2015年6月19日 アルバックのテクニカルセミナー「MEMS技術」

 会社主催によるアルバックのテクニカルセミナーが、201561915時~16時半に、開催された。アナリスト、機関投資家向けに数十人規模。これまでも、同社は毎年、何回か、技術を主体としたIR見学会や説明会を開催している。なお、アルバックは2004年の上場であるが、古くは超伝導の調査で真空冶金やアルバック成膜などを訪れ、またVB型研究開発企業の調査で、アルバックの創業者の林主税氏にも会いレポートを書き、その後は半導体や液晶の調査で時々訪問した。上場後は、工場見学会にも何度か参加した。それゆえ付き合いは30年近く累積では数十回以上だろうか。

今回は、昨年末にあった技術セミナー、全体論の一環で、「IoT時代に寄与するアルバックのMEMS技術」というテーマで、IR鈴木氏の司会で執行役員技術戦略室長の齊藤氏の挨拶の後、成膜技術の専門家である木村氏による講演、質疑は、他に、郭氏が対応。講演は、やや専門的であり、配布資料とプレゼンの順番が異なる等、解りにくい面もあり、順番を再構成すればもっと良かっただろう。木村氏の質疑の対応は良かった。

 木村氏による講演趣旨は、以下の通り。IoT時代には、多くのセンサーが使われるが、その多くはMEMSセンサーであり、また、スマホにも、ジャイロセンサー、マイクロフォン、周波数可変デバイス、プロジェクター、オートフォーカスレンズはMEMS応用である。MEMSデバイスの高性能化や低消費電力化等に、PZTBSTなど機能材料が必要になるが、経時変化や異常放電など量産時における問題があるが、アルバックの成膜技術と、装置、ターゲット材料、メンテ体制が、がその解決に貢献する。

PZT薄膜MEMSのスマホやクルマ向けジャイロセンサーやHDDヘッド等の応用例、その薄膜特性と成膜時には鉛組成分布や膜厚分布の均一性がポイントであること、酸化バナジウム薄膜の赤外線センサーや二次電池、応用と膜厚やサイクル特性などが示された。またCMOSとの融合化ニーズからPZT薄膜の低温結晶化技術で実績がある。

質疑は以下だが、いくつかはビジネスの話で木村氏ではなく、齊藤氏、鄭氏が回答したが、私の質疑については、鄭氏の回答がやや曖昧で、整合性に欠ける印象を受けた。以下で前半は私、その後は、証券会社所属のアナリストによる。事業としてはまさに立ち上がるところであるが、MEMSがどういう業界構造になるか、その中で装置業界がどうなるかに注目したい。

私より

MEMS向けスパッタ装置の累積稼働台数(質問の意図はサービス化対応の可能性であるが、材料が多様なので対応が可能かという意味もある)はいくらか?

50台くらい(なお、その後の私の質疑で、半分が量産、半分が試作)

・スパッタの連続稼働日数(これも材質が多様で大変ではないか、という意図)は?

PZT2週間毎、酸化バナジウムが少し短い

MEMSスパッタ装置の客はファウンドリがIDMかどちらが多いか、また今後、どちらが主流になっていくか、現在は8インチだが12インチもありうるか?

⇒半々、12インチもあるだろう、とのことであったが、やや回答が曖昧で、これはまだ試作も多いからであろう。アナログやパワー系などやや異質のプロセスの場合は、IDMである場合が多いが、ボッシュ等はIDMでもありながらファンドリーも受けておりまだ過渡期だろう。その後の議論の雰囲気では、ファンドリーが増えそうな感触?

・最近のビジネスモデルの変化で、自身がMEMSで成膜サービスを手掛ける可能性はあるか?

⇒グループではアルバック成膜がある。強みがある分野ではやるが、MEMSではどうかはわからない。

IoTセンサーは悪環境での使用が多いが、耐えらるのか?またアルバックのスパッタを使った場合に膜特性が良好ならその耐性に差がでるか?

⇒エンジン用センサー等では非常に重要で、その通り、10年もつ問題はない

CMOS化との融合だが、低温形成だけでなく、格子状数の差で剥れたりとか特性に問題は出ないか(これはかつて3次元デバイスでセンサーをCMOSLSI上に乗せようとして問題だった記憶がある)

⇒トランジスタの上ならそうだが、実際には金属配線が増え、その上なので問題はない

・シリコン発振器でのSiTIMEではシリコンではないのか?またどの位の周波数の可変性が可能か?

⇒わからないがアルミナだったように思う、BSTではない、BSTは元々、衛星用など3GHzなどかなり高い周波数をやっていたのでちょうどいい、高い周波数から低い周波数へシフトするのは問題ない

・銀スパッタは競争力があるか(MEMSとは関係ないが、やや異質なスパッタであり、JDIの反射型で話題になったので)

⇒やっており、最近話題になっているが答えられない。

・アップル向けで未上場ながら伸びているシンクロンについて競合関係はあるか?

⇒光学膜の会社であり、競合はしない

以下は証券会社アナリストの3名より

MEMS市場はニッチで儲からないというが現状は?またアルバックの事業規模は?

⇒これから成長するところである。MEMSというよりシステムの一部として重要である。IoTは巨大市場であり、それに投資し、その一部がMEMS。アルバックでの装置売上は年間2030億円だが、今後23年で2倍にしたい

・サービス売上比率は?

⇒材料は、装置が50億円なら5億円がターゲット材料、ただ、装置はあまり儲からず、材料は収益性がいい

・今回はあまり出なかったが、次世代不揮発メモリの現状は?

⇒量産化が近いのが相転移型で年間10台くらい、あとはMRAMRRAMが少し、FeRAMはエンべデッドで出てきている。単価は一台510億円

BZTのアプリはどれが有望か?

⇒アプリは5種あり、半数は量産に近く、半数は新デバイス開発で酸化バナジウム等、二次電池向け5社くらい。

・スパッタ装置は、デバイス市場のいくらくらいか

5%、材料が難しく他社はやりにくい、殆どPVDでエッチがない

・次世代スマホに、Polightレンズがのりそうか?

2016年に期待、2014年に話題になったがコスト高だった、ファンドリが作っている(私の記憶では、もっと以前から話題にはあったがダメだった)

・マイクロミラーの用途

⇒レーザーポインタ、クルマ向けではHUDである。