2015年6月13日 日立IRデーを踏まえ2020年の姿

日立の次期2018年中計の発表はこれからだが、目線としては、10%の営業利益率を目指す方針の模様だ。そこで、セグメント別に、グローバル市場でのライバルの状況を踏まえ比較してみる。なお、IRデーで説明があったのは7部門、なお、後述するが、区分けが、IRデーや中計と決算説明会で異なり、やや解りずらい面があり、一部で、数字上の混乱があるかもしれない。

 現状では、2018年度もしくは2020年度の数値目標があるのは、7部門中、4部門である。また、子会社中心のものが5部門あり、デジタルメディアは説明が無かった。そこで、情報通信は過去最高水準に回復、その他も、解っている範囲で中計の目線や、現在の延長線上で数字を入れると、合計で営業利益は12500億円となり、ほぼ目指している営業利益率10%となる。

 なお、日立IRデーについての前篇で過去30間のセグメント別営業利益について分析しているので参照されたい。

 日立の各部門の営業利益率を、中期で目標としている数字や、現状のレベルを、グローバルトップ企業と比較し、等号不等号「>=<」で示した。現状でも勝っており、今後も優位そうなのは、都市と、SPE系である。他方、情報通信は大負け、電力は負けだったが中計では同水準以上、インフラはやや負けていたが同程度、オートモーティブ、建機はやや負けている。物流は、各社でビジネスモデルが大きく異なり、比較が難しい。鉄道も、地上のインフラや、都市開発等に絡めて、どう発展させるかで異なろう。

 

 そうすると、各部門としての一つの指標としては、営業利益率は重要だが、ビジネスモデルも事業環境も多様な、各部門を単純に横比較して、良い悪いというのはナンセンスであり、グローバルトップの収益性との比較で、横比較、各事業を評価すべきであろう。そういう意味では、パナソニックのCCMのような内部指標で、各事業の目標設定をするのも一案だろう。

現状の利益水準をグローバルトッププレイヤーと比較しながら、各事業の在り方を考えると、幾つかのパターンに分れる。

第一は、グローバルトッププレイヤがビジネスモデルを確立しており、また日立の収益性も、既にそれに近いか上回っているものである。都市開発や、電子装置、鉄道、高機能材料、やや劣るがオートモティブ等も含まれよう。これらは、他部門へのシナジーも意識はするが各事業の独自性に任せておけばいいだろう。

第二は、グローバルトップに、今一歩劣ってきたが、今後は同等か、それ以上になりそうなものであり、電力エネルギーソリューションやインフラシステム等が相当する。もともと日立が得意とする領域であり、加えて、ここ数年の構造改革成果が期待できる。

第三は、かなり収益性が劣るものであり、情報通信、デジタルメディアであり、前者は、規模でも大きく劣るゆえに、ハードやプラットフォーム等の大胆なリストラと、得意領域への絞り込みが必要で、日立ならではのビジネスモデルを再考すべきである。後者は既にリストラ最終局面であり、都市などに統合されよう。

第四は、発展途上あるいは、業界も揺籃期であり、どこをベンチマークすべきかが難しい事業で、物流や、金融、ヘルスケアなどが相当しよう。あるいは日立においては期待も込めて鉄道もこの範疇かもしれない。

そうすると、重要なのは、第三と第四であり、特に、グループとしては戦略的な意図の本で一緒となった情報通信と物流が、どうシナジーを発揮し、新しいビジネスモデルを確立できるか、場合によっては、金融なども関連しよう。

また、別の観点から見ると、既に改革された研究開発での分類、CSI的な、ユーザーとの協創、オープンイノベーションでいく部門と、技術、しかも総合性でリードするCTI的な部門がある。情報通信は両面があり、電力、電子装置、インフラのプロダクト、オートモティブ、建機、材料はCTI的、あとはCSI的である。

特に情報通信は、クラウドでは対応できないミッションクリティカルなハード等は保有しCTI的対応をするが、それ以外のプラットフォームはソフトも含め売却、後は、SI等は、CSIと連携あるいは取り込んでいく、というように、二極化しよう。また、物流や、更に金融と関連して、日立ならではの、ビジネスモデルを確立し、グローバルトッププレイヤーに挑戦してほしい。物流を同一セグメントにしているのは、そういう秘めた野望もあると推察され、楽しみではある。

なお、同社の開示では、各事業グループと、各事業部門という分類があり、やや混乱しやすい。情報通信部門は、IRデーでの情報通信だが、情報通信グループでは、これに上記のべたように、日立物流が加わり、アマゾン等への対抗上、戦略的な意図を感じると同時に、現状ではビジネスモデルがあまりに異なり解りにくい。IRデーでも、そうした説明もなかったが、今後は、時期を見て開示してほしい。同様に、電力社会インフラ関連でも、電力インフラグループでは、社会産業システム、電子装置システム、生活エコシステムが入り、IRデーでは、この社会産業システムの中に、電力エネルギーソリューション、インフラシステム、都市開発、鉄道、が含まれるのでややこしい。電力インフラグループに、生活エコまで入れるのは、気持ちは解るがやや無理があるし、その辺りもIRデーで少しフォローすべきだろう。中期では、エアコン等を中心に都市開発に組み込まれていくのだろうが、決算説明会の資料や説明でも、最初から、インフラ、鉄道、都市というように、IRデーや中計ベースと統一してほしい。

次回のIRデーでは、会社側から提示された7-8の部門だけでなく、子会社政策も絡んでくるが、ここから漏れた事業部門をどう位置付けるか、横串的な対応をどうしていくかについての説明が期待される。

既に、多くの説明資料の中で示されているように日立の成功の方程式の一つは、

IT×XTあるいは、IT×OT×XTであるが、

更に、IOT(Oは制御運転のOTと所謂IoTの両方の意味)×D(物)T×F(金融)T×XTであろう。


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