2016年7月7日 割引率とWACCを考える

 

最近、会社の中計などの説明会では、必ず、割引率について質問している。過去、減損で苦労したパナソニックや東芝、富士通などは、CFOは、同じ問題意識を持っていただいているが、CEOや、事業トップとは議論がかみ合わない場合もある。東芝IRデーでも、CFOやこれまでのトップは理解があったが、今回は電力のトップとは、やや議論がかみ合わなかった。日立IRデーでも原発のトップは、共通認識は持っていただいているようだが、IR側も理解はあるが、開示は避けたいようだ。

 

 これまでの説明会での発言は以下である。

 

パナソニックCFO「割引率は開示できないが5-10%に分布、FAなどは高く、白物家電は低い」

 

東芝CFO(原発は開示)「割引率の分布は5-10%、半導体や原発は高い、家電は低い」

 

三菱電機CFO「全社で同一の割引率を用いている」

 

あるCFOは、本当に真剣に割引率を考え、減損をしているのは、オーナー系くらいではないか、とのことであった。また、本来は、各社の基準が大きく異なるのはおかしく、ある程度、公的機関などがガイダンスを出すべきではないかという意見もあった。ただ、PBOと異なり、まさに企業の独自性にもよるところで、ガチガチに規制するのは問題だという見方もある。これは、R&Dのサンクコストの見切りにもつながる話である。直近の決算では、日本電産はハプティック、ニコンは450mmの設備を減損した。

 

原発についても、発言は分かれる。

 

東芝「地域や事業内容、ビジネスモデルでも、リスクが異なるので割引率は多少異なる」

 

日立「だいたい、同業他社で、同じような数値ではないか。ただ、少しの違いが長期で大きな差になることはわかる」

 

 それゆえ、実際、各社が、どのように割引率を設定、換言すれば、事業毎のリスクや、減損など潜在リスク、サンクコストにどういう基準で見切りをつけるかは、全く不明である。そもそも、会社側で主体的にやっておらず、監査法人任せ、あるいは鉛筆舐め舐めかもしれない。