東芝の行方

先日の株主総会の結果を経て、東芝は7日、「会社2分割案」再編は見送り、これまでの再編案を立案した戦略委員会を解散、新たに特別委員会を新設した。新たな再編案を練り直すようだ。エレベーター事業の売却は中止となった。これだけはプラスだ。株主総会では、会社側の分割案は反対60%弱、アクテビティトからの非上場化案は反対55%弱であり、共に否決されたが、非公開化案の方がやや優勢だったことが影響したのだろうか。

 特別委員会と戦略委員会の正確な位置づけは不明だ。メンバーはほぼ同じで、戦略委員会は、11月に当初の分割案発表時では、ポールブロフ(委員長)、ジェリーブラック、橋本 勝則、ワイズマン廣田綾子、レイモンドゼイジ(分割案に反対表明)5名だったが、今回の特別委員会は、ブラック委員長、ブロフ、橋本氏、ワイズマン、そして問題のゼイジ、社外取締役で指名委員等である綿引氏が新たに加わった。

戦略委員会を特別委員会に名称した意味合いが不明だが、ほぼメンバーが同じなのだから、ミッションが違うのだろう。文面には「最適な非公開化提案を選ぶ」などとあり、「非公開化ありき」になったのだろうか。そもそも、ミッションを変えるのなら、丁寧な説明もいるのではないか。

その中で、ベインが買収検討との日経報道があった。ベインは筆頭株主エフィッシモと契約、エフィッシモはベインのTOBには保有株全て売却、ベイン以外のTOB提案には応じない、ベインは単独投資ではなく国内勢を加え連合を形成するという。

ベインの狙の一つは、キオクシアであろう。もし、東芝がベイン傘下で非上場化なら、キオクシアは、ベインを通じて、SKハイニクスに売却される可能性が高い。その場合、JVWDとの関係が出てくる。また、NANDフラッシュメモリは韓国が80%以上を独占することになり、独禁法や国家安全保障上の問題がある。もちろん、東芝本体も、原子力や量子暗号など多くの国家安全保障の上で重要な技術を保有しおり、新外為法の問題も出てくる。

株主、特にアクテビティト等が非上場化に賛成するのは、TOB価格のプレミアムがあるからだ。現在の株価は、昨年CVCが提示した5000円を織り込んだが、当時、香港のヘッジファンドであるオアシスは6200円以上が妥当だとした。5000円前後で時価総額2.2兆円だから、6200円なら、2.7兆円となる。TOBの場合は、多くのファンドが注目、株価が高騰する場合が多い。2017年のKKRによる日立国際の事例では、4月当初2503円から株価急騰で10月に2900円、11月に3132円と二度引上げた。

今回も、おそらく、こうした投機的な動きと、国家安全保障から外為法や独占禁止法との思惑で乱高下するという事態になる可能性がある。

 

そもそも、こうした転売を公言しているファンドに株主権利はあるのだろうか。こうしたアクテビティトが跋扈しすぎとなり、一部の株主利益を重視する外部取締役ばかりだと、日本の上場会社は疲弊する。アベノミクス以降、コーポレートガバナンスの改善は一定の評価はするが、これ以上は、有害無益だろう。国家安全保障や新しい資本主義の中で、そろそろ見直しをすべきではないか。