2015年6月15日 東芝 不適正会計事件の教訓

東芝の不正会計問題は、来週の株主総会を控え、また、第三者委員会の調査も含め、大詰めを迎えつつあるが、数字の詳細も報道され、関心は影響金額や上場廃止リスクといったことから、再発防止策や、責任の所在に移りそうである。もちろん、第三者委員会の調査次第では予断を許さないし、株主総会があれ新たな問題が出るリスクはある。

 当初は、フクシマ東電問題も含めて奥が深い原発絡み、特に恐れていたWH等の減損もあるかと思われたが、単純な利益達成プレッシャという、どこの企業にも共通な問題である。それゆえ、話題も、経営の争い、西田氏vs佐々木氏の不仲とか、社内派閥などが増えてきた。私は、90年代から多くの社長とは御付き合いがあり、取材や会食等で、ある程度の人間性なども知らない程ではない。また、周囲の役員クラスだった方から間接的に御話を聞くことも多い。マスコミが書く多くのことも正しいだろうが、カリスマだからダメだというわけではないし、やや行き過ぎの感もあり、シャープとはだいぶ状況が異なる。実際、半導体や原発に資源を集中、先んじて液晶やAV、ケータイ等を撤退した手腕、WHを三菱重工に先んじて買収するなど世界のM&A案件で見せた実績や米国中心に張り巡らされた人脈、WHLG等では、INCJの金を引き出す政治力など、この3人ならではだろう。西田氏は、数少ないビルゲイツなどシリコンバレー人脈をもつ。グローバルビジネス、社会インフラビジネスをする際にはどうしても内外の政治との関係は重要であり、財界活動や政治への接近も必要になる点は否めない。西田vs佐々木両氏の関係は、両氏の気質などからも、マスコミの指摘に近いだろうが、一点、重要なのは、日米で多くの人脈があり尊敬されている西室氏の存在であり、また、その人徳で元トップの関係維持にも影響があったと推定される岡村氏の存在である。周囲には、日米の政治も絡む。あまり不毛な動きにならないように期待したい。

また、監査法人の責任問題も大きいが、1年前に、それこそ米国原発問題でWHやサザン電力でのリスク引当金でかなり見解の相違でやりとりがあった。実際には、東芝側が監査法人の意見を一部取り入れ、ギリギリのタイミングで、数百億円減損となったが、この件で、他に手が回らなかったり、相互信頼が悪化した点もあったのではないか。

 なお、教訓として、第一に、広報IR体制では、500億円という金額が出た時点で、もう少し詳細な内訳を出し、あるいは、WHや原発問題とは関係ない、など早期に言及してもよかっただろう。

 第二に、今回もというべきか、社内政治紛争あるいは目標達成圧力というのが事件の本質なら、学者等からなる社外役員制度は機能しなかった。また、指名委員会も問題を残した。要は、形だけではなく実態であり、屋上屋をかす、ナントカ委員会は、使い方次第ではアリバイ作りのためとなり、逆に悪しき官僚制度と同様、余計に自体を複雑化し、株主の所在を遠いものとする可能性もある。元来は、ギリシャの直接民主制ではないが、株主が経営を決めて、社員が働くのであるが、株主が役員にそれを委ね、更に、役員が執行役員に委ね、そこにナントカ委員会が株主とは相互の直接連絡がなく係っている。ここがやり方をうまくやれば、素晴らしいが、下手をすると、実態、正当化された奥の院、元老会議、統帥権干犯みたいな話になりかねない。

第三は、中立性、独立性が揺らぐ監査役あるいは社外役員、監査法人だが、その報酬は、いっそ会社側ではなく、従業員持ち株会や社内の年金基金などが支払うという形も一考であり、そうすれば、利益相反にもならず独立性が維持できるのではないだろうか。そうであれば、ベクトルは他の株主と同様であり、究極の長期株主でもある。

第四は、既に指摘したが、代取が既に二人いるのだから、CFOも、東芝のような長期の事業と短期の事業のコアが二つある場合は、二人制にしてはどうだろうか。

 東芝はもちろんだが、他社も他山の石として、また、あまり、これによって、企業の自由度が減り民間の活力が失われないように望みたい。


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