東芝は非上場化へ~メタモルフォーゼを

東芝1Qの決算説明会が、投資家アナリスト、マスコミ向けにオンラインで開催された。併せて非上場化につき、渡辺取締役会議長および島田太郎社長より説明があった。業績は新CFOの松永が対応。質問はマスコミからが多く、TOB可否、非上場化の意味や長短や感想、今後のあるべき方向性、2017年に非上場化すればよかったのでは?などの意見、キオクシアの状況や影響、東芝テックについて等だった。

 1980年代後半から長年、アナリストあるいはファンドマネージャーという立場から、30年以上にわたり、東芝株および東芝という会社をフォローしてきた者として、感無量である。非上場化しても会社は無くなるわけではなく、「少し休憩」し、再度、強い会社として、東芝らしいイノベーティブな企業文化は残しつつ、「変態(メタモルフォーゼ)」に期待したい。非上場化はBestな解ではないが、「マグロの解体ショー」にならないのであれば、これ以上の期間、混乱が続き、島田社長はじめ有為な役職員が、そのようなことに時間を費やすよりは、Betterであると思う。特に、製造業を中心とした多くの企業が出資に賛同したことは、経営重心論の固有周期の時間軸とリスクの取り方から、ファンドだけが株主であるよりは、好ましいだろう。今後の鍵は、キオクシアと東芝テックもある。

2017年に非上場化していたら良かったのではとの論調は多いが、そうであれば、状況が曖昧、混沌の中で、東芝の企業価値や、その経営資源や文化風土の長短について、よく検証されないまま、解体ショーとなり、会社そのものは雲散霧消した可能性もあろう。この8年は長かったのは事実だが、社内も社外も、東芝について、よく考える機会を与えたのは事実だし、ある意味、残った社員の愛社精神は深まった面もあるだろう。IRの開示も格段に改善した。人生でいえば、少し長い浪人生活あるいは入院期間かもしれないが、そうした不遇の経験を踏まえ、立派な業績を残した方は、池田勇人はじめ、少なくない。

 

また、この8年では、経営環境は、大きく変わった。2017年には、カーボンニュートラル、米中摩擦、国家安全保障、コロナも無かった。こうした変化により、東芝の持つ、エネルギー、電池、半導体関連、量子通信の重要性に対する認識は各段に高まった。さらに、CPSのプラットフォーマモデルも浸透した。2017年に非上場化され、解体ショーがあれば、こうした重要技術が、他国に流出した危険もあるだろう。CPSデータのビジネスモデルが無ければ、古い「選択と集中」モデルで、解体ありきだったろう。