業損失を計上、2027年頃に損益分岐点に達する」、「ASMLEUVリソグラフィ装置の買替えを渋った等の誤った判断がファウンドリ事業に打撃を与えた」とコメントしている。Intelの半導体製造部門が1兆円超の営業損失を出したとが明らかに - GIGAZINE

 こうした中、CHIPS法の補助金活用で、85億㌦(1.2兆円)の先端投資を行い、27年に1.4nmにメドをつけるという。インテル、半導体微細化で巻き返し アメリカの先端工場に6兆円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

また、台湾UMCと組み、2027年から通信やクルマ向けの成熟品、12nmで連携するようだ。インテルは光電融合では強く、さらに、チップレットでは、UCIeで標準化を早々に専攻し、不気味である。台湾UMC、米市場を開拓 インテルと半導体を受託生産 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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FEOLとBEOLを分離できるか~アプリケーションを想定して生産ラインを考える

今や、先端半導体の鍵はチップレットであり、ラピダスの場合は、短TATと絡めて、どう戦略を立て、エコシステムを形成するかだろう。そこで、短TAT効果を上げるために、チップレットで可能なノード別の並列生産が鍵となる。

 そこでは、製造が難しいGAA中心のFEOLと、微細化がやや緩い配線工程が中心のBEOLを分けて、生産することが鍵であり、財務シミュレーションでは累損解消前倒しや投資効果の有効性を示した。そこでの問題点は、そうした並列生産を可能にするため、設計の負担がどこまで大きくなるか、である。

 

 最先端の半導体の設計経験が無いため、どの程度大変なのかの実感が難しいが、複数のプロから無理ではないが、難しい点も多そうではある。ただ、黒田忠弘教授は、チップレットのシンポジウムで、GAAFEOLを量産して作りだめの提案をしており、また、産総研のスーパーCRは、GAAだけを想定しており、実際の半導体生産には、BEOL工程の追加投資が必要になる。これは、FEOLBEOLを、分離生産できることを前提にしており、GAAEUVLだろうがNILだろうが、BEOLとは独立であり、GAAあるいはFEOLファウンドリ、BEOLファウンドリが成り立つことを示している。

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ラピダスに5900億円だがチップレット500億円が鍵

 ラピダスにNEDOポスト5G基金から追加で5900億円の支援が決まった。内訳は前工程が5365億円、後工程が535億円である。「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」に係る実施体制の決定について | 公募 | NEDO

前工程は、GAA2nmだけでなく、短TAT製造技術のR&Dが入り、いよいよEUVも入り正念場だ。関連して、米の拠点などもある。

今回は、興味深いのが、後工程であり、まさにチップレットである。

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技術視点の多角化でなく、文化風土視点の多角化を

企業の多角化は、アンゾフマトリックスで、技術と顧客という視点から語られる。つまり、同じ顧客に対し、既存技術から新技術を提供する。あるいは、既存技術を新顧客に提出する。

 そうした場合、失敗するのは、文化風土を変えない場合である。同じ技術であっても、その提供の仕方は、顧客が変れば、QCDなどの要求ニーズも変わる。B2Cであれば、売切りでもいいが、広告宣伝が必要になるだろう。国内と海外でも異なる。同じ顧客であっても、技術が変れば、コストの下げ方、生産、サプライチェーン構築、原価構成も異なる。重電メーカーが半導体に参入しても、同じやり方では、通用しない。まさに、これらは、経営重心論で指摘したことである。「両利効きの経営」でも、こうした視点がなく、様々なリソースの特性と事業の特性のマッチングについて、楽観的すぎる。

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市場シェアでなく志シェアを

政府は1兆ドル時代に、国内でデバイス15兆円を目指している。これが、為替次第で、100兆円ならシェア15%150兆円ならシェア10%とメッセージが異なるが、いずれにしても、かつての50%などは難しいし、目指すべきでもないだろう。既に、中国、欧州など、各国、各地域が、シェア30%以上などを掲げており、合計すると100%を超え、過剰生産、過酷な競争になってしまう。

 目指すべきは、単純なシェアでなく、エコシステムや連携でのシェアである。

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科学のあり方

科学のあり方について、大学に入って、一層、悩みが深くなってきた。科学の大きな目的は真実の探求だが、アカデミアの分野によって、科学や真実の定義が異なるようだ。真の科学が備える4つの価値観は、マートンの規範によると、①普遍性②無私性③共有性④組織的な懐疑主義(非権威主義)という。この中で、②から④は科学者の姿勢だが、難しいのは、①の普遍性であり、換言すれば、再現性でもある。心理学者であるスチュアート・リッチー著「Science Fictions あなたが知らない科学の真実」は、この4つの価値観、特に、再現性に関する話題を取り上げている。

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シャープが液晶事業を縮小か~ディスプレイ事業の難しさ

シャープが液晶事業縮小を検討しているという。鴻海との取引が問題視された赤字の堺のSDPが中心だろうが、JDIから譲渡された白山工場、亀山、多気の3拠点の事業改善策についても、今後詰めるようだ。シャープ、液晶事業の縮小検討 堺ディスプレイプロダクトの生産停止も視野 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

かつて、「液晶のシャープ」と言われ、実際、数多くの液晶ディスプレイ搭載製品を生み出し、液晶は事業の柱であった。シャープは、鷲塚元専務や辻元社長が目指していたように、「液晶応用」のシャープであって、「液晶TV」や「液晶ディスプレイ」のシャープではなかったのに、堺工場建設当時の社長だった町田氏は「液晶TV」のシャープを、その後に社長となった片山氏は「液晶ディスプレイ(パネル)」のシャープを目指したのではないか。ディスプレイ事業は、キャプティブであるべきで、半導体や電子部品と異なり、外販は不向きである。

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TSMCは後工程にも上陸

各種報道によれば、TSMCは日本に「先端パッケージング」と呼ばれる半導体後工程の生産拠点設置を検討していると報じた。318日のロイター通信によると、製造装置や材料メーカーが集積する日本を設置先の候補として検討、ただ、検討は初期段階で規模や時期など詳細は未定。経済産業省幹部は「支援したい意向」を示しているという。一方、台湾の行政院などは18日、台湾南部嘉義県の工業団地に先端パッケージングの2工場を新設するとの計画を発表、一つ目の工場は5月に着工、2028年量産を目指すという。TSMC、日本に半導体後工程の設置検討か ロイター報道 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 TSMCは、ファウンダリゆえ前工程が中心だが、チップレット時代を見据え、後工程を重視しており、材料や装置の技術基盤が日本にあることから、つくばに、3Dパッケージセンタの拠点を持つ。NEDOのプロジェクトでは、日本の材料メーカーも参画している。これが、R&Dだけでなく、実際の量産拠点を持つのであれば、喜ばしいことだ。

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生成系AIが変えるR&D法則

生成系AIのインパクトは、様々なところで、語られているが、R&Dのリスクとリターンのあり方をも大きく変えることを、岡野原氏「大規模言語モデルは新たな知識か」を読んで知った。それは言語モデルのべき乗則の発見である。すなわち、①訓練データ量、②利用するモデルのパラメータ数(モデルサイズ)、③投入計算量の三つの要因と、言語モデルの検証データの予測誤差(クロスエントロピー損失)の間にべき乗則が成り立つ、というのである。そうであれば、更にここから、第一に、投資対効果が前もって予測できる、第二に、大きなモデルほど汎化し学習効率が改善する、ということであり、これまでのR&Dはリスクがあり、投資対効果が不明だという常識を覆す。

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チップレット時代にはもの作り力が生きる

この数週間、ゼミ内での相互の工場見学会を催している。ゼミの社会人学生の多くは、研究所や工場など技術者が多いので、自身の専門分野のもの作りは精通しているが、他分野の工場の現場は、自社内ですら見たことはなく、ましてや、他社の他分野の工場の現場は、様々な気づきが多いはずだ。

国内の関東圏の工場なので、デバイスでも後工程の試作ライン、開発センター、インフラ機器、メカ系機器、また多品種少量が多いが、動きが見えるラインゆえ、動きが見えにくい半導体等よりも、もの作りの基本がわかり、再確認ができる。

 

製品も異なり、生産数量も異なり、装置も異なり、部品点数も異なり、TATも様々だが、それだけに、共通点を考察すれば、5Sや可視化、流れ、在庫、省エネ、ロスを無くす、等の基本は同じ筈だ。

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東大黒田忠弘先生最終講義

 黒田忠弘先生の最終講義「半導体超進化論」が、去る31315~17時、武田ホール(武田先端知ビル5階)で開催(事前登録制定員240)され参加した。17時半から、懇親会があり、さらに、その後、懐かしい知己とお会いし、二次会で、半導体の昔話と未来話を語り合った。

 講義も素晴らしかったが、会場で多くの知己に会えたのは嬉しい収穫だったが、中でも香山さんや桜井先生が黒田先生の上司であることを再認識できたこと、また半導体について議論できたことも貴重な機会であった。

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EUV装置のキーワードは「250」~250ケースに分け250人が250日かけ組立

ビオンド2nmで必須となるEUV導入の課題が明らかになってきた。今後、国内にも、ラピダスや広島マイクロンに導入されるが、配慮が必要だ。

 

装置の価格が1台当たり、5nmプロセスで約150億円、3nmプロセスで約200億円、2nmプロセスに至っては、価格は約500億円以上(TWINSCAN EXE:5000380mil$)であるが、装置は250ケースに分けて輸送され、250人のエンジニアが、6カ月(土日を考えると250)かけて組み立てるという。

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エヌビデアAIチップはスパコン並み

生成系AI、時価総額2兆ドルとなったエヌビデアの4nmチップH100を搭載した80GB品は3万ドル、500万円近い。これだけで、かつてのミニコンやEWSくらいだ。もちろん、HBM812層のせたHBMや冷却、インターポーザその他を載せている。

 

 H100は、TSMC4nmプロセスでダイサイズは、814㎟である。

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アセアンの5Gが中国勢に席巻~国家安全保障リスク

ファーウェイは、日米はじめ西側諸国にとって、ハイテク派遣、国家安全保障上のリスクであることは共通認識であろう。既に、基地局はじめ、デジタルインフラには規制がかけられている。

 他方、今後、人口増加や経済成長が著しいのは、東南アジア、アセアンであり、現在は日本や中国韓国に比べ、シンガポール、マレーシア、インド、インドネシアの5G普及率は急速に上昇する。スマホ当たりのデータ利用料も同様である。そこで、必要なのは5G基地局インフラであり、データセンターだろう。

 

しかし、東南アジアでも、は5G関連設備や機器供給元として中国勢が存在感を高めている。欧米は。国家安全保障上の懸念から中国系メーカーの排除に傾くが、東南アジアでは、コスト競争力が鍵となり、官民で、中国勢と連携するケースが相次いでいる。

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人口増のアフリカに特化する中国スマホ

アフリカは、現在の人口は13億人であり今後、人口は急増する。2050年に向け、ナイジェリア4.1億人、コンゴ、エチオピアが2億人前後、ウガンダ、エチオピア、タンザニアが1.5億人、南アが1億前後と日本を大きく超える。平均年齢は20歳以下が多く、2050年には、20歳代後半であり、60歳に近づく日本とは大違いだ。

既に、スマホの普及率は40%を超え、加入者は5億近く、四半期の出荷台数では2000万台以上と年間1億台を超える。ここで、注目されるのは、Transsion(伝音科技)、アフリカ市場に特化している中国企業である。「Tecno」、「Infinix」、「Itel のブランドで販売、合計シェアは50%近く、エチオピアに工場がある。

黒人ならではの「美黒効果」が奏功している。

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勝負師の条件とベイジアン確率

孫子など中国古典の紹介本を著す守屋淳氏による「勝負師の条件」を読んで驚いた。冒頭に、氏が絶賛する4人の勝負師をあげている。すなわち、スクエアエニックスのトップだった和田洋一さん、キヤノン電子の酒巻さん、大森義夫氏(元内閣情報調査室長)、澤上さん(さわかみファンド)である。和田さんは野村時代から知り合いであり、MOTの授業でも何度もゲストスピーカーとして招聘、懇親もしている。酒巻さんもMOT授業でゲストスピーカーをして頂き、打合せでは、独特の素晴らしい社長室で懇談した。澤上さんは親しくは無いがファンドの世界で知り合いだ。少なくとも4人中2人は知己である。さらに、匿名で登場する、神のような、素晴らしいファンドマネージャーの話が出るが、おそらく、Hoさんだ。ロングのみで、通常の相場では、資産を数倍にし、下げ相場でもプラスにする。控えめな目立たない方だが、地道で、神のような勘があり、さらに、伊達直人のように、儲けた分を寄附、自分の会社では、証券会社をリストラされた若者を雇う等、私生活面でも神のようだった。ヘッジファンド時代には、アドバイザーとして、毎週一度会議に来ていただき、運用の一から教わり忠実に100%真似をした。

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直観と理系の理論、文系の理論

理論の嬉しさや有難さは、二種類あるだろう。直観でもわかり、経験できるが、理論によりスッキリし、さらに理論を定量化数式化し予測可能、社会実装可能にできる。もう一つは、直観では割り難いが、理論展開により思わぬ事実を明らかにし、しかも実用に可能なもの。これぞ、理論であるといえる。

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株運用3.11の思い出~あれから13年、13回忌は一昔前

 能登地震から3か月、また、忘れもしない3.11からは、もう13年だ。あの日、多くの方が亡くなったが、13回忌となる。しかし、まだ、今は、記憶に鮮明に残っているが、徐々に忘れていくだろう。

 ヘッジファンドを始めて軌道にのり、リーマンショックも乗り越え、リーマンショック前でも後でも、プラス10%を叩き出し、日本株ヘッジファンドで表彰され、企業年金からも認められ、ファンドの金額も増え、これから更に発展という時だった。原発ルネサンスを信じていたわけではないが、日立や東芝、さらに、東北地方に工場を持つアルパインなどを保有、年度末の3月を何とかプラスで乗り越えようとしていた。オフィスは日本橋人形町のペンシルビルの8階と陣容強化もあり、9階も借り、拡張していた。

 相場が終わる15分前は、臨戦態勢で殺気立つ。個別株をドタバタと売り買いはしていないが、ヘッジファンドは、ロングとショートの比率(ネットロングレシオ)や、どれだけ、レバレッジを効かせるか(グロスレシオ)など、幾つかの重要な指数を、現物株の状況に応じ、先物を使って調整する。

 その246分にグラグラと大揺れ、ペンシルビル故に、震度6以上はあったろう。棚は倒れ、コピー機も机も滑り、反対側の壁にぶつかり、明らかに部屋が傾くのを実感し、死という言葉がよぎった。

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日本企業最大の株主日銀ETF、GX債も4割保有

日銀のETF買いについては、過去、その是非を議論してきた。日経平均史上最高値更新の時も、その時点では、マスコミの論説であまり触れられていなかった日銀ETFの影響や今後の日銀の動向について記した。日経平均が史上最高値を更新 - 若林秀樹アナリスト (circle-cross.com)

 日経新聞310日に、ニッセイ基礎研究所井手氏試算によると、ETF含み益34兆円、時価71兆円、簿価37兆円である。日銀ETFの含み益34兆円 株高で過去最大、活用策を議論 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 この71兆円の保有ETFは東証プライム市場時価総額950兆円の7%であり、GPIFを超え、トップの保有比率である。配当(日銀では分配金収入)2022年度1兆円である。71兆円は税収相当であり、1兆円も巨額である。また、7%という「株主」と立場で企業に対して影響力を及ぼせる可能性はある。

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「もしトラ」シナリオ~台湾有事への影響

じわじわと「もしトラ」が現実のものとなりつつある。米でも日本でも、政府や産業界は、「もしトラ」シナリオを前提として、動いているようだ。政治や国際問題などは門外漢だが記したい。

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生成系AIの本質とリスク

生成系AIは、コンピュータ業界だけでなく、むしろ、生成系AIが社会や企業、経営戦略に及ぼす影響についての話題が大きい。テクノロジーの話ではあるが、誰もが飛びつき、議論できる。

 

 テーマとしては、1年前なら、生成系AIが営業をどう変えるか、等は、あまり先行研究や事例は無かったが、膨大な先行研究が登場している。雇用や社会については、従来から、コンピュータが仕事を奪うか否か、AIが奪うか否か、の議論はある。

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大学のアドミッションポリシー

 入試シーズンも終わり、あちこちで合格発表が始まっている。大学も大学院も最も重要なイベントは、入試であろう。卒業、修了も重要だが、多くの場合、入試は不合格も多く、思い出、話題になるが、卒業は、それほど、留年や落第はなく、話題になることは少ないのではないか。

 入学に関しては、どういう方を対象としているか、大学側が希望しているか、については、極めて重要であり、それがアドミッションポリシーとして公開されている。そのアドミッションポリシーに基づいて、入学試験もあるわけである。入試では、そうしたアドミッションポリシーに基づいた学力なり能力を前提として、カリキュラムが決まるわけである。

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憲法が阻害するイノベーション~会計検査院と科研費

 野村総研時代からイノベーションに関して研究を続けている。学会にも入っており、MOTでも多くの科目を創設、国際比較やイノベーションを支える、教育制度、金融、文化、政治などについて考え、シンポジウムも開催、学会発表もしてきた。最近は、イノベーションの阻害要因について、深堀をしている。

イノベーションは、本来、リスクがあり、成果やリソース等が、計画通りにいくものではないだろう。しかし、資金や人員などリソースを使う以上、計画も必要である。大学での科研費などの申請や、NEDOプロジェクトでも、期待される成果や応用分野を記述し、必要な設備や人員、そして時間などコストを見積もり、それをステージゲートでチェック、修正すべきところは修正していく。

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技術の特性をN軸マップで表現する

イノベーションを起こすためには、技術の特性に応じたイノベーションモデルが必要であり、近年では、初期から社会実装を考えて、ビジネスモデルやエコシステムを築いていかなければならない。

 トランジスタや創薬なら、リニアモデルかもしれないし、家電であれば、ノンリニアモデルだろうし、アポロやマンハッタン計画など巨大技術であれば、プロジェクトマネジメントが重要になる。技術によって、リスクリターン特性も異なり、人月リソース多寡が成功確率を上昇する場合もあれば、1人の天才が成功確率を決める場合もあるだろう。それによって、研究所の配置や組織構造も変わるし、社内中心か、オープンイノベーションが中心か、も異なるだろう。

 ビジネスモデルも、その技術が設備投資型か、人件費依存型か、サプライチェーンが複雑か否か、などで異なる。

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坂本幸雄さんの遺言

坂本幸雄さん急逝をようやく各紙が報じている。しかし、国内各紙より、海外の方が大きく取り上げ、国内主要紙でも、事実を知らない方が多かったようだ。

 国内半導体に巨額な資金が投じられ、これだけ話題になるのを、皮肉と捉えるよりは、坂本幸雄さんの念や努力が通じたというべきだろう。

 

 坂本幸雄さんの、これまでのメールを、𠮟咤激励、アドバイス、あるいは、遺言と考え、下記に一部を紹介したい。2020年から2024213日まで、計2.9万字に及び、内容は半導体が中心だが、多岐にわたり、まさに、我々への遺言である。示唆に富み、参考になるので、少し紹介する。

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経済教室でW若林教授がチップレットに言及

この2月後半は、TSMC熊本の開所式に合わせたのか、ハイテク株中心に日経平均史上更新、などもあり、経済教室は、半導体復活はあるか、というテーマだった。そこで、偶然か、寄稿者は、W若林(私、理科大若林教授と、東工大若林教授)であった。若林整教授はNEDO委員会で数回ご一緒した程度だが、私に負けず劣らず辛口率直で、あるプロジェクトに対し、私と同様厳しい意見だった。

 

私は、国家安全保障など追い風の中で、チップレットを利用した、ノード別並列生産によるコストダウンと短TAT効果を試算した上で、OSATEMSとの統合、更にチップレットがもたらす業界構造変化をビジネスモデルにどう生かすかを論考した上で、技術と経営の二刀流、すなわち、我田引水ながら、MOTの重要性を訴えている。また、東工大若林教授は、10年前からジャパンファウンドリ構想を持っていた(国際情勢変化やファブレスも無く、More Moore真っ最中で疑問だが)そうだが、半導体関連業界をクロスSWOT分析、チップレットがチャンスであり、イノベーション起業する国際人材とMOT的人材が必要という。まさに、チップレットとMOTが共通点だ。

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ラピダスとLSTCのストークス4象限

コンピュータ、半導体など分野に限らずハイテクの成功は、R&Dの成果を社会実装する上で、それらを担う組織を、ストークス4象限で適切な位置づけることにある。鍵はパスツール象限だ。

日本は、海外との対比でパスツール象限に相当する組織が弱いことにある。欧米では、パスツール象限には、フラウンホーファー研究機構、DARPAIMECITRIなどがある。かつては、日本も電電通研があったが今は薄い。半導体ももちろんだ。そこで、先端ロジックに関係するラピダスとLSTC、産総研、JSTを、メンバーベースでマッピングすると、パスツール象限が弱く、LSTCがボーア象限と、パスツール象限でもエジソン象限に近いところに位置し、実装に向けた開発の橋渡し、コミュニケーションが難しい可能性がある。

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GX移行債発行と株式市場の中国株外し、そして外れる日経の為替予想

マスコミは日経平均史上更新に湧いているが、その中で、214日に、財務省は、GX経済移行債の10年債入札を、ついに、初めて実施した。環境貢献度の高さを重視した「グリーニアム」高価格(低利回り)は発生したが、利回りは通常債を0.005%下回るも、市場予想の0.06%ほどにはならなかった。14日は発行予定額8000億円に対し、金融機関から23212億円の応札があったが、27日にも5年債で8000億円の入札の予定がある。GX債、熱狂なき滑り出し 緑のプレミアムは期待届かず - 日本経済新聞 (nikkei.com)

GX経済移行債は2050年の温暖化ガスの排出実質ゼロの実現に向け、政府が企業の脱炭素の取り組みを支援する資金を調達するため発行する新しい国債だ。23年度は総額1.6兆円を発行し、10年間で20兆円規模の発行を予定する。

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社会人学生からみたよい組織とは

良い組織について、2023年の新科目である「組織と人事」で、社会人学生との対話の中で出てきた、よい組織の共通条件は、①ある程度の任期がある、②外部市場があり評価が客観的で外との流動性がある、③会議が少ない、④決議が速く全員賛成ではない、⑤時間コストを意識して効率的、⑥組織内に一定の流動性がある(スペシャリストとジェネラリスト、ジョブ型ではなく、メンバシップ的)、であった。

 これを、日本にある組織として、役所(実際には村役場から市役所、官僚組織まである)、議員など政治家(これも村から国会まである)、大学(これもかなりレベル差はある)、日本企業(中小企業から大企業まである)、スポーツ(これも、色々あるが、較的良い組織と言われる)、アナリストやコンサル等が多い外資系金融などに関し、当てはまるものを、〇、当てはまらないものを、×、その間を、△として評価してみた。

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高校生の大学進学動機変化と企業の博士採用停滞

日経新聞が、高校生像の40年間の変化に関する尾嶋同志社大学教授らの研究成果を紹介、「まじめ化」が進んでいるという。高校生像、40年間の変化 「まじめ化」進み家計を意識 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 兵庫県内の高校十数校3年生を対象とした調査で、1981年から、97年、2011年、2022年と4回、40年以上継続して貴重な研究成果である。東大多喜弘文准教授や広島大白川俊之准教授らと共同研究だ。

研究結果によると、97年と2022年で、男子女子共に進学動機は、「学生生活を楽しむ」「将来の生活や進路を考える時間」が激減、「希望職業に必要」「進学が就職に有利」が増加している。これは、最近、確かにそうであり、より現実的になっている。大学でじっくり研究しよう、教養を身につけよう、等、我々時代までのモラトリアム傾向は全くない。これは若者のタイパ主義とも重なる。大学に研究や教養は求めていないのが、大学の入り口での社会ニーズである。

 

大学の出口では、あるいは大学院の入り口では、定員も増えているのに、博士進学も、企業の博士人材採用も少ない。博士課程の入学者、20年で2割減 企業で活用進まず - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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日経平均が史上最高値を更新

日経平均が、891229日の史上最高値だった38915円を更新した。背景は以前述べたように、「世界は日本を買えるが、欧米は中国ロシアを買えず、マネーが日本に向かう」という需給要因以外は、概ね語られ尽くされている。もちろん、NISAに関連した仕込みで、半導体ファンドなどができており、日経平均に影響が大きいTELなどが含まれて、日経平均を押上げている。需給に関しては日銀ETF買いの影響が不明だ。多くの銘柄で日銀が筆頭株主であり判断が問われる。日銀総裁は金利1%上昇なら保有国債評価損40兆円と発言しており、注目される。その他、1989年との比較などの議論もあるが、幾つか欠落している視点がある。

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理系実務家VS文系アカデミアの相克と理系アカデミアと文系実務家の棲み分け

 理系vs文系、実務家vsアカデミア、モノづくりvs金融、実業vs虚業、本来は、こうした分類の中での対立を超えて、新結合、ダイナミックにシナジーを出し、イノベーションを起こしたいものだが、現実は難しい。

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坂本幸雄さんの急逝を悼む

坂本幸雄さんが214日に急逝した。七転び八起き、あれほど、元気でエネルギッシュな坂本さんが、と多くの方が、悲しいと驚きでショックを受けていた。ご冥福を祈ります。

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文化常識のサイクル

令和になって、一層、コンプラだのガバナンスだのESGだのと重苦しく、反って心理的安全性が無くなり、ネット社会が捌け口となっているようだ。その中で、「不適切にもほどがある」という、クドカンと阿部サダヲのドラマが話題になってるようだ。金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』|TBSテレビ

 確かに、昭和から令和、この40年で社会通念は全く変わってしまった。昭和の常識や価値観は、今の非常識である。昭和といっても、昭和40年代の学生運動や万博の頃までは、まだ日本らしい価値観があったが、それを機に変ったし、そもそも、戦前と戦後で価値観は一変した。昭和20年を境に鬼畜米英が親米となった。すなわち、昭和の社会通念も3回位はかわっており、長くて40年、おそらく20年くらいであろう。過去を振り返ると、こうした、常識や社会通念や文化は、内側からとうよりは、政治や外圧、ルールや規制変更で儲けるコンサルや団体やNPO法人などによって変わる。

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半導体祭りで最も儲かったのは

政府は、半導体産業に既に2兆円の予算を投じている。その経済効果は大きく、熊本では、TSMC誘致で1010兆円、第三工場なら九州で20兆円という。北海道のラピダスでは14年累計19兆円近い経済効果があるとの試算もあるようだ。

ラピダス進出経済効果、北海道で最大約19兆円 14年累計 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

TSMC「日本は理想的な場所」工場進出に沸く列島 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 実際、九州も北海道も建設ラッシュであり、地価高騰は、日本列島改造論を彷彿させる。TSMCの菊陽町は路線価が19%、近隣では30%アップ。ラピダスの千歳も29%アップという。

 本来、最も恩恵を受けるべきは、半導体デバイス産業や、製造装置や材料、それに関わるエンジニア等であろう。エンジニアは、高給なTSMCに合わせ、初任給もアップしている。ただ、デバイス産業は、これからであり、立上げ期は赤字だろう。

 周辺はどうだろう。

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NTTのIOWNプロジェクト

去る129日に、日経新聞は1面で、NTTIOWNNEDOのプロジェクトとなったことを報じた。すなわち、「NTTは今回、光電融合の機器開発に取り組む業界横断の国際協調の枠組みを整えた。インテルやSKハイニックスと連携するほか、半導体基板の新光電気工業や半導体メモリーのキオクシアなども参画する」NTTやインテル、光の半導体開発 日米韓連合に政府450億円支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 さらに130日には経産省が正式発表として、「NTTや半導体基板の新光電気工業、半導体メモリーのキオクシアなどが対象だ。米インテルや韓国のSKハイニックスなどとも連携する」とある。インテル、SKハイニクスを強調している。NTTの次世代半導体、452億円補助 経産省が正式発表 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 しかし、NEDOの公式HPによると、実施予定先はNTTおよびNTT系、古河電工、新光電気、キオクシア、NEC、富士通であり、インテルもSKハイニクスの名前は無い。

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LSTCの在り形とNEDOプロジェクト

 半導体政策について、従前からの懸念はLSTCの在り形である。その対象は半導体の様々な技術であるが、研究というより開発であり、ストークスの4象限では、IMECDARPA、フラウンホーファー研究機構と同様、実用化と探索の両方を担うパスツール象限の重心を置くべきだと主張してきた。また、LSTCRapidusのためだけの存在ではなく、広く、メモリやパワー半導体もあるだろうがし、まず今は、欧米が喫緊の課題として期待している先端ロジックが優先だろう。これは、政府も同様の認識だろう。

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リスクを取るのは国家か企業か~キオクシアもRapidusも

赤字で財務基盤が厳しいキオクシアがシリコンサイクルの底に投資する。経産省やメインバンク等も支援する。画期的な話だ。キオクシアが最先端半導体に7200億円投資 経産省も補助 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

シリコンサイクルの底に投資するのは理性的で当然だが、シリコンサイクルの底は赤字であり、そこにジレンマがあった。底で赤字にもかかわらず投資した会社がシェアをあげてきた。80年代の東芝等日本企業がそうであり、最近ではオーナー系のサムスンがそうだ。大相撲の大関昇進、上場審査や銀行融資も過去を基準に決め、時間がかかるので、シリコンサイクルの山で投資、工場稼働はシリコンサイクル下り坂である。愚者は直線のグラフしかイメージがなく、株でも、ピークで投資して失敗し、ボトムで損切して失敗する。シリコンサイクルは34年、過去何十年も繰り返され、半導体もメモリもシリコンサイクルを超えて成長してきた。しかし、勇気が無いのか、理性的で無いのか、愚かなルールの問題か、シリコンサイクルの底では投資できなかったのである。CF経営理論などMBA仕込みの教えも助長した。

 今回、実はもう一つの大きな議論がある、それはリスクを取るのは企業か国家か、である。当然ながら、リスク許容度は国家が大きい。企業規模が小さく、単一事業はリスクが大きく難しく、企業規模が大きく、コングロマリットの方がリスクを取れる。しかし、これまでは、国家はイノベーションや産業に関しては、リスクを避けてきた(実は年金や金融緩和その他では大きなリスクをゆっくり目立たず取っているのだが)

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NIKKEI半導体シンポジウム─ 2030年、1兆ドル産業への挑戦 ─に登壇

NIKKEI半導体シンポジウム─ 20301兆ドル産業への挑戦─が29日開催された。29日(金)10:0017:30に日経ホールで開催された。リアル参加が227人、オンライン参加2915名と大盛況だった。

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ロジックとは、オリジナリティとは

論文や新規提案の発表やプレゼンで重要なのは、ロジック、オリジナリティである。これは、特許の新規性と同様である。MOTのグラデュエーションペーパーの重要な評価項目にもなっている。

 しかし、ロジックもオリジナリティも、当人のバックグラウンドで異なる。会話していて、話が合う、すれ違いなく、理解が早いのは、似た経歴や専門分野の方である。

 同じ論理で、話が合うのは、精密工学、電気電子、応物系、機械など、広くは理工学全般、実用化を考えてきた方、民間、それから、金融系であり、議論になっても誤解はない。話が合わないすれ違いが多いのは、法学部系、ピュアアカデミアの経済系、経営学系、それからコンサル系である。どうも、ロジックがハレーションを起こす。おそらく、学問体系、あるいは、演繹、帰納、などなどのアプローチが違い過ぎるのだろう。

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デカップリング時代の需給は

連日、日経平均が上昇している。既に、色々な背景が指摘されているが、あまり指摘されていないのが、デカップリング時代の需給である。

 デカップリングゆえに、欧米など有志国、本来は日本も、中国企業というより、中国そのものに投資できないのである。つまり中国株も買えない、場合によっては、ハイテク製品も買えない。長期資産や関係性ができる資産は買えない。買えるには、短期の「色がつかない」食料や日常品、素材などである。では、有志国のマネーはどこに向かうかというと、日本である。半導体もDCも工場拠点も日本への投資である。中国を買えないマネーが日本に向かう。株だけでなく、土地も同様である。

他方、中国やロシアは、日本を買える。本来は、ハイテクや重要な不動産や資産には、投資を禁止すべきだし、新外為法もあるが不十分だろう。食料品や売り切りの一般品はいいが、長期の関係性のあるものは要注意だ。ファンドの箱貸しを使い日本のベンチャー、ハイテク企業にも投資している。大学などを通じて、人材への投資もしている。この辺は難しい判断だ。

 

 デカップリング時代は、長期資産や関係ができる、色がつく資産は、売買できない。ハイテク分野も難しい。しかし、ここは、対中は無く、世界が対日である。それゆえ、需給がタイトになる。逆に言えば、90年代のバブル崩壊は、日本以外に、中国と言う投資先があったからである。それが、逆回転だ。

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ASRAの意味、TSMC熊本第二さらにRapidus

TSMCが熊本第二を決めたと、マスコミは湧いている。熊本第一は、FIN-FETというだけで、16~28nmゆえ、数年後を考えると少なくとも7nmがいるのは当然だ。さらに、TSMCという会社の戦略からは、できる限り、同じ場所に工場を集中するのも当然だろう。

 むしろ、そこよりも、今回の第二工場には、デンソーに加え、トヨタが出資した意味が大きい。昨年末に報道され、重要なのは、国内クルマメーカーの先端半導体のエコシステム、コンソーシアムの「ASRA」である。トヨタや日産など12社、先端半導体の研究組織 30年以に搭載 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 これまであまりマスコミは注目しなかったが、欧州カテナXなどの動きに匹敵、かつチップレットでは、先行されたインテルのUCIeにも差別化可能なエコシステムである。

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組織と人間の周期~ピークまでの2倍が寿命

 シリコンサイクルと付き合ってきたからではないが、何事も直線でなくサイクルで考える習慣がついている。そもそも、日本人は干支や春夏秋冬も含めサイクルで捉える習慣がある。

 サインコサインカーブもそうだが、ピークが見えると、スタートからピークまでの2倍でエンドであり、ボトムである。加速度がピークなら、そこまでの2倍の期間でピークである。

人生も最も成長する20歳前後の2倍の40~50歳がピークであり、寿命はその2倍の80100歳となる。企業や産業も同様であり、半導体も1950年代後半とすると、最も大きく成長した1990年代(4050)までが加速度最大で、この頃は日本が強い。そして、そこからは日本から韓国台湾へ移るが、そこから更に4050年後の、20302040年がピークとなり、そこからは、シリコンではなく、化合物になるか、More than Mooreになるか不明だが、異なる成長だろう。

TFT液晶は、8890年が離陸で急成長が9597年で日本が最強、ここで78年、そこから782005年頃にピーク、2010年頃にはOLED代替が始まり、2020年以降は成長鈍化だ。LiBやノートPC、デジカメ等も同様で経営重心のサイクル論とも関係するだろうか。

国も戦後日本1945年を起点とすると、成長加速度最大の高度成長期19651970年位までが2025年、そこから2025年の19851990年のバブルでピーク。そうすると、戦後日本の寿命は2035年となり、新たな日本として再生しなければならない。明治日本も日露戦争勝利のピークまでが4045年、そこから約40年後が終戦である。加速度最大は明治憲法制定の頃、下落加速度最大が満州事変の少し前だろうか。日露戦争大勝利当時、海軍は永遠の発展を信じたが、その寿命は当時の人間より短かった。

これまでは、国家や組織の寿命が人間の一生より長い場合が多く、今でも、そういう錯覚にとらわれるが、国家や企業や産業より、人間の一生が長くなってきた。大きな組織の方が寿命も長く感じるが、意外にも短いのが、産業であり国家である。

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火中の栗を拾う勇者を殺す日本

昭和的発想あるいは明治的かもしれないが、「火中の栗を拾う」のは勇気ある行動だと思っているし、そう行動してきた。しかし、現実はそうでもない。

 Rapidusがそうだ。トップは、本来悠々自適、功成り名遂げた方だが、日本の半導体、最後で最大の機会に老体に鞭打って頑張っている。多くのシニアがそうだろう。自分も、その積もりだ。

 

 しかし、サポートしない外野席で避難する位は、まだしも、足を引っ張り、邪魔するのはどういうことか信じられない。マスコミで注目されるのが妬ましいのか。

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あるべき人脈の中心性

 ネットワーク科学を持ち出さすとも人脈の重要性は誰しも認識しているだろう。また、いかに人脈を築き、それをメンテナンスするかについて悩まれている方も多いだろう。人脈形成には、中心性の概念が参考になる。リーダーシップと中心性の関係については、既に、研究イノベーション学会で発表し、組織人事の授業でも紹介し、社会人学生には好評だった。中心性には、次数中心性、近接中心性、 媒介中心性、固有ベクトル中心性、ページランク中心性がある。

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アカデミアは赤字許されるか

企業はもとより、NPO法人、公的組織、国家、そして、飲み会、イベントで、家計も赤字は良くない。しかし、パブリック、社会のためと称して、赤字でも仕方がないような風潮がある。万年赤字では、誰かに迷惑をかけ負担をかけている訳である。その分、頑張っている人や、イノベーションの芽に投じる資金が減るわけである。社会ニーズが無いか、ビジネスモデルが間違っているか、筋の悪い技術である。あるいは、社会やユーザとのコミュニケーションがなく独りよがりになっている。

 初期の赤字、離陸期は仕方がない。その後、その赤字を超えた黒字になり、多くの雇用を生み、税金を納めれば良い。しかし、起業後5年、10年経て、累損が一向に減らないのは何かおかしいだろう。

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論文の定義~仮説検証型だけが論文か

研究大学院では、理文を問わず、修士論文が必須だが、専門職大学院のMBAは、文科省基準ではそうでもない。MBAMOTにも研究大学院と専門職大学院の両方がありややこしい。また、専門職大学院では、教員のバックグラウンド、理系か文系か等で、考え方が異なり、難しい点だ。

 最近、MOTで議論になっているのは、論文の定義である。論文の要件は、①オリジナリティ(新規性)、②ロジック、③進歩性である。

オリジナリティでは、新規性が必須であり、故に先行研究が必要になり、先行研究へのリスペクトが重要である。本来は狭い学会内だけの新規性でなく、広い新規性であり、これは特許と同様である。

ロジックは、信頼性、再現性は当然だが、学会によって論理構築が異なる場合がある。その意味では納得感やストーリー性も重要だろう。

進歩性は、要は役にたつかであり、社会実装、社会貢献が重要である。

論文には色々なタイプがある。社会科学で多い「仮説検証」型以外にも、多数(実験系、発見系、数学理論系)がある。必須なの要素は、「問」、「先行研究」、「方法」、「結論」、「考察」等であり、これを、IMRAD(IntroductionMethods, Results and Discussion)という。

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目利きの目利きとフェアなルール

イノベーションを起こし、成長させるのは、正しい競争や評価が必要で、これが民主主義の良いところだろう。競争がなくフェアな評価が無ければ、企業も個人も成長しようというインセンティブが働かない。短期的には間違うこともあるが、長期ではあるべき水準に収斂するのが株式市場であり、依怙贔屓などはない。選挙などもポピュリズムになる場合もあるが、一番マシなシステムであり、入試やスポーツも本来そうあるべきだ。NEDOプロジェクト審査や大河内賞の審査でも同様である。

 MOTでは、多くの科目で、レポートや授業貢献で成績をつける。答えが決まったものではないので、ロジック、オリジナリティ、専門性、示唆性、実用性などの項目で配点があり、なるべく客観性を重視はするが、最後は主観になる。ただ、教員自身が常に勉強していれば、オリジナリティはじめ多くの項目で妥当な結果にはなるし、複数のレポートを見ていれば、おのずと差異はある。

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RapidusのリスクとJOLEDやエルピーダのリスク

 一昨年来、Rapidusのリスクについて多くの識者に詰められる。Rapidusは応援しているし、半デジ会議も含め、政策や戦略などの提言は、ある程度は参考にして頂いているが役員でも株主でもなく、何の権限もない。しかし、経産省やRapidusトップに言えない文句が何故かこちらに来る。それが役目で、間違った誤解による指摘は修正し、正しい指摘は伝え、議論もするというスタンスだ。Rapidusを応援するのは、幻想により、国民を騙しているとまで言われたが、株式市場や債券、年金制度も幻想の中でのネズミ講であり、ただ、その仕組みこそが、シリコンバレーであり、イノベーションを起こしてきた。

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イノベーションを阻害する真因は

 つらつら、日本のイノベーションを阻害する真因は何だろうと議論する。例えば、欧州にはガイアXがある、それを生むフラウンホーファー研究機構があり、そこでは、中堅中小企業や、ベンチャーも参画ており、うまく言っている。日本には、ウラノスがあり、産総研があるが、ガイアXを真似て、日本で同様の試みをやろうとしても容易ではないだろう。

 例えば、中小企業への対応もあるだろう。

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イノベーションエコシステムの授業でのグループ演習~エコシステム形成の大義を実感

 MOT3.0での新たな科目に「イノベーションエコシステム」がある。エコシステムは既に、経営学でもビジネスモデルでも議論されているが、この科目では、イノベーションを起こすためのエコシステムである。かつては、良い発明だけで、イノベーションが起きた時代もあったが、今は、R&Dの段階から技術の特性に応じ、イノベーションモデル、さらには、サプライチェーンを意識し、ビジネスモデルを考え、エコシステムを意識する必要がある。より多くの企業や研究機関、ベンチャーとの連携、協業が必要となっている。経営戦略も、競争戦略から協創戦略、プラットフォーマ戦略が注目されており、いかなるエコシステムを形成できるかが、差別化要因となる。研究開発フェーズでは、オープンイノベーションやIMECなどの共同プロジェクトやコンソーシアム、事業フェーズではサプライチェーン、標準化団体などもあ

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企業文化とハイテク、さらに、経営スタイルや戦略の相性

 生成AIが社会や経営や働き方にどう影響するかについての議論が盛り上がっている。イノベーションと企業文化との関係は、これまで、イノベーションが善であり、それを受け容れるため、どう企業文化を変えるべきか、という視点しかなかった。しかし、よく考えてみると、イノベーションというよりも先端技術を受容しやすい国、社会、組織そうでない国、社会、組織がある。

これまでは、日本は、先端技術を受け入れやすい国だったと言えるだろう。

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能登地震サプライチェーン影響は2月か

この度の能登地震は本当に心を痛めている。この地震により直接的、間接的に運命が狂った方も多いだろう。地震はじめ大きな天災は人々の運命も変える。古くは、小牧長久手の戦い後に家康は追い詰められていたが、地震対策で秀吉は転換したともいう。自身も951月阪神淡路大震災、20113月東日本大震災、それぞれの後、因果関係は不明だが、23年後に転職を決めている。日銀の金融政策も変わり、自民党の政治とカネの問題追求にも影響があったかもしれない。大阪万博中止や延期の声も出ている。

 

 さて少しずつ被害の全貌や復旧の目処もわかりつつある。半導体やデバイスでは、東芝(前工程、パワー半導体)、サンケン電気(後工程、アナログ、パワー、ディスクリートの半導体)、ヌボトン(前工程、MCU 旧パナソニック拠点)、タワーセミ(TPSCo 車載半導体など)、村田製作所(MLCCSAWの一部工程)JDI(液晶、OLED)、製造装置では、KE富山(拡散炉)、材料では、信越(フォトレジ、マスクブランクス)、大阪有機化学(フォトレジスト)、グローバルウェハーズ(環球晶円、GWCウェハー)等がある。材料系は日本曹達、東レ、三菱ガス化学、日本ゼオン、デンカ、などもあるが、影響は軽微か半導体には直接関係が薄い。その他、住友電装系のSWS西日本はワイヤーハーネス等がある。

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MOTでのGPなど締切(2年生春16名、2年秋7名、1年春16名)

今日120日は2年生春入学のGP(グラデュエーションペーパー)の締切日であった。46名中16名の主査であり仮提出だった。1月末の発表会審査の後に本提出だが一段落である。2年生秋入学は中間発表なのでパワポの発表資料で良いが、これは13日に提出締切であり、9名中7名が主査であった。そして、1年春入学は、GP計画書の発表会が、13日、20日にあったが、59名中16名を担当(2月に正式にゼミの配属が決まれば主査)している。

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対中関係にO/C戦略を使う

米中摩擦の中で、日本がどう中国に向合うか、輸出規制にどう対応するか、等が悩ましいところだが、これに、O/C戦略が使える。O/C戦略はイノベーションを考える上で重要な考え方であり、NEDOプロジェクトでも審査でも評価対象となる。

 

 O/C戦略では、コアはクローズ、ノンコアでスケールするものはオープンとする。対中でも同様であり、コアの機微技術はクローズ、ノンコアでスケールするような汎用的なものは、オープンという言わば常識である。半導体で言えば、数nmNANDの多層、チップレット等がそうだが、この中で、スケールしそうなものもある。今は、規制対象ではないが、パワー半導体やパッケージに仕える後工程の装置は、今後はコアになる可能性がある。

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次世代の6Gで挽回を

ICTでも日本は半導体以上に凋落している。特に通信5Gでは、日米ともに欧や中国に遅れをとった。2025年は、ICTでは重要な年である。大阪万博もあり、グリーンDCの成果に期待が集まるが、通信では、2025年に5G-Advancedが離陸、6Gの検討が始まる。6Gでは超高速・大容量通信、超低遅延、超多接続&センシングという3つの5G技術の延長に加え、新たに、超カバレッジ拡張、超高信頼通信、超低消費電力・低コスト化、自律性、の4要素が加わる。

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今年の予測~選挙と地政学リスク

通常は、元旦の夜に、ゆっくりと今年の予想について書くところだが、石川震災、羽田の飛行機事故と立て続けで大変な元旦だった。震災や海保の犠牲者には心よりお悔やみ申し上げる。石川や富山などには知り合いや工場見学でお世話になった会社も多く、飛行機も昨秋利用した便でもあり、他人事ではない。

年末から政府日銀はアベノミクス終焉で利上げを考えていたが、震災で難しいだろう。また、自民党の混乱もある。為替や株価の予測は、いきなり、まさに地政学リスクで前提が変わっただろう。さて、年明けは日経が経済界アンケートで為替は株価の予測をする。例年、昨年予測をチェックするが、ほぼ外れる。今年はほぼ130150円で140円が多いが要は現状だ。株価は半数が最高値更新、有望銘柄は、ダイキン、伊藤忠、信越だが、その伊藤忠と信越のトップが一番悲観的で、3万円割れありとしている。この二人以外で3万円割れはニデックである。

 

今年は、選挙の年だ。113日台湾総統、3月に米大統領予備選とロシア大統領選、4月が韓国大統領、7月は都知事、9月は自民党総裁任期満了、11月は米大統領選。なお、7月に新紙幣発行、12月はTSMC熊本出荷開始、SBIと力晶が宮城で工場着工。半導体は底打ちだが景気や金融は地政学リスク次第だ。

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大学や企業での個別指導~大園高増研と野村総研の経験

年末年始、社会人学生のグラデュエーションペーパーの個別指導に明け暮れた。自身の経験から卒論や修論で個別指導を受け、それ故に学生に同じことをするのは当然なのだが、そうでもないようだ。MOTには、様々なバックグラウンドの教員がいるが、必ずしも、卒論や修論で個別指導を受けていない。

大学時代は3年生後半くらいから、測定や光関係の大園高増研究室に配属され、修士2年まで過ごしたが、それこそ、半田ゴテやプリント配線板の結線、ホログラムの現像、レーザの使い方、レンズやミラー光学機器のセッティングと光軸調整、ホログラム現像、製図と工作機械の使い方から装置の制作、秋葉原で半導体の購入、トランジスタ技術を見ての回路設計、プログラミング、実験の仕方、オシロスコープの使い方、論文輪読、論文の書き方、学会入会、投稿、学会発表の仕方まで、助手だった高増さんや博士課程の故加藤純一さんに、それこそ、手取り足取り教えてもらった。当時は、手を動かしたりするのが作業的でアカデミックでないと思うこともあったが、体で覚えたことは大きく、今も忘れないし、贅沢だったと感じる。文系や私学では、想像的ない指導である。

野村総研も、新人時代、先輩から寄ってたかって厳しく詰められたのも、今から思えば有難い。

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マスコミと戦争~「日本のカーニバル戦争~総力戦下の大衆文化」(ベンジャミン・ウチヤマ 布施訳)

大晦日も新年もなく世界で戦争が続いている。死者も増え国土も建物も破壊され、一層、悲惨になっているが、馴れてくるような怖さがある。特にマスコミがそうだ。コロナ禍の時に、日常化という言葉があったが、世界が、そうなりつつある。

 これまで、戦後長らく、戦争は遠い地の話であり、新聞で事後的に状況を知る程度であった。90年代から、湾岸戦争が起き、TVで映像を視聴し、ゲームのような錯覚に陥る感覚があった。しかし、それも事後的な加工された映像による報道が中心で、リアリティは少なかった。それが、大きく変わったのは、9.11だろう。まさに、リアルタイムで、自分が搭乗したこともある機体の飛行機が、何度も最近も訪れたワールドセンタービルに突っ込む、という状況だったからだ。現在進行形であり現場を知っていることで、よりリアリティは高まった。これに、近いリアルな恐怖が3.11フクシマ原発の爆発だろう。

 今回のロシア・ウクライナ戦争は、美しい街が攻撃破壊され多くの人が死んでいく状況がリアルタイム同時進行で報道される。戦争中に政治トップが訪問し、それをニュースで報じる。これは、これまでの戦争には無かったことであろう。世界中の人間がTVやスマホを通じ直接、映像を共有し、戦争中の兵士や被害者とも繋がっている、場合によっては、戦場に介入できる。過去は、戦場と、それ以外の地が、直接、リアルタイムで繋がり、状況を共通することは無かった。こうした、これまでに無い状況が、戦況にどう影響を与えるか、また、戦争というものの理解にどう影響するだろうか。もはや、映画やゲームでなく、直接、戦争の実態を共有し知ることができるのだ。

悲惨な戦場の映像が、紅白歌合戦やゆく年くる年の前後して、放映され、アナウンサーも、瞬時に表情を切り変える。これまでも、戦争報道はあったが、それは、現在進行でもなく、共有できるものでもなかった。何という不思議な感覚だろうか。戦争の認識はどう変わるのか。

そういう中で、年末に「日本のカーニバル戦争~総力戦下の大衆文化」(ベンジャミン・ウチヤマ、布施由紀子訳2022816日みすず書房)を読んだ。350頁近いが読み易い。

1937年から1945年の日本の総力戦としての戦争を、大衆文化の観点から、特に、5種のカーニバル王(従軍記者、職工、兵隊、映画スター、少年航空兵)の切り口から、その本質を論考したものである。原著は2019年にケンブリッジ大学出版局から刊行、海外で画期的な研究書として注目を浴びたそうだ。

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この10年弱を振り返って

 2024年が明けた。この10年を少し振り返りたい。2004年に、数年ぶりに日経アナリストランキングで1位に返り咲いた(連続4年の後、転職もあり1位から転落していた)のを機に、アナリストの限界を感じ、つまり、評論家的な外野席から吠えていたのでは電機業界は変らない、むしろ投資家や株主という立場から改革しかないという、いわば、アクティビスト的な役割を演じようと、ヘッジファンドを立ち上げた。その頃、東芝の原子力のM&Aや日立なども経営の違和感もあり、好機かと思った。

ヘッジファンドは約10年間、リーマンショックや9.11も切り抜けたが、アベノミクスや黒田バズーカという環境変化やAIとの戦いから限界を感じ2014年に決意し2015年に辞めた。この間、2008-2010年には理科大MOT2010年頃は日大や早稲田のMBA等で非常勤講師は務めた。

20142015年頃に理科大MOTから誘いがあり迷ったが2016年に面接があり2017年からMOTの教授となった。丁度2014年は東芝で「不正会計」事件があり、シャープでは鴻海とINCJ買収騒動もあり、日立では改革が始まった。

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謹 賀 新 年                2024年元旦

東京理科大学大学院教授8年目、専攻長6年で退任、MOT内対立ですが、その分、研究と教育に専念でENJOY。今年はゼミ生23人+116人指導。おそらくMOTで記録。

 半デジ会議、JEITA半導体部会政策提言座長、NEDO技術委員は数十件担当で勉強に。

 研究イノベーション学会の副会長・理事に就任しました。

授業やゼミには多くのゲストに来てもらいました。ものづくり太郎さん、リクルートの海老原さん、長沼伸一郎さん、IBM森本さん、農研機構の川村さん、フィンランド大使館、イスラエル、オーストラリア、東大の梅田先生、フルヤ金属古屋社長、実業之日本社総研の方々、上席特任教授の生天目先生、樋口先生、佐々木繫先生、石原先生、小倉先生はじめ、皆さま、OBの皆様その他多数ありがとうございました。

 授業後の学生やゲストスピーカーとの宴会(カナルカフェ、太田鮨、水まん亭、チーズフォンデュ、加賀など)は楽しいひと時です。 OBの来校は嬉しいですね、特に海外から家族で来てくれた。皆さん、大変な活躍で素晴らしい。

三重、延岡、北海道との御縁

海外は、米、フィンランド、豪、イスラエル、台、韓、UKと広がり。

InputIR説明会は減、面談会食は増、工場研究所見学10回不変。

Output:ブログ年間250件不変9年累計2500件弱。TV出演3以上

雑誌新聞等寄稿40件ほぼ毎週、講演20件、学会31(ゼミ生共著26)激増。

 

最後で最大の機会に向け必ず勝ちます。

御心配をかけますが、引き続き、御支援御指導を宜しくお願い致します。

 

若 林 秀 樹 東京理科大学大学院経営学研究科技術経営(MOT)専攻 教授 

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ポスト「アベノミクス」時代の為替の行方

安倍総理が凶弾に倒れ、アベノミクスを支えた黒田日銀総裁も退任、安部派も「政治とカネを巡る問題」で混乱、政治空白の中で、比較的フリーハンドとなった、植田日銀の方向性に注目が集まる。

 日経新聞はポストアベノミクスを先取りしているかのようだ。私の履歴書では早々に退任したばかりの黒田前総裁を登場させたが異例だ。更に、20241月は元財務次官の武藤氏だ。開成から東大、大蔵省では、ノーパンしゃぶしゃぶ事件で辞任した長野氏や中島氏と同期、初代財務次官であり、日銀副総裁、白川氏と並んで総裁候補、大和総研理事長、東京オリンピック招致など話題が多く、アベノミクス総括、財政政策などについても注目される。関連して、松元崇元内閣府事務次官は経済教室に「積極財政で成長幻想を捨てよ」を寄稿。衰退途上国からの脱却 「積極財政で成長」幻想、捨てよ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 日経の匿名コラム大機小機は「終わりゆくアベノミクス」と題し、2024年は十二支の辰年で、過去に遡ると、ロッキード事件(1976年)、リクルート事件(1988年)が辰年として、24年もパーティー券「裏金」問題で、日銀が政策のフリーハンドを得たと指摘している。有識者も巻き込んだ審議の上「非伝統的金融政策は効果よりも副作用が大きい」という結論が出て、年後半には政策の正常化に向かい、24年は政治、金融の両面でアベノミクスが終わる年としている。終わりゆくアベノミクス - 日本経済新聞 (nikkei.com)

むしろ、アベノミクス終結を目的に、政治問題が取り沙汰されているのかもしれない。金融と政治、さらに、地政学も密接に関連している。

 

 そこで、もう一度、金利と為替の関係を整理したい。実は、「金利上昇=円高」という程、既に、簡単ではなくなっているのだ。

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MOT教員の三つの喜び

 今年もあと僅かになったが、来年は、MOTの教員になって8年、来年度の修了も含め、84(主査を最後に共同ゼミの相方にお願いした方も含む)のグラデュエーションペーパーを見て、副査その他も含めると100人近い社会人学生に深く関わってきた。大多数は企業派遣であり、入学前から、背景も含め関係があり、一般学生は1年次から授業を多く取るなど関係が深い場合が多い。もちろん、ゼミ以外の学生も、重要であり、企業派遣の方や、個性的、優秀な学生など記憶に残る方も多い。ただ、グラデュエーションペーパー指導では、個別指導も、かなりの時間かけて完成するので、ゼミ生は格別だ。

 

その中で、MOT教員の喜びは、三つだ。これは、社会人学生ゆえであり、ゼミで指導してこそのものだろう。

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チャットGPT時代に思うロジックと発想とは

数学は論理思考を養うと言われるが、図形の問題で補助線を思いつく思考プロセスは「論理的」に説明できるだろうか。

 グラデュエーションペーパーふくめ論文で、アイデアが浮かぶ場合、その導出プロセスを聞かる場合がある。色々なヒヤリングやケーススタディから、表にまとめ、そこから、仮説が生まれる。その仮説は、もちろん検証しなければならないが、仮説が生まれた背景は、「ユーレカ!」であり、かりに、もっともらしい、導出プロセスを説明しても真実ではない。

 最近のアカデミア経営学は、「問い」を既存の経営学のフレームワークに、色々と当てはめ、それに当てはまるものから、仮説を生み出すのが流行らしい。そして、統計的に、厳密に処理するため、とにかく、データがあるものを選び、検証するようだ。

 しかし、これは、逆でないか。具体的な実例があり、それを抽象化する中で、普遍的なロジックが湧きおこり、生成系AIにはない発想によるアイデアこそがイノベーションを生む。

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新科目の技術経営ビジネスモデルマネジメント

2023年度は、MOT3.0で新科目を立ち上げた。組織と人事、グローバルイノベーションマクロ文化論、イノベーションエコシステム、新規事業戦略、イノベーションを創る人事戦略、技術経営ビジネスプロセスマネジメント、イノベーションを生む財務戦略である。このうち、組織と人事やイノベーションを創る人事戦略は、以前から人事系の授業が欲しいとの学生や企業からの宿題であるが、何とか好評のようだ。新規事業戦略は、従来からあった新規事業開発論をスタートアップにしたが、やはり日本においての新規事業は違う面も多く始めたが、好評であった。グローバルイノベーション文化は、以前あったイノベーションを生む文化から、よりグローバルな知見にフォーカスし、外国人のゲストを招いて始めたが大好評だった。イノベーションを生む財務戦略は、会計制度とイノベーションの関係など、より実践的な内容で、メインは田村教授にお願いしたが、現役CFOPEファンドの経験者を呼び、これも好評だった。

 上記で、イノベーションエコシステム、技術経営ビジネスプロセスマネジメントは、やや、他と趣が異なり、いわば、ゼミに準じた、より高度で実践的な内容となっている。MOTのグラデュエーションペーパーのテーマは、特に最近、要はR&Dのエコシステムや、ビジネスプロセスやナラティブ、プロセスエコノミーに関するものが多い。

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繰り返されるゾンビR&Dプロジェクト

ユーミンの歌「未来は霧の中に」ではないが、かつて、「科学も夢を見ていた」時代があった。1970年代、アポロ11号月面着陸、原子力、人工頭脳、等々、そのピークは、大阪万博だったか。

 未来予測が華やかなりし頃、必ず登場したのが、核融合である。1970年頃の未来予測では「2000年に実用化」とあった。しかし、既に2023年も終わり、実用化は遠い。

 

それが、海外で、急速に技術革新が起こり、日本でも、京都フュージョニアリングという、スタートアップも生まれ、日揮やIHIも参加し、「フュージョンエネルギーフォーラム」という産官学の連携組織も生まれるらしい。核融合発電、IHIなど約50社が新組織 24年春に産官学で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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半導体は二重の底

24年は、日本の半導体産業にとって、短期と中長期で「底」を確認しつつも、特に競争力回復については、世界に向け、その実証をすべき年になるだろう。また、台湾有事リスクが高まる中で、Rapidusの離陸やデータセンタ整備。更にIOWNなど光電融合実装が更に急がれる。もはや、Rapidusも国内データセンタも日本のためだけでなく、西側諸国の重要インフラであり、光電融合は量子コンピュータのサプライチェーンになるからだ。世界が混迷を極める中で、日本の半導体産業の存在意義が問われ、貢献が期待される。米中対立の状況では、もはや中国は世界のハイテク拠点となりえず、半導体も台湾ファウンドリへの依存は難しく、Rapidus立上げが急がれる。データセンタの拠点も西側諸国の中で一番西側に位置する日本の地理的利点が生きる。再生可能エネルギーが豊富で海底ケーブルで将来の北極海ルートを踏まえると北海道は世界のデータセンタの拠点にもなる。これは、九州なども同様だ。日本のハイテクインフラは西側諸国、GAFAMやファブレス企業のインフラにもなりうる。

 

2024年は景気も競争力も底を確認する

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理科大教員ランキング

例年、理科大では12月になると、大学側から教員「ランキング」が各教員に通達される。研究、教育、貢献および全体合計で、論文数など(数だけでなく、有名学会誌の査読掲載など質も)、授業数(時間数だけでなく、新科目創出など)、委員会やマスコミ出演など貢献(質も評価)3項目と全体が、客観的な基準で点数化され評価される。個人の点数と全体の分布表が示され、凡その順位は分かる。

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テクノロジーがどうビジネスモデルを変えてきたか

科学技術が社会をどう変えてきたか、については、多くの書籍や先行研究がある。最近では、チャットGPTなど生成系AIが、人間の仕事をどう変えるかなど、マスコミでは議論が盛んである。古くは、鉄砲の登場が戦争を変え、石炭から石油さらに原子力も、無線や化学も同様であり、最近では、半導体とコンピューティング、インターネットである。まさに、社会やビジネスを変えてこそ、イノベーションである。電子デバイスでも、半導体でなく、真空管のままであれば、これほどまでに、情報化は起こらなかったし、ノイマン型アーキテクチャの登場で、ハードとソフトが分離した。

ビジネスモデルとテクノロジーの関係はどうだろうか。

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EBPMの名のもとにコンサル丸投げ政策

経産省やNEDOだけでなく、総務省や文科省、さらに地方自治体などの政策に直接間接に触れる機会が増えた。有識者や委員だけではなく、逆に、コンサルを通して、有識者としてヒヤリング対象になる場合も多く、有識者委員などで利害関係的にどうかと思う以外は、可能な範囲で対応している。もちろん、一切、謝金などは受け取らない。

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大学組織は社会実装には不向き

専門職大学院ではあるが、大学という組織に7年いて、つくづく大学組織が社会実装に不向きだと理解した。大学では、教育と研究が最優先され、それ以外は会議などの運営というマネジメントがある。

外部の講演(謝金を貰う場合)や有識者会議や委員会は、兼職届を出す必要があり、業務とはみなされいない。月の上限時間がある。このため、半導体でいえば、LSTCなどに属している教授は、多くの手続きと時間その他の制限があるはずだ。本人が半導体業界のために貢献したいとフルに頑張りたいと志があっても、相当なご苦労があるだろう。

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日経の年末エコノミスト懇親会

 1218日に日経の「年末エコノミスト懇親会」に招待され、参加した。自身はいわゆるエコノミストではないが、日経新聞経済教室その他に寄稿も多く、いちおう、学者枠ということで、アナリスト時代から招待されて、時々参加している。帝国ホテルでの立食パーティーだが、コロナ禍で4年ぶりの開催だそうだ。十倉雅和経団連会長「デフレ完全脱却へ」 年末エコノミスト懇親会 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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半導体バリューチェーンの変化

現在の半導体のバリューチェーンは、下図のように、前工程の価値が高い。設計も前工程が中心である。後、チップレット時代を迎えると、多くの異なるチップを基板上に載せるため、自社チップ単体でなく、他社チップや基板の配線パターン等も含め、統合的な情報が必要になる。後工程というより統合工程の重要性が高まる。そこでは、これまでと異なるEDAも必要だろう。

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セミコンジャパン展示のトレンド~パワー半導体、ミニマルファブなど

 セミコンジャパン2023の展示を1215日の午前から15時にかけ、後工程系会場と前工程系会場と、別館のアカデミア系いずれも見て回った。昨年はチップレットだが、今年はパワー半導体。チップレットを意識した搬送系、ミニマルファブも進展、その他、産総研等で量子、光電融合はまだ少ない。

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セミコンジャパン見学記と講演

 今年も、セミコンジャパンが1213日から15日にかけ、お台場ビッグサイトで開催された。初日は所用で夜からのパーティーGALAのみ参加した。

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後工程や周辺で進む業界再編

半導体の強化策の中で、これまでは、TSMC誘致によるJASMRapidus設立など、前工程の話題が多かったが、ここに来て、後工程や周辺関連の再編ニュースが増えてきている。

 

 後工程や周辺は、材料メーカーが多いが、日本が高い競争力を維持する分野である。これまでは、各社がバラバラな対応をしてきたが、強いシナジーとサプライチェーン強化のために、大きな再編が必要であり、経産省などもサポートをしている。

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非上場化と東芝~期待リターンと固有周期の摺合せが鍵

東芝非上場化が1220日に決まったことで、12月に入り、ドイツの公共放送、日経アジア、日刊工業新聞などから取材の申し込みがあり、対応した。それまでも、東芝問題、関連してキオクシアWD問題は、日経新聞、日経ビジネス、NHK海外、朝日新聞、電気新聞などで対応している。最近は海外からの注目が多い。これまでも何度か書いたが、改めて整理したい。聞かれることは、非上場化が良かったのか否か、もっと前にすべきでは無かったのか、海外投資家を排除するのか、非上場化で何が変わるのか、課題は何か、である。

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日本のランキング~PISAは回復、デジタル過去最低

 最近、競争力ランキングで下落ばかりの日本だが、PISAでは回復という嬉しいニュースだ。科学的応用力は2位、読解力では13位から3位に急回復。数学応用力も5位である。

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ロームと東芝のパワー半導体の連携

パワー半導体業界の動きが急である。経産省もデジタル半導体敗戦の二の舞はせじと世界シェアは全体では30%弱と未だ競争力を維持しているパワー半導体に強化策を導入しつつある。東芝非公開化の中で、いち早く3000億円を出資したロームは、東芝(正確には東芝デバイス&ストレージ社)と共同生産を発表した。両社で3883億円、ローム2892億円、東芝991億円、経産省が最大1294億円を補助、東芝の加賀とローム宮崎の生産を分担、Siパワーは253月から、SiCパワーは264月から生産、SiCウェハーも年71万枚生産という。東芝とローム、パワー半導体共同生産 国が1200億円補助 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

なお、共同で申請していたパワー半導体に関する製造連携及び量産投資計画が、経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」として認定されたもので、出資により今般の両社による製造連携に至ったものではないという。半導体産業における国際的な競争環境が激化する中、ロームと東芝デバイス&ストレージでは、かねてよりパワー半導体事業における連携を検討、共同申請となったようだ。679e0ef4-52d7-84f1-241e-9010f0ee61de (rohm.co.jp)

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パワー半導体戦略~大口径化とチップサイズとウェハー欠陥の関係試算

パワー半導体が新たな成長段階に入ろうとしている。これまで、Si-MOSFETSi-IGBTが中心であったが、SiCが本格離陸、GaNも将来が見えてきた。SiCは、現状での昇華法では、ウェハーの欠陥問題があり、口径は6φ以下が中心で、供給もクリー等、海外メーカーに限られてきた(Siクリスタルは、ローム傘下だが工場はドイツである)

NEDOプロジェクトや企業の努力もあり、8φの大口径化が進み、昇華法に加え、新たな溶液法なども登場、欠陥削減やウェハー反り問題も解決策の技術が登場している。

GaNでも、これまでは、いわゆる横GaNが中心であったが、本命の縦GaNを見据えた、信越化学のQSTと沖電気のCFB技術が登場してきた。

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フラウンホーファー研究機構

MOT3.0の新科目「イノベーションエコシステム」でケーススタディとして、フラウンホーファー研究機構を取り上げた。フラウンホーファー研究機構は、欧州最大の科学技術分野における応用研究機関であり民間企業や公共機関向け社会全体の利益を目的として、実用的な応用研究を行っている。

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超LSI技術研究組合ケース

 MOT授業「イノベーションエコシステム」で超LSI技術研究組合のケーススタディを紹介した。成功した共同研究プロジェクト、半導体の歴史として、先行研究文献は大変多い、80年代当時、雑誌や新聞で特集された。経営学者からは、榊原先生の論文や慶応MBAのケースもある、クリスミラー先生の「半導体戦争」では取り上げてなかった。

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文科省の企みと課題

日本の最大の課題は文科省や教育体制だと確信してきた。アナリストとして、各社の教育体制を調べ、経産省やJEITAでも半導体中心だが、教育や人財問題を考え、MOTでは、人事や組織、イノベーションのエコシステムなどの授業を通じ、各国体制を比較し、500人近い社会人学生と、50人を超えるゼミ生の指導を通じての見解である。もちろん、国にとっても、企業にとっても人財は最重要なリソースであり長期で一貫しつつも時代変化への対応も必要だ。

 まず、フェアにみて、これまで成功例は、高校くらいまでの初等教育であろう。受験の暗記勉強や英語力を別にすれば、大学進学時の学力はこれまで高い、受験勉強の問題はむしろ大学側にある。

特に、世界に比べても、素晴らしいのは高専であり、評価は一致している。

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英語教育の課題

日本の英語教育が大問題であることは、有名であり、世界の常識である。これは、自身でも大問題だが、MOTでもそうだ。小学生や中学生など早期履修、ネーティブスピーカー採用など、AI利用、メタバース活用など色々提案されている。また。多少は改善したが、そのKPIが英検等で大丈夫だろうか。なお、受験英語の域を出ていない。中高生の英語力、伸びたが目標未達 授業で使う頻度カギ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

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大学教員の複数の専門性

卒業や修了要件の単位数から科目数が決まるが、学生数から教員数が決まっており、数科目となる。ゼミや演習は共同だが、それ以外にも、得意な専門分野以外に、23科目を受け持つ。非常勤講師なら得意な1科目でよく、かつて早稲田や日大では、数少ない日本株ヘッジファンドの経営と運用経験から資産運用論を、また理科大でも、以前、エレクトロニクス産業論を受け持った。理科大MOTでは、最初に任された科目は、アナリストの知見から「業界分析」、起業経験もあることから「イノベーションを生む文化」であった。

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日本は輸出立国か金融立国か

デジタル列島進化論でも書いたが、日本は、二流国から転落しつつある中で、米中摩擦、サプライチェーン混乱、円安、インフレなど、50年ぶりの機会にモノ作り回帰で輸出立国を目指すべきだ。もちろん、かつてと異なり、デジタルで強化し、カーボンニュートラル視点で、地産地消とのバランスも必要である。

 他方、政府は、資産運用立国を掲げ、1115日には、「新しい資本主義実現会議」で資産運用立国の実現に関する分科会を開いた。企業年金の実績開示、結論25年にも 新資本主義会議 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 日経新聞でも特集を掲げ、レオスの藤野氏はじめ多くの識者が素晴らしいコメントを残し、非効率な慣習の問題や守り一辺倒の運用など課題を示している。日本を「投資される国」に 27年遅れのビッグバンへ - 日本経済新聞 (nikkei.com)まことにその通りだが、日本株運用のヘッジファンド(金融庁認可一任勘定免許)10年経験した中では、記者の誤解か不明だが、事実誤認もあった。金融資産2000兆円の活用、投資の呼び込みはわかるが、どうもチグハグ感があり、役所もマスコミも、半導体やデジタルに負けるなと、あちらこちらで「立国」乱立感がする。

資産運用立国へ意気込み先行 岸田文雄首相登壇5回、決定打乏しく - 日本経済新聞 (nikkei.com)

金融立国、諦めますか? 家計2000兆円じわり国外流出 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 世界を見渡し、歴史を振り返った場合、輸出立国と金融立国は成り立つのか。発展途上国は成長の過程で農業からモノ作りの輸出立国に至るが、その後は様々だ。

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デジタル列島進化論の実証~延岡ケーススタディ

縁あって、この春から、延岡市の半導体デジタル関係のお手伝いをしている。具体的には、「延岡市におけるデジタル産業集積を進めるための戦略協議会」会長である。いわば、経産省の半デジ会議の延岡版である。宮崎県延岡市が戦略協議会 半導体・デジタル産業集積へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日立の前CTOで今は㈱日立計画研究所の鈴木社長、元経産省局長で富士フイルム役員の高田さんはじめ、九州経済産業局や総務省九州総合通信局、宮﨑県幹部や延岡市地元の有力者等の錚々たるメンバーである。延岡市におけるデジタル産業集積を進める為の戦略協議会を設置しました。 - 延岡市公式ホームページ (city.nobeoka.miyazaki.jp)

 第一回は5月で講演も行い、60名程度の参加者があった。また地元企業の工場見学や企業訪問などをさせて貰った。第二回が11月に開催され、地元有力企業と活発な議論を行った。

 

 日本は、50年前に道半ばとなった「日本列島改造論」のデジタル版を、50年前と相似形の今こそ最後で最大の機会と捉え、行わなければならない。それを「デジタル列島進化論」で論じたが、政府は、デジタルライフライン全総で推進しつつあり、素晴らしいことだ。siryou7.pdf (cas.go.jp)

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