2018年7〜9月はこちら


米中貿易戦争はトランプのせいか

 

ここのところ、連日のように、米中貿易戦争のネガティブ影響を強調する記事が出ており、それを、トランプ大統領の愚かさのせいだとする論調が多い。さすがに、米大統領とは、直接会ったことは無いので、彼が多くのメディア等が指摘するように、馬鹿かどうかは分からない。

 

米の対中警戒は以前から〜CFIUSPCAST

 

 しかし、現在の米国の対中国政策は、トランプに始まったわけではなく、それ以前から、共和党、民主党の両方で、(1)中国ビジネスでは、①知財やトレードシークレット、②為替操作等で米が損をしている、(2) 国防上も問題(サイバーなど、ファーウェイやZTEの通信インフラ)だ、との共通認識があるようだ。

 

実際、2016年の紫光集団によるWD買収が、米エクソン・フロリオ条項で対米外国投資委員会(CFIUS)審査により停止となった。

 

https://www.circle-cross.com/2016/02/27/2016225-wd-サンディスク買収-紫光の出資は米政府が中止/

 

エクソン・フロリオ条項は、米5021条規定で、米の安全保障を脅かす外国企業による米国企業の買収差し止めを目的とするもの。航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9分野で、対米外国投資委員会が条項に触れると判断した場合に阻止する権限を持つ。いわば、TPPと真逆である。最近は、CFIUSに、DODが参加したようだ。

 

また、2016年末では、China Challengeに「宣戦」布告とも思われる発表がホワイトハウスによりなされている。https://www.circle-cross.com/2016/11/26/20161126-米国がchina-challenge-宣戦-布告か/

 

むしろ、トランプを上手く利用して、対中警戒を強めているようにも思える。

 

バイラテラルかマルチラテラルか〜WTOの限界

 

 もう一つ、トランプ関連で報じられているのは、国際交渉における、バイラテラルかマルチラテラルかという古くて新しい問題である。

 

こうした問題は、CRISにて、USTRの元メンバー討論があり、参考になる。かつて、80年代の日米摩擦で活躍した、カンターやカーラヒルズなども登場している。中国の見方も議論されている。

 

https://www.csis.org/analysis/conversation-six-former-ustrs

 

 そもそも、マルチラテラルが、いいのは、チャネルの理論と似ている。

 

中間選挙

 

 すなわち、日本のマスコミは、末世のように騒ぎたてるが、こうした米中の関係は、オバマ時代からであり、関税にしても、限界があり漏れていくし、本気なら輸入制限するだろう。要は、トランプの中間選挙対策に過ぎず、それを、株式市場も見透かしているのだろう。ただ、米中間の、関税率アップの応酬が、インフレとなり、その結果、金融政策において、利上げにつながることは要注意だろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35753470W8A920C1EA2000/

 

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個人と法人、所有と利用の関係の再構築へ

 

シェアリングエコノミーが喧伝されているが、そこでは、所有と利用という軸だけでなく、供給者と消費者という軸も考慮し、2軸で考察する必要があるだろう。

 

 原始時代は、所有と利用も、出し手も、受け手も分離しておらず、まさに、家族的であった。それが、現在は、供給者たる企業と、消費者たる大衆が分離し、所有も移転(売買)、また利用という形も増えた。これは、同時に、GDPを増加させた(GDPの定義)。ただ、フローは、企業からであり、その逆は一部である(せいぜい、リサイクル等)

 

 今後は、この4象限の中で、組合せが多様化し、それが、更に、GDPを押し上げる。特に、個人データや家庭でのエネルギーが、どんどん企業に売られていくだろう。

 

 

チャネルも、双方向化、ダイナミック化する。これまでのチェネルは、法人から個人への物流、情報流(広告)、個人から法人の決済はメインであり、マーケティングも、それが中心だったが、3通り、4通りになっていく。既に、スマホやIoTを利用して、このトレンドに乗ったビジネスモデルが増えている。

 

 これらの4象限の、それぞれの立ち位置を考慮して、ダイナミックなビジネスモデルを取り入れる企業が新しい時代の勝者となろう。

 

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リーダーシップについて

 

「リーダーシップ」は、アカデミック、ビジネスを問わず、また、経営に限らず、古来、歴史的なテーマである。リーダーシップの定義は多様であり、リーダーの数だけ、学者の数だけあるだろう。その中では、Kotterの「リーダーシップ論」が、代表的かつ実践的であろう。ここでは、リーダーシップとマネジメントと差が示され、具体的なノウハウも記されている。

 

 そこで、改めて、自分なりに、「リーダーシップ」の定義を試みると、「自らのビジョンに基づき、組織を、動かしたり、変形したり、するもの」ではなかろうか。これは、物理学のアナロジーだが、物理学では、モノを動かし変形するには、エネルギーがいる。それゆえ、リーダーシップを発揮するには、エネルギーがあり、かつ、その与え方を、組織の状況に応じて、変える(熱する、温める、焼き尽くす、光を当てる、共振させる)ことが必要であろう。組織をゆっくり変える時間的な余裕がある場合は、じっくり暖めればいいが、猶予が無い場合は、ある部分は焼き尽くす(リストラ)こともあろうが、それも限度がある。すなわち、自身の軸、ビジョンに向けてのベクトル軸はぶれないが、組織の状況(重心や固有振動数などの)を観察し、エネルギーの与え方を変えないといけない。それを間違えると、自身が追い出されてしまう。

 

 下図で、ビジョンに向け、組織(肌色)をあるべき状態(オレンジ色)に、どう変える(形と位置)かが鍵だ。

 

 ここで、縦軸は、能力などのレベルであり、横軸は多様だが、方向性や価値観であり、普通は多軸だろうが、組織を変えなければならない場合は一軸であり、右か左かであろう(例えば、保守か革新か、攘夷か開国か、ROE経営か否か、等)。リーダーシップに求められるエネルギー量は、組織重心の移動距離や移動時間、組織での作用反作用、移動に際する摩擦等に左右されるだろう。

 

 そこで、大事なのは、「リーダー」や「トップ」は、この図で、どこに位置するかであり、それで、エネルギー量や移動時間なども決まる。

 

組織重心でのトップの位置は

 

 組織のリーダーやトップである社長等が、この組織()の重心にあれば、組織は安定し、支持され易いが、これでは、組織は動かない。かつては、組織の重心の上、頂点にまさにトップがある場合もあったが、これでは、現状維持でよくビジョンがない。また、例えば、ビジョンが右上にあるとして、トップが組織の範囲を超え、重心から遠すぎると、人はついてこない。カリスマ的であっても、組織から弾かれてしまう。もちろん、ビジョンが正しいとして、例えば、トップが左下にあるなどは論外だ。そこで、株主あるいは、指名委員会の立場から、どういう位置にある人材をトップにすえるかが鍵となる。

 

 「リーダー」の存在範囲は、ビジョンと現在の重心を結んだ線上で、重心より、右上から組織境界のギリギリまでとなる。ここで大事なことは、レベルが高い人材が、最適なリーダーではないということだ。

 

 最近のトップは、むしろ、重心の近傍、少し上が多い。こういうトップは、そのキャリアやバックグラウンド(出身大学、職種、出身地や工場)が最大公約数的ゆえに、組織に調和し易く、トップも、自身の能力の限界を知る故に、組織を理解しやすく、社員のモチベーションも向上しやすい(自分もトップになれる) そして、重心に近いトップを、社内でも、社外でも、投資家でもいいが、真の「リーダー」が、テコの原理で、上手くコントロールするのがいいだろう。

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アンケート・取材・説明会

 

アナリストであれ、社会科学系アカデミックであれ、ジャーナリストであれ、企業や産業などを対象に、論文やレポート、記事を執筆する際に、有力な手法は、アンケートや取材である。そこで、こうした手段を、論文やレポート等に纏める場合に、どう使い分けするかを考えたい。

 

社会科学・経営学とアンケート

 

社会学においては、対象となる人々にアンケートを行い、必要に応じ、統計処理を行い、また、期間と対象を絞って、取材を行い、仮説の検証に役立てる。経営学においても、同じ社会科学であるため、同様のアプローチをとる場合が多いが、よく考えると、異なる面も多い。

 

アナリスト活動におけるIRや説明会

 

 アナリスト活動では、取材は、IRと日常的に行われており、質問項目の多くは、業績や経営戦略に関わることであることが、大半で、共通のベースもある。最近は、フェアディスクロージャーの中で、ほぼ公開情報である。説明会では、経営トップの発言も聞ける(HPで公開)。質疑でも、経営の考え方等について確認できる。説明会資料や有価証券報告書は、法やルールに則り、客観的なデータでもある。それゆえ、これらは、レポートでも論文でも引用可能であり、仮説の検証の論拠になりえる。

 

会話や雑談および非公式な会議・勉強会

 

 アカデミックな活動でも、アナリスト活動、また、通常の知人や友人との会話の中で、様々な議論もなされるが、これらは、非公開であり、主観的とは言えないため、仮説のヒントにはなるが、これらの意見を引用することではない。

 

アンケートといっても意味合いが二種類ある

 

 アカデミックであれ、アナリスト活動であれ、アンケートを取る場合は、サンプルが多く、全体的な傾向を見るため、相手の意見や行動などを統計処理の対象と考える場合と、アンケートを取るといっても、サンプルが少なく、全体的な傾向ではなく、専門家の意見として聞く場合とでは、全く意味合いが異なるであろう。この後者では、本来は、個々に面談して意見を聞くべきだろう。この場合は、更に匿名か引用可能かも確認する必要がある。

 

良い論文と良いレポート良い記事のベースと共通項

 

 論文やレポート作成に関しては、①仮説の構築、②仮説の検証、というプロセスを経るが、アンケートは、両方に使えるが、その意味合いは、①全体の傾向について、統計処理を前提として見る、②専門家や特別なケースの意見などを聞く代替手段、だろう。

 

 会議や面談などは、非公開のものは、あくまで仮説構築のためであり、仮説の検証には引用できない。そして、引用するならば、公開の説明会や、マスコミの社長の会見など、HP等からであろうし、それは、IRの進展で、極めて充実しており、かつての個別取材と同等以上だろう。アナリストも、こうした公開情報をもっと活用し、複数の会社を比較しながら、その背景を分析するだけで、かなりの貴重な情報が得られよう。そして、アカデミックやマスコミ側は、こうした公開データをもっと活用し、「無駄」(重複、会社に迷惑)なアンケートを実施すべきではないだろう。そろそろ、アカデミック、アナリスト、ジャーナリストが、共通のベースで、企業産業分析を効率よく行うべきだろう。真実の追求、将来性予測、など、目的は多少異なるが、長期では、同じであり、良い論文、良いレポート、良い記事というのは、論理性、客観性、普遍性、独自性、実践性などに於いて、共通項が多い筈だ。

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富士通の研究開発説明会と㈱富士通研見学(9月20日)

 

92013時より開催された川崎の㈱富士通研究所の説明・見学会に参加した。マスコミも合同で、多数参加。13時過ぎから、佐々木社長がR&D戦略についてプレゼン質疑、その後、佐川常務が2件の新規テーマ発表、その後、プレゼン会場を出て、14時過ぎから16時まで展示見学という例年のパターンであり、15時過ぎまで展示ブースで質疑。川崎工場80周年、研究所創立50周年ということもあり、歴史的背景が説明され、その中で「信頼と創造」は同じだが、これまでのReliability and Creativity」から、「Trust and Co-creationへと変わったが、これが、データ社会とオープンイノベーションの状況を端的に表しているだろう。

 

佐々木社長プレゼン

 

 佐々木社長のプレゼンは、昨年度までとやや変わって、富士通グループの中計目標への貢献もあるが、より歴史的な背景の中で、「Reliability and Creativity」から、「Trust and Co-creation」への変化、その時代背景などが強調されたように感じた。データ経済の中での、Trustの重要性は、その通りだし、共創事例も、顧客とはSIEMENS、サンカルロス病院、商船三井、オープンイノベーションでは、京大、トロント大、三菱地所・ソフトバンク・東大との事例が紹介された。

 

他方で、R&D戦略や業績的な話題は少なかった。

 

佐川常務「信頼されるデータ社会を目指して」

 

 新発表として、分散したデータ社会のTrustを実現する「チェーンドリネージュ(Chained Lineage)」と、「分散ストレージ上で大量データを高速処理する基盤技術」が紹介された。展示ブースでも、デモがあった。

 

DATA21世紀のオイルであり、その活用が鍵だが、「チェーンドリネージュ」では、データの品質や個人データ利用の同意が必要であり、そのデータの来歴を、ブロックチェーン技術を利用、Hash値を見ることで、明らかにする。個人データ同意が、どの位集まっているかの途中経過なども分かる。

 

データZB時代のデータ量そのもののTrustは?

 

プレゼン後の質疑はなく、中身について、展示ブースで確認できるが、プレゼン資料の「2025年のデータ量が163ZB」という、有名なIDCのデータのTrustはどうなのだろうか。IDCでは、「国際的なデジタルデータの量は倍々で飛躍的に増大、2011年の約1.8ゼタバイトから2020年に約40ZBに達する」というが、163ZB163・億TBゆえ、人口70億人として、一人当たり、2TBとなり、少なすぎ、違和感があろう。

 

展示は16テーマ

 

展示は、昨年14テーマから再び16テーマとなった。当日、新発表の2件はデータマネジメント、1件はコンピューティング(デジタルアニーラ)AI応用3件、5G2件、センスコンピューティング1件、SEクラウド2件、セキュリティ2件、材料デバイス2件、デジタル共創が2件だった。

 

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リーダーシップ組織構造改革と経営重心

 

経営において、組織構造は永遠の重要なテーマである。これまで、経営学などにおいて、組織構造は、せいぜい、ピラミッド型(ヒエラルキー)かフラット型(ホラクラシー)、あるいは、マトリックス型などしか示されてこなかった。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35198940Q8A910C1TJ1000/

 

 そこで、下記のように、カリスマトップ型、フラット/ホラクラシ―型、日本型、ピラミッド型、縦割横割大組織型、また、特殊な例として、CEO輪番制をひくファーウェイ型に分類を試みた。また、参考として、競争政策的視点からの市場構造や、政治体制のアナロジーと対比させた。

 

伝統的な経営学では、普遍性を過度に重視する余り、経営状況を一般化して、組織構造やリーダーシップを論じるが、実際には、状況により異なるだろう。そうであるが故に、実際の経営組織構造は異なっている。そこで、経営重心の視点から、どの領域で、どの組織構造が適合し易いかを考察する。

 

ここで、経営重心での横軸は、組織の変革のサイクルであり、右は、通常の人事異動など、短期で回るべきものであり、左側は、合併やM&Aなど組織変革に時間がかかるものだ。また、縦軸は、組織の自由度やトップへの集中度である。下に行くほど、大規模な組織で、大勢の知恵を出し合うようなイメージである。

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パイオニアの苦境

 

パイオニアが投資ファンドのベアリング傘下へ

 

パイオニアは12日、香港を本拠とする投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジアとスポンサー支援に関する基本合意書を締結したと発表。918日に250億円の融資を受け、9月下旬に返済期限を迎える借入金133億円の返済の他、運転資金に充当。10月末までに正式契約を結び、12月末までに、時価総額(12日時点で448億円を超えるベアリングに対する第三者割当増資(普通株または議決権を有する優先株を発行)500600億円調達する。

 

日経報道では、ベアリングの日本拠点代表シェーン・プリディーク氏は、「役員派遣も検討、投資期間は56年以上の長期になる」とコメント。融資分の株式転換も検討し、同社が株式の過半を握る可能性もあるだろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35297270S8A910C1TJ2000/

 

9月に入り、クルマ用FAを担う東北パイオニアEGをデンソーに売却(売却額109億円、売却益33億円)2月には電子部品製造装置子会社の売却、5月には、DJが使うターンテーブル等の機器を生産するマレーシア子会社パイオニア・テクノロジーの工場を、香港のコードレス電話機メーカーのVテックHD子会社に売却。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35131860X00C18A9916M00/?n_cid=SPTMG022

 

事業売却を加速

 

5月に、小谷前社長が辞任、森谷氏が社長になって以降、業績悪化が顕在化、1Q決算発表の8月には継続性の疑義がついた。その後、88日には、日経が、KKR傘下で、クルマ関係で、シナジー効果も期待できるカルソニックカンセイなど複数社に支援を要請、資本提携する検討に入ったと報じられたが、交渉は不調に終わったのだろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33953820Y8A800C1MM8000/

 

 この3年も、OPは黒字だが、NPは赤字、売上減の上、FCFの赤字は拡大している。B/Sも、自己資本比率は28%だが、連結に比べ単独の現預金が少なく、子会社株式の多くは簿価である。

 

 

パイオニアであることの宿命か

 

 もともと、高いオーディオ技術を持ち、トリオ(現ケンウッド)、山水電気と並んで、御三家と呼ばれた名門企業。1980年代に、レーザーディスクで躍進、カラオケ用で市場を独占。その後も、カーCDや、GPSカーナビなどの開発に成功、さらに、OLEDPDP-TVDVDなどでも世界初となるような製品を出し、ハイエンドの家電メーカーという地位を築いた。

 

 しかし、デジタル家電の大競争時代の中、価格急落もあり、苦戦が始まる。PDPは液晶TVとの価格競争、DVDでは台湾や中国メーカーとの競争が厳しかった。

 

デジタル大競争

 

安定収益のカーエレも厳しさが増し、また、昨今は、カーエレは、ADASなどの中で、競合は国内の同業でなく、むしろ、デンソーやボッシュ、コンチネンタル等、世界のトップTier1、さらには、グーグルやアマゾンとなり、1兆円もの巨額な開発費が必要になってきた。同社は、Lidarなどの技術はあるが、AIやセンサー、カメラ、データー等、より広範囲なものが求められる。その中では、自動運転などクルマは、成長分野ではあるが、同社が手掛けられる事業では無くなってしまったのかもしれない。

 

オンキョーとの関係

 

なお、パイオニアがホームAV部門を譲渡した、音響老舗のオンキョーも苦境に立っている。

 

日本の家電業界の苦悩

 

AVでは、ソニーが、ようやく、苦境を脱したが、収益源は金融とゲーム、半導体であり、セット端末型のTVもオーディオも楽ではない、パナソニックもリストラを繰り返し、成長の期待は、CASEや電池、シャープは鴻海傘下で再生、三洋電機も厳しくパナソニックに救済された。TVDVD等の船井電機も厳しさが続き、同業のアルパインは、アルプス電気傘下となり、ファンドと揉めている。

 

2000年代前半、いや2010年前後ですら、多くの学者やアナリストが、デジタル家電に期待したが、これまでも、拙著「日本の電機産業はこうやって蘇る」などでも、何度も主張したように、ジャパンストライクゾーンの右上の領域では、日本には勝ち目はないだろう。

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iPhone新型発表〜XRとXSとXSMAX

 

アップルは、12(米時間)、新型iPhoneを発表した。LCDXRと、OLEDXSXSMAXである。ハードのスペックは各紙など推定線で、その進化も驚くほどではないが、True Tone等、撮影等はAI応用で、使い勝手が良くなっている。電池容量など不明な点もあり、推定もある。

 

 

 プロセッサやソフト等は、共通だが、パネル、メモリ容量、筐体の差により、価格差が出ている。最上位機種のMAXは、208g、連続通話時間等も長いが、機能的には、Xsと変わらず、どちらが人気かは、微妙なところだ。

 

 また、過去と異なり、iPhoneだけが飛びぬけているというより、サムスンや、ファーウェイが斬新であったりする傾向もあり、シェア挽回が可能かどうか。

 

OLEDになり、プロセッサの負荷も大きく、電池容量は3000mmAhを超えた。L字型のLIBパックが2個搭載のようだが、コンデンサや回路負担も大きいだろう。更に、MLCCが逼迫する可能性もある。

 

 なお、OLEDモデルは、9月から供給、パネルはサムスンのみ、LCDモデルは、JDILG2社供給だが、ガラス故に、ノッチ加工が難しく、供給は、10月にずれ込む。

 

 iPhone2018年生産は、前年比微増の230m台がコンセンサスだが、3Q50m前後(うち、新型機種OLED15m)の、4Q80m前後(新機種のOLED2530m、新機種LCD40m前後)という予測が多いようだ。

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ルネサスが米IDT社を7330億円で買収正式発表〜高いが、いい買い物か

 

 ルネサスが米IDT社を7330億円で買収することを正式発表した。既に、831日の日経報道の後、何度か、報じられ、驚きはない。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34864210R30C18A8TJ1000/

 

 内容的も、会社等からのリークであろうし、概ね報道通りだが、市場で懸念があった増資が無かったのはプラスだろう。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34816140R30C18A8MM8000/ 

 

11日に正式記者会見、HPでも視聴した。https://www.renesas.com/jp/ja/about/ir/event.html#presentation 

 

IDT社〜ミックスドシグナルのファブレス成長企業

 

IDT社は、データセンター向けやiPhoneのワイヤレス給電向けなどで強み。

 

一言で言えば、良い買い物だが、単純計算すると、EV/EBITDA25倍前後、また、シナジー効果を織り込んでも、20倍弱(業種別では、IT系で10倍、最高のヘルスケアでも15倍 ARM30倍以上、インターシルも30倍以上)は、やはり高いといえよう。しかし、2017年のインターシルのケースよりも腑に落ちる内容だ。またある意味、インターシルも、IDTの布石だったのかもしれない。

 

発表概要

 

ルネサスによるIDT買収は、$49/ (830日終値に対し29.5%プレミアム)、株式価値 $6.7bn (7330億円)、企業価値 $7.2bn (7870億円)。クロージングは、196月末を目標。買収資金は、増資はせず。借入金約6790億円と手元資金で充当する予定。

 

ルネサス側は買収後のネット有利子負債は約7570億円、ネット有利子負債/EBITDA3.2倍まで上昇するが、2年強程度後には1.0倍まで低下予定。また、ルネサスは今後数年間の投資額は必要最小限の水準で推移するため、FCF創出力が向上するという。

 

 買収目的は、①ルネサスと補完的な、IDTのアナログ・ミックスドシグナル製品群とマイコン/SoC、及びインターシルのパワーマネジメントICとの組み合わせによるソリューション提供力強化、②データセンターや通信インフラ向けなどに事業領域拡大、産業・自動車分野のポジションを強化。

 

ルネサス側は買収後早期にNon-GAAPベースの粗利益率が約1.6%ポイント、EPSが約18%増大すると予想。売上8740億円、Opm17%強へ、成長とコスト効率化によるOP増を長期で年間$250mn見込む。

 

B/SIFRS移行もある

 

 2018年後半-19年前半のルネサスは、CAPEX低水準で推移、在庫圧縮もあり、年間1000億円程度のFCFが十分期待でき、買収に伴うレバレッジ増大、B/S悪化への懸念はある程度緩和されよう。他方、来年度より、IFRS導入、ノレンが影響する。

 

 

業界再編

 国内の非メモリ半導体業界は、ルネサス以外に、ソシオネクスト、ロームなどがあるが、中堅の新日本無線はリコーデバイスと連携。

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富士通の再編〜加賀電子に半導体・デバイス販社を加賀電子へ売却

 

富士通(および加賀電子)は、富士通の半導体部門を統括する富士通セミコンダクター(FSL)が、販売子会社である富士通エレクトロニクス(FEI)の株式70%を加賀電子に、20191月メドに譲渡することを決めた。残る30%2021年内に譲渡する方針のようだ。

 

なお、加賀電子への売却金額205億円は、FEL2017年度末の純資産353.8億円を下回るが、201911日の株式譲渡に先立ち、100億円の現金配当を現行親会社のFSLに実施する。

 

http://www.fujitsu.com/jp/group/fsl/resources/news/press-releases/2018/0910.html

 

 両社によると、半導体メーカー再編、代理店政策見直しなど、エレクトロニクス商社も再編や統合が増え、一層、厳しさが増す中で、目的は、下記である。

 

  1. 電子部品・半導体ビジネスのシェア拡大:加賀電子及びFEIにおいて取扱い商材や、国内外の販売チャネルを相互に補完、ニーズ対応力を強化、電子部品・半導体ビジネスのシェア拡大。

  2. EMSビジネスの事業規模拡大 :加賀電子がグローバルに展開するEMS拠点網の上に、FEIの強みである広範な顧客基盤を共有、加賀電子が得意な高付加価値型EMSビジネスの非連続な成長実現。

  3. 両社事業協業に伴う経営効率の更なる向上 :加賀電子及びFEIが持つ販売関連組織・各種機能の最適化や相互活用の最大化により、両社の収益性向上。

     他方、加賀電子は、売上規模5000億円へ増加する模様。http://eetimes.jp/ee/articles/1809/10/news101.html

    以前に、M&Aで商社再編を主導すると発表しており、IoT時代に、EMSの付加価値を高める戦略だろう。

    http://eetimes.jp/ee/articles/1702/09/news016.html

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日本-イスラエル〜イノベーションの架け橋セミナーとイスラエルのスタートアップ

 

94日、アグモニ氏率いる国際的金融機関のチャータードグループ傘下のPWM日本証券主催のセミナー「日本-イスラエル〜イノベーションの架け橋」に参加、基調講演を行った。場所はアメリカンクラブで200-300名と盛況。

 

 昨年1023日に、日本イスラエル商工会議所で講演したが、最近、不思議にイスラエルと御縁があり、ハイテク動向だけでなく、MOTでも起業・スタートアップは重要であり、イスラエルに学ぶことは多い。日本とイスラエルは、国民性など真逆なようで、文化では類似点も多く、関心を持っている。

 

基調講演は若林(理科大MOT)と三津家氏(田辺三菱製薬社長)、クラスター博士(テルアビブ大学学長)

 

 基調講演は、私が「日本の先端技術とイスラエル」のテーマで、今後の技術トレンドと日本の強い分野、その構造変化、国際競争力低下の中、その解決策としてのイスラエルとの補完関係についてスピーチした。

 

 

 

その後、三津家正之氏(田辺三菱製薬株式会社代表取締役社長)が「イスラエル最先端技術の現状」と題し、自社紹介と提携投資先のニューロダーレム社について紹介された。

 

最後に、ジョゼフ・クラフター博士(テルアビブ大学学長)「イスラエルエコシステムとTAUベンチャーファンド」(後述)であった。

 

イスラエルのハイテク・スタートアップ4

 

 その後、厳選されたイスラエルのハイテク・スタートアップとして、InnerEye社(画像解析)、Halo Digital(インダストリアルIOT&サイバー)、Zsquare社(高性能内視鏡)、ContinUse Biometrics社(非接触型生態認証)がプレゼンを行った。

 

パーティ

 

その後のパーティには、駐日イスラエル大使館関係者やテルアビブ大学関係者の他、国内企業、投資家など多くが参加。まず、駐日イスラエル大使のベンアリ女史のエネルギッシュなスピーチ、外務省中東アフリカ局長の挨拶、中山衆議院議員の乾杯では安倍内閣のイスラエル重視政策、塚本氏(元 METI日本イスラエル商工会議所会頭)の絞めの挨拶があった。

 

ジョセフクラスター学長(テリアビブ大学) https://english.tau.ac.il/

 

 テルアビブ大学は、イスラエルのトップ大学であり、首相はじめ、映画監督など、政治、科学技術、芸術など広い分野で、多くの有名人や人財を生み出している。学長のプレゼンは、最初にビデオ、あとは資料なく、エネルギッシュなプレゼンであった。以下は、その要旨やキーワードである。

 

イスラエルのハイテク・スタートアップ、ベンチャーの講演

 

 厳選されたイスラエルのスタートアップのトップが自ら講演、デモもあり、講演後、ブースで実物を触って質問できた。

 

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リーマンショック10周年〜サイクルは変わったか?

 

来週915日のリーマンショック10周年を前に、シリコンサイクルについて議論したい。すでに、ここ数か月、液晶や有機ELはもちろん、DRAMNANDなど半導体メモリも価格下落。一部、メモリでは、サムスンやマイクロンでは、設備投資延期の話は出ている。

 

 このため、アナリストの間でも、「スーパーサイクル」を巡って議論が分かれている。実際、過去も、金融ショック等の後に、サイクルの本質が変化する場合が多い。今回はどうであろうか?

 

87年のブラックマンデーの後、コンピューターはメインフレームからPCへと変化、通信も有線から無線あるいは移動体通信、また、アナログからデジタルへと変わった。そして、97年のアジア危機とITバブル崩壊の後、PC市場や従来のケータイ市場は成熟した。20072008年のサブプライムショックとリーマンショックの後は、PCやガラケーから、スマホに変わり、シリコンサイクルも、3-4年のPCサイクルから、1-2年のスマホサイクル、あるいは、シーソーサイクルとなった。

 

そして、今回は、スマホに加え、産機やクルマ、データセンターといった産業用市場がメモリでも大きくなったことが大きく、サイクルが6-8年と長いのが特徴だ。これがスマホの短いサイクルと相まって、「スーパーサイクル」を形成しているのだろう。今の調整が大きくなるとは思えないが、注意すべきは2019-2020年であり、そこでは、日本も含め、長く続いた金融緩和の終わりの中で、産業用サイクルが飽和する可能性には十分に注意したい。

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リーマンショック10周年で何か変わったか

 

来週915日は、リーマンショック10周年だが、この10周年で何が変わったのかを振り返ってみたい。過去、金融ショックは、1997-98年のアジア危機、1987年のブラックマンデーと、ほぼ10年毎だが、それを機に経済や経営情勢は大きく変わる場合が大きい。ここでは、日本中心に、リーマンショック前後でどう変化したか、再考、再確認したい。

 

 第一に、成長戦略やイノベーションのあり方だ。欧米では、既にあったが、リーマンショック前、ITバブル前後からのトレンドが、より明確になった。オーガニック・グロース、リニアモデル、技術中心から、M&A中心、ベンチャー投資、オープンイノベーション、ビジネスモデル重視へと大きく変化した。

 

 第二に、財務や会計が、日本でも、P/L中心、単独、簿価中心から、B/SCF中心、連結、時価(IFRS)中心に変わった。これは、上記のように、M&Aなどが重要になる中では、当然であろう。

 

 第三は、経営のあり方であり、生え抜き、事業経験者中心から、日本でも。外部経営者、資本家トップへ、そして、ガバナンスは、監督と執行の分離である。オープンイノベーションやM&Aが増えれば、ポートフォリオ経営となり、一つの事業だけの深堀の経営者では難しい。

 

 以上のうち、第2、第3は、投資家や規制当局などの要請や希望もあり、既に、多くの企業が、認識や自覚をしているだろうが、第1の、イノベーションの変化は、まだ、多くの会社は十分に認識しているとはいえないだろう。

 

 いわば、この第1の変化に、企業がきちんと対処できているのか、を正しく判断するために、第2、第3の変化があると見るべきだろう。

 

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リーマンショック10周年を前に

 

来週915日は、リーマンショック10周年であるから、あと10日だ。8月頃から、マスコミからの取材も多く、今来週にかけ、特集を組む場合も多いだろう。

 

2008年の915日は、月曜だったが、その数日前の土日の快晴の日に、親しい先輩の御尊父で金融業界でも偉大な足跡を残された方の葬儀に参列した。帰りに友人と、景気の話になった時、彼が変なことを言ったことを昨日のことのように覚えている。それは、「15日の月曜に巨大地震かテロかある。それを知っているVIPは一時的に日本を離れている」ということであった。彼は時々、極端な話でからかうような癖があるので、あまり気にしなかったが、来たのは天変地異以上のものだった。

 

 また、当時はヘッジファンドで運用をしていたが、もう一つ忘れられないのが、約1年前の8月中旬の事件だ。815日から、サブプライムローンショックで、株式市場は暴落していたが、817日のザラ場で、日経225先物が、ストップ安で、しばらく値がつかなかったのだ。通常、日経やTOPIXは最も流動性があり、故にリスクヘッジに使うのだが、それがストップ安というのは異常な事態である。歴史上、有名なのはリーマンショックだが、実は2007年の方が大変であり、不気味だった。それが顕在化したのが、翌年だったという印象だ。

 

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最近の理系修士学生

 

8月末に、理科大の全学的カリキュラムの大学院共通授業として、修士課程の学生に、3コマ4時間半の集中講義をした。

 

実践リーダーシップを学ぶ

 

技術者からリーダーへの道

 

学生の専攻は多様

驚いたこと

大学での普通の修士課程に教えたのは、久しぶりであり、かつ、これまでは、授業というより、ゲスト講演で1時間程度のスピーチだったので、今回、今の若い学生と、双方向の議論をして、幾つか、驚いたこともあった。

 

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人生株価チャート演習

 

大学のMOTゼミ生との日帰り夏季合宿で、1年生に「人生株価チャート演習」をやってもらった。人生株価チャート演習とは、自身の人生の、誕生から死ぬまでの状況を、ファンダメンタルズと、外部からの評価(株価)に分け、それぞれを今後の予測も踏まえて、グラフ(チャート)で描いて、説明するものだ。

 

アナリストは、個人の状況を株価に、結婚をM&Aに喩える

 

アナリストの世界では、仕事柄、自分や仲間の個人の状況を、株価に喩えるのは、日常茶飯事だ。曰く、「実力はあるのに、割安に評価されている、お買い得だろう」、「あの美人が独身なのは、隠れ負債があるからか」、「彼は成長株だが、割

 

MOTの講義で導入

 

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EV充電規格、日中で統一へ

 

EV充電規格が日中間で統一する見通しだと、日経新聞が823日に報じた。日本発の自動車向け急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」の普及を担うチャデモ協議会が22日、中国の規格GB/Tを推進する中国電力企業連合会と新たな規格作りに乗り出すと発表。乗用車だけでなく、バス・トラックに対応する高出力の規格を2020年に決める。日中規格統一が実現すれば、中国シェア87%ゆえ、全体で9割を超え、国際標準になる可能性がある。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34476590S8A820C1MM8000/

 

 チャデモ協議会によると、828日午前,北京市において中国電力企業連合会と次世代電気自動車充電技術や標準における業務提携に合意し,覚書に調印、双方から充電技術体系およびインフラ整備のロードマップの紹介が行われたようだ。https://www.chademo.com/ja/chademo-news/

 

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トヨタグループ4社が自動運転で新会社、トヨタはウーバーへ出資し提携へ

 

デンソーやアイシン精機などトヨタ自動車のグループ4社(デンソー、アイシン、ジェイテクト、アドヴィックス)27日、自動運転の普及に向けた統合ECUソフト開発を担う新会社を20193月に設立を発表。出資比率はデンソー65%、アイシン25%、ジェイテクトとアドヴィックス5%ずつ。併せて、デンソーとアイシンは、電動化の駆動モジュールの開発販売の新会社も設立へ。出資比率は両社で50%ずつ。https://www.denso.com/jp/ja/news/news-releases/2018/20180827-01/

 

 背景は、自動運転と電動化が猛烈なスピードと異業種も含めた競争激化という100年に一度の環境変化の中で、勝ち負けではなく、生きるか死ぬかをかけて、4社の総力結集を結集、運転・電動化の普及で、未来のモビリティ社会の創造に貢献するという。

 

 これまでは、ECUは、センサー、ステアリング、ブレーキなど、応用別に分かれており、自動運転化の中で、ECUの数が増えるだけでなく、コンデンサや各種半導体が増え、ソフトも膨大になり、その整合性が問題であった。これが統合化されることで、数を抑え、ソフト開発の効率アップやコストダウンにもなる。さらに、統合ECUやソフトで、デファクトスタンダードを取り、外販すれば、まさに、プラットフォーマーになれるが、ボッシュやコンチネンタルとの戦いが待っている。

 

 

次の再編は

 

 自動運転は、5Gの低レイテンシの有力な応用分野であり、クルマ内のセンサーや制御だけでなく、V2VV2Xや、5Gインフラなど、外部ネットワークとの通信も不可欠である。今後は、5Gの周波数やプロトコルなど標準化が進む中で、ITやネットワーク系とのグループ分けが進展しよう。また、電動化では、EVメーカーとのグルーピングやデファクトスタンダード争いも起こってこよう。その意味では、まさに、自動運転(ADAS)EVは、ケーレツを破壊、新たな秩序が生まれるのだろう。

 

 

トヨタがウーバーと提携

 

 さらに、29日、トヨタは、ウーバーへ5億ドルを出資、ミニバン「シエナ」をベースにライドシェア専用の自動運転車を開発、2021年にウーバーのサービス上で運行を始めることを発表した。ウーバーの自動運転キットと、トヨタの安全運転支援システム「ガーディアン」を連携、二重チェックする仕組みを想定するようだ。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34688860Y8A820C1TJ2000/

 

鍵はキャリア化

 

 今後のクルマ産業のキーワードは、自動運転、EV、シェアリングと言われているが、トヨタグループでは、この数日の提携発表で、これらの動きに、布石を打ったことになる。

 

 この動きの中で、クルマ産業は、モビリティ・キャリアへと大きく変化し、トヨタが目指すであろう垂直統合か、アマゾンやグーグルが志向するであろう水平分業か、不明だが、その付加価値は、自動運転の安全性や快適性、事故対応や、シェアリング対応、自動運転の提供エリアの広さや、バッテリーの確保(LIBステーション、無線給電ステーション等)、そうしたインフラをどう提供できるかだ。

 

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日立、東芝、東電、中部電力が原発で連携か

 

日経新聞822日朝刊は、「東京電力ホールディングスと中部電力、日立製作所、東芝の4社が原子力事業で提携協議に入った。」報じた。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34438270S8A820C1TJC000/

 

 電力会社(オペレーター)と、原子炉メーカーが「異例」の「垂直連合」に踏み込む、とするが、オペレーターとメーカーが分業しているのは、日本の特徴であり、海外でも垂直統合の例はある。 また、表現は「新水平統合」としているが、電力会社と原発メーカーが統合すべきだと主張している。

 

https://www.circle-cross.com/2015/12/02/201512月2日-2020年に向けての電機業界の再編は新水平統合/

 

 

報道によると、国内原発の建設再開や廃炉作業の共同化を検討、4社で保守管理会社を設立、更に、原発事業全体の統合も視野に入れるようだ。原発は、BWRPWRがあるが、BWR(GE)での統合となる(東芝が買収して減損計上して売却したWHPWRだった)

 

実現し、日立や東芝が持ち分法対象外ならポジティブ

 

 既に、東電と中部電力は、JERA社を設立、国内火力発電を2019年春に統合するが、原子力事業は課題が残り、日立も、UKでのホライゾンの出資先を探しており、WH問題で一段の東芝も、ニュージェンの問題が残っている。統合会社が設立され、日立や東芝が少数での出資で、持ち分法適用外になれば、両社の原発リスクが大きく減ることにはなる。

 

BWR系も含め、大再編か

 

 また、BWR系会社ができれば、もう一方のPWR型陣営の三菱重工、関電なども、同様のスキームに向き議論が始まり、その場合は、これも出資比率次第だが、三菱重工のリスクが大きく減ることになろう。

 

 BWR陣営では、残る東北電力、中国電力、北陸電力、PWRも、他の電力会社がどう対応するかで、全体の再編論もあろう。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34455060S8A820C1TJ1000/?n_cid=SPTMG002

 

 これまでも、日立、東芝、そして三菱重工の原子力統合議論は、燃料での議論だけでなく、全体もあり、かつて大スクープだった日立と三菱重工合併も、3.11後の原子力事業のリスクと負担の大きさが背景であったろう。

https://www.circle-cross.com/2016/09/29/2016929-日立-東芝-三菱重工の原子力-事業統合へ/

 

産業革新機構か原子力再編機構か

 

 従来から、原発は民間メーカーのリスク範囲を超えており、ROEなどの収益性よりも、優先すべき安全性などの要件が多く、上場会社として、関与すべき事業かどうか、議論すべきだろう。

https://www.circle-cross.com/2017/01/06/201715-産業革新機構-incj-でなく原子力再編機構を/

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東芝の半導体とLNG撤退報道

 

決算説明会後のアナリスト向けスモールに参加、また、LNG撤退報道もあったのでコメントしたい。

 

半導体1Q決算

 

 メモリがカーブアウトされた現在、東芝に残されているのは、ディスクリートとシステムLSI、および、NFTの分である。セグメントでは、HDDもある。

 

1Q業績は、売上820億円、OP50億円、ディスクリートは好調だが、Dep増やウェハー値上げもあり、y/y減益、システムLSIも、通信(ブルーツース)が不振、アミューズメントも苦戦。車載は赤字が続く。NFTは、同社の1Q開示(日本基準)は、売上31億円、OP赤字20億円だが、東芝では米国基準であり、計上タイミングが異なる。

 

 ジャパンセミコンダクターは、2016年設立、業績は2017年度売上1200億円強、利益38億円(帝国データ)、従業員2100名。顧客は、まだ大半が東芝。http://www.jsemicon.co.jp/company/top_message.htm

 

 

メモリ影響

 メモリは6月より40%強を持ち分法で、この6月分のみ122億円を反映、OP外収支や税率(不明)などを無視するとOP305億円、非継続で反映されていない4-5月の869億円(Opm48%)、平均435億円より少ないが、4-5月はDepなし等を考慮すると、妥当なところか。

 

ただし、売上では、4-5月が1894億円(平均900億円強)2017年度1Q2670億円(平均900億円弱)と比べれば、当然だが、2017年度4Q3333億円(平均1100億円強)OP1564億円(平均520億円強、Opm47%)に対し、20%減収は違和感がある。TMCへのシフトで、在庫や売掛、あるいはロイヤリティ収入などで会計処理イレギュラーがあったかもしれず、NAND市況を議論できる以前だろう。

 

LNG事業(フリーポート)売却

 

 マスコミ向け質疑で、フリーポートに関する質問が多かったが、日経等が11日付け朝刊で、LNG売却と報じた。10社と交渉中だという。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34077430R10C18A8MM8000/

 

会社側は、ノンコアと認識、B/Sが余裕あるうちに、多少思い切った改革をする意志のようだ。かつて、契約債務では、MAX1兆円だが、これは、当時の年間ロスが平均500億円との前提であった。その後、改善し、年間ロス100億円との報道もあり、これが、今回の記事の2000億円ロスの根拠だろう。ただ、実際は、黒字ではないが、かつて示唆された70ドル/バレルに近づいており、交渉次第だろう。なお、もしコストを計上する場合は、減損や在庫損ではなく、あくまで契約違約金のようなものだ。まだ、少なくとも20年分の生産はしておらず、これがWHなどの件とは異なる。

 

 なお、報道では、残されたリスクを列挙しているが、これはナンセンスだろう。会社が事業をする上ででは、必ずリスクはあり、もし論じるならば、相対比較でなされるべきだろう。その意味では、もうリスクは小さく、むしろ、成長やイノベーションのため、どういうリスクをとるべきかだ。

 

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日東電工(Nitto)1Q決算テレコン7月31日

 

731日に決算テレコンがあり、質疑も含め再生を聴き、コメントしたい。説明は武内CFO、伊勢山執行役員出席、IR須谷が数字のコメント。

 

決算1Qは特殊要因が多い

 

 業績1Qは売上1921億円、OP265億円、NP171億円、実態は想定線ながら、為替差益23億円(その他)や蘇州工場の譲渡益16億円(オプト)でやや上ブレか。上期の売上4050億円、OP600億円、通期の売上8600億円、OP1350億円は不変。

 

用途別動向

 

オプトの中の情報機能材の足元の動向は、2Qに向けては、TV向け偏光板はQ/Q横這い、TV以外の偏光板は回復、ITOは倍増へ。ただ、前年2Qを大きく超えるレベルではなく、巡航速度だと強調。LCD向けが急増。カメラノッチや異形加工が難しい話題のフォーダブル等は、まだ本格化には遠く、今期の業績計上はないようだ。また、タッチパネルに関しては、今後は形状変化もあり、インセルには戻らず、オンセルが主流になるようだ。

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東陽テクニカ3Q決算とソフトウェア(Perforce社)説明会8月1日


8116時より3Q説明会に参加、質問もした。決算についての質問はなく、小生のみがソフトウェア開発支援について複数の質問をした。前半は五味社長による決算報告、後半は小野寺取締役による、「ソフトウェア開発支援ビジネス」について、会場でソフトのデモもあり、勉強になった。

決算3Qは通常通り赤字

 1-3Qは、受注167億円、売上179億円、GP81億円、OP14億円、NP12億円。年間の売上230億円、OP13億円、NP10億円は不変、差引4Qは、売上51億円、OP赤字1億円。

 3Qは通常通り、受注49億円、売上44億円、GP20億円、OP赤字3.4億円と低水準。分野別ではIT、機械制御振動、物性エネルギー、海洋特機、ソフト開発支援は堅調だが、ナノイメージング、メディカルが悪化。なお、今回からフェアディスクロ―ジャの観点から顧客別ランキングは非開示。


Perforce社へPRQAの持ち株会社を売却

 今回、持ち分法適用会社のアイルランドPROGRAMMING RESEARCH GROUP(以下PRGL)の全株譲渡に伴い3.7億円の特別利益を計上。

これは、東陽テクニカの開発支援ツールの主要仕入先の米Perforce Software Inc.(以下Perforce 社)と英 Programming Research Ltd.(以下 PRQA 社)は、Perforce 社による PRQA 社の持株会社であるPRGL 社の発行済全株式の取得を通じた戦略的連携に合意、東陽テクニカは、Perforce 社および PRQA 社の日本市場における総代理店として両社製品の販売を行ってきた経緯から、両社の戦略的連携に合意したため。引き続き、東陽テクニカは、Perforce社の総代理店は継続。

ソフト開発支援ビジネス

 東陽テクニカの同事業は、営業+SEで、自動車やゲーム等の企業のソフトウェア開発者に、ツールを提供、サポートする。取扱いは、今回、一緒になったPerforce(ソフト構成管理、ライフサイクル管理)PRQA(ソフト静的解析)、およびイスラエルのCheckmarx(ソフト脆弱性検査)。中小中堅向けは、クラウドによるSssSで提供の方針。

 ソフトと言っても、安全第一のクルマと、エンタメのゲームという真逆なユーザーを持っているところが興味深い。前者は厳格な機能安全、後者は適切なバージョン管理が重要だそうだ。


ウォータフォールからアジャイル開発

 クルマ等は、まだまだ、ウォータフォール開発が主であり、要件定義、基本設計、詳細設計、コーディング、コードレビュー、単体テスト、結合テスト、システムテストというV字開発プロセスに沿って、Perforce社のHelixALMHansoftImaghixのソースコード解析、コードレビューではPRQAの静的解析、等を提供する。

アジャイル開発も、ゲーム向け等では、増えており、5人のチームが2週間で、どんどん開発サイクルを回していく。クルマでも、インフォテイメント等は、アジャイル開発が増えているようだ。

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TDKの1Q決算〜新セグメントに見る将来

 

73017時半からの決算説明会に参加。出席者は、植村副社長、斎藤常務、山西常務、エナジーデバイスビジネスカンパニーCEO指田氏、プレゼンは山西CFO、相変わらず満員、質疑は多数。同日、磁性関係でのモノ作りコト作り強化を目的として、戸田工業への出資、持ち分法対象となったことが発表。従来から共同開発実績。上流でプラス。https://www.tdk.co.jp/corp/ja/news_center/press/20180730_02.htm

 

ピーク更新の1Qは新セグメント

 

 業績1Qの売上3431億円、OP254億円、NP162億円。1Qとしては、過去ピーク。1Qは上ブレだが、ICT景況感の不透明感と米中摩擦もあり、年間は不変、慎重な予想ではあるようだ。

 

今回から新セグメントになり、戦略や方向性とマッチしていて、分かり易い。

 

セグメント別

 

 

 

キャパと調達対応

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京セラ1Q決算テレコン

 

73117時からテレコン開催に参加。プレゼンは谷本社長、青木CFOも質疑応答。なお、今回から、会計基準がUS方式からIFRS移行。過去も遡及され比較開示されたが、IFRSの方が、OP等が少なめの他、セグメントの事業売上や事業利益がやや少ない。Dep方法が定率から定額へ。

 

決算1Qは過去ピーク

 

 決算1Qは売上3875億円、OP371億円、事業利益364億円、税前利益555億円、NP423億円は過去最高。産機クルマ、デバイス、ドキュメントが上ブレ、半導体セラ、生活環境がソーラーで下ブレ、通信は赤字だが想定線。

 

通期計画は不変、売上1.65兆円、OP1540億円、事業利益1631億円、税前利益1900億円、NP1340億円。

 

通信とソーラーが懸念

 

 相変わらず、通信とソーラーが足を引っ張る構造。

 

 全体的には、ここ数年のM&Aや、工場再編などの効果に期待したい。

 

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アンリツの1Q決算説明会〜5G向け新製品

 

73110時半から開催の決算説明会に参加、質問もした。橋本氏の会長就任、濱田氏の社長就任に伴ってか、今回は、業績に関しては、窪田CFO5G等に関連して、濱田氏がプレゼン。橋本会長も出席。久しぶりに好決算で、いよいよ5G離陸、質疑も多い。

 

好決算

 

 決算1Qは、受注226億円、売上210億円、OP16億円、NP17億円、米現地法人の未払い法人税の引当見直し5億円減額あり、NP高め。包括利益も為替益や株高でプラス4億円。

 

T&Mが牽引、q/qでもy/yでも増益。T&Mは、米向けに、チップセットメーカーの5G開発用途が離陸、A-LTEも好調で、T&M1Q内訳は、モバイル4556%、米は2333%へ。

 

通期は不変だが、期待できそう。売上920億円、OP66億円、NP50億円。

 

5G初期需要離陸

 

 濱田社長によるプレゼンでは、いよいよ5G向け初期需要離陸が確認、期待できそう。201712月から20186月にかけ、3GPPで、Rel15の標準化が決まり、チップテスト向け開発が本格化。2018年下期から2019年にかけ、チップセットを使った端末開発が始まる。

 

5G向けMTA8000AOTAチャンバー付きを上市 

 今回、アンリツは、5G向けチップセット・端末の開発テスタ「MT8000A」出荷を開始、既に1Qに売上を計上、評判も上々のようだ。

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フルヤ金属の本決算と次の50年

 

 8811時からの決算説明会に参加、質問もした。2018822日は、ちょうど創業50周年の節目であり、次の50年、100年の大計が期待される。プレゼンは、古屋社長、質疑は大石CFOも対応。なお、今期から連結決算となり、米韓の子会社が連結されたが、これまでの単独と大きな差はない。また、これまで、「その他」セグメントが、「ケミカル」となった。

 

50周年を飾る上ブレ決算

 

 20186月期決算は、売上212億円、GP56億円、OP34億円、NP24億円と上ブレ。最高益には、なお及ばないが、大底をうち、過去最高水準のGP70億円、OP50億円も視野に入ってきた。50周年にふさわしい結果を出したといえよう。

増益続く

 

 20196月期は、売上229億円、GP60億円、OP36.6億円、NP25.4億円と先行投資をこなして、増収増益。

 

先行投資

 フル操業を背景に、CAPEX18億円(これまでは数億円)HDD向け中心に需要が強いルテニウム精製能力を強化、つくば工場ケミカルを土浦へ集約、あいたスペースでSTT-RAMも強化。

 

 

FT-Eco触媒

 低温で有害なエチレン物質を分解可能であり、コンビニ向け、包装資材メーカー向け、物流ロジスティクス向けなどが市場拡大で、桁違いの市場になるだろう。

 

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アルバックの決算説明会と新中計

 

8910-11時で開催の決算説明会に参加し質問もした。司会は梅田氏、プレゼンは岩下社長、質疑対応は、R&Dの齋藤氏、財務の青木氏。新中計の2022年の目標数値も発表、質問は足元のFPD動向と中計についての件が多かった。いつも乍ら配布される技術マガジンが大変参考になる。

 

業績は3年連続最高益

 

業績2018/6月期は、受注26502430億円、売上25502493億円、OP355353億円、NP359億円。3年連続でピーク更新。

 

受注は4QTV向け大型LCD装置受注の期ズレがあり、下ブレだが、既に1Qに落札。NPが多いが繰延税金資産計上59億円あり税金負担が少なかったため。B/S上の繰延税金資産増額は無いが負債側と相殺表示が理由。なお、B/Sで有価証券が大幅増は上場した株式を時価評価にしたため。

 

今期業績は、受注2600億円、売上2550億円、OP365億円、NP255億円。これは、2019年度の前中計の数字(売上2500億円、OP350億円)を前倒し達成。

 

中計では数十年に一度の機会をキャッチ

 

 中計に際し、業界環境について、5G3要素の中で、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、多数のセンサーが広がる。その中で、FPDや半導体だけでなく、電子部品や、材料など広範な分野で、製造装置が不可欠になるというのは、その通りだろう。

 

成長戦略では、①メモリだけでなく、ロジック、②5G向け中心にセンサーなど電子部品、③大型TVOLED、④コンポーネント事業など、⑤中国、である。スマホも、現在は成長鈍化だが、ディスプレイでは、フォーダブルやローラブルもあり、多様な成長がある。

 

 2022年度の目標は、売上3000億円、OPM16%。内訳は不変だが、グラフでは、FPD1000億円強は前回並み、前回に比べ、半導体やコンポーネントが大きく上方修正されてそう。

 

R&Dの実態を業界で横比較できる開示を

 

 こうした成長、イノベーションに向けて重要なのは、R&Dだが、同社では、2017年度83億円、2018年度97億円、売上比4-5%である。これは、SPE業界で、TELAMTで開示されている10%以上と比べて引く過ぎ、違和感があるが定義が異なるようだ。R&D数字を開示している以上は、外部から同類の基準で判断できるように、せめて同一業界では統一してほしい。

 

FPD受注

 

 FPD受注/売上は、2017年度930/1085億円、2018年度計画1060/1050億円だが、OLED関係は、それぞれ40%程度の模様。

 

前回は50%との可能性も示唆されていたが、スマホ不振もあり、やや調整か。ただ、中期ではフォーダブル等、自信はあるが、材料開発などが鍵だと示唆。

 

半導体受注

 韓国向けではNANDなどのプッシュアウトもあり、やや弱い。DRAMも前倒しがあった昨年ほどではない。しかし。PcRAMなどが予想外に強く、カバーするだろう。

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ジャパンディスプレイ(JDI)1Q決算〜月崎社長デビュー

 

8817-18時開催のジャパンディスプレイ(JDI)1Q決算説明会に参加、質問もした。プレゼンは、業績説明が大島CFO、今期の重点取組みが新社長の月崎COO、質疑は適宜、両人が対応。投資家アナリスト説明会には、月崎氏は初登場で、冒頭、丁寧な挨拶があった。やや固い印象だが、真面目な技術屋の雰囲気であり、質疑も丁寧・正直な対応であり、好感は持てた。JDIのこれまでの大きな問題にはINCJINCJ派遣のトップによる介入があり、今こそ、現場出身のトップに任せるべきだろう。

 

決算1Q赤字縮小は健闘だが在庫増

 

決算は1Q売上1033億円とQ/Q32%減ながら、OP赤字98億円と4Q赤字429億円から削減は健闘だろう。普通に考えれば、赤字200億円前後だろう、固定費削減110億円は想定だが在庫増61億円やSGA39億円が効いた。

 

在庫回転月数は、2Qへの作りだめだということで、4Q33日から61日へ拡大、つれてFCFも赤字254億円(社内管理では前受金を長期負債と認識するため赤字181億円)だった。なお、OP外で為替差益23億円、JOLEDの持分変動益119億円がある。

 

2Qにかけては、北米や中国等向けに、フルアクティブが寄与、Q/Qで売上4050%増、赤字は大幅縮小との見方。売上1500億円、OP赤字大幅減というが、Q/Qで限界利益増100億円、固定費削減はQ/Qでは少なく、在庫平常化が50億円前後だとすると、赤字は数十億円となる。フルアクティブのユーザーMIXと、2Qに回転月数では減らすが絶対数では増える在庫の適正水準がどうなるかで変わるだろう。

 

2018年度は、下期がハードル高い

 

 2018年度については、売上1020%増、Opm2-3%と不変。単純計算すると、売上78908610億円、OP160260億円となる。フルアクティブ液晶がスマホ向けに寄与、車載向けも1000億円超えが前提。

 

好調なフルアクティブ液晶

 

 JDIが開発したフルアクティブ液晶は、スマホだけでなく、車載も含め、複数の会社から高く評価され、引き合いは強く、2工場とも、フル稼働。

 

縦型蒸着

 

 茂原で開発中の縦型蒸着は、試作量産にはメドがつき、本格量産に向けた準備段階のようだ。

 

JOLEDとの関係

 出資比率が下がる一方で、これからのアプリケーションが、中型パネル分野と競合しそうだが、棲み分けとシナジーをどう考えるべきかについては、同じカテゴリー(ppiとサイズ)でも、ユーザーも使い分けがあり、両方持っていることが重要だそうだ。また、現状、JOLED向けにバックプレーンは、JDIが供給、RGBの発光層は、大気中で印刷方式だが、それ以外は、真空中であり、JDIとの一貫ラインだそうだ。

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東芝1Q決算〜新生で初

 

88日決算説明会、今回は、時間の関係で、投資家アナリストの部でなく、マスコミの部に参加した。プレゼンは、いつも通り、平田CFO他。メモリは売却だが、その内容やいりくりも分かり易く開示。新生となって初の決算。11月に中計NEXTプランを発表。

 

不思議な1Q決算

 

 1Q業績は、売上8423億円、OP7億円、税前利益284億円、NP10167億円と、メモリ売却で不思議な数字の決算。いちおうインライン。1Q水準が低いが、これが本来だとも言える。下期にかけて平常化しよう。なお、年間の売上3.6兆円、OP700億円、NP1.07兆円は不変。

 

 セグメント別では、火力などエネルギー、ストレージ・デバイスが不振、インフラ、ICT等が頑張る。デバイスが、システムLSIが厳しいせいか、予想以上に悪い印象。

 

メモリ影響

 

メモリは6月より40%強を持ち分法だが、この6月分のみ122億円を反映、非継続で反映されていない4-5月の869億円(Opm48%)、平均435億円より少ないが、4-5月はDepなし等を考慮すると、妥当なところか。

 

リスクファクター

 

 質疑では、リスクファクターのチェックが多く、フリーポート、ニュージェンなど。もはや、それほど大きい金額、リスクはないが、会社側は、ノンコアと認識、B/Sが余裕あるうちに、多少思い切った改革をする意志のようだ。LNG価格は改善したが、なお採算以下のようだ。双方まだ様子見。

 

中計への期待

 

 11月のNEXTプランに関し、コストや人員など質明が多かったが、NA。言えることは、今、B/Sは余裕があり、会社側は、今のポートフォリオは改善すべきだとの意志はあり、タイミングも今しかないだろう。あと、コーポレートラボのあり方についても、期待したい。

 

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ニコン1Q決算

 

871645分〜1745分、久しぶりに、アーバンネット大手町ビルでの説明会が開催され、参加、質問もした。プレゼンは岡CFOの他、荻原氏、御給氏。質疑は、各セグメントに満遍ない。

 

業績は上方修正

 

 業績は1Qの売上1669億円、OP190億円、映像を中心に上ブレ。これを受け、上期、通期ともに、OP上方修正。上期は、OP250270億円、通期OP700740億円。

 

セグメント別

 

 デジカメが上方修正だが、①中国工場リストラ(土地)が少なくて済む、②レンズ交換ミックス改善、③欧米のバックオーダーで追加コスト不要、④R&D2Q繰延、など。なお、既に報道があったミラーレスは、823日に正式発表。

 

 FPDは、韓国メーカーがOLED投資延期の中で懸念だが、G6の厳しさを、TV向けが好調なG10.5で補えそう。

 

 SPEは、堅調続き、3年以内に、資本コストを上回る収益性に。このSPEの増益で、来期も、精機全体では増益維持か。

 

 産機他も好調、3D測定器売却で固定費削減に加え、ガラスが10.5Gフォトマスクや、クルマLidar用ロータリエンコーダが貢献。

 

 ヘルスケアも、赤字横這いだが、足元、オプトスなども好調であり、2年以内に黒字化メドと強調、

 

中期での期待分野はクルマやドローン(走行ロボット)

 

 ニコンは、その技術を再構成すれば、新たな成長領域が見えてくる。前述のフォトマスクのマスクライターや、レーザー技術を使った3Dプリンタ、さらに、蒸着機、また、ロータリエンコーダも、Lidarやロボットにも有効だろう。

 

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太陽誘電1Q決算

 

8616時半よりテレコン開催参加。説明者は経営企画本部長の増山氏、他に質疑等で参加は佐瀬氏、福田氏、木本氏。簡潔明瞭な説明、質問は多いが、価格戦略やキャパのアロケーションについては、新しい話であった。

 

決算1Qは上ブレ、エルナー分を織り込まず、早々と上期通期を上方修正

 

 1Qは売上596億円、OP60億円、NP56億円、為替益や助成金がOP外であり、RP水準も高い。計画比で、OPは上ブレ。なお、エルナーは、B/Sのみ連結織り込み、P/Lは、2Q決算で織り込む。エルナーの決算は810日。P/L上は操業度効果に、棚卸増加とミックス改善が含まれている。棚卸増は30億円だが、エルナーや為替分は含まず、実態ベース。需要の盛り上がりを受け、積み増し。

 

 上期は、1Q実績を踏まえ、売上12501300億円、OP95130億円、NP5090億円。

 

通期は、上期分のみ加算、売上25502600億円、OP200245億円、NP130170億円と、上方修正。CAPEX年間430億円は不変、Dep270億円、R&D130億円も同様。

 

 売上50億円上方修正は、35億円程度が円安効果、15億円が実力だが、MLCC貢献、産機やクルマが中心のようだ。

 

また、差引き、2QOP70億円であり、1Q10億円のみ増益だが、これは、プラス要因として、ミックス・操業度で60億円、原価改善5億円、為替7億円など、他方、マイナス要因として、価格低下7億円(これまでより少なめ)、固定費増20億円、3Qに向け在庫減が30億円など。

 

コンデンサ不足が続く

 

 業界環境では、クルマ産機向けは引き続き好調。MLCCは更にタイトが続き、フル稼働で、過去最高。

 

キャパ対応と価格戦略

 

 課題は、キャパ増だが、IoT活用の生産性改善強化、アロケーションが重要となるが、産機やクルマはサイズが大きく前工程を食うため、それほど表面上の数量は増えない。

 

2020年度の売上3000億円、OP300億円は前倒し達成か

 

 中計である2020年度の業績目標は、コンデンサのタイト感が続く中で、キャパ増や値上げ、エルナー連結を考慮すると、2018年度にも達成可能な情勢だ。

 

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ヒロセ電機の1Q決算

 

8610時半より決算説明会に参加、質問もした。1年ぶりの参加だが、投資家アナリストの便を考えて、説明会は決算発表83日から近く、場所も品川から東京駅そば、プレゼンは、須崎氏による業績説明の後、福本氏による補足の後、質疑。なお、今回からIFRSだが、福本氏が、短信を使って、IFRS移行での変更点や留意点を解説したのは良かった。

 

1Qはやや弱め、計画は不変

 

2018年度1Q決算は受注329億円、売上285億円、OP50億円、NP41億円。受注は想定線だが、売上以下がやや弱め、売上で15億円、OP10億円強、下ブレの印象。特に、Opm17%は、利益に拘る同社としては低い。ただ、受注が想定通りであり、2Q以降の挽回もあり、上期の売上630億円、OP130億円、NP95億円、通期の売上1300億円、OP273億円、NP200億円は不変。ただ、差引2Qの売上345億円、OP80億円となる。売上は、1Qが月95億円に対し、115億円は容易ではない。

 

スマホが弱く、クルマ、産機は堅調

 

2017年度平均を100とした全体の受注指数では、20174Q88を底に、この1Q104までアップ、ただ、売上では、20172Q-3Q104に対し、4Q981Q81と減速。

 

価格動向については、堅調だが、クルマは競争厳しく、スマホは微妙のようだ。

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半導体市場の見方〜2018夏

 

足元のDRAMNANDのスポット下落、日立ハイテクの慎重コメントで、半導体市況に関する見方が揺れている。その後、TELやスクリーン決算等では、SPE市場には強気見通しだ。また、サムスンの2Q決算でも、下記のように、下期の見通しはネガティブではない。

 

他方、日経報道では、DRAMでもNANDでも、スマホに加え、データセンターやマイニング需要も一服、商社でもDRAM値下げ決着という。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33443940W8A720C1QM8000/

 半導体の世界統計WSTSは、65日に春季予想発表、4000億ドルを突破した2017年の22%増から、2018年は12%増と成長率は鈍化、2019年は4%増と鈍化。

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ポートフォリオにおける金融・不動産等事業の意味と位置づけ

 

アナリストとして総合電機を担当、コングロマリット・ディスカウントを議論してから、ポートフォリオや多角化に関心をもっていたが、その後、ファンドマネジャーとして、日本株を実際に運用して、ポートフォリオというものを、いわば、理論と実際の両面で、深く考察してきた。その成果として、ポートフォリオの可否を定量的にも評価できる方法論が、経営重心®であり、50社以外のケーススタディから、その有効性も検証している。

 

 昨今の東芝問題も、いろいろ論点はあるが、突き詰めると、真因は、ポートフォリオの失敗であり、日立の回復、三菱重工の問題、GEなど、多くのコングロマリットの業績動向や、事業のカーブアウトも、ポートフォリオの歪みが背景にある。https://www.nikkei.com/article/DGXKZO23555320W7A111C1KE8000/

 

経営重心®での金融業の効果

 

 

 

最終ターゲットは金融帝国か

 

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再び、マクロ技術学の提唱と技術予測について

 

もう今から30年前、NRIに入った頃に、マクロ技術学なるものを提唱していた。経済学のマクロとミクロ(いわゆるミクロ経済学ではなく、ミクロな産業企業動向)のように、技術も、個々の技術の詳細はさておき、全体のトレンドをマクロに見るというものである。https://ci.nii.ac.jp/naid/40001418470

 

マクロ経済に倣う

 

 マクロ経済が、金利や成長率など、シンプルな数字で語られ、予測分析できるように、技術の全体像を、同様に分析したりできないかというアイデアだ。技術は、多くの自然科学と工学の分野から、成り立っており、それぞれの分野が複雑に連携しており、それをマッピングすることが必須だ。また、それに際して、MKSだけでなく、多様な単位系があり、それを統合し演算しなければならない。

 

技術予測

 

 この枠組みを構築しようとしていたことが、技術予測の精度アップにもつながったかもしれない。異なる技術には、異なるストーリーがあり、実用化に至るプロセスも多様だ。しかし、それらを統合し、共通点を見出すことは可能であり、まさにMOTのテーマでもある。

 

 これまで、エレクトロニクスやITが中心だが、多くの分野で技術予測や市場予測を当ててきた。自身が予測を試みる前に、まず調べたのが過去の未来予測等の成否だ。https://ci.nii.ac.jp/naid/40001418412

 

予測が当たったのは、実用化が成功した場合は、まず、当事者たる技術者達の努力の賜物であり、その上で、予測の成否は、幸運や偶然の積み重ねかもしれないし、直感が強いだけかもしれない。

 

R&Dの現場で、日々、いろいろな予想外の出来事が起きる中で苦心惨憺、実用化に邁進してきた技術者からは、外部の人間が、予測があたるのは、不思議に見え、それは、偶然だと言いたいだろう。もちろん、技術をミクロな現場で、短期の時間軸で、当てるには、現場に居ないと難しいだろう。

 

一方で、当事者も含め、多くの「識者」や権威が予測を外す中で、外部の人間が、予測を当てるのは、不思議でもあろうし、それが重なると、何かが背景にあるのだと思うだろう。技術予測や市場予測、市況、業績予測を当ててきたことが、アナリストとして、勝ち残ってきた理由でもある。

 

細かい話は別にして、技術や市場規模予測を中期で当てるには、現場よりも、少し遠くから、岡目八目で、ズームイン・ズームアウトで、観察し、たまに、介入しながら、の方がよく見える場合もあるからだ。もっとはっきり言えば、技術を実現する人間と、その未来の成否を当てる人間は別だということだ。

 

万有引力の法則とモデル化と近似のセンス

 

 人類は、万有引力の法則を見つけ、その後に、統計力学、流体力学、電磁気学、量子力学などなどを手にした。それゆえ、まず、球を落とす、放物線を描き、落下点が予測でき、ほぼ的中するが、もし、先に、多くの学問を手にして、精密にシミュレーションをしたら、どうだろうか。

 

実際、球を落とす場合、球の形状や密度、固有振動数、表面粗さ、空気抵抗、温度、湿度、気圧、回転数、場合によっては、電磁波や超音波などなど、あらゆる要素を入れなければいけない。しかし、体験的、「常識」的に、暗黙の了解で、これらの多くの要素は無視され、球は点だと近似され、空気も何もないと仮定され、そういう状況をモデル化していいことを知っている。

 

このモデル化や近似がセンスであり、現実の世界への適用に際し、それを誤ると結果も大きく異なる。経済学や金融工学も、こうした、物理学における近似やモデル化を真似て、大きな前提として、人間は合理的であり、全ては正規分布をするとしている。

 

近似のセンス

 

 いわば、これまで技術予測や市場予測では、諸々の複雑な要素を取捨し、近似・モデル化し、予測を行ったのである。その「万有引力の法則」あるいは、幾何光学等に、相当するのが、マクロ技術学の体系なのである。近すぎず、遠すぎず、その技術が実用化に至る本質は何かを探り、それに基づいて、予測あるいは、仮説検証を繰り返す。

 

数多くの観察による帰納的推定

 

万有引力の法則が、精密な観察から、帰納的に算出されたように、このマクロ技術学のアプローチも、帰納的であり、数多くの観察から、数式なりマッピングなりを当てはめる。その例が、経営重心®に関わる色々の方法論や仮説であり、先日も明らかにした、「R&D、割引率、成長率、収益率(OpmROE)に関する恒等式命題」である。実際のアイデアも仮説も、多くは、演繹的ではなく、現場、現実、現物を、実感し観察することで、思い浮かぶ場合が多い。それを論文にまとめる場合は、さもロジカルに、演繹的に記述するにせよ。

 

こうしたマクロ技術学的アプローチが、科学かアートか不明だが、実用的な方法論の一つであり、体系化は可能であろう。それこそが、MOTが目指す道の一つではないか。

 

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スマホ人は、何故、予習をせず、相手を見下すのか

 

社会人になってから、企業訪問など、初めての人に会う場合は、必ず、その会社や人物について予習するし、どれだけの知識や見識があるのだろうか、と相手を畏れる。

 

予習

 

最近は、ネットの普及で、かなりのことはわかり、既に、知人が知り合いの場合は、可能な範囲で、聞いて、自分なりに、相手の企業や人物像につき、ある程度の仮説をたて、それを検証しながら、また、どんなことを話題にしようかと脳内実験をしながら、面談する。恐る恐る、相手を高レベルに設定し、それほど詳しくない場合は、徐々に、レベルを下げていき、チューニングする。これは、アナリストだけでなく、自分の周囲トップマネジメントでは、そうであり、これが社会常識だと思っていた。

 

 昨年、4月から大学で教えるようになり、教授の方々と行動を共にし、また、社会人学生と付き合うことが多くなって、こうした「予習」が常識でないと、驚いた。多くの教員が、企業訪問に際し、まず予習はしない上、トップが来校しても、予習せずに、社名からくるイメージだけで質問が出て当惑した。

 

学生も、同様で、予習せず、知ったかぶりをし、私であれ、ゲストであれ、何故か相手を見下し、そのくせ、こちら側が、低姿勢でなければ、上から目線だと批判する。当てると、慌てて、スマホで検索し、適当に答える。数回、突っ込むと、まずギブアップだ。

 

 大学関係だけでない。同年代の知り合い同士で、社長を紹介する際も、相手の会社を予習せず、従って、失礼な質問をしたり、明らかに相手が知っていることを、偉そうに、話すような場合も多い。

 

スマホ依存認識仮説

 

 こうした傾向から得た、一つの粗削りな仮説は、スマホの影響だ。スマホが身近に常にあるため、その場で調べても間に合う。また、それ故に、予習もしなくなる。自分が知らないことで恥をかかないし、スマホの巨大な知識、バズワードがあるため、何を議論したりしても、それは××と関連性があるバズワードで終わり、分かったつもりになる。

 

それゆえ、皆が、知ったかぶり、人の知恵も自分の知恵、ネットの知恵の総和が自分の意見になり、相手を見下すのではないだろうか。

 

タクシードライバー

 

ちょっと似た傾向は、タクシー運転手がスマホやナビ操作は上手くなったが、反面、道は分からなくなり、ビル名も覚えないように感じる。これまで、優れた運転手は、脳にマップがあり、それを視覚から入る外部景色と、ナビのマップをマッチングさせていたように思えるが、だんだん、脳の空間から、スマホの空間に、認識能力が移っており、場所が分からなくても当然という雰囲気になってきた。

 

必需品のスマホの代わりに失うもの

 

 スマホが普及し10年、スマホのインターフェイスを前提に、世界が成立しつつあるが、20年後、30年後、それは異なるインターフェイスになるかも知れない。それまでは、どんどん、脳の認識マップが、スマホの後ろにあるクラウド空間にシフトし、人類の認識のあり方も変わっていくことだろう。そこで、劣化する場合も多いのだろう。人類が、いろいろな知恵や武器をもった代償で、野生の獣の本能などは劣化した。人類は、もはや服なしには、また多くの者は、眼鏡等無しには生きられないが、まさに、スマホ無しには生きられなくなっているだろう。そこで失うのは、勘なのか、礼儀なのか。

 

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シャープ1Q決算と大再編(矢板と八尾の家電生産撤退)

 

参加はできなかったが、731日決算発表、戴社長も登場し、中計OP1500億円達成へ自信を見せたようだ。また、83日に、白物家電の国内自社生産撤退を発表したので、併せてコメントしたい。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33746660S8A800C1MM8000/

 

決算1Qはディスプレイ健闘

 

決算1Qは、売上5338億円、OP248億円と増収増益。ホーム、ビジネスは好調、ディスプレイが、y/yでもq/qでも増益であり、大健闘だろう。ディスプレイはOP105億円だが、うちTV20%、中小型80%、大型はトントンのようだ。液晶TVの在庫増と価格低下や、液晶パネル値下がりを懸念していたが、踏ん張った。ただ、在庫が、会社全体で、1.42ヶ月と大きく増加、連結子会社化と新製品在庫積みというが注視。IoTは、y/y減益ながら、q/qでは赤字から脱す。

 

 CAPEXは年間1200億円(ディスプレイ400億円)計画だが、1Q113億円(ディスプレイ44億円)と少なく、Depも年間880億円、1Q171億円。R&D1Q304億円と多い。

 

 なお、2000億円規模公募増資によるA種優先株取得の中止に関しては、手元現預金により、2回に分け、2019年度末まで、早期に実行と銀行団と協議中と説明されたようだ。

 

家電の国内生産再編へ

 国内生産撤退については、矢板のTVに関しては、亀山や堺もあり、当然だろうが、やや意外だったのが、八尾の白物家電である。

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三菱電機の1Q決算(7月30日)

 

73016時開催の決算説明会参加。プレゼンは皮籠石CFO、ここのところ、FA系やSPE系の景況感変化もあり、注目度高く、参加者多数。質疑も景況感中心。なお、主要セグメント連結受注が新開示。

 

 1Q業績は、売上1.05兆円は増収ながら、OP615億円以下は減益。素材アップ年間150億円(エアコンが60%)前提の中、1Q50億円は想定線、足元の銅価格下落はあるが、予約済もある。クルマ系の先行開発はやや多め、エアコン海外工場(トルコ、タイ)の立上げも影響か。年間計画の売上4.5兆円、OP3150億円は不変。

 

主要セグメント別受注/売上は、重電が受注2759億円(7%)/売上2673億円(横這い)、産メカが受注3566億円(1%)/3609億円(3%)、情報通信が受注715億円(4%)/売上797億円(11%)、電子デバイスが受注501億円(横這い)/売上514億円(7%)B/Bレシオは重電のみプラス。

なお、日経報道で、イージス艦向け日米で次世代レーダー開発検討のようだが、素子を従来のガリヒ素から窒化ガリウムを使う技術(三菱電機)に注目という。

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富士通1Q決算〜再編仕上げ近いか

 

富士通1Q決算説明会(26)には参加できなかったが、HPで視聴、また、30日のスモールミーティングで質問確認した。決算自体も、退職年金給付制度変更影響919億円に加え、PC事業譲渡益などイレギュラー要素が多いが、今回は、それよりも、決算説明会質疑で塚野CFOがグループ会社再編について、踏み込んだ回答をしたことが注目される。

 

イレギュラーな1Q決算ととりあえず不変の通期

 

 1Q業績は売上8676億円、OP795億円、NP727億円。減収のうち、480億円減がユビキタス事業再編、OP794億円増は、年金関係919億円、事業譲渡125億円減、など。特殊要因を除くと、ネットワークとLSIが不振で、売上70億円減、OP48億円減であり、1QOPはゼロ前後といえる。

 

 コア事業では、ソリューションSIは、国内の製造流通業向け堅調、インフラサービスは国内横這い、海外は低調、ネットワークは内外厳しく赤字拡大。

 

 通期は、不変で、売上3.1兆円、OP1400億円だが、これは、今回の年金関係やPC事業譲渡、さらに、三重工場売却は織り込んでおらず(損益はneg、キャッシュフローは500億円近いプラスの模様)、また、同日、発表された富士通コンポーネントも含め、グループ会社の再編や、これからリストラもありそうで、いずれ、修正されよう。

 

グループ会社再編

 

 グループ会社では、富士通ゼネラル、新光電気、FDKなどの名前があがり、塚野CFOの回答では、コアではないが、売却については、タイミングを慎重に見極めているようだ。

 

デバイスはどうなる

 

さらに、今回の決定で、富士通の半導体は、三重12φはUMCへ、会津の8φはオンセミゆえ、残るのは会津6φだけだ。ソシオネクストも、もともとは上場もあり、連結はされない。

 

赤字の高R&Dのネットワーク位置づけ

 

 ハード系では、ネットワーク事業も赤字続きが課題だが、かつては世界シェアも高かった光伝送のフォトニクスが厳しい。国内中心のモバイル基地局系も5G時代を迎えるが、むしろ厳しい。

 

全社消去が1000億円規模もある

 

 セグメント別OPの中で、引き続き、全社消去が1000億円もあるのは開示上も問題だろう

 

データセンター投資

 

 また、Capex1000億円、Dep1000億円という状況が続くが、デバイス350億円のうち、LSI100億円は無くなり、新光などを外せば、残りも消え、残るはテクノロジーソリューション520億円だ。

 

その大半の300400億円はデータセンター投資、その半分は電力系、半分はサーバー等である。このうち、内部からは50億円程度で多くはないようだ。

 

ビジネスモデル変革の末に残るもの

 ここ数年続け、富士通のポートフォリオは大きく変わっており、どんどん、ソフトサービス化が進んでいる。

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オムロン1Q決算に見る景況変化と中長期戦略バランス

 

 726日開催の1Q決算説明会には参加できなかったが、HPで視聴、その後のスモールミーティングに参加、質疑もした。オムロンの説明会は、決算と中期的なトピックスで構成されるが、今回は、日戸CFOによる持続的な企業価値向上についてであった。ただ、説明会でも、スモールミーティングでも、景気変調と足元の業績についての質問が多かった。

 

業績は微妙

 

 1Qは、売上2098億円、GP877億円と増収増益だが、OP196億円は減益だった。SGASE増強やIT投資が1Qに集中し多く、R&Dも増加したため。

 

具体的には、オートメーションセンターを、この47月に9拠点増強し、26拠点に拡充、R&Dもロボティックス強化。セグメント別には、IABの減益が目立つが、これも、SE増強等がIAB中心であることによる。BLは引き続き赤字。

 

 通期は、米中摩擦など懸念はあり、1Qもスマホ関連は確かに悪く、足元の警戒感はあるが、想定内であり、不変、売上9000億円、OP930億円を維持。機械統計でPLCは悪化であり、懸念されるが、オムロンでは、堅調のようであり、全体的に斑模様との認識。

 

IABは斑模様だが悪くはない

 

 スモールミーティングで確認すると、IABの注力4業界、デジタル、クルマ、インフラ、食品で、デジタルはスマホが厳しくマイナスだが、それ以外は二桁増加。

 

クルマが堅調なのは、既存ではなく、EV化やADAS関連のようだ。

 

中期戦略

 

 今回、中期戦略として、R&D売上比率を7,5%に向上させる。IABHCBが中心。AIなど全社的なコーポレートラボは、売上比1%

 

ポートフォリオ改善

 今回、8月にIABの中で、レーザー加工部門をTOWAへの売却が開示されたが、これは、①コアとの距離感、②ROICによる判断とした。

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祭りの終わりに備え、出口を模索か

 

金融緩和、AIIoTADASなど技術革新、人手不足備えた自動化、データ駆動経済による半導体メモリ投資下でのスーパーサイクル、その中でのM&Aブームなど、ここ数年続いてきた好景気が偏重をきたしているのではないか、との懸念が出てきた。背景は、利上げなど金融出口戦略の兆し、米中貿易摩擦、幾つかの統計での変調だ。国内では、2020年のオリンピック後の反動減、ポストクロダノミクスの金融政策変更などは、2019年の新しい元号への移行もあり、状況的には、昭和から平成にかけてのバブル崩壊に似ている。

 

既に、事実としては、昨年まで堅調だったFPDは、TV向けもスマホ向けも、LCDOLED共に価格下落が続き、DRAMNANDもスポット価格は下落している。TSMC月次も軟化、ウェハーも12φは在庫が増え始めている

 

機械統計でも、FA関連のPLC6月もマイナスであった。部品も、MLCCは、なお逼迫だが、リニアガイド等は一時期ほどではないようだ。

 

決算1Qも、業績下方修正はないが、装置業界では、半導体、FPDとも、韓国中心に延期が出ており、FA関連の説明会では、オムロンや三菱電機など警戒モードに入ったとのコメントが増えてきた。

 

QコムのNXP買収中止も、米中摩擦はあるが、それだけではないだろう。その前に中止となったブロードコムによるQコム買収中止もある。2014年頃から始まった半導体業界の大規模買収も、サイクルの終焉、金利上昇などを見越した「祭りの終わり」ではないだろうか。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33561110Q8A730C1MM0000/?nf=1

 

 少なくとも、経営者や投資家のマインドが、出口を模索し始めたことは間違いないのではないか。こうした懸念を払拭する強い材料が出てくればいいが、それが無ければ、夏の終わりには、一層、警戒感が強まり、2Q決算発表は、下方修正が出始め、それは、終わりの始まりになるかもしれない。

 

 

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日立の1Q決算説明会参加

 

1Q決算説明会が727日、本社で開催、西山CFOがプレゼン、質疑は財務やIRも対応。日立の説明会は、IRデーや中計、R&Dなどは出席していたが、決算そのものは久しぶりだ。

 

 改めて、決算内容が、殆どのセグメントで、事業譲渡、買収などが絡んでおり、ハードからクラウド関連が多い。また、日立のようなグローバル大企業になると、だんだん、ファンド的になってくることを感じた。質疑内容も、かつてのようなセグメント別の詳細数字の確認は減ってきた。その中で、質疑が集中したのは、以下の3点であった。日立は、長サイクル小ボリュームの経営重心にシフト、業績は改善したが、長期の不確実性は高まる。なおポートフォリオ改革は続く。

 

UK原子力ホライゾン

 

 IRデー前後に開示された発表移行の進捗状況や、民間企業としての、出資範囲(オフバランス化)、リターン、その前提としての買取り価格条件(市価の1.5倍?)、はどうか、また、報道にあった総建設コストが3兆円?、EXITコスト2700億円?、その中身等の確認。

 

三菱重工との関係や南アフリカのプロジェクト

 

 南アフリカのプロジェクトの7700億円請求や、仲裁動向に関しては、ノーコメント。

 

クルマの遅れ

 今回、クルマ関係は全体的にも弱そうだが、日立も、1Q下ブレ。

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日本電産(Nidec)の1Q決算説明会7月25日参加

 

日本電産の1Q決算説明会が725日に開催され参加した。プレゼンは、いつも通り、永守会長CEO、佐藤CFOIR永安氏、新社長は出席せず。今回から、車載と、家電等が別セグメントとなった他、キャパに関して説明があった。永守節はいつも通り、質疑も、車載やキャパに関するものが多かった。

 

業績上方修正

 

 2018年度1Q決算は売上3838億円、OP466億円と堅調、上期を売上75007750億円、OP900950億円、通期は上期の上方修正分だけ加算され、売上1.5751.6兆円、OP19001950億円。また、HDDについて、市場もNidec分も、若干、上方修正された、

 

 中期目標である2020年度の売上2兆円(M&A5000億円含む)OPM15%、うち車載7000億円〜1兆円、などは順調そうだ。

 

セグメント新開示

 

注目の新開示の車載は、売上772億円、OP109億円(14%)、家電商業産業は、売上1386億円、OP140億円(10%)、精密小型がOP165億円(15.5%)ゆえ、車載は精密小型部門に匹敵する収益性だ。遡って、2016年度1Qに車載は10%超え。

 

キャパ対応でCAPEX1500億円へ

 

 車載は、旺盛な需要に対応、中国平湖工業区に、EVPHEV用トラクションモーター専用工場(鋳造、切削、スタンピング・プレス、射出成型など垂直統合一気通貫コンセプト)を建設中、キャパを現状の数十万台から、2019年に200万台超え、2020年に700万台へ。

 

R&DM&A

 

R&Dは、これまで、500億円規模から、600億円を突破する。2017年度は、554億円、全社共通の知中央モーター基礎研究所や生産技術研究所などが67億円、HDDと車載など本体が208億円など。車載関係という意味では、売上高R&D4%とやや小さい。

 

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日立ハイテク1Q決算テレコン〜NAND投資延伸か

 

2417時よりテレコン、通常通り、宇野CFOによるプレゼン、質疑は多数、SPE動向に関するものが多かった。

 

決算動向

 

 1Q決算は、売上1730億円、OP163億円、EBIT160億円、SPEは韓国メーカーのNAND延伸で下ブレ、科学医用は上ブレ、アジアが好調。1Hは、売上3700億円、OP/EBIT310億円は不変。セグメント別GPは、科学医用35%SPE52%、産業18%、材料7%。通期見通しも不変。セグメント別も、NANDMPU10nmの延伸はあるが、DRAMは強い等、カバー。

 

SPE市況見通し

 

 SPE市況は、もともと、2018年度は、横這い予想だったが、2019年に見ていた調整が早まるとコメント。工場稼働率もやや低下、ただ、リニアガイドなど機械部品は不足、手当は問題ない。

 

 1Qから2Qにかけ、アプリ別では、変化が大きい

 

 既に、以前から指摘している通り、先行性があるFPDは既に下落、その次にくるNANDDRAMも下落。スマホ不振は当然だが、データセンターも、①利上げや米中摩擦等マクロ景気不安、②価格高止まりによる価格弾性効果がない、等のリスクも大きい。

 

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アカデミック(経営学)の研究手法とイノベーションモデル

 

経営学で取り上げられている最近の研究テーマにも、リカーリング型ビジネス、オープンイノベーション、アントレプレナーシップ、アジャイル開発、AI、ビッグデータなどがある。社会科学では、これまでも、統計学の知見を取り入れているが、基本は、母集団を正規分布として仮定してきた。最近は、AIによる分析やビッグデータ解析も増えてきている。

 

 他方、まだ、経営戦略などの分析は、①先行研究やマスコミ記事からの引用、②ヒヤリング、③アンケート調査が多い。

 

アンケート調査も、ヒヤリングの代わりに、Nは多くないが、経営者や専門家に書面で問うものと、意識調査など一般大衆に聞くNが多いものがある。このアンケート調査は、継続的に行われるものも多いが、それは後者であり、前者は、優良企業の分析など、あるタイミングで時期を限定して行われる場合が多い。

 

ここでは、研究手法に関して、上記のリカーリング型、オープンイノベーション、アジャイル開発との関連について、論考したい。

 

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経営と組織と戦略と製品・技術が複雑に連結する

 

日本の製造業に関して、「製品技術はいいが、商売が下手だ」「会社は三流、技術は一流」などと、よく聞かれたものだった。いわば、製品の良し悪しと、企業の戦略やブランドは別であり、分離可能であった。製品も、ハードの売り切りが多く、一物一価、数量も明確であり、コスト分析が容易であった。

 

 これが、クラウド上で、ソフトやパッケージが提供され、その価格も、契約により、タイミングと顧客次第で、複雑化されると、コスト分析が難しくなる。そこでは、企業と製品のブランドは一体化し、製品や商品と戦略、ビジネスモデルが不可分になる。コストの配分も、タイミングをどう見るのか、過去の減損なのか、未来への先行投資かが曖昧になる。常時、新製品が開発され、常時、提供されてくると、1イヤールールでは切りにくい。どこまでが仕掛かりで、どこまでは完成品在庫なのか。さらに、その事業の時価を将来CFから現在価値に割り引くとしても、一層困難になる。

 

 もちろん、売上は契約数と契約単価、コストは人件費等だが、問題は、B/Sであろう。リカーリング型ビジネスと時価会計が、B/S分析を一層、見えにくくしている。

 

 

イノベーションモデルに関する認識の差

 

 なお、SSISの向氏は、イノベーションモデルとR&D計上の仕方の日米差に関し、興味深い指摘をされている。まだリニアモデル型の日本は製品・技術開発を行う研究開発部門の費用をR&D費に計上するが、米国は製品技術開発のみならずビジネスモデルのイノベーションに製造・調達・営業・管理部門を含むノンリニアモデル型のR&Dになっている。つまり、SGAおよびR&Dの費用認識に差異があるという指摘であり、これが生産性の差異ではないかという。

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サイクルは消えたか?

 

この世には、サイクルがある。天体運動である、太陽の黒点、四季、昼夜、月の満ち欠け、また、これに生物も影響を受け、ホルモンなども分泌サイクルがある。もちろん、物質にも、固有周期がある。経済でも、シリコンサイクルやクリスタルサイクル、PCやスマホの買換えサイクル、建設循環、在庫循環などの景気循環サイクル、更にイノベーションのサイクルがある。これを元に、経営重心理論では、企業にも、固有周期があると仮定をたて検証した。

 

市場側でも企業側もサイクルが消えてきた?

 

 一方、近年は、半導体もかつての3-4年のシリコンサイクルから1年以下のシーソーサイクル、最近はスーパーサイクルと言われ、サイクルは消えたようでもある。

 

 企業戦略においても、モノ売りからコト売り、リカーリング型導入で、サイクル性を消そうとし、また、クラウド化により、ソフト等は、毎日のようにバージョンアップが成される。消費者も、所有欲から、利用価値を重視するようになってきた。

 

日経新聞の「やさしい経済学」のコラムでも兵庫県立大の川上昌直教授が「広がるサブスクリプションモデル」のタイトルで先週、連載していた。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32953420T10C18A7SHE000/

 

サイクルは見えにくくなるが、どこかで残る

 

 半導体に関しては、スマホ等の民需用途からデータセンターやクルマ、産機など産業用への移行が起こっており、よりサイクルは長期化している。また、クラウドを支えるインフラは、ハードであり、必ず寿命や更新がある。製品の開発サイクルもある。そこは、ハードがあり、設計する側が、生身の人間である以上、また、サプライチェーンが物流である以上は、サイクルは消えない。

 

 企業経営では、各社がリカーリング型へ移行したいのは当然だが、それが容易なのは、プラットフォーマーであり、中規模企業では、難しい。また、必ず、契約期間というものは存在し、シェア争いもある。製品開発なども連続的にサイクル性がなく、できるわけではない。むしろ、ある期間の後でのボラティリティが増えるのではないか。

 

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富士通〜国内SIビジネスに関する事業説明会(7月9日)

 

7910時〜11時半にかけ開催の「SIビジネスの強みと展望」説明会に参加、質問もした。質疑も十分な時間があった。プレゼンはグローバルサービスインテグレーション部門シニアフェロー宮田一雄氏。常務も経験、理論家でもあるようだ。

 

事業説明会の背景

 

 富士通は、ここ数年のリストラの最終段階にあり、ハードからサービス・ソフトへポートフォリオを組み換えている。ニフティ、富士通テンに加え、PCやケータイの入れ替えもあり、先日は半導体もあった。

 

クラウド化の中で富士通SIは大丈夫か

 

 富士通が国内ITSIerでトップであり、強固な競争力を保有していることは、同意するが、問題は、それは国内という特殊性の中であり、いずれ国内もクラウドに移行、また、現在の富士通のSIの強みは海外ではスケールしないことだ。

 

ガラパゴスIT国家

 

世界のIT市場では、SI型は25%しかないが、日本では46%と多い特殊性がある。また、日本のソフト産業の国際競争力は劣位だ。

 

これまでのSI事業理解としては良かったが、質疑はクリアではなかった

 

 質疑は、K5やメタアークの生産性の寄与、ITエンジニアの高報酬支払い能力の可否や人事制度の刷新の可能性などについてであったが、十分な回答は得られなかった。

 

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第37回かわさき科学技術サロンに参加〜安西祐一郎先生による「日本のAI技術戦略と未来」

 

川崎市コンベンションホールで、71117時半-21時位に開催された、「かわさき科学技術サロン」に参加した。このサロンは、研究所が多い川崎市の周辺で活動中の研究者技術者の交流の場である。http://ks-salon.com/ 主催は川崎市と先端技術産業戦略推進機構。今回は37回目で、年3回開催され、うち1回は企業訪問。第29回目の日本電産中央モーター基礎技術研究所訪問から参加している。

 

今回は、安西裕一郎先生(独立行政法人日本学術振興会顧問・学術情報分析センター所長 同振興会前理事長)による「日本のAI技術戦略とAIの未来」である。AIに関しては、第31回の国立情報科学研究所(NII)所長、東大生産技術研究所教授の喜連川優先生による「ビッグデータのインパクト~ビッグデータはAIの食糧、IOTはビッグデータの生成源」以来。

 

17時半から川崎市長の福田紀彦氏、世話人代表で前東京理科大学長の藤嶋昭先生から挨拶、1740分より講演、質疑であった。広いホールだったが満員。その後、隣室で、立食パーティー。

 

 安西先生は、御自身がAIや認知科学の研究者であり、また、教育者、科学技術行政にも、関わっておられるが、90年代、野村総研時代に、勉強会で何度もお世話になった。当時から、鋭く切れ味が良かったが、20年以上たった今日も全く変わらなかった。

 

AI戦略を巡る背景

 

 日本のAI戦略については、2016年に内閣府で決まったの第5期科学技術基本計画がベースになっているそうだ。http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sympo1610/kichou.pdf

AIイノベーションとは

 さらに、AI人財という場合、データやプログラムの基礎を学ぶことは重要だが、それ以上に、AIで新しいビジネスを起す能力、問題発見能力がそれ以上に不可欠、その意味では、AIは宇宙開発や原子力などの巨額な予算がいる政府がやるような重い技術戦略ではなく、民間、特にベンチャーが担う軽い技術戦略という指摘は、非常に鋭く、日頃から理科大MOTの講義でも強調しており、同感である。

 

ダボス会議メンバーの予測

 

資料にある20159月のダボス会議のメンバーによる2025年技術予測(抜粋)は大変興味深かった。

 

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OKI事業戦略説明会(5月31日開催)について

 

去る53113時半〜15時半に、OKIが昨年に引き続き、事業戦略説明会を開催した。教授会と重なり参加はできなかったが、HPで視聴できた(質疑はサマリが掲載)ので、コメントする。プレゼンは、鎌上社長の後、情報通信事業本部長の坪井常務、メカトロシステム事業本部長の田村常務、プリンタ担当で()沖データ社長の波多野常務、EMS事業本部長の来住専務。昨年は、波多野常務は弔事で高澤氏、EMSは中野氏であった。OKI中計説明会(526日開催)2017 5 28 続きを読む 質疑は、メカトロが5、プリンタが4、情報通信が1EMSや全体に関するものは無かった。質疑の内容は、メカトロは、明らかにされた海外モジュール販売等の新機軸に関するものが多く、プリンタも、脱オフィス等戦略の確認など、情報通信は共創戦略取組み、自然な質問点だろう。

 

鎌上社長のメッセージ

 

 鎌上社長のメッセージは、率直であり、良い点も悪い点も、自己評価されるところは好感が持たれる。今回のOKIを取り巻く環境認識、①デジタル変革、②キャッシュレス化、③ペーパーレス化、④銀行業界の構造改革、⑤5G時代の到来、は全く同意。コア事業のメカトロは、これら①〜④が複合的に影響し、厳しい経営環境だが、それはピンチでもありチャンスでもあるというのはその通りだろう。

 

情報通信

 

 情報通信事業は、情報、公共、通信の3本部統合の効果、また、データ、ネットワーク、センシングというコア技術を有し、それが、社会インフラ×IoTという中で、成長のチャンスだ。大手各社が参入するが、OKIは、エッジ領域で、センシングとカスタマイズで差別化できる。

 

メカトロシステム事業

 

 今回、大きな戦略転換が示され、そのスピード感に驚いた。既に、中計でも示されていた方向だが、加速化される.

 

プリンタ事業

 

 波多野氏は初登場だが、熱意がこもっていた。

 

EMS事業

 

今回、来生専務は初登場。今回、沖電線のTOBに加え、OKIテクノ、OKIエンジニアリングも入れ、EMSグループを再編した。

 

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ソニーIRデー(5月22日開催)および新有報の若干のコメント

 

 ソニーIRデーに関して、HPで視聴したエレキ分野について、コメントしておきたい。なお、中計に関しては、下記にコメントしている。https://www.circle-cross.com/2018/06/18/ソニー中計-522日発表説明会/

 

当日は、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野(小寺氏)楽分野(SME Rob氏他とSMEJ 水野氏他)、映画分野(Tony)、石塚氏による、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野、モバイル・コミュニケーション(MC)分野、高木氏によるオペレーション・販売プラットフォーム、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野、 清水氏による半導体分野の順にプレゼン、質疑があった。

 

この中で、IP&SMCHE&S、半導体についてコメントする。この中では、高木氏の時間がやや短く、また、全体的に、開示情報は減った印象。エレキ部門では、いずれも横グシを強調した。また、2017年度から2018年度の業績は横這いが多く、2020年度の中期目標も、それほどアグレッシブではない。

 

IP&S事業

 

IP&Sについては、2018年度は売上6600億円、OP750億円、2020年度は売上7000億円、OP8501050億円、ブランド品はOpm10%以上、ノンブランドは1520%という。

 

MCは厳しい

 

 MCは、2017年度売上7237億円(1350万台)OP赤字276億円だが減損を除くと、黒字化し、OP37億円。2018年度は売上6400億円(1000万台)OP赤字150億円。

 

2020年度は売上6700億円、OP200300億円とするが容易ではないだろう。リカーリング事業の貢献次第だが、IoTサービスなどは期待できるが具体性はない。

 

HE&S事業

 

 事業の話に先立ち、高木氏が取り組んできた、エレキ全体のオペレーション、バリューチェーンの一気通貫に説明があり、この3年で50150億円の効果があったようだ。地域性や部品の調達にも配慮。

 

2017年度は売上1.2兆円、OP858億円、ROIC30%以上は立派。2020年度は、売上1.2兆円、OP7501050億円は十分に達成可能だろう。絵と音の同期で、より臨場感、没入感を出すのも大きい。TVだけでは、差別化は容易ではないが、音と融合することで、差別化ができよう。そこは、ソニーの強みがいきる。海外では、ラテンは立て直しのようだ。

 

半導体事業

 

2017年度は売上8500億円、OP1640億円だが、モジュール売却、震災関連のプラス等の一時的要因を除けば、実態は、OP1204億円、Opm14%達成。2018年度は、売上8700億円、OP1000億円と減益だが、在庫水準適正化の稼働率調整(現在90%、今後フル)や、Dep増、車載やセンシングも含めたR&D増であり、ポジティブにとらえたい。R&D15%を適正水準とし、Dep12%であり、当然だろう。

 

2020年度は、売上1.1兆円、OP16002000億円と、大幅増益だが、殆どが、CMOSセンサーである。

 また、今後は、半導体のカーブアウトも、一層、議論が必要になるだろう。これまでは、アプリが、スマホやAVが多く、社内シナジーが大きかったので、垂直統合がプラスだったが、今後は、車載、FA、セキュリティに加え、モバイルでも、5G導入で、よりオープンイノベーションが重要であり、社内に置くデメリットが大きくなるかもしれない。

 

 

2017年度の有報

 IRデーとは別だが、新しい有報が開示された。

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NAND型フラッシュメモリのイノベーション過程の考察

 

不正会計から財務危機などに発展した東芝の問題も、債務超過回避、上場維持、メモリ部門売却、独禁法認可、7000億円自社株買いなどが決定され、一段落、今後は、本体、メモリ社、それぞれの成長が鍵となる。そこで、重要なのは、2兆円の価値がついた東芝メモリの健闘であり、日本の電機メーカーが苦戦する中で、数少ないグローバル市場で、サムスンと伍してきた事業だ。しかしながら、この2年の空白は大きく、サムスンとの格差は開き、中国の長江ストレージ等が迫りつつある。今、一度、目先の利益は度外視しても、中期の技術動向を見据え、R&Dなど先行投資を断行しなければならない。

 

 その意味でも、この機に、過去のNANDフラッシュのイノベーションの過程を振り返ることは有意義であろう。マスコミ等が書いているフラッシュメモリ事業離陸やイノベーションについては、関係者の間でも、違和感があるとの指摘もある。NANDフラッシュに関しては、88-89年頃に、東芝では、当時の川西副社長や武石総研所長、NANDセル発明者の舛岡氏に数時間の取材や議論を何度か繰り返し、また、インテルのNOR型フラッシュ発明者のステファンライ氏、更に、シャープ、富士通など多くの関係者と面談して、「フラッシュメモリ市場は95年に3000億円(NOR中心)2000年に1兆円」とのレポートを執筆した。

 

NANDイノベーションの過程は迂回的

 

80年代後半のノートPCに代表される携帯情報機器市場離陸の中で、磁気ディスクでは、耐久性等で問題があり、半導体ストレージメモリの必要性は、液晶等FPD、電池と共に、盛り上がっていた。その中で、メモリの階層構造の中で、HDDFDD等の磁気ディスク、磁気テープを代替する低コストの不揮発メモリの開発が進められていた。

 

あらためて、NANDフラッシュのイノベーションを振り返ってみると、実は、下記の5段階だろう。

 

当初の目標から回避して到達

 

 NANDの応用は、最初は、コンピュータの外部記憶であり、磁気ディスク、HDDの置換えだったが、予想以上に、GMRなどの磁気の技術が進歩し難しかった。そこで、応用分野を模索、それがデジタル家電や、当初予期せぬスマホ等に広がった。その後、十分にコストも下がり、初志貫徹のコンピュータの外部記憶市場(より巨大となったデータセンターという市場)に到達したのである。

 

 

 

TFT液晶のイノベーション過程も迂回

 

実は、この迂回して、初期のターゲット市場に到達するというパターンは、NANDフラッシュだけではない。同様の過程を経て、巨大市場となったのが、TFT液晶である。

 

 

どこまで普遍化できるか

 

 このパターンは、半導体やディスプレイなどデバイス分野では、ある程度、普遍的であり、二次電池でも、当初のアプリ、PC向け、EVというパターンでは、同様かもしれない。

 

 すなわち、イノベーターは、最初は、巨大市場を妄想するが、それは多くの課題があり、まずは、その技術で可能な別の応用、キラーアプリを見つけ、そこで、技術のコストも下がり、また、思わぬ巨大市場が登場する。そこで、はじめて、元来の市場に回帰、初志を貫徹するのである。

 

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日立のR&D戦略(6月28日開催)

 

2018628(木)13:30-18:00、日立の中央研究所にて、毎年、恒例のR&D説明会が開催された。13時半から1時間、R&D戦略について、CTO常務の鈴木教洋氏、知財戦略について、戸田知財本部長よりプレゼン、質疑対応40分、1510分より展示見学、1715分より懇親会。今回は、残念ながら、木曜が教授会であり、参加できなかったが、コメントしたい。

 

 マスコミでは、AIや線虫のガン発見など、話題の展示技術を中心に紹介しており、R&D戦略そのものは少ない。

 

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/01782/

 

https://news.mynavi.jp/article/20180703-658574/

 

知財に関しては、AI分析で発生するデータ、情報、知識、そしてデジタルソリューションの中での価値が重要であり、エコシステムを形成すべく、地財活動にチャレンジするようだ。

 

R&D100周年と2018中計

 

 日立にとって、2018年は、1918年に、試験課内に「研究係」(初代研究係長は創業者の小平浪平)が発足して、100周年という記念すべき年である。また、R&D体制を2015年に、協創とUMADAをキーワードに大きく変革し、STEP1は、顧客協創、STEP2はデジタルイノベーション(LUMADA活用)STEP3がグローバルスケール、オープンイノベーションと位置付けている。

 

R&D水準は適切か?

 

 CSIが約500名、CTIが約2000名、SERが約100名という体制、3層構造は不変。日立の全R&D投資(3500億円、売上比4%)20%700億円の内訳は、先端基盤研究33%、先行研究19%、依頼研究48%であり、先端基盤研究投資のうち、180億円がLUMADAなどデジタルソリューション投資である。R&D投資効率を示すKPIであるOP/過去3年平均R&Dは、これまでの2以下から、2を超えている。

 

ただ、逆に言えば、売上や利益の伸びに比べ、R&Dを抑制、かつ、R&Dが全額で3500億円、これは、広義のライバルである、アマゾン、グーグル、インテル、サムスン、ファーウェイ、マイクロソフトが、定義にもよるが、軒並み1兆円であるのに比べ、少ない。さらに、そのうち、真水の部分は、350億円程度は、国内の大手電機やITと比べてもと少ないのではないか。

 

データサイエンティストとトップクラス研究者を育成

 

その他、注目点は、協創を推進するための具体策の1つとして、データサイエンティストの育成を挙げている。日立グループは現在、約700人のデータサイエンティストを、2021年度までに3000人まで増やすようだ。また、研究所側には現在、博士号を持つトップクラス研究者が200人ほどいるが、これを外部採用や日立グループ社員への博士号取得奨励などによって2021年度までに300人程度まで増やす方針。

 

 むしろ、そういた研究者の処遇や、そのR&D体制の中での位置づけが重要だろうが、R&Dのコスト計上も含め、今後の課題だろう。

 

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