2018年10〜12月


マクロ統計と企業会計

 

時代が交わる時には、価値感も変わる。そこでは、新しい価値を測る単位や数字が必要だ。現代人の多くは、給料が上がったり、日経平均株価の乱高下で、一喜一憂する。受験生は、偏差値(これは、駿台予備校が大型コンピュータを導入して、可能になり、より性格に合格率や難易度がわかるようになった)に踊らされ、大学のランキングもそれで決まる。企業ならば、業績だ。国民は、GDP成長が続くと、安心する。

 

数字の裏にある構造と統計の危機

 

 数字はウソをつかないが、ウソつきは数字を利用する。給料は実際には物価との対比や、年金受給も含め、考えないといけないし、日経平均も、むしろ時価総額をドルベースで考えるべきだろう。偏差値も、科目の負担で異なるだろう。そもそも、それらも、正規分布が前提だ。正規分布でない場合は、平均値や標準偏差は無意味な場合もあろう。業績では、P/LB/S、更には、割引率などを巧妙に操作すれば、粉飾できる。しかし、エコノミストも、アナリストも、学者も、こうした数字、特に統計データを所与のものとして、扱い、その裏や、背後にあるものを考察したり、検証しようとしない。

 

 特に、ビッグデータ、データサイエンティストの時代と言われながら、統計の現場は危機的であり、半導体のWSTS等は補足率が70%を切っており、機械統計も輸出産業をべースにしているため、複雑なサプライチェーンは想定していない。これについては、以前に書いた。

 

https://www.circle-cross.com/2015/09/13/2015911-エコノミスト達は統計の現場をチェックしているか-統計の危機/

 

全ての統計には意図があり、統計数字が権威

 

統計いや数字を作るのは、権力者であり、古くは暦や年号そのものが、権威の象徴であり、検地による石高調査、度量衡もそうだ。

 

ザカリー・カラベル氏によると、1066年ノルマンディー征服王が「ドゥームズデー・ブック」という統計記録を作成した(「経済指標のウソ 原著 THE LEADING INDICATORSA SHORT HISTORY OF THE NUMBERS THAT RULE OUR WORLD」ダイヤモンド社2017)。同書によると、経済指標は自然法則なみに尊重されているが、米GDPは一夜にして4000億ドル、日本のGDP16兆円増えるなど、絶対的なものではなく、全ての統計には意図がある、としている。

 

新時代の単位を

 

 サービス化、シェアリングエコノミー、ブロックチェーンや、仮想通貨などは、GDP統計には十分に反映されていないだろう。新しい単位系の創造が重要だ(経営重心 幻冬舎2015の巻末に記述)

 

マクロ経済と会計学の一致

 

その中で、日経経済教室で中野誠一橋大学教授による「企業利益と経済成長 設備投資通じた連動性 顕著」  に関心を持った。https://www.nikkei.com/article/DGXKZO39193460Q8A221C1KE8000/

 

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ビット価格〜DRAMとNAND

 

日経新聞市況欄では、1226日付け記事で、「商品市況 平成の30年」として、半導体メモリのビット価格低下を取り上げている。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39331460V21C18A2QM8000/

 

その代表例として、DRAMを取り上げ、この30年で、256キロビット2.2ドル→4ギガビット3ドルと、技術革新で1万分の1以下となったと記している。

 

 DRAMについては、平成元年の頃は、日米半導体協定の頃であり、FMV(フェアマーケットバリュー)により不自然に価格が維持されていて、そこを起点とするのは、やや違和感があり、また当時は、既に1メガが主流であった。また、DRAMは、平面での微細化であり、ムーア則に従った。

 

 より、ビット価格低下が大きいのは、NANDフラッシュであり、20年で、5万分の1だ。微細化に加え、3D化、多値化(SLCMLCTLCQLC)があり、ムーア則を超えた。

 

 

ビット価格当たり単価

 

 DRAM1万分の1/30年であれ、NANDフラッシュの5万分の1/20年であり、情報メディアのコストは、確かに、この単位だ。しかし、この単位によって、イノベーションの度合を示したことも、大きなイノベーションだろう。

 

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未上場大企業にも社外取締役導入か

 

日経新聞が、29日に、未上場大企業でも、社外取締役導入を義務づけと報道。法制審議会の会社法部会(部会長は学習院大学法科大大学院神田教授)がまとめた会社法改正の要綱案、2019年通常国会に改正案提出、2020年施行を目指すという。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39458370X21C18A2MM8000/

 

 ついに、未上場会社まで、ガバナンスかと驚いたが、1212日に公表されている、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案(2))」を参照すると、12頁の「社外取締役の活用等」の箇所で、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならないものとする。」と記されており、実は、これまでと変わらないようだ。http://www.moj.go.jp/content/001277293.pdf

 

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ジャパンディスプレイ(JDI)の苦境

 

ジャパンディスプレイの苦境が続いている。2Q決算後、129日には、液晶パネルを採用した量産モデル「iPhone XR」の販売不振に伴う3割減産報道や、米中摩擦、株主であるINCJJICの混乱など、ネガティブなニュースが多い。

 

 株価は、2Q決算説明会後も、業績不透明感に加え、中計の発表が無かったことや、上記のネガティブニュースもあり、下げか止まらず、一時は50円までいったが、その後、1214日には、中国資本参加報道もあり、反発、2018年の大納会終値は72円だった。また、19日には、エフィッシモが7.9%を取得。INCJ25%に続く2位の大株主となった。

 

 

イノベーション戦略発表会

 

会社側は、124日、イノベーション戦略発表会「JDI Future Trip - Creating Beyond -」を開催、新製品の発表や展示をした。

 

減産

 

前工程工場でXR向け生産数量は、フル稼働の11月までに比べ3割前後減、工場稼働を徐々に落とし、年末年始は量産を10日前後止める模様。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38719590Y8A201C1EA5000/

 

 

中国資本参加は微妙

 

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ホシザキの問題

 

ホシザキが1030日、販売子会社のホシザキ東海の不正取引の疑いで、117日予定の3Q(201819月期)決算発表延期と発表、四半期報告書延期期限の1224日に間に合わず、管理銘柄となったが、再期限の1227日には、間に合い、上場を維持できた。

 

 ホシザキは、20168月以降、説明会に参加できておらず、20188月の説明会には参加予定だったが、体調その他で欠席、決算短信はチェックしていたが、今回の件は、驚きだった。オーナー系企業では、こうした不正会計は珍しく、IRも良かったからだ。

 

https://www.circle-cross.com/2016/08/22/2016821-ホシザキの上期決算と経営重心-とドメイン/

 

3Q決算を受け、通期業績(201812月期)は、売上2879億円、OP361億円、NP245億円で不変。

 

ホシザキはオーナー系優良企業でIRは良いが

 

ホシザキは本社がある桶狭間の近辺にあった星崎城からとっており、ペンギンのトレードマークで有名。オーナー系だが、オーナー色をそれほど出さないが、オーナー系の坂本会長が85歳近く、あとは、途中入社の50代の役員が多く、坂本会長の力が圧倒的だ。

 

経営理念が独特で、販社に競わせる中で営業力が強く、M&Aの成功例が多く、ニッチ分野だがグローバルに展開している。

 

優良会社ではあるが、ガバナンス的には、監査役設置会社であり、指名委員会も報酬委員会もない。IFRSでなく、日本基準である。

 

不正取引に加え、本社社員が教唆で延期

 

 不正取引の上、調査過程でホシザキの本社社員が販社の関係者に回答法の教唆が発覚したことが、再延期の理由であった。社内調査委員会の報告書によれば、不正取引は、架空リース取引、売上原価の付替え、代理店販売の仮装、販売代理店兼協力業者に対する架空売上の計上等だ。連結業績の影響は軽微であり、有報は修正しない。既存設置機の無断転売及び売却代金の着服も判明。

 

調査報告書ではデジタル・フォレンジックに加え、テキストマイニングを活用

今回、興味深かったのは、営業部営業担当者168 名へのインタビューで得られたホシザキ東海の社風についての回答に、テキストマイニング技法(共起ネットワーク分析)を適用して分析・要約を行っていることだ。

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日産自動車とゴーン問題、そしてINCJとJIC

 

ゴーン氏が1119日の逮捕された直後に、第一印象を記した。ポイントとして、「①日産は、報酬委員会がなく(監査役設置会社)、非IFRS、②報酬は、キャッシュだけが記載、業績連動等がないのは違和感。日産株は多数保有。外資では通常、複雑な報酬スキームがある、③不動産所有等が報じられているが、これは、他の会社でもフリンジベネフィットがあり、これが全部、報酬と見做されるなら、有価証券報告書記載だけでなく、税務でも、産業界全体の大きな話となる、④要は、有価証券虚偽記載は、きっかけに過ぎず、もっと奥深い問題があるのでは(内部告発、社内対立)と見るべきで、近因は、カリスマトップ及び周辺側近の行き過ぎだが、真因は、クルマの業界再編と株主構造のガバナンスの歪み、遠因は、企業体質だろう(それ故に、委員会設置会社でなく、IFRS対応がない)」とした。

 

https://www.circle-cross.com/2018/11/20/ゴーン氏逮捕の裏にあるもの-第一印象/

 

日本と海外の対応差 

 

その後、ゴーン氏は拘留が延期、様々な憶測、報道が出ている。日本では、ゴーンに批判的であり、確かに、個人の運用付け替えや親族への便宜などなど、驚くべき点も多いし、特別背任になれば、致命的だろう。最初、田中角栄逮捕の既視感を指摘する声もあったが、全く異なるかもしれない。他方、海外では、日本の司法制度に驚き、批判的である。新日的な知人でさえもそうだ。親しい他方で、ファーウェイCFO逮捕もあり、これまた、各国で意見が異なり、興味深い。共に、売上10兆円を超えるグローバル企業のカリスマトップが、短い期間に逮捕されたというのも、あまり過去例がないだろう。

 

第一印象の検証

 

 そこで、第一印象を、検証すると、①ガバナンスや会計制度が不十分、②報酬スキームの海外での複雑さについては、多くの識者も指摘して、その通りだった。③のフリンジベネフィットは、これからの議論だが、ゴーン氏の場合は度を越しており、論外だろう。④については、クーデターとの見方が強くなっているようだ。

 

すなわち、真因として指摘した、クルマ業界の再編と株主構造歪み、という指摘は、いいところをついていたのではないか。つまり、ゴーン氏は、ルノー中心に日産や三菱自工を完全統合し、CASE等に備えようとし、それを止めようとする中で、内部対立からクーデターとなったのだと憶測している。

 

CASE再編トヨタに対抗できるモビリティキャリア

 

そこで、興味深いには、124日のJIC問題の突然の浮上であり、唐突に、JICの報酬を巡る問題で、民間出身の役員と経産省側で対立、その後、結果、民間役員が全員辞任となった。一見関係がないようだが、同じタイミングで、唐突に起きた事件は、底で繋がっている可能性がある。

 

巨大なカリスマが作る風土

 業界では常識であり、一部の方は指摘しているが、あまりマスコミで報道されないのは、かつての日産のドンであった塩路氏の件だ。

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東証1部企業削減へ

 

東京証券取引所は、第1部市場のあり方を見直すようだ。1部上場維持の時価総額の基準引き上げ、他市場からの昇格基準も厳格化するようだ。12100社超と多い企業数を絞り込み、新興企業向け市場も再編、投資環境を整えるようだ。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39220970Q8A221C1EE9000/

 

 

 大半が、1000億円どころか、500億円以下であり、多くの企業が対応を迫れることになる。

 

まず、500億円超え、近い将来1000億円か

 

選択肢としては、1部から降格で、2部、その他、等になるか、合併統合である。

 

売上5001000億円、時価総額500億円がグローバルで生き残り

 

 自身や日の丸技術を守るなら、時価総額500億円〜1000億円に向け再編が待ったなしなのかもしれない。

 

何故、時価総額500億円か

売買金額でコミッションを得る証券会社にとっては、時価総額が大きく売買高が大きい銘柄がベストであり、

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日立がABB社のパワーグリッド事業を7000億円で買収

 

日立がABB7000億円で買収する。既に、日経などで1212日に報道されているが、1217日に正式発表、16時半よりマスコミ・投資家アナリスト合同の説明会が開催、HPから参加した。プレゼンは、東原社長、質疑対応は、西野寿一氏副社長など。http://www.hitachi.co.jp/IR/index.html

 

2021中計と株価を抑える3つのリスク

 

世界グローバル企業になり、OPM10%にするという2021中計に向け、業績は堅調だが、株価を抑える要因は、①UK原子力ホライゾン案件、②南アの重工との係争、③オートのメキシコ生産の問題、である。

 

買収の概要

 

対象となるABBのパワーグリッド事業は、売上1.1兆円、EBITA1100億円、3.6万人。グリッドオートメーション(ソフト)、変圧器、高圧製品(ガス開閉)で世界1位、グリッドインテグレーションで2位。。日立とは2015年から分散型電源の安定供給などでJVを作り協業実績。

 

原発ホライズン

 

 他方、英原発のホライズン案件は難航している。同日、経団連の記者会見で、中西会長は、英での原発のホライズンが限界だと報じられたことに関しては、CY2019締結に向け、「大変だが諦めずに努力を続けている」との回答。

 

WHからランディスギアのデジャブ

 

 名門ABBの事業買収となると、従業員の意識、PMIも容易ではなく、どうしても、東芝のWH買収を想起させられる。

 

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アルバックの技術セミナー(12月19日)〜GaN等パワーデバイス動向

 

アルバックが例年12月に開催するセミナーに参加、質問もした。121910時〜11時半。昨年は、中国ビジネス動向だったが、今年は、技術、GaN等のパワーデバイス動向であり、内容が濃い。

 

 まず、斉藤上席執行役員が、イントロでパワーデバイス業界トレンドを紹介、次いで、トヨタ中研から現在、名大特任教授の加地氏によるGaNパワーデバイス動向、アルバックの上村部長からは化合物半導体、GaN-HEMTVCSELなど、ホットな話題が提供された。質疑の時間が、10分弱であり、11問で3問だったのが残念だった。

 

パワーデバイスにおけるGaNの可能性

 

 パワーデバイスの応用は、縦軸に消費電力、横軸に周波数をとると、下図のように、すみ分けられている。

 

加地特任教授によるクルマにおけるGaNの応用分野

 

 加地教授は、これまで、トヨタ中研等で、ずっとEV向けパワーデバイスに係ってきた。ハイブリッドも含め、電動化の鍵は、①電池、②車体、③半導体、である。

 

VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser ヴィクセル垂直共振器型面発光レーザ)

 iPhoneの顔認証(ロミオモジュールと、ジュリエットモジュール)では、VCSELが使われた。

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日新電機の2018年度上期決算

 

日新電機の上期決算は、去る1030日に発表されている。同社は、年度のみの決算説明会であり、上期段階の決算説明会はない。今回、11月末頃に、京都にて取材を行い、上期決算について、中身を確認、併せて、若干の市況や景気情勢などについても意見交換をしたので、報告する。

 

業績は上期下ブレだが、通期は不変

 

業績2018年度上期は、受注552億円、売上467億円、OP25億円、NP17億円。全体では、受注20%減、大幅な減収減益。

 

セグメント別には、下記のようだ。

 

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東芝のデジタル戦略〜次世代CPS実現とIoTリファレンスアーキテクチャ(11月22日開催)

 

去る1122日に、アナリスト、マスコミ向けに、東芝の技術戦略とCPS戦略に関する説明会が、2年ぶりに開催された。後半は、デジタライゼーションCTOIBMから招聘された山本宏氏。残念ながら、当日は教授会があり参加できなかった。HPに、プレゼン質疑が掲載。視聴したので、報告する。中身は、これまでも、言われてきたし、主張もしてきたことだが、IBMから来た専門家が、独特の表現と個性で表現されると説得力がある。https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/opr20181122.htm

 

アーキテクチャとCPS

 

 プレゼンでは、まず、CPSとアーキテクチャの話を、「おかず」と「弁当箱」に喩えた。

 

SPINEX

 

 そのB2BIoT向けプラットフォームが、SPINEXだが、世界標準に基づいた、オープンなインターフェイスを持ち、インプリメントは尖がっているところが特徴らしい。

 

IoTは東芝の強み

 

 これまで、多くのアナリストや専門家、IBMOBなどが、東芝のIoTには、競争力が無いとしてきたが、これは、サイバー空間だけの皮相的な見方であり、筆者は、フィジカルベースの多くのデータや、技術などの実績を豊富に持ち、国内中心だが、顧客基盤も強い上、かつては、制御だけでなく、画像認識などAI関連技術でもトップクラスであり、戦略を転換すれば、十分に機会はあると主張してきた。80年代の当時の「情制本」を中心の「I作戦」は、まさに、今でいえば、IoTあるいは、CPSである。

 

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INCJ(㈱産業革新機構)とJIC(㈱産業革新投資機構)の迷走

 

925日に旧INCJが会社分割により発足したJICが迷走している。報酬問題が注目されているが、投資方針も含め、意見の相違が大きいようだ。

 

JICINCJの違い

 

もともと、831日にINCJが記者会見を開き、921日に、新設分割により、新INCJとなり、925日に、JICが設立となった。

 

記者会見した田中正明社長は「単なるゾンビ企業を延命する気は全くない。賢いマネーの供給者になる」と強調。AIなど成長分野に強い技術などをもつ企業を選別して資金供給する姿勢を示し、①ソサエティー5.0に向けた新規事業推進、②ユニコーンベンチャーの創出、③地方に眠る将来性のある技術活用、④既存事業の産業や組織の枠を超えた事業再編に資金を投じるとしていた。

 

INCJと異なるのは、個々の投資案件に経産大臣の意見聴取が不要で、投資にはより自立した立場をとり、迅速な判断をめざすとしていた。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35730830V20C18A9EE8000/

 

 しかし、下図を見ると、微妙に、表現が異なる上、よく見ると、経産大臣が意見を述べるという部分もある。この解釈や中身が本質だろう。

 

 

 

本質は報酬問題ではない

 

 報酬問題もあるが、むしろ、そこは世論誘導であり、本質は、案件の方針だろう。もう、INCJでは、産業再生に係る新規案件が難しく、ジャパンディスプレイなどが支援できないが、そこを、JICでやりたかった可能性もあろう。

 

INCJの問題点とJICの課題

 

元々のINCJの問題点は、過去、何度も論じているように、①組成がダメで利害相反、②最初は志があったが、すぐに役所や海外ファンドの天下り先になり腐る、③役所や政治家、銀行など同床異夢、④ETTを持つ紺野先生以外は、目利き力、人脈が、弱く、特に、実行部隊が実質、経産省や銀行である、等が問題であった。さらに、本質的な総括が無いまま、延期となったことも課題だ。

 

https://www.circle-cross.com/2015/08/25/2015822-産業革新機構の折り返し点の評価/

 

https://www.circle-cross.com/2016/01/16/2016116-incj再考-ミイラ取りがミイラになるリスク/

 

https://www.circle-cross.com/2016/12/12/20161212-鴻海-シャープ-jdi-incj問題を振り返る/

 

https://www.circle-cross.com/2017/01/06/201715-産業革新機構-incj-でなく原子力再編機構を/

 

https://www.nikkei.com/article/DGXLZO97172410Q6A210C1NNS000/

これに対し、JICは、以下だろう。

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日本電子(JEOL)の決算説明会11月30日実施

 

去る113015時より恒例の決算説明会に参加、質問もした。いつも通り、プレゼンは栗原社長。質疑は栗原社長中心に幹部が対応、今回は、業績中心の質問。

 

決算は産機が好調

 

 2018年度上期は、売上467億円、OP10億円、NP14億円。産機が好調、理化学も原価改善効果大。マルチビームは受注5台、売上2台が寄与。B/Sは、長納期のものが多く、在庫増だが問題ではないようだ。

 

 2018年度は、売上1100億円、受注1120億円、OP52億円、NP40億円に向け、順調。中計Triangleの最終年度で、売上1200億円、経常利益70億円は微妙だが、利益は産機次第で不可能でもないだろう。

 

セラミックス超電導タイプのNMR

次期中計「70年目の転進」のメッセージの元、新製品の紹介が多い。中でも、セラミックス超電導タイプのNMRが紹介された。

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東芝の技術戦略 説明会(11月22日開催)

 

去る1122日に、アナリスト、マスコミ向けに、東芝の技術戦略とCPS戦略に関する説明会が、2年ぶりに開催された。201610月以来。前半は、R&D担当の斉藤専務、後半は、デジタライゼーションCTOIBMから招聘された山本宏氏。残念ながら、当日は教授会があり参加できなかった。HPには、プレゼン、質疑も含め、掲載。視聴したので、報告する。https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/opr20181122.htm

 

 最初に、車谷会長の10分近い挨拶。NEXTプランでも紹介されたCPSの話、東芝のDNAはベンチャーだと強調、個別では、精密医療へ再参入。

 

 斎藤氏は、東芝で、デバイスなどを中心に、長年、R&D一筋、メディカル部門も経験、どちらかというと、重電よりは、デバイスやデジタル家電、メディカルなどが多いようだ。

 

3分類で21の技術を紹介

 

 プレゼンでは、NEXTプランで掲げられたCPSテクノロジー企業を目指すため、①豊富な事業ドメインに基づくコンポーネント技術の更なる強化、②AIIoTをベースにしたデジタル化により顧客価値を向上する技術の開発、③将来顕在化する社会課題を解決するための先端技術の開発、と3つのカテゴリーに分類された。

 

このうち、いわば、①は要素技術、②は応用、③は先端基礎というイメージだろう。

 

 この3つに分け、それぞれ、885の計21の技術が紹介された。①では、SCiB、パワーデバイス、ViscontiLiDAR、ニアラインHDD、超臨界CO2サイクル火力発電用ガスタービン・燃焼器、②では、東芝におけるAIの技術開発の歴史とオープンイノベーションを取り入れた開発、アナリティクスAIである、SATALYSの紹介、③では、ゲノム解析から健診、診断、治療まで、精密医療の要素技術の紹介、重粒子ガン治療、生分解性リポソーム、スタンフォード大学と連携のAIデバイス、ケンブリッジ大学と連携の量子暗号通信、など。

 

この他、CPS事例では、IoT活用の電力需給安定化、鉄道保守高度化、ロボットによる物流自動化も紹介された。

 

ほぼ、これまでも、紹介されたものであり、新鮮味がなく、むしろ、実用性の進展や、何故これまでは離陸しないが、これからは違うのか、と言った説明が乏しかった。

 

研究開発体制

 

 研究開発体制(R&D)では、19-23年度に累計9300億円、平均1800億円弱ゆえ、ほぼ、売上高比率5%はこれまで通りだ。ただ、過去は、メモリーにかなり集中、原子力も多かったので、その分は、かなり、メモリー以外のデバイス、IoTAIに振り向けられるだろう。R&D体制は、一見、「研究開発から製品まで一気通貫のバリューチェーン最適化」とあり、リニアモデルに見えるが、最初の段階で、ビジネスモデルまで考えるそうだ。

 

 R&D組織では、研究開発本部の下に、コーポレートラボとして、研究開発センター、ソフトウェア技術センター、生産技術センターや、海外の欧州研(ケンブリッジと通信)、米、中国、ソフトウェアのインド、ベトナムがある。欧州と米の研究所は、基礎研究が中心で、海外の有力大学と連携、オープンイノベーション。ソフトウェアは、むしろ事業所に近い印象。また、各事業部門に、ワークスラボがあるのは、これまで通り。これ以外に、100億円規模のCVCがある。

 

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2019年とポスト平成時代を読む

 

平成は、「平らかな成長(Flat Growth))時代だった

 

平成時代は、まさに、日本経済にとっても、日本のエレクトロニクス業界にとっても、「Flat Growth」の時代であった。エレクトロニクス業界は、ゼロ成長どころか、右肩下がりだった。

 

総合電機5社は、日立は1兆円損失の後、回復、東芝は資産切り売りで、NECや富士通も、事業売却で何とか、命脈を保っているが、成長には遠い。家電では、三洋が消え、シャープは鴻海傘下で再生。財務危機のパイオニアはついにファンド傘下。パナソニックは、松下通信や九州松下、松下電工を統合したが、最高益は更新できなかった。CMOSセンサで最高益更新のソニーも10年近い苦境だった。

 

半導体では、日立、NEC、三菱電機から出たDRAMのエルピーダが破綻、他も成長を享受できていない。平成の始まりに世界ベスト10中、上位を占め、世界シェア50%近かったが、10%以下だ。日立、東芝、パナソニック、ソニー、エプソンを連合した、液晶のジャパンディスプレイも経営危機が続く。

 

平成時代の大手電機の営業利益推移はフラットに近い)。キヤノンなど精密機器は変わって、90年代半ばから躍進したが、リーマンショック後は停滞。広い意味でのエレクトロニクス業界では、健闘しているのは、村田や京セラ等の電子部品と、東京エレクトロン等の半導体製造装置くらいだ。2000年以降の精密や電子部品、半導体製造装置も含めた主要19社の営業利益合計もほぼフラットだ。

 

出所:筆者

 

出所:筆者

 

2018年を振り返る

 

このゼロ成長の平成の終わりに、カリスマ経営者ゴーン氏や、ファーウェイCFOが、それぞれ理由や次元は異なるが、逮捕された。今後の業界再編やガバナンス、国際経済への影響は大きい。

 

また、INCJの後を継ぐ、JICでは、株主である経産省と報酬を巡り、民間出身の役員全員が対立、辞任した。これも、政府ファンドのあり方も含め、今後の影響が大きいだろう。

 

ここでは、詳細や真因には触れないが、底流では、関連していると見る。昭和から平成もそうだったが、時代の変わり目に、日本も世界もきな臭い動きになってきた。

 

 昨年の特集では、「2018年の電機業界はここ数年の業界再編やM&Aは一段落し、OLED5GADASAI、電池等の新技術も出揃い、体制を整えて次の飛躍に向かうが、デバイス市況は転換、業績は踊り場となるだろう」と昨年書いたが、大きな方向性は、そうだったろう。

 

実際、2018年は、景況感や業績では、夏場から、米中摩擦や、スマホ成長一巡からのデバイス市況変化、設備投資減速、そして、業績踊り場となった。

 

また、リストラや新たな時代に向けての再編や連携、好業績企業のトップ交替、GAFA警戒感の中でのプラットフォーマーへの規制が注目される。

 

そして、日本のエレクトロニクス業界を育成してきたオーナー社長の逝去も忘れられない。

 

デバイス市況に転機〜メモリはシリコンサイクルの底

 

 2018年は、「スーパーサイクル」と言われた半導体業界はじめ、好調だったデバイス市況には、予想通り、転換点となった。NANDは春先から、弱かったが、夏場にかけ、暴落、DRAMも、スポットが下落に転じた。価格弾性効果に敏感な需要構造で、1年以上高値が続いていた中で、スマホが弱いことに加え、データセンターも金利上昇で投資一巡が効いた。ウェハーのタイト感も消えつつある。他のデバイスでは、SAWに加え、スマホ向けはMLCCも一服。FPDは大型TV向けLCD、中小型はスマホ市場鈍化で、OLEDLCD共に市況は軟化が続く、している。

 

 半導体設備投資も、需給変化を受け、夏からサムスン等で延期、ビットコイン急落で、TSMCなどファウンドリの投資もブレーキ、2Q決算では、東京エレクトロン等装置メーカーの業績下方修正が相次いだ。スマホ不振に加え、米中摩擦もあり、中国の工場投資も軟化、ファナックやオムロン等のロボット関連メーカーも下方修正。クルマ系向けは、EV化やADAS関連は堅調だが、それ以外は、米中で弱含み。

 

 

 シリコンサイクルは、民需IT市場では、PC向けの3-4年から、スマホ向けの1-2年に短期化、1年単位では打ち消され、加えて、より長期サイクルの産業向けである、クルマや産機、データセンター向けが大きく離陸した。この産業向けが、そろそろ、サイクルの終わりが近く、これが10年単位の金融危機と連動すれば、大きなサイクルの落ち込みとなり、警戒が必要だ。メモリは少なくとも、2019年前半は厳しいだろうし、これまで堅調だった受動部品も転換点だろう。

 

東芝問題にメド、シャープも含め、これからが正念場

 

2015年以降、不正会計から、WH減損など財務危機に瀕した東芝は、何とか上場廃止を免れ、独禁法その他で課題のあったメモリ部門もカーブアウトできた。売る必要はないとの意見も多かったが、経営重心が異なるため、本体にとっても、メモリ側にとっても、当然だ。

 

不正会計や、財務危機が無くても、そういう方向性であった。ちょうど、売却してから(まだ持ち分は40%あるが)、NAND市況悪化は運命的だ。今回11月に発表されたNEXTプランは株主還元やコーポレートガバナンスは評価するが、業績数値は厳しく、これからが、本体も来年IPOというメモリ社も正念場だろう。

 

シャープも、予想通り、鴻海傘下で見事に回復、OP1000億円近くはなったが、問題はこれからだ。頼みの鴻海も厳しく、コストカットでなく、成長であり、イノベーションだ。

 

前向きの上場廃止

 

再編では、これまでは、上場廃止というと、後ろ向きの場合が多かったが、成長に向けた経営重心的視点でのポートフォリオ見直し、前向きの上場廃止も目立った。

 

日立国際は、最高益更新の中で、半導体製造装置部門とインフラ部門を切り分け、前者はおそらく、装置会社と統合、後者も、連携を目指すだろう。 

 

日清紡HD傘下の日本無線と新日本無線も、上場廃止、多少、事情は異なるが、前者は、業績不振の中で、HDが目指すADASの成長を取り込み、後者は、HDが買収したリコー電子デバイスとのシナジー効果による成長を目指す。

 

アルプス電気によるアルパイン完全統合もついに実行だが、同様のトレンドだろう。

 

CASEトレンドで、キャリア化するクルマ産業、これからのクルマはスマホ端末

 

クルマでは、CASEが大きなトレンドだが、トヨタがソフトバンクと提携、先手を打った。また、トヨタ系のTIER1でも連携、ケーレツ再編に動いている。今後、クルマ産業は、キャリア化するだろう。これは、必然的にリカーリング型になる。企業が巨大化すれば、キャリア化は必然である。

 

出所:筆者

 

これは、NTTドコモなど、通信キャリアをイメージすれば分かり易い。徐々に、ユーザーは、通信端末同様、クルマ(モビリティ端末)を、キャリアの影響で、買換えさせ、あるいはレンタルするようになる。 

 

コネクテッド化や自動運転になれば、データや損害保険もより重要になる。そこでは、ハードの車種はどこであっても、どのキャリアに加入しているかが重要であり、ハードの魅力に加え、5Gを使ったアプリ、総合的な自動運転の使いやすさや安全性、電池などエネルギーの充電インフラ、データセンター等が整っているなどの使い勝手が鍵になる。そういう全体を理解し、クルマを提供するだけでなく、NWや電池補充等インフラを整備できるのは巨大なキャリアだ。

 

トヨタは、まさに、そうした技術力も、資金力も備えている。トヨタ自身のクルマも提供するが、連携先の国内クルマメーカーや、中国のEVメーカーのOEMもありえよう。ハードの品質の不安も、インフラ側で補完できる。場合によっては、トヨタ・キャリア会社の傘下に、クルマメーカーや、パナソニック等も入る場合もあるだろう。

 

こうしたキャリアには、グーグルやアマゾン、ソフトバンク、電力会社なども可能性はあろう。この場合は、クルマハードは、他から仕入れることになる。トヨタは既に、レンタル業もあり、既に、実態はキャリア的だろうが、その色を強めることになろう。その中で、ソフトバンクとの提携や、ケーレツの再編が注目されるが、ルノー、日産、三菱自のグループや、ホンダなどは焦っていることだろう。

 

今回は、最も巨大で成長市場のクルマだが、同様の業界超再編は、ヘルスケアや、工場に自動化やサプライチェーンなどでも加速化するだろう。

 

出所:筆者

 

トップ交替とカリスマオーナー達の旅立ち

 

2018年は、創業50周年、60周年、100周年などが多いこともあり、トップ交替が集中、業績好調な中で、三菱電機、ソニー、TDK、ローム、日本電産、新トップが誕生した。

 

今後、ゴーン問題も含め、指名委員会や報酬委員会は一層厳しくなろうが、彼らの目利き力が重要になるが、その際、社外役員の資質も含め、日本の人材の質と量が課題だろう。

 

 また、悲しいことだが、実際にお会いして、話を伺い、親交もあった多くのカリスマ経営者が逝った。戦後のエレクトロニクス業界だけでなく、高度成長を牽引した方々だ。

 

ロケットササキで有名な電卓のシャープの佐々木正さん、同様の電卓戦争を戦ったカシオに樫尾和雄前会長、ソフトバンクの孫さん等の先輩格でもあり、PC周辺業界でメルコ創業者の牧誠前会長、ノーベル賞に貢献した浜松ホトニクスの昼馬輝夫前会長、業種は異なるがハイテク産業に理解があったユニ・チャーム創業者の高原慶一朗氏、この他、オーナー系ではないが、三菱電機の北岡元社長にもお世話になった。これ以外にも、多くの戦後のエレクトロニクス業界を支えた方達が、去っていく。心より、ご冥福を祈りたい。

 

 こうした戦後を牽引し、最強時代のエレクトロニクス業界を知る成功体験のあるトップが去り、ゼロ成長ばかりの時代を生きてきたトップが、指名委員会で選ばれていく。

 

コーポレートガバナンスは、簡単にいえば、正しくカネを儲け、儲けたカネを正しく配分することだ。後者については、ガバナンス的には正しくなっていくだろうが、問題は前者だろう。

 

2019年を読む

 

 ポスト平成時代を読む前に、2019年について、記したい。これは、ある程度、現在の延長線上にあり、決まっているイベントもあるからだ。

 

まず、市況は、メモリはじめ、低迷、底打ちを模索するだろう。半導体設備投資も前半は期待できない。東京オリパラや、消費税前の駆け込みが、プラスだが、激しさを増し、長期化しそうな米中摩擦、欧州不安や、金利上昇で、金融は、新興国中心に不安定だ。企業では、原子力に関する日立の決断や、鴻海シャープ関係だろう。

 

このため、2019年度業績は減益、そして、2020年度は、オリパラ反動や、消費税上げ、そして、新政権で、金融政策が大きく変化があれな、昭和から平成への動き同様に、大きく調整しよう。まさに、アベノミクスバブル崩壊が起こる可能性がある。この中で、世界的にも空前のM&Aブームの反動で、ノレンの減損などが相次ぐ可能性もある。

 

ポスト平成時代を読む

 

 ポスト平成時代を読む前に、まず、平成時代を振り返る。そこで、参考になるのは、1991年に当時、経済企画庁による技術予測である。慎重すぎて、下に外したものもあれば、楽観的だったり、国策に忖度して大きく外したものもある。

 

 慎重過ぎたのは、移動通信や一部のデバイスだ。平成時代に、テクノロジー面で、大きく経済成長に貢献したのは、移動通信、ナビゲーション、電池、NAND、液晶だろう。ウィンテル関係のハードであるCPUとソフトではウィンドウズのOSだ。まさに、ウィンテルがプラットフォーマーであり、それを可能にしたルールが、ノイマン型コンピューターと、ムーアの法則だった。また、光ファイバーやインターネットの発展も大きかった。 この中で、業界構造や経営学的には、ハード、ソフトの分離、垂直統合から水平分業、それを支えたのは、ムーアの法則通りのデバイスの発達で、量産効果で価格弾性が効いた。ソフト分野では、標準化でスケール、外部ネットワーク効果が大きかった。

 

 大きく外したには、過去もそうだが、エネルギー関係で、原発、核融合、燃料電池など発電分野だ。機械分野は、クルマも飛行機もそれほど大きい飛躍はない。国家プロジェクトや国策があるものは、要注意だ。

 

 

ポスト平成時代は2050年まで

 

 新しい時代は、とりあえず、2050年まで考慮すれば、十分だろう。筆者は皇太子と同学年だが、2050年には、90近く、平成天皇の年齢に近くなる。

 

 予測をする際に、ある程度の計画が決まっていたり、ロードマップや技術開発目標がある場合も多い2025年までと、中期予想も多い2035年まで、そして、全く予想がつかない、いわばSFの世界の2050年までの三段階で示す。ただ、「大数の法則」にも似て、近未来は、ノイズも大きく、むしろ外れ、長期のSF的な予測の方が、トレンドが正しい場合も多い(報知新聞の19011月の20世紀の予測)

 

 中期の予測で、比較的当たるのは人口予測、それに基づく各国のGDPなどだ。これをベースに、中長期で、決まっている計画や、比較的蓋然性が高そうな予測を割振りし、現在のトレンドを延長して、整合性をとる。この際に、参考にするのが、過去の各種予想であり、その当否を分析して、今の予想の背景にある構造を分析していく。その上で、起こりうる構造変化を予想する。

 

 そうして作成したのが、この長期カレンダーだ。類似のものも多いが、重要なのは、分野が異なっていても、それらは、同じタイミングであれば、相互に関係し、影響しあうことを忘れてはならない。また、業界構造変化などは、オリジナルなものであり、この30年以上の予測分析ノウハウが背景にある。

 

 

2050年までの6つのトレンド

 

 この中で、重要な長期トレンドを上げたい。

 

第一は、少子高齢化だけは必ず来る。その中で、老人の生産性向上(ボケ防止も含め)を、ロボットやAIがどう貢献するかが鍵だ。幸い、記憶が抜群でコジカルなAIは、最適だ。これが、人生100年時代も含め、新市場になる。需要面だけでなく、労働という供給面でも、彼らの活躍は大きい。これに、大学、専門職大学院や専門職大学など、学校教育改革も関連してくる。ここで、日本が政府の規制改革も含め、新しいあり方を確立すれば、日本に次ぐ少子高齢化国家である中国市場も期待できよう。

 

 第二は、少子高齢化にも絡むが、ヘルスケアが成長市場であることは既に疑いがない。これに、多様な五感や、それを超えたセンサとデータにより価値を如何に提供するかだろう。この30年間は、エレクトロニクスは、1960年からの30年の半導体やコンピュータのイノベーションを活用はしたが、全く異なる、サイエンス的な意味においても、大きなイノベーションは少なかったかもしれない。しかし、バイオやヘルスケアの分野は、サイエンスレベルでの発展が大きかった。日本では、1970年代までは、理工系ブームで、最優秀層が、多かったが、その後は、医学部ブームであった。この貢献を期待したい。

 

 第三は、エレクトロニクスを牽引してきたノイマンアーキテクチャーとムーア則の限界である。その中で、バイオ系などとの融合が期待できよう。これは、シンギュラリティや熱限界にも関係する。

 

 第四は、既に起こっているが、業界を超えた融合である。今は、ADASIoTなどだが、ヘルスケアや、工場自動化、サプライチェーンにも広がろう。その中で、企業は、一層、業界の差が消え、また、ファンドとの差異もなくなろう。いわば、財閥化であり、ソフトバンクは、その典型だ。

 

 第五は、そこでは、当然ながら、イノベーションのあり方も、オープンイノベーションが進み、コーポレートラボは、M&Aやベンチャー投資の目利き力が最重要課題となろう。これは、今のアップル等では、当然だ。

 

そこでは、新めて。R&D費用の正確な認識と業界での統一、投資家との共有が不可欠だ。筆者は、20184月に、ROE、成長率g、R&D費、割引率rの関係について、恒等式命題を考案、提案した。

 

(1+R&D(1+割引率)=λ(1+成長率)(1+ROE)・・・若林のR&Dと割引率に関する恒等式案

 

ここで、左辺はイノベーションに対するリスクテイクの度合、右辺は、利益拡大の目標を示し、λは通常は1、リスクテイクと目指すイノベーションの成果のバランス、効率性により1前後で変わる。

 

この4つの変数の関係に戻ると、ROEと成長率は、利益の源泉であり、他方、R&Dや割引率は、イノベーションを起すための、必要なリソース配分やリスクの取り方に関係する。いわば、R&Dは、イノベーションのためのリスク費用、割引率は、その最低水準のリスクともいえよう。

 

第六は、こうした。業界構造の変化、イノベーションの認識の変化の中で、経営学や経営の常識も根本的に変わるだろう。過去のP/Lから、一層、B/SCF重視になろう。その中では、ROEでもいいし、アマゾンのように、CCC改善でもいいだろう。要は、何であれ、キャッシュを生みだせばいいし、それが先行投資や、ステークホルダー還元等に使えればよいのである。

 

 

 

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ファーウェイCFO逮捕と米中摩擦

 

ファーウェイCFOで創業者の娘である孟氏が、イランへの不正輸出の疑いで、121日、「米中摩擦休戦」報道でほっとした日に、米の要請で、カナダで逮捕されたことが世界に激震を起している。

 

 日経新聞によると、同氏は、2016年頃からHSBC口座を介し、米が制裁対象のイランに不正輸出をしていたという。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38657460X01C18A2000000/

 

NDAA2019NDAA2020

 

また、日経は、8月に成立したNDAA2019を使い、米政府が取引禁止など制裁に踏み切る可能性を示唆している。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38651580W8A201C1MM8000/?n_cid=SPTMG022 これは、超党派の賛成で上下両院可決の「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」、ファーウェイ、ZTE、ハイクビジョン(監視カメラ大手)、ダーファ・テクノロジー、ハイテラの5社を対象に、安全保障上リスクありと警戒を強め、5社への締め付けを大幅に強化する条項。

 

第一段階は、2019813日以降、政府機関や米軍、政府所有企業は、サーバーなど5社の製品や部品を組み込んだ他社製品を調達することを禁ずる。

 

さらに、20813日以降に導入する第2段階の規制(NDAA2020)では、5社の製品や部品を使っているだけで、アウトというもの。まさに、ウィルスに汚染されたら、一切ダメという感じだ。

 

広がる忖度

 

 これに呼応して、ファーウェイとは特定していないが、日本政府も、通信機器などITインフラ調達に関し、コストだけでなく、安全保障を優先と発表、英でも、BTがファーウェイを排除の模様。

 

なお、既に、NDAA2019成立直後の8月末には、オーストラリア政府が、5Gネットワークに関し、ファーウェイとZTEを排除と発表、欧州や東南アジア諸国にまで広がる可能性があろう。

 

なお、ファーウェイとZTEは、中国ハイテクといっても、前者はオーナー系、後者は国家系で異なる。また、ファーウェイは、チップをハイシリコンで内製「キリンチップ」)している。ファーウェイが中国に軍事企業かどうかは、不明だ。オーナーや内部に詳しい方は、違うといい、米関係者や、関連企業は、そういう認識だが、もとは、シスコが焚き付けたという話もある。

 

今回の件で、メリットが大きいのは、エリクソン、アルカテル等(日本のNEC、富士通、OKI、日立国際など)だ。

 

ただ、意図は別にして、ファーウェイの基地局などインフラを導入し、端末も買えば、当然、国家の機密も個人の秘密も、見ようとすれば、見えるし、攪乱も可能です。それが、4Gまでなら、通信だけ、スマホだけだが、5Gになれば、クルマや、IoTで社会インフラ全部になり、一層脅威は高い。

 

 台湾の報道では、ファーウェイがコアサプライチェーンとして公表した米国系33社、中国系27社、日系と台湾系それぞれ11社に影響があると報道、TSMCなど台湾メーカーも痛手としている。鴻海のテリーゴー会長は、5-10年の影響だとしている。

 

米中ハイテク新冷戦

 

 これまでの米中貿易戦争は、トランプ政権の人気取りなどの論点が主だったが、ここにきて、その背景にある真因は、ハイテク覇権であることが明らかになった。

 

そのハイテク覇権を守るため、米の必殺技は、①米「危険」国家への不正輸出(かつての東芝ココム事件、今回はこれ)、②知財(かつてのIBMスパイ事件、最近では、中国のJHICC)、③為替操作(プラザ合意)、④関税(過去の繊維など)やダンピング、⑤不正金融や資金洗浄、などの戦術があり、特に、80年代は、①から③の3点セットで日本がやられたから、中国も同じように、やれると思ったのだろう。

 

さらに、当時はなかったが、⑥投資規制のCFIUSや今回の⑦NDAA2019もあり、非常に強力である。内容は異なるが、かつてのスーパー301を思い出す。

 

 

日本では、特捜の、有報虚偽記載(ゴーン)や、外為法(田中角栄)などがあるが、それ以上だ。目的は同様で、米から危険視されている企業は、余計、気をつける必要があり、形式犯でやられる。また、孟氏も迂闊だったのだろうか。日本企業が標的にされるリスクもある。

 

こうした米の警戒感は、5G本格化離陸を前に、中国2025に象徴されるChina Challengeが、刺激になっている(習近平も「中国製造2025」とか言わずに、静かにやっていればと思うが)

 

当然、中国も、こうした米の政策について、かつての日本の衰退も含め、研究はしており、より、強かだろう。やはり、かえって、内製しかない、自国経済で閉じるしかない等と思って、中期で内製力を高めるだろう。

 

これは、法とサイバーと金融を武器にした、新たな冷戦の始まりかもしれない。世界が二極化するかもしれない。

 

なお、104日、米国のシンクタンク、ハドソン研究所にてペンス副大統領が50分にわたり対中国政策についての演説を行っているが、これは、いわば、太平洋戦争のハルノートに相当、逮捕日が、127(米時間、日本は128日の少し前というのは微妙だ。https://www.newshonyaku.com/usa/20181009

 

 また、この数年、米政府は、「The China Challenge」を警戒している。https://www.nitrd.gov/pcast/index.aspx

 

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GSユアサの決算説明会参加(11月20日)

 

去る112015時にGSユアサの決算説明会があり、参加した。今回は、決算関係だけで、技術的なトピックスは無かった。プレゼンは、村尾社長で質疑も対応。なお、短信は、通常の営業利益、プレゼン資料では、ノレン償却前の営業利益であり、やや紛らわしい。

 

業績好調

 

 業績は、上期の売上21001954億円、OP6070億円、ノレン前OP7382億円、NP3035億円、売上は下ブレたが、過去最高、OPは、鉛価格下ブレが効いた。費用減効果もあったが、期ズレで、通期では、イーブン。

 

2018年度通期は、売上45004000億円、OP220230億円、ノレン前OP245255億円、NP130140億円。売上減は、自動車海外が鉛価格連動で売価下落と中国自動車販売減、OPでは、国内自動車に鉛価格減。鉛価格建値は、現在、30万円/tだが、前提の34万円/t(LME2500ドル)は不変。

 

セグメント別では、国内は、ISS(アイドリングストップ)車用の鉛電池が高水準、補修向けもミックス改善、更にEN(欧州統一規格)採用も増加。前期より、パナソニックの鉛蓄電譲渡の影響を織り込んだが、今期は、シナジー効果もあり、利益率改善。

 

海外では、中国、タイ、インドネシアはフル連結だが、トルコやインドが持ち分法適用であり、注意を要する。自動車用鉛蓄電池は、中国は増加だがアセアン減、オートバイは、タイ、インドネシアは増加だが、中国ベトナムで減。中国では、排ガス規制で、ISS(EFBISSで液式)が急増、天津工場のキャパを400万個/年から、2021年度600万個/年へ。オートバイでは、インドの工場のキャパを240万個/年から、2021年度700万個/年へ。

 

産業用電源は、フォークリフトは好調維持、国内では2006年からのオフロード法、欧州も排ガス規制で約80%がバッテリー式となり、需要期待。他方、バックアップ用電源は減、現在、クルマなら、4.5万台分のLIBで、好調という風力発電用蓄電池はリスク。

 

なお、特機事業は6月に、マクセル社に譲渡。規模は30億円程度。特機というと、防衛向けと思われるが、そうではなく、小型リチウムイオン電池用充電器、ACアダプタ、酸素センサ、水素ガス発生装置、溶存酸素濃度測定モニタ・センサ、電動工具、リチウムイオン電池パック(主に工具用途)、充電器など。

 

マクセルは、ドローン用など強化。電池でも、経営重心的に右上の軽いのはマクセル、GSユアサは、産機やクルマ、インフラ等、下側だ。

 

車載リチウムイオン電池は再び、上期で赤字。通期の黒字は目指す。LEJは好調だが、ブルーエナジーが苦戦。工場の稼働は、LEJで欧州向け80%BE8070%と低下。

 

完成形で実績を出すフェーズ

 

 GSユアサは、2004年に、旧GS(日本電池)と、ユアサ(YUASA)が対等合併して、14年を経過、それまでは、鉛電池が中心だったが、クルマ向け中心に、リチウムイオン電池を強化、三菱商事や三菱自工とLEJを、ホンダとブルーエナジーを設立、苦労したが、ようやく黒字基調になった。また、パナソニックからも、鉛電池の譲渡を受け、今回は「電池」のマクセルに、特機事業を渡す。環境規制も追い風であり、中国やハンガリー等、海外に工場も増やし、ポートフォリオは固まって、攻めるフェーズのようだ。

 

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最適な自己資本比率とは

 

これまでは、保守的な観点から、企業経営者は、自己資本比率は高いほどよく、最低限の銀行との付き合いを除けば、無借金がいいとされる場合もあった。ただ、無借金といっても、通常は、売掛に相当する買入債務もあり、1ヶ月程度とすると、自己資本比率は90%程度が限界だろう。

 

ROEだけでなく、最適な自己資本比率はコーポレートガバナンスの重要な論点

 

 しかし、ROEを上げるためには、計算上では、自己資本比率は低いほどよい。これが、高ROEありき、では、本末転倒だが、よく考えてみると、コーポレートガバナンスの観点からは、企業にとって、最適な自己資本比率とはどの位がいいか、という議論になる。企業が成長する自信があれば、どんどん資金調達をして、成長投資をすればいいが、自信がなければ、自社株買いで投資家に還元すればよいのだ。

 

 正しいガバナンスとは、正しく金儲けをし、正しく儲けたカネを配分することだ。概して、前者の議論は多く、企業側にも認識されているが、後者の議論がまだ少ない。

 

事業特性で最適な自己資本比率が異なる

 

自己資本比率は、そうした成長余力と、事業の種類、とりわけ、リスクや競争環境などによって、最適な比率が異なるだろう。そこで、ここでは、その考え方をまず示したい。

 

国内中心のかつての電電公社や電力向け中心の業界では、自己資本比率は高い必要はなかった。受注のサイクルはあるが、長期で安定しており、債権回収もリスクが少なく、現預金に近い。設備投資も、これまでは、減損のリスクは少なかった。為替変動もない。通常、総資産回転率は、0.51.5位が多いので、1と置くと、ROS5%程度のインフラ事業は、不景気で赤字といっても、数%であり、ゆえに、総資産に対しても、数%であり、自己資本比率が20%もあれば、十分だ。

 

しかし、海外インフラ事業を行う場合は、減損などの影響が大きい。特に、M&Aが多い場合は注意する必要がある。ノレンは、日本では償却してきたが、米では、減損テストにより行うので、ノレンが積み上がり安く、長期の事業では、1%の変動が大きくなる。20年ならば、1%20%になり、固定資産が50%もあれば、数10%が影響する。

 

これは、長期のインフラ事業では要注意だ。それゆえ、自己資本比率は、50%以上だろう。少なくとも、ノレンや無形固定資産以上の自己資本があった方がいいだろう。

 

デバイス等、国際競争や技術革新も激しい事業では、設備投資型で、減損リスクもある上、急激な値下がりにより、在庫損や為替リスクもあるため、十分な資本を積む必要がある。海外メーカーの例からも、概ね70%以上は必要だろう。

 

デバイス事業は、先行投資負担が大きい上、価格変動も大きいので、ROSはプラスマイナス50%もありえる。赤字の場合は、数10%であり、自己資本比率は、50%では心もとないだろう。

 

実態の自己資本とは

 

現在のB/Sは、欧米流のステイクホルダーの考えから成り立っている。そこでは、従業員や銀行、取引先は、あくまで他人の割り切った関係だ。

 

しかし、日本では、メインバンクの存在は、借金を返して終わり、というのではなく、むしろ長期株主的だ。それゆえ、借入金は自己資本に近く、実質、株主的な発言もするし、DESにも応じる。日本の銀行の概念と、米での商業銀行の概念は異なる。

 

社員も同様だ。海外と異なり、従業員の給与が時価でなく、年功序列終身雇用の中で、40歳までは、従業員がいわば、会社に貸し、50歳以降は、借りを返す形であり、さらに、企業年金もある。これらは、実態は、株主に近い。これは、労働者の流動性が高く、報酬が時価で支払われる米とは異なる。

 

取引先、下請けも、同様だろう。日本では、会計上はワンイヤールールだが、実際は、長期の中で、貸し借りを返していく関係である。そうした実態を無視して、形式的に、B/Sを考えて、自己資本比率を議論しても仕方がない面はある。

 

 こうした議論が、実態の会計、ガバナンスの一層の向上になれば幸いである。

 

https://www.circle-cross.com/2017/01/29/2017128-メインバンクとは何か-株主とは-長期-投資家とは何か/

 

 

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東芝のNEXTプラン

 

去る11713時半からの説明会参加後、第一印象を記した。https://www.circle-cross.com/2018/11/08/東芝のnextプラン発表会の第一印象-リストラ対象事業や社員-売却されたメディカル-メモリなどの社員は泣いていないか/

 

その後のHP視聴による再確認、119日のスモールミーティングでのフォローアップを踏まえ、NEXTプランについて考えたい。

 

説明会で期待されていた新しい東芝の姿

 

 今回の中計で、説明を期待されていたことは、①新しい東芝の理念を提示するか、②これまでコアあるいは、成長期待事業だったメモリ、原子力、メディカル、PC等を外に出した後、何が新しいコアであるか、すなわち、どういう事業ポートフォリオとするのか、③このポートフォリオで、いかなる業績を達成するのか、そのため、いかなる戦略をとり、R&D投資やCAPEXはどうか、④目指すべきKPIと、リスクと、B/Sなど財務水準はどうか、であろう。

 

サイバー・フィジカルの融合で世界有数を目指す

 

東芝の役割、目指すべき姿を、世界有数のサイバー・フィジカル・システム・テクノロジー企業としたのは、正しいだろう。サイバーだけでは、既に、GAFAがおり、キャッチアップは難しい上、IT×IT、あるいは、デジタル×デジタル、では、コストは下がるが売上は増えないIT企業の二の舞だ。日本あるいは、総合電機たる東芝の強みを生かす意味で、サイバー×フィジカルだし、これが、IoTという視点でも、今後の成長市場だろう。

 

他方で、東芝グループの起源が、2人の創業者のベンチャースピリットを甦らせる、というのは、やや違和感がある。これが、マツダのランプ、モーターの芝浦であり、E&Eの東芝、また、それが2コアとなったが、東京電気と芝浦製作所が、なぜ、一緒になったか、を共有すべきだろう。

 

さらに、皮肉は、東京芝浦電気となってから生まれたイノベーションが7つあるが、その中で、白物家電、ワープロ、PCNANDフラッシュ、320CTスキャナー、という5つについて、その事業が、今は、売却されたか、無くなっているといういとだ。

 

DNA再認識という場合に、いきなり、「サイバー・フィジカル」ではなく、どうして、二社が統合したのか、革新事業が継続しなかったのか、について、現場従業員と議論し共有すべきだろう。

 

経営重心的にも、正しいポートフォリオ

 

 東芝問題(不正会計、財務危機等)の真因は、ポートフォリオ問題だと「経済教室」に書いたが、それは、2000年以降のポートフォリオが、経営重心から見て、短サイクル・大ボリュームのメモリと、長サイクル・小ボリュームという、事業特性、リスク特性の全く異なる2コアに、「選択と集中」をしてしまい、最も美味しいジャパンストライク・ゾーンが手薄のなったことだ。結果的に、メモリを出し、原子力(WHと英国ニュージェン)LNGなどエネルギーから撤収したことは正しい。特に、今回、コストはかかったが、LNG売却は勇気ある判断だ。ただ、なお、火力等のリスクはあろう。他方、メディカルや白物家電は、ジャパンストライク・ゾーンの中にあり、IoT、あるいは、サイバー・フィジカルへの展開があり、惜しい。いずれにせよ、90年代に飛躍した、PCNAND、メディカル、等は、もうポートフォリオにはなく、80年代前半の姿に戻った。当時は、情報処理制御本部を中心に、I作戦という、おそらく、今でいえば、IoTやビッグデータ、サイバー・フィジカルだった方向性を目指していた。それゆえ、ある意味、先祖帰りであり、現状は、ほぼ、ジャパンストライク・ゾーンの中に、ポートフォリオはあり、これで、現状実態のOP1000億円は、それほど悪くはないし、これまで、メモリや原子力に偏っていたR&Dを振り向けば、成長は可能であり、国内に強力な顧客基盤を持つことから、OP1500億円程度は視野だ。

 

 

業績目標はやや甘い

 

このポートフォリオから、調達改革、リストラ、DX、モジュール化で、オーガニックに、成長を目指すというのは正しいだろう。M&Aによらない、のも、当面、バリエーションから高すぎるというのも、見識だ。

 

ただ、それで、2023年度の売上4兆円、OP8%以上で10%目指す、というのは、OP32004000億円であり、かなり違和感がある。しかも、その内容が、再生エネルギー、パワーデバイス、電池というのは、これまでも、紹介されており、事業拡大が遅れており、物足りない。

 

なぜ、これまで期待させながら、ダメだったのかについて言及すべきだろう。また、サイバー・フィジカルも、内外で、多くの企業が手掛けており、ライバルとのベンチマーク分析が貧弱だった。

 

目標としては、2019年度の売上3.4兆円、OP1400億円はいけるが、2021年度の売上3.7兆円、OP2400億円は、そうとうマクロ景気が良くなければ、困難だろう。

 

現状のポートフォリオで、いくならば、シーメンスのように、バリューチェーンに沿った強化を、それこそ、M&Aもあえて否定せず、行うべきだろう。

 

企業価値拡大=TSR拡大を適度なB/Sとリスクを考慮

 

 今回、最も注目すべき点は、目指すべきKPIに、よくあるROEなどでなく、TSR(Total Shareholder Return)としたことだろう。ある意味、直截的だが、明快である。

 

ROEは、普通の株主から見て、意義がわかりにくく、従業員から見ても、馴染みがない上、株主資本比率や自己資本比率をどうするかという議論もある。よくある8%以上などの議論も、統計的に、ROE8%を境にPBRが急上昇するということが背景にあり、多くの経営者が資本コストを意識していない。企業の成長も、収益性やCF改善も、要は株主にとっては、TSR向上のための手段でしかない。

 

 メモリ社の売却で、9月末の現預金1.9兆円(純現金1.44兆円)、株主資本は1.9兆円強(40%)、純資産2.1兆円強、ここから、算出される分配可能額を1.17兆円強とし、諸費用を鑑み、株主還元のための自己株式の取得規模を7000億円と算定、2018119日〜1年かけ、自社株買い。また、20円配当を実施、5年間の平均配当性向30%とする。

 

 この結果、2018年度末の株主資本は1.03兆円(27%)、純現金は4300億円に低下する。これは、これまでの一般的な実業界の常識である「自己資本比率は安全性や保守性から高いほどよい」等と全く異なる。

 

また、つい最近まで債務超過の危機にあった企業とは思えないようにも思われるだろう。あるいは、そんな株主還元に使うカネがあれば、R&DCAPEXM&Aに使うというのが一般的だろう。

 

画期的な判断

 

 しかし、東芝は、無駄に株主資本比率を高くせず、現在の国内中心の社会インフラ向けが多い事業中心のポートフォリオでは、株主資本比率が30%前後で十分と判断、また、バリエーションからM&Aは割高、必要以上にR&DCAPEXに使っても、固定費が増えるだけで、費用対効果が薄く、それなら、株主に報いるべきだと判断したのだろう。これは、極めて画期的な判断である。

 

すなわち、多くの企業がROE目標は示しても、あるべき株主資本比率、自己資本比率、D/Eレシオなど、B/Sの姿に対して、ビジョンが無かったが、東芝はそれを示したのだ。もちろん、かつての師匠であり、現在は落日のGEのように、M&Aのやり過ぎでノレン合計6兆円に対し、株主資本3兆円は論外だが、闇雲に、株主資本比率が上がるのも問題なのである。

 

もちろん、NAND価格暴落で、TMC社の持分4000億円強は、減損や評価損もあり、中長期のリスクがある火力や鉄道もあり、そこは十分な財務基盤が必要だ。ただ、主として国内であり、さらに、交通システム全体をやろうという日立とは異なる。さらに、IFRS対応もあろう。

 

関連して、執行役報酬制度の明確化、様々な評価基準を入れ、概ね、業績連動分を50%強にしたのも、正しいだろう。また、内部統制も、2線、3線と強化した。ただ、あまり、ガチガチにすると、却ってイノベーションを阻害する。正しいポートフォリオと、適切でシンプルな評価基準があれば、不正会計も減る筈だ。

 

残された問題

 

今回、開示が足りなかったのは、中期の割引率のイメージやレンジだ。これまで、610%前後と説明はあったが、10%近いのは、メモリや原子力であり、大きく、数値は変わった筈だ。当然、割引率が低下すれば、B/Sのあるべき姿も異なってくる。さらに、セグメント別のB/Sのあるべきイメージや、割引率の開示も欲しい。

 

こうした割引率の開示が無ければ、中長期のリスクを会社側と、投資家側が共有できない。こうしたリスク度合いの共有があって、初めて、長期投資が可能になるからだ。

 

東芝問題は、近因は不正会計を許したガバナンス、真因はポートフォリオ、遠因は企業文化だと、日経新聞経済教室にも書いた。今回、ガバナンスは十二分、ポートフォリオも改善、あとは企業文化だ。これについては、総括されず、まだ闇も残っている。ただ、企業文化は是非の問題でなく、常に、光と影の両面がある。無理に企業文化を変えても、却って良さも無くす。あまり、業績目標で無理をせず、かつてのイノベーティブな会社に戻ってほしいというのが願いだ。

 

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Vテクの2Q決算説明会(11月14日)

 

111415時からの説明会に参加、質問もした。ハイテク景況感変化の中で受注一服、他方、先週のイノテックとの提携もあり、期待と不安が入交じり、参加者多数。プレゼンは、いつも通り、杉本社長。

 

業績

 

 上期業績は、受注233億円(1Q149億円、2Q84億円)、売上381億円、GP125億円、OP84億円、NP58億円、は想定通り、OP上ブレ。受注は4Qをピークに、減少中だが、前期の反動。なお、2QOPは、1Qに比べ大きく改善だが、ミックスが良かった。受注は2Qが底で、今後、回復のようだ。B/Sは仕掛、前受金などが大きく増加、FCFはマイナスながら、やや改善。CCCなど工夫は欲しい。

 

 通期は、売上820770億円は下方修正だが、OP165億円、NP100億円は不変。売上50億円の下ブレ内容は、半分がユーザーの資金面で工場建設遅れ、納品延期、あと半分はマスク新製品開発遅れ、

 

 ディスプレイ需要予測に変化はなく、面積ベースで年率4-5%増が続く、20182020年は、投資も480500億ドルと高水準で横這い、OLEDLCDの割合も大きくは変わらない。

 

トピックス

 

 今回は、OLED(ディスプレイ、照明)、半導体関連、フレキシブルμLED、フォトマスク描画、局所レーザーアニールについて、紹介。半導体関連、フレキシブルμLEDは初めてであり、注目。

 

 Vテクは、中期で、ディスプレイ1000億円、半導体1000億円を考えており、今回の半導体でのZ-CSET社設立、イノテックとの提携は、その布石として、注目される。

 

https://www.circle-cross.com/2018/11/10/イノテック2q決算説明会-vテクと半導体テスターで提携発表/

 

 

OLEDは縦型蒸着、FHMに加え、Demuraサルベージサービス

OLEDについては、技術のロードマップと市場シェアが提示。

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新電元2Q決算説明会(11月12日)〜インド市場取り組み

 

111215時半〜の2Q決算説明会に参加、質問もした。前半は、鈴木社長による業績説明、後半は、久しぶりに、トピックスであり、上席執行役員の新関氏より、電装事業に関して、「インドの市場展望と当社の事業取組み」であり、貴重な内容であった。質疑は、両氏の他、出席の根岸専務、田中常務、受川氏などから対応。なお、HPを刷新。https://www.shindengen.co.jp/

 

業績は微妙

 

 上期は売上470466億円、OP29億円、NP2423億円と想定線。当社はデバイスの2/3がクルマ産機であり、パワーデバイス市況など業界好調、円安ドル高の中では物足りない。

 

これは、アジア通貨安が効き、y/y、マイナス6億円分、また、ウェハー等材料費高騰も数億円、であり、納得。ウェハーに関しては、4φ、5φが多く、北海道地震の影響もあったようだ。これまでは、国内調達だったが、海外も質を考慮しながら検討するようだ。値上げ幅は20-30%もある模様で、品質を考慮しながら、長期契約を交渉中、数量確保へ。

 

なお、車載MOSFETLFパッケージ量産、チャデモ認証の新型EV急速充電器の開発完了で、下期量産開始。

 

 通期は、売上967億円、OP58億円、NP48億円、のままだが、セグメント別では、デバイスが、産機の不透明感や原材料コストで、売上363349億円、OP4532億円と下方修正、電装は、インドネシア、ベトナム好調で、売上500521億円、OP6074億円と上方修正。CAPEX8474億円、DEP6256億円、R&D5854億円と柔軟に対応。

 

 課題の新エネルギー事業は、その他セグメントだが、上期は赤字であり、ほぼ全数、下期は黒字を目指す。キャリアへの通信料金値下げ影響や、5Gでは、それほど、基地局市場が大きくない可能性もあり、要注意のようだ。

 

インド市場と電装品

 

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太陽誘電2Q決算テレコン(11月9日)参加

 

11916時半から開催の決算テレコンに参加、ただし、質疑の前まで。所用があったことと、ケータイで参加したため、途中、電波の原因で、切れたため。プレゼンは、増山経営企画本部長。

 

業績上方修正

 

 2Q業績は、売上740億円、OP87億円、NP53億円。売上では、エルナーがフル連結の分、36億円の上方修正、OP17億円上ブレ、他方、特損21億円計上、韓国の子会社でのリストラ費用計上。

 

 通期は、売上26002710億円、OP245300億円、NP170210億円。下期の為替前提は、105110/$、また、エルナー分は、下期には反映されず。このため、通期売上の上方修正は、エルナーの2Q40億円弱、コンデンサ100億円、フェライト及び応用製品等15億円、複合デバイスは45億円下方修正(通信デバイス、モジュールとも下ブレ)OP面では、エルナー効果無し、操業効果と円安効果40億円。

 

エルナー株式会社は201911日より完全子会社へ(928日発表)。現在、エルナーの株式の約64%を保有だが、株式交換で保有比率100%へ。仮に、エルナー分をフルに連結すれば、売上2900億円は近いが、3000億円は今一歩。来期へ持ち越しか。

 

コンデンサ市況

注目のコンデンサについて、MLCCは、クルマ産機向け大型品ではタイトだが、スマホ向け小型品は、タイトさは薄れてきているとの示唆。

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GEの問題〜かつての優等生の落日

 

GEは、かつては、東芝はじめ、多くの日本企業がお手本とし、経営学者や、ビジネススクールでも、優良企業のケースとして、絶賛された。ちょうど、1年前ですら、ハーバードビジネスレビュー201712月号で特集された。http://www.dhbr.net/ud/backnumber/5a028f1d77656124a7000000

 

しかし、改めて、分析してみると、予想以上に厳しい。近因は、株主への過大な還元、真因はポートフォリオ、遠因は米国会計だろう。日経新聞でも、星氏や藤田氏の記事でコメントが引用された。

 

電機の著名アナリストで東京理科大大学院の若林秀樹教授は「GEは投資の回収期間が長い一方、環境変化の影響を受けやすいエネルギー関連に事業が偏っていた」と指摘する。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37709730T11C18A1TJ1000/

 

「事業構成を長期型に組み替えるM&Aを進めたが、高いリスクに見合う自己資本を備えていなかった」と若林秀樹・東京理科大学教授は話す。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37922680Z11C18A1DTA000/

 

すなわち、「GEは金融危機で重荷となったGEキャピタルを縮小する一方、仏アルストムのエネルギー事業を買収するなど製造業回帰を探った。選択と集中へM&Aを重ねた結果、のれんが積み上がり、昨年年末ののれんは839億ドル。自己資本の1.3倍に膨らみ、今回の減損により自己資本比率は10%に落ち、さらなる事業の切り売りを迫られている。減損の理由は「高収益のサービス、長期の顧客関係、ガスタービン技術」の価値の見直しだ。石炭火力への逆風など誤算も重なった。電力のような10年、20年単位の事業はリスクを見積もる前提次第で価値が揺れる。突然の巨額損失は東芝でも見た風景だ。自己資本を厚くしておく手がなかったわけではなく、金融事業の縮小過程で資金を得ていた。しかし優先したのは自社株買いと配当だ。物言う株主からの圧力もあり、自己資本利益率(ROE)を下げない狙いもあっただろう」

 

 金融事業の位置づけが難しいが、売上12兆円で、資産は31兆円、自己資本3兆円(自己資本比率10%)、ノレン6兆円あり、これが減損すれば、既に債務超過である。https://jp.investing.com/equities/general-electric-balance-sheet

 

 さらに、FORM10kによれば、その割引率は、9-16%に分布、しかも、長期が多く、1%変わっても、10年なら10%の変化で、巨額な減損であり、かつての東芝のWH減損を想起させる。

 

負債側では、PBOも多いのも、それ以上にリスクであり、金融事業の位置づけや、リースなども含め、複雑な財務である。

 

背景には、ノレンを償却しない、米国会計基準による砂上の楼閣の如きB/Sが問題であり、その中で、キャッシュの使い方が、日経藤田氏によれば、20052017年に、M&A640億ドル、CAPEX440億ドル、株主還元1710億ドルであり、完全に、砂上の楼閣の中での財務である。

さらに、ポートフォリオの構築も違和感がある。同社のポートフォリオは、かつて、(ボスコン等のPPMなどに倣い、選択と集中を断行、2000年以降は、エネルギー、航空機、ヘルスケアにフォーカスした。

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ゴーン氏逮捕の裏にあるもの〜第一印象

 

昨日のカリスマ経営者、ゴーン氏の逮捕は、流石に、驚いた。自動車産業は専門でもなく、氏とは面識もないが、印象を書く。マスコミ報道は、仕組まれたストーリーで、「堕ちたカリスマ、ガバナンス強化」という感じで伝えているが違和感もある。彼ほどの実績なら、堂々と、数十億円貰っても良かったはずだ。

 

 少し調べて判明したことは、下記だ。

 

  1. 日産は、報酬委員会がない(監査役設置会社)、また、非IFRSである。

  2. 報酬は、キャッシュだけが記載、業績連動等がないのは違和感。日産株は多数保有。外資では通常、複雑な報酬スキームがあるはず。

  3. 不動産所有等が報じられているが、これは、他の会社でもフリンジベネフィットがあり、これが全部、報酬と見做されるなら、有価証券報告書記載、税務でも、産業界全体の大きな話となるだろう。

  4. 要は、有価証券虚偽記載は、東芝も同じ問題であり、近因・真因・遠因で、既視感がある。

    クーデターと深い問題

 

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CKDの2Q決算説明会(11月15日)

 

2018111513時より決算説明会に参加した。半導体設備投資急ブレーキの中、株価は下落、119日に上期の下方修正、14日発表の決算でも通期下方修正があり、投資家アナリストの関心も高く、超満員で、席が足らない程。プレゼンは、業績や戦略は、梶本社長、トピックスは、林田氏、奥岡氏。所用があり、質疑セッションの途中で退出。下期の業績のリスクのチェック、中期での利益水準(前期の水準がどこまでバブル投資に支えられたものか)の確認が多い。

 

業績下方修正だが急ブレーキ対応も早い

 

 2018年度上期業績は、売上600605億円、OP6930億円、NP4823億円と下ブレ。自動機セグメントで、2QOP70億円、不具合問題、薬価改正に伴う値下げ対応で採算悪化、サービスパーツも値下げが効く。機器セグメントは、OP4213億円、注文急増でキャパを超えて納期優先で対応したため、混乱もあり、更に注文もあるとの見込みで、人員増もあったところ、急ブレーキとなったのが痛かった。

 

 2018年度通期は、売上12201160億円、OP14067億円、NP9848億円。機器は、ユーザーであるSPEメーカー動向から当然だが、上期の自動機は特殊要因もあり、想定外。自動機セグメントは、OP75億円で、環境は厳しいが、上期の不具合問題はなく、経費削減効果もある。機器セグメントは、OP8755億円、3Qがかなり厳しいようだ。

 

トピックス

 

 自動機では、薬品・食品包装は面白そうだ。また、次世代電池は、現地とのアライアンスで大きく伸びそう。機器では生産性向上、省エネ化。IOTでの複数の標準参加は評価できる。

 

半導体設備投資は韓国中心にメモリが急減、FPDはまずまず

 CKDIR資料から、夏以降、韓国のDRAMNAND、台湾ファウンドリが、3Qを中心に急減したことが明らかにわかる。

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新生 東芝のデバイス事業〜決算とNEXTプランから見えるもの

 

去る11713時半からの説明会参加後、第一印象を記した。https://www.circle-cross.com/2018/11/08/東芝のnextプラン発表会の第一印象-リストラ対象事業や社員-売却されたメディカル-メモリなどの社員は泣いていないか/

 

その後のHP視聴による再確認、さらに119日のスモールミーティングでのフォローアップを踏まえ、決算及びNEXTプランについて、内容別に紹介、論考したい。まず、今回はデバイスである。

 

メモリを出した後でも、半導体はディスクリートとアナログ中心に、国内最大級、ロームと同等

 

メモリをカーブアウト後、東芝に残ったデバイス事業は、ストレージ&デバイスのセグメントのHDD、ディスクリートやアナログ、システムLSI等の半導体である。メモリを出して、何もデバイスが無いと誤解も多いが、なお、売上4000億円、OP100億円以上と、ディスクリートやアナログでは、国内最大級。赤字ながら、システムLSIでは、クルマ向けでは、クルマ向け画像処理のViscontiはじめ、高い技術力を有する。90年代は、メモリだけでなく、世界でもトップ水準であり、ソニーとのPSのエンジン向けプロセッサなど有名であった。ディスクリートは、80年代から高収益事業であったが、2000年代後半から、過大投資や白色LEDM&Aの失敗、三菱電機とのパワー向けのミスもあり低迷したが、ようやく、かつてのOpm10%程度に戻った。

 

 

なお、半導体の中には、子会社のニューフレアテクノロジー社(以下、NFT)が入っている。この中で、パワーデバイスは、新規成長事業、他方、システムLSIはモニター事業と位置付けられている。リチウムイオン電池もデバイスであり、新規成長市場との位置づけだが、別セグメント。

 

上期はHDDが弱く、通期をHDD中心に下方修正、引き続きシステムLSIが課題で下ブレ

 

2018年度上期は、ストレージ&デバイスは、売上4568億円、OP106億円、増収減益。内訳は、半導体が売上1764億円、OP56億円、減収減益、HDDが売上2804億円、OP50億円、増収減益。増収だが転売分が多く実態は弱い。

 

2018年度通期は、全体で売上8700億円、OP290億円だが、期初より、売上400億円、OP80億円の下方修正。半導体は、売上36803655億円、OP240164億円と、下方修正で前期比横這いへ。HDDは、売上5045億円、OP126億円と下ブレ。

 

 

中計は、パワーデバイスが牽引

 

 NEXTプランでは、2018年度のセグメント売上8700億円、OP290億円、EBITDA510億円、2019年度、売上8600億円、OP580億円、EBITDA820億円、2021年度には、売上9400億円、OP820億円、EBITDA1110億円。

 

半導体は、NFTが不明だが、2018年度、売上3655億円、OP164億円、EBITDA344億円、2019年度が売上3800億円、OP360億円、EBITDA550億円と急拡大、ディスクリートがOPM10維持、システムLSIも黒字化、OPM4-5%の模様。2021年度には、売上4200億円、OP510億円、EBITDA730億円となる。

 

市況が現状のままで、システムLSIがベストケースで採用された場合は可能だが、ややリスクがあろう。HDDは、増収OP倍増は、やや甘いだろう。

 

 

 

アナログ半導体業界再編の鍵

 

パワーデバイスは、全体でも、高成長分野として期待され、重電系など、シナジーもあるため、カーブアウトの可能性は小さいが、モニタリングのシステムLSIは、アナログ等が含まれる場合も、そうでない無い場合もあろうが、アナログ半導体業界再編の中で注目されよう

 

デバイス&ストレージ社の価値

 

セグメントの対象となるデバイス&ストレージ社は、資本金100億円、従業員2.2万人、昨年度の有報ベースでは、資産3142億円(セグメント別で4090億円だが、NFTを含むと思われる)、流動資産2245億円、固定資産897億円、負債2425億円(流動負債が2117億円)ゆえ、純資産が717億円となる。

 

システムLSI部門は車向けViscontiが鍵

 

 システムLSI部門の赤字の背景は、車向け画像プロセッサのViscontiだが、自動運転向けにデンソー等に採用されている。http://www.toshiba-clip.com/detail/5886/2

 

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ジャパンディスプレイ(JDI)2Q決算

 

111217-18時開催のジャパンディスプレイ(JDI)2Q決算説明会に参加した。プレゼンは、業績説明が大島CFO、今期の重点取組みが月崎社長COO、質疑は適宜、両人が対応。IR資料は製品内訳詳細等が改善。

 

3ヶ月遅れで、発表予定だった中計は開示無く延期へ。株価が危険水域の100円に達し、中計を見極めようという参加者も多かったようだが、やや盛り上がりに欠けた。週末終値で100円を割り込み85円は、上場後1/10となった。信用買い残も多く需給は悪い。

 

決算2Q赤字縮小は健闘だが在庫増

 

決算は2Q売上1110億円、OP赤字47億円、最終赤字78億円、売上大幅に下ブレだが、赤字は縮小。iPhoneXR」出荷が、会社側は1Q決算で問題なしと回答だったが、やはり指摘した通り、ノッチ加工やLED部品問題、関西地方の風水害もあり、10月にずれ込んだ。もとの計画では、2Qにかけては、北米や中国等向けに、フルアクティブが寄与、Q/Qで売上4050%増、赤字は大幅縮小との見方だったため、売上1500億円、赤字は数十億円。

 

売上下ブレで、赤字ながら、OP健闘は、10月以降の投入で在庫の急増(6月末61日から9月末68)で稼働アップ、もともと、遅れた分は、購入部品も多く付加価値が少ないため。ただ、9月は単独黒字へ。

 

なお、10月に入り、フルアクティブ品が、ようやく出荷、10月の単月売上は1000億円を超え、OP黒字化。11月以降は、「XR」下方修正もあり、不透明。JDI側の歩留まり等は問題なし。部材のサプライチェーンも正常化らしい。

 

FCFは、赤字248億円は1Qと同水準(社内管理で赤字190億円はやや悪化)、買入債務が大幅増、現預金は622億円、自己資本比率は16%へ低下。

 

2018年度下方修正

 

 2018年度は、売上1020%増→510%増、Opm2-3%Opm1-2%へ下方修正。中間値をとって、単純計算すると、売上82507893億円、OP206118億円となる。下期は、売上5750億円、OP260億円、なお、かなりハードルは高いだろう。3Q売上と4Q売上構成は不明。

 

仮に、10-12月の売上1000億円水準が続けば、3Q売上3000億円、4Q2750億円となるが、4Qは、XRの情勢からは、厳しく、1500億円程度ではないか。OPは在庫など次第だが、むしろ、FCFも含め、B/S管理が鍵だろう。

 

12月末の在庫水準が不明だが、FCFは引き続き赤字が続く可能性がある。CAPEXは更に低下580520億円だが、もう少し減りそう。DEP510480億円へ。

 

やはりスマホ向けは大変だ

 

スマホに振られ、売上が月次で3倍に急増、また1/3になる状況は、メーカーの努力を超えている。ユーザーとの契約を見直すなど、FCFと粗利を最優先すべきだろう。会社側も、スマホ比率を下げる方向性で、VRや、ノートPC、ガラス指紋センサーを強化だが、ボリュームが違い過ぎる。

 

フルアクティブは素晴らしいが、XRの売れ行きは不透明であり、やはり中期では主流はOLEDだろう。また、買入部品が多すぎて、付加価値を取りづらく、FCF的にもマイナスだ。

 

OLED縦型蒸着

 茂原で開発中の縦型蒸着は、特にコメントなし。

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アンリツの2Q決算説明会(11月1日)〜5G向け新製品と総務省の周波数再編

 

去る11110時半から開催の決算説明会に参加、質問もした。上方修正もあり、参加者多数。プレゼンは、窪田CFOの業績説明の後、5G等の最新動向に関し、濱田社長がプレゼン。今回は、橋本会長は、前の席には座らず、後方から、他の社外役員などと共に、見守っていたようだ。

 

好決算

 

 決算上期は、受注479億円、売上443億円、OP35億円、NP31億円、上ブレ。T&Mが牽引、q/qy/yでも増収、ただ、q/qでは、5G開発費アップ等で減益。チップセットメーカーの5G開発用途離陸、ネットワークインフラの公共無線が堅調。T&Mの受注は、1Q146億円から、2Q174億円、上期の内訳は、5Gが増え、モバイル53%へ。上期で50億円程度が5G関連受注、オペレータは日本、チップセットは中国以外の模様。PQA2Q過去最高益。

 

通期は売上920億円、OP6670億円、NP5055億円へ上方修正。

 

5G初期需要離陸

 

 濱田社長によるプレゼンでは、5G向け初期需要離陸の中身、チップセット等の動向が明らかになった。公開情報から、チップセットはじめ、需要動向ロードマップや、周波数標準化動向が、サブ6GHzも含め、貴重な資料が提供された。

 

オペレータは、周波数の分布で、状況が判断できる。世界の主流は、NSA-NRだが、中国がSA-NR5Gを展開するという。更に、5Gで使用される周波数帯は、ミリ波帯と6GHz未満(Sub6GHz2種が検討、これが、どうなるかが、要注意だ。

 

周波数配分

 

なお、総務省は119日に、5G実用化等をにらんだ電波の活用計画をまとめた。これに対応するテスターの戦略に関しては、NAだった。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37570870Z01C18A1EA4000/

 

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ニューフレアテクノロジー(NFT)の決算説明会

 

ニューフレアテクノロジー(以下、NFT)の決算説明会が117日に開催され、参加した。杉本社長、他、幹部、プレゼンは杉本社長、質疑はCFOEB担当の山田氏など。参加者は多いが、質問は、やや少なく、1時間以内で終わった。

 

2002年に東芝機械株式会社から半導体装置事業を継承して創業、半導体製品の製造に用いられる最先端の電子ビームマスク描画装置やマスク検査装置、エピタキシャル成長装置を開発・製造、収益の中心は、EBMのシングルビーム、マルチビームのIMS社とシェアを二分。売上はほぼ横這いだが、高収益。株式市場では、高いバリュエーションで評価され、注目度も高い。

 

業績

 

 2018年度上期業績は、受注は33%減の138億円、売上231億円、OP56億円、NP44億円。描画装置が期ズレ、エピ装置は堅調。受注は年間では500億円をめざす。

 

 2018年度は、売上500億円、OP114億円、NP90億円、は不変。R&D93108億円へ増額。R&Dは高水準、20%前後を維持するが、来年度は一服。市況に関し、半導体全体は減速だが、マスクは異なると強調。発注を止めたのではなく、決定を慎重にしているだけだという認識のようだ。 下期は、「9500」、「9500+」がメイン、MBMは最低一台受注、エピ成長は堅調。市場見通し不変。

 

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メルコ2Q決算〜シマダヤ連結

 

11610時半より開催の決算説明会に参加した。シマダヤ連結後、初の決算であり、注目され、参加者は多かったが、質問は、シマダヤに関する質問が目立った。プレゼンは、松尾副社長。

 

業績

 

 上期売上は、売上550億円、OP36億円、NP28億円。PC周辺と金融の2セグメントから、IT関連、金融、食品の3セグメントとなった。ITは売上330億円、OP16億円、金融は売上11億円、OP7億円、この4月からフル連結となった食品は売上208億円、OP15