2015年4月30日 決算メモ~NECスモール、村田製作所、富士通

今日は、13時からNECのスモール、15時半から村田の決算説明会、1715分からの富士通と17時半からのソニー、さらに富士フィルムが重なっており、18時から日東電工のテレコンというスケジュールである。富士通かソニーかは迷うところであったが、15時過ぎの段階で、ソニーが今期の営業利益3200億円とほぼコンセンサス通り(平井CEO4000億円が目線と言っていたが)だが、富士通が今期1500億円と減益見通しであり、何かあると踏んでソニーは後日HPビデオ視聴にすることにして、富士通に参加した。なお、ソニー、日東電工、富士フイルムは、視聴後、後日、報告したいが、ソニーは吉田CFOの下、IR開示は改善(おそらくこれまでは電機の中で最低水準に近かった)、日東電工は順調な決算、富士フイルムも同様であった。

 

NEC スモール

 スモールミーティングとは、決算説明会の翌日に、当日時間の関係で聞けなった質問や、他社の説明会とバッティングして参加できなかったアナリスト等のために会社主催で開かれるミーティングで、主として前期実績や今期予想の前提条件など、細かい数字の確認が主である。証券会社が投資家向けに行っている例は多いが、会社主催は、NECの他、日立、東芝、富士通、オムロン、日本航空電子、等である。開示すべき共通の質問に答えてくれアナリスト側も助かるし、会社側も同じ質問に何度も答えずに済む上、公平性も維持できる。ただ、数字の読み上げが多く、かつて90年代の日立などは、全部聞くと3時間近く苦行であった。

 今回は午後の部に参加、約1時間半で、営業外の項目、IFRSの影響、為替、年金などの数字、各セグメント別の売上内訳のイメージについて説明され、質疑では、主事業であるテレコムキャリアの状況、2年前の中計との差異、などであった。昨日の説明会でも議論があったSDNの遅れや、エネルギーの遅れが気になった。数年前と異なり、やるべき方向は決まっているので、もともと、コアでもないエネルギー関連はあまり深入りしない方がいいように感じた。また、NEC側も海外キャリアの投資動向の変化、後述する富士通、欧州通信動向から見ると、テレコムは不安と期待が交錯する。

 

村田製作所~さすがの業績

15時半~16時半 渋谷の東京支社、決算が好調であったせいもあり満員。セルサイド時代は、直接担当はしたことはないが、同僚の担当アナリストとよく訪問、また、移動通信の調査もあり、30年の付き合い、京都長岡京の本社や、川崎の東京支社もよくいった。まだ調査会社がない頃、アフリカや南米まで世界のケータイの数字を抑えている方がいて、勉強になった。何度か工場見学も圧巻であった。村田でいつも感心するのは肩書きがインフレしておらず、個々の社員のレベルの高さと比較して、ここの係長は権限なども含め、他社の部長級、課長は本部長級だろうか。また、説明会のCFO等も技術のトレンドに造詣が深いことも感心させられる。その辺りにも会社の強さを感じる。

さて、決算説明会は、藤田CFO、竹村取締役等が出席、いつものように竹村氏が説明、質疑には適宜、藤田CFO、竹村氏が回答というものである。質疑では、四半期や月次の受注動向、生産動向、今回は旺盛なスマホ需要に対応すべく過去最高1500億円の設備投資をするため、供給能力についての質問もあり10%増であるようだ。

業績は、心配された1-3月の中国スマホなどの落ち込みもなく、前期も上ブレ営業利益2145億円と、2000年度以来の最高益を達成、今期も増益が続き2500億円となる。円安効果もあるが、それ以上に、スマホ向けにMLCCSAWデバイス等が好調、部品の一層の小型化が進み平均価格も落ちないことに尽きる。

参考になるのは市場の見通しであり、調査会社などより、よほど信頼が置ける。

2014年から2015年は、ケータイが18.118.4億台、スマホが13.415.0億台だが、LTEは6⇒8.5、特に中国LTEスマホは、生産ベースで(インドなど他にいくものも含め)2.03.95億台である。PC5.24.9億台、デスクやノートは横ばいだが、タブレットが2.22.0億台と減少、TV2.1億台で横ばいである。スマホの員数増の質問には直接は答えられなかったが、ヒントとして、中国スマホがハイエンド化で1.5倍から2倍になるようであり、台数もあわせて考えると影響が大きい。

足元は3月から4月は通常の季節性で当然下がるが、前年同期では3~4月合わせると、20%増と強く、SAWフィルターはライバルのトラブルもあり、ヘルプが来ているが逼迫気味のようだ。

スマホが、中国で多少、調整したり、市場が飽和しても、員数増や、IOTの追い風もあり、ITバブルよりも、無線バブルは長く続き、その恩恵は大きいだろう。

私が質問したのは、ウェアラブルの見通しで、アップルウォッチだけで5000万台はあろうが、全体としてはまだ影響は少なく、数約億円レベルである。また、IoTでマイクロセル化があり、員数からも数からも、多少は影響してくるかと思い質問したが、十分に認識はしており、ファーウェイ等からも引き合いが来ているようである。また中期では、ラジオクラウドになると、員数が増えよう。さらに、資料でクルマでMEMSセンサーが好調と記してあったので、2012年に買収したフィンランドのMEMSメーカーVTI(現在はMFI)が、もう大きく伸びたのかと質問したが、まだそれ程ではないようだ。なお、当時のVTI社売上規模は100億円弱、新聞報道では2015年度に300億円を目指すと出ていた。また、村田独自では、2000年頃から金沢村田でカーナビ用に一軸ジャイロセンサを月産50万個で生産していたようだ。

MEMSはクルマ向けはもちろん、スマホやウェアラブルにもセンサーだけでなく、発振器としても使われる可能性があり、無線回路の設計が変わる可能性があり、SAWフィルターにも関係があるかもしれない。現在、北欧で生産だろうが為替の問題やキャパや生産性の問題もあり、将来は国内にもランがあった方がいいように思う。2012年に買収したのは流石だが、その進展状況が気になるところである。

 

富士通~減益計画の背景にあるもの

 1715分より、ほぼ満員、決算時は長らく決算短信だけであった(ただ、中身はかなり充実しており問題はなかった)が、今回、プレゼン資料。以前は、歴代CFOが早口で捲し立てるのでメモを取るのが大変だったが、現CFOになって聴き易くなった。s説明半分、数字はIT景況感の確認と経営議論である。冒頭、田中次期新社長による減益計画の背景、塚野CFOによる前期と今期の説明と質疑であるが、今回は、営業利益の減益見通しの理由として、ビジネスモデルの転換とあったので、その中身が何かに集中した。なお、中身については詳細を詰めているところであり、固まり次第、速やかに発表するようだが、時期は不明。

 田中次期社長の説明では、就任決定以来、山本社長と議論してきたが、中計の中で、早急に解決すべき問題があり、①サービスでの先行投資をしてきたが、その回収を早めないといけない、②プロダクトアウト型ではいけない、為替の変動リスクもあり、体質強化が必要、とした。田中氏は営業出身であり、マーケットインの発想であり、かつ、グローバルでの競争環境が激化しており、これまでのマトリックス組織体制を超えた対応や、ビジネスモデルを変えないといけないが強調された。

 塚野CFOの説明では、以前の中計の営業利益2000億円との差が500億円あるが、200億円は円安によるマイナス、300億円がビジネスモデルの変革に伴うコストだとした。いわゆる構造改革ではないことが強調され、減損や拠点統廃合とかではないようだ。

 私も何点か質問したが、田中/塚野両氏の回答のキーワードと注目すべきは、①山本社長も同意だが田中氏が決断した、②為替に影響されない体質、③ハード箱モノは価値が減りハードの価値は二極化する、④ハードの持ち方を再考する、⑤ハードを統合したところが弱くソフト定義で見直す必要がある、⑥M&Aや提携は一つの手段としてありうる、⑦1年で終わる、などである。

また、私は、「SIは中計でも方向性がクリアではあるが、通信NWは、ここ数年、方向性が示されず、業績が向上しそうになると研究開発費が増えるからと利益改善が蜃気楼のように遠ざかり、またキャリアの設備投資意欲の変化や、その主体も伝統的なキャリアからグーグルなどが増え、また、エリクソンが提案するラジオクラウドになると、アンテナやアンプ周辺まで以外はクラウドになり、ハードは不要、などの懸念があるが」、という質問には、全く同意であり、この辺りに改革の意識のヒントがありそうだ。

さらに、脱ハードといいながら、設備投資水準が高いのも問題ではないか(あえて具体的に聞かなかったが先日の日経報道で、川崎にハードの開発拠点にビルもふくめ800億円というのは何だろか?桁が一桁違うならわかるが)、との指摘も、まさに同意とされたが、足元は必要な投資がいるようである。

そこで、これまでを振り返ってみると、1998年に秋草氏がSE出身で初の社長に就任したが、彼の時代には、脱メインフレーム、脱ハードであり、ソリューションやSIに舵を切った。

その後、黒川社長の時代にかけて、半導体特にメモリーや液晶、PDPをリストラし、現山本社長時代にかけ、半導体LSIやケータイ、HDDなどのリストラが大きな経営課題であった。ただ、私の印象では、山本社長は、ハード出身でもあり、サーバーなどにやや固執し、東芝にHDDを出したが、ケータイを代わりに統合、その負担でケータイのリストラが大変であった。ソシオネクストも誕生、ようやく半導体全体に目途がついた今、課題はサーバー等のハードと通信であるように思う。

つまり山本時代までは、セグメントではユビキ部門とデバイスのリストラであり、それが目途がついた今、田中新社長に課せられたのは、システムプラットフォームのリストラかもしれない。そうすると、唐突で、何か社内のゴタゴタかと不安になった今回のトップの交替も、合点がいく。ただ、これまでは、そういうリストラをしようとすると反対勢力があるのかゴタゴタし時間がかかった印象もぬぐえないが、いまや、そういう余裕はなく、特に、サーバーや通信では、クラウド化によるハードの価値変動、通信では欧州通信の再統合と大きなうねりへの対応が喫緊の課題である。

そこで改めて思うと、ハードは大変である。工場をもたなければ、ならず、輸送必要で、在庫もあり、製造物責任もあり、特許や独禁法の対象になりやすい。ソフトというかクラウド化すれば、こうした面倒なことはなくなる。ハードという形態でいるのは、モータや物理的な稼動部分があるもの以外、特に、ソフトを提供するインフラ側のコンピュータや通信機は、どんどんクラウドになるのかもしれない。

さらに云うと、ファブレス化し、どんどん外部調達をすると、メーカーと商社の境界領域がなくなる。ただ、従来のように右から左という、トレーダー的なのはダメだが、東陽テクニカのように、ファンド的機能、カスタム機能、メンテ機能をもてば、商社という形態の方が、機敏に、顧客ニーズを取り込めるし、負担が少ない。

営業出身であるがゆえに、田中氏あるいはそのバックにある経営陣はそういうような流れを考えているのではないか。つまり、東芝がTVでやっているような形態である。全体のアーキテクチャは富士通だが、もはや生産はせず、ある程度は調達もするが、開発や製造、輸送、など全てEMSなどに任せるような形態だろうか。そうなると、富士通のバランスシートからは、有形固定資産や在庫などが消える。売り掛けや買い掛けも不要かもしれない。つまり富士通は商社化するのだろうか?

もう一つの可能性は、グローバルプレイヤーとの全部か部分の経営統合である。破談にはなったがTELAMATが一緒になる時代である。IBMと合体しても不思議ではない。あるいは通信などだけ、ファーウェイやサムスン、ホンハイ等にカーブアウトもあるだろう。

減損もなく、いわゆるリストラではない、1年で終わる、ビジネスモデルを変える、ハードの持ち方を変える、などのキーワードからは、商社化か経営統合シナリオを考えたが、妄想かもしれない。