経営重心®は、これまでの伝統的なドメインの切り口ではなく、ビジネスサイクルとビジネスボリュームを切り口としてます。
それゆえ、定量化、演算操作、業界を超えた横比較が可能になります
経営重心®で総合電機のポートフォリオを切ってみると、より比較が明瞭になります。
真ん中の「ジャパンストライクゾーン」と呼ぶ日本が強い領域に、日立や三菱は多く、業績が好調です。
問題の東芝は真ん中が空で右上と左下によってます。
経営重心®がどのように推移したかもわかります。また広さも定量化できるので時系列比較、横比較が可能です。
東芝は大きく重心が動き、広さもどんどん拡大してます。
日立の例です。経営重心®の切り口だと絞り込みがよくわかります
NECの例です。経営重心®だと、ポーフォリオの変化が明瞭です。
「経営重心®」は、若林が長年、電機精密業界を分析する中で、発見し考え出した仮説、あるいは理論です。
しかも、その切り口は、周期とボリューム(桁で表わしている)というシンプルなものです。シンプルだけに、発見に近いという印象なのです。
もともと、日立は事業領域が広いとか、経営が遅い、とか言っていながら、定量的できていない、ことから、どうしたらいいか悩んできました。多くの人々が言っていることが後講釈であり、定量的な議論ではなく、あいまいな言葉であり、予測ができてません。
この経営重心®は、そういう事業の広さ、などを定量化し、また、企業の個性・気質、を、事業のサイクルとボリュームの2軸で定量化しようというものです。
経営重心®は、周期(年単位)をx軸、台数(これをlog化して桁数)をy軸とした時に、xy平面上に以下のように定義されます。
経営重心®の定義:経営重心®(x、y)=Σ 売上構成比×(事業重心(固有周期、固有桁数))
(売上加重平均)
事業重心は、それぞれの事業の固有周期をx、固有桁数をyとおいた(x、y)です。
これは事業の数だけあります。外部から分析する場合はセグメントの数です。
固有周期は、その事業に固有な周期、ビジネスサイクルであり、スマホであれば、買い替えサイクル、事務機なら、リース期間などです。
固有桁数は、その事業に固有な市場の台数をlog化したものです。
文化の重心あるいは経営重心の不動点(これはまだ仮説の段階)は、経営重心の時間加重平均です。
文化重心(x、y)=∫経営重心(固有周期、固有桁数)dt
その他の定義は以下です。
経営速度=固有周期の売上加重平均
事業の広さ=経営重心®から個々の事業重心の距離の売上加重平均
このように、経営重心®、事業重心、文化重心、などの定義は、定量的数学的なものであり、言葉で曖昧で表記していません。ただ、数式にアレルギーがある読者のために、その意味するところを、企業の個性、として、お見合いや進学などに例えたり、後述する意味づけのために、予兆的に記述してあります。
大手電機や家電については、「経営重心®」の本で示すように検証できており、電子部品や機械、などにもケース、検証例を増やしているところであります。本書では紙幅の関係でケースが限定されてますが、ここで紹介していきたいと思っております。
また、いろいろな製品や事業の韓国台湾との国際競争力もこれできれいに説明できます。曖昧な表現の経営用語である擦り合わせ、モジュールなども、経営重心®の要素である固有周期、固有桁数で、定量的に説明できます。
計測できたことで、議論が客観的になり、広さ、速さ、だけでなく、密度、慣性モーメントなど、いろいろな量が計算でき、企業を、より多面的かつ定量的に把握できます。
経営を工学のアナロジーで考えると、分析は計測、経営は制御であり、工学においては、計測と制御はペアです。そもそも、制御するためには、制御量が計測されていなければなりません。これまでは、それが定量化されていなかったのです。いわば、プラントにおいて、温度も圧力も、測らずに勘に頼っていたようなものです。
計測できたとして、それがどう制御されるかは、また別の議論ですが、ここでは、その可能性を示唆しております。また、ポートフォリオで最適設計という発想がありますが、経営をうまく設計するということも可能性が広がります。
おかげさまで、電機精密メーカーの経営トップおよびそのOBをはじめ、研究所長の方々から高い評価を頂いておりますが、今後の課題として、他産業、特に、ソフト、素材といった業種あるいは国際比較なども必要であると考えます。
この経営重心®の発想あるいは理論が、実際の経営の参考になりお役に立てれば幸いです。
大手電機だけでなく、電子部品、精密、半導体製造装置、計測制御、機械などに展開。
さらに、素材、ソフトにも展開中。
マスコミや出版もこれで分析可能に。
電機業界の経営トップから、「ピケティ以上」、「事業のサイクルとボリュームのみで客観的に定量的に比較出来る・・これは凄い」、
学者から「創造的で、スケールの大きな労作、GEマトリクス以来」、「技術経営を研究していたものとして、本書は非常に新しいアイディアに基づき書かれたものだと思う。様々な二次元座標のマトリックスがあるが、事業の距離や経営のコアを生産量の対数と製品サイクルから分析したものは初めて見た、その分析の結果が非常に的を得ている。これからの電機産業の在り方を問う、非常にインパクトがある著書だと感じる」
などとの評価を得ております。
Amazon書評でも
「事業規模と事業サイクルを用いて経営の定量化を図るという視点の独創性と有効性に目から鱗が落ちたような気がしました」、「重心と定量化は、極めて説得力のある方法論とオリジナリティがある。読んでいて、なるほどと思う。エレクトロニクス企業の盛衰を共通の指標、経営重心を用いて分析しており、これがおもしろい。過去だけでなく、将来を見る視点としても参考になる。アナリストの経験にもとずいた深い洞察力で、シンプルな変数で経営の質的変化を解き明かす素晴らしい本」、「経済学の本にありがちな、あいまいな表現を用いず、定量的に経営の質的変化を解明しようとする姿勢は素晴らしい」、「説明されれば当たり前のことなのに、何故か誰一人こんな説明はしてくれなかった、電機業界と長く深く、かつ真摯に向きあってきた著者だからこそ得られた着想に敬意を表したい」、「これほど分かり易く、定量的に経営を語れる理論は少ないと思います。長年携帯関係に携わってきたものとして、非常に興味深く拝見させて頂きました」
など、高い評判であります。
AMAZON書評より
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ドメインに関する先行研究
ドメイン研究の問題点
多角化とドメイン
業界構造、垂直統合、水平分業、擦り合わせ型、モジュラー型
関連分野の先行研究・先行文献レビュー
企業ドメインについては、榊原が指摘しているように、それ自体について網羅している例は、意外に、少ない。多角化とパフォーマンスについては、かなり多くの先行研究があるが、結論は収束していない。企業文化、風土についても数多くの研究があるが、多くは一般的な経営論、メセナなどであり、戦略やドメインと関連したものはそれほど多くない。経営スピードについては、それ自体をテーマにしたものは少ない。業界構造については、製品アーキテクチャと水平垂直との関係など最近、多くの優れた研究が、電機業界を例にして、成されている。
・事業の定義の重要性は、既にドラッガーや、レビットの古典的論文「マーケティング近視眼」によって指摘されてきた。アンソフは、製品とミッションについ、既存と新規の二次元マトリックスで、定義した、しかし、エーベルは、これらの定義では、市場の変化に対応できず、境界をどう考えるか、などの点で不十分であり、「事業の定義」において、製品(顧客機能)、顧客(層)、技術(代替技術)という三次元モデルを呈示、IBMのコンピュータなどの事例で検証した。また、新しく多角化を定義し、組織設計についても言及している。しかし、定量化は成されておらず、3つの軸には、量も方向もない(ハウフドルフ空間ですらない)。
・榊原は、「企業ドメインの戦略論」において、ドメインの構成要素として、三つの次元をとりあげ、①空間の広がり(狭い 対 広い)、②時間の広がり(静的 対 動的)、③意味の広がり(特殊的 対 一般的)として、それが広すぎても、狭すぎてもよくない、としている、さらに、ドメインが、経営側とメンバーとのコンセンサス、企業と社会とのコンセンサスで決まっているとしている。
・さらに、IBMの技術マップによるドメイン、ゼロックスの未来オフィスというドメインの失敗例、これに対し、日本はトップダウンよりは自然な流れでドメインがかわり成功する例が多いが、失敗例としてトヨタの住宅、また日本に珍しいトップダウンの例としてNECのC&Cの事例をあげている。
・しかし、これらの分析は榊原も述べているように、後講釈であり、そのドメインの最適性についてのロジックから予測可能性はない。また、広すぎず、狭すぎずといっても、あまりに曖昧である。
・ドメインの定義に関連して、コア事業の範囲は重要であるが、コアと周辺の距離計測を試みた例としては、クリス・ズックがいる。ズックは、コアからの距離を、顧客、競合企業、インフラなど公式に従って数値化した。しかし、これはあくまで、主観的な数値化に過ぎず、大小関係があるだけで、単位もなく数学的演算不能である。
・ドメインの定義や最適性が問題になるのは、多角化の場合であり、先行研究においては、多角化と関連して論じられる。ドメインに関する先行研究は、マーケティング、多角化に関して多く、米では50-60年代、日本では80年代が多い。当時は、鉄鋼や繊維などが成熟化して新しい成長領域を探索していたからである。
・しかし、ドメインそのものに関する先行研究は少ない。榊原によれば、「ドメインの定義は、戦略決定の第一歩として、企業戦略を語る時には、必ず強調されるものである。しかしながら、奇妙なことに、ドメイン自体についてのまとまった本はほとんど存在していない」(企業ドメイン戦略論 あとがき)、また、「洞察力や想像力、あるいは構想力といったものがドメインの定義には必要であり、それは決して容易なことではない。その固有の難しさのために、ドメインの分析は企業戦略論のなかでは最も解明が遅れている問題でもある」(同)のである。
・多角化ということは、ドメインの転換、ないしは拡大であるから、多角化に関する先行研究においてどのようにドメインを定義しているかを見ると、多くが工業分類によるものである。Michael Gortは、1954年に行われたセンサス資料に元ずいて111社をとりあげ、多角化と統合に関する実証的研究を発表した(Diversification and Integration in American Industry、Princeton Univ. Press1962)が、主要13業種の動向を調べた。また、Stanley S.Millerは、自動車部品中心に、第二次大戦後に多角化した10数社を調査、しかし、ドメインの議論はない。
・日本では、 「日本企業の多角化戦略」において吉原・佐久間・伊丹・加護野が、118社について、特化率、垂直比率、関連比率の定量的尺度により、4人の判定により、7つのパターンに分類、そのメカニズム、成果、組織などについて詳細な分析を試みている。その後、荻原らが最近の事例についても同様の方法で追跡した。
・多角化とパフォーマンスについては多くの研究があり、多角化と収益性の関係は、専業の方が収益高いなどの成果あり、多角化ディスカウントが指摘されるが、その結論は定まっておらず異なる結果となっているようだ。
・これは、そもそも、多角化の定義が、間違っている、あるいは曖昧だからではないか。米においては工業分類、日本では企業のセグメントである。セグメントは、変更されることが多く、企業毎に定義がことなる。ある企業では多角化でも、別の企業では単一となる。また、そもそも、製品の種類で多角化のドメインを決めているが、同一製品でも、価格帯や、顧客を変えた場合は、多角化とはいえないか。また、産業構造が変わるなかで、従来の区分では、わからない。いわば、これまでの多角化は、xy次元だけの議論であり、他の軸が必要である。さらに、製品分類でも、それぞれの分類を同一に扱っているが、電機から機械への多角化と、電機からバイオへの多角化とは、おそらく度合いが異なるが、これは無視されてしまう、
・さらに、これまでは、xy軸だけでドメイン、多角化を考えていたが、業界構造が変わる中で、z軸(ベクトル)を導入することが必要である。これは、企業の本質の固有周期と固有桁数からなる重心であり、文化とも関係する。この重心を一定にすることは企業文化を維持し、コーポレト組織を正当化できる。
・企業文化風土と、ドメイン、業種と、経営スピードの関係について、ディールとケネディは「シンボリックマネージャ」(城山訳)において、速さとリスクによって、企業を、①タフガイ・マッチョな文化、②よく働きよく遊ぶ文化、③会社を賭ける文化、④手続きの文化、の4つの類型にわけた。①では、建設、化粧品、コンサル、などの業界をあげ、スピードが速い、②では、不動産、コンピュータなどの業界をあげ、③では投資銀行、採鉱、精錬、石油などの業界をあげ、慎重な気風をあげ、④では、銀行、製薬、電力などをあげている。
これから、経営風土の一つとして、経営スピードあるいは、固有周期、またボリューム感のようなことが指摘されている。しかし、類型分けのロジックは不明であり、また、経営スピードなども主観的な相対的なものである。
・経営スピードについては、やや似た概念で、「組織の重さ」(沼上、軽部ら)で、詳細なアンケート調査により、組織の「重さ」と業績などとの相関など分析を試みている。画期的な研究であるが、事業内容との関連性は不明である。「重さ」と活動の遂行に必要な日数等の調査結果があり、主力商品のモデルチェンジで平均454日、新規事業開発で659日、撤退で420日となっており、日本企業の平均的な決断に要する期間は1年半から2年となっている。ただ、この論文では、経営スピードそのものが対象ではない。
・垂直統合・水平分業など業界構造については、小川が「国際標準化と事業戦略」において、その変化がマイコンのアーキテクチャによってもたらされたことを指摘、製品の内部アーキテクチャとして擦り合わせ型・モジュラー型、標準化の形態として、クローズドスタンダード、オープンスタンダード、で4つの象限に分け、分析を試みた。企業では、シスコやノキアの戦略、製品ではDVDやデジカメなど詳細な事例がある。しかしながら、この論理から、三洋がEMSで成功する、太陽誘電の将来性などを予測しているが、全く外れており、最近のノキアの苦戦やアップルの事例については説明が難しい。さらに、また、同じマイコンが応用されている製品でも、事務機や、製造装置などBtoBの製品ではなぜ日本が優位なのか、についても説明が難しい。
参考文献
・国際標準化と事業戦略(小川紘一)、
・モジュール化(青木昌彦、安藤晴彦)、
・イノベーションと競争優位(榊原、香山)
・現在の経営戦略(河野)、
・経営戦略論(石井、奥村、加護野、野中)、
・経営戦略論Ⅰ、Ⅱ(マイケルポーター)、
・戦略経営論(石倉訳)
・経営の論理、新経営戦略の論理、よき経営者の姿、、経営の力学(伊丹)
・日本企業の多角化戦略(伊丹、加護野、吉原)、
・多角化戦略と経営組織(萩原)
・企業ドメインの戦略論(榊原)
・事業の定義(エーベル、石井訳)
・組織の重さ(沼上、軽部、加藤、田中、島本 日経新聞出版2007年)
・市場と企業組織(OEウィリアム、浅沼訳)
・科学経営のための実践的MOT(ヒューゴチェルキー、亀岡訳)、
・日本の技術経営の意義あり(伊丹)、
・技術者のためのマネジメント入門(伊丹、森)、
・MOTの達人(森、鶴島、伊丹)、
・MOTの経営学(松島)、
・技術経営入門(藤末)
・BCG戦略コンセプト(水越)、
・コア事業戦略論(クリスズック)
・企業戦略論(ジェイBバーニー)、
・次世代テクノロジーマネージメント(ジョージディ、ウォートンスクール)、
・イノベーションのジレンマ
・ビジョナルカンパニー(ジェームズコロンズ)
・技術革新と企業行動(岡本、若杉)、
・技術革新と経営戦略(土屋)、
・技術革新の計量分析(渡辺)、
・技術革新と企業成長(岩田)、
・先端技術と経済(藤井、菊池)、
・ソフトウェアの経営学(野口)、
・技術開発の昭和史(森谷)、
・本格研究(吉川)、
・技術予測(OECD)、
・技術予測論(中山)、
・技術予測入門(牧野)、
・科学研究のライフサイクル(山田)、
・研究開発の組織行動(岡本)
・中央研究所の終焉()、
・理科系冷遇社会(林)、
・科学技術大国中国の現実(伊佐)、
・中国の頭脳 清華大学と北京大学(紺野)、
・企業変革の技術マネジメント(山之内)、
・技術大国ニッポンの虚と実(土金)、
・科学技術史の裏通り(城坂)、
・イノベーションスタイル(クライン)
・イノベーションの普及(ロジャーズ)、
・イノベーションの源泉(Eフォンヒッペル)
・離脱発言忠誠(ハーシュマン)
・企業文化生き残りの指針(E.H.シャイン)
・企業文化(松村洋平)
・シンボリックマネジャ(Tディール、Aケネディ、城山三郎)
・企業文化論をまなぶために(梅沢正)
・企業戦略と企業文化(吉森)