2022年10月~12月

KOKUSAIと日立国際電気の決断

 KOKUSAI ELECTRIC(コクサイエレ6525)が話題をよんでいる。半導体相場の中で、時価総額は既に1兆円を超えた。202310月上場時の時価総額は約4800億円で2023年最大IPOだったが、そこから、2倍以上である。同社を抱えていた日立国際電気の上場廃止時の時価総額は3200億円であり、IPO時点でそれを上回っていたが、当時と比べると4倍近い。

業績も好調で、2023年度の売上1808億円、OP378億円から2024年度は2175億円、OP510億円を見込む。20182019年度は決算期がイレギュラーであり比較が難しいが、2020年度では売上1780億円、OP600億円である。

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ファウンドリと製造装置の両立

日本は半導体デバイスではシェア10%を割り込んだが、製造装置では30%以上、材料では50%以上のシェアを維持している。半デジ会議では、政府の目標は1兆㌦時代にデバイスを15兆円、シャア1015%である。この可能性を、デバイスのシェア回復、更に突っ込むと、日本でのファウンドリでの存在感と、製造装置と材料のシェア維持の両立という視点から論じたい。

地域別にみると、米は、デバイスでもほぼファブレスであり、ファウンドリはGFくらいで、OSATも小さい。製造装置は前工程中心に強いが材料は小さい。

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半導体における政策と戦略の階層

政府の半導体政策やラピダス戦略について、批判する人が多いが、議論に際し、階層で整理すべきだと思う。そこで、中国の古典、六韜三略に倣って、また、太平洋戦争の真珠湾攻撃と比較しながら分析した。

 まず最上位階層は政治であり、真珠湾攻撃では戦争決意であり、今回の半導体政策では、復活挑戦決断である。次の階層は大戦略であり、開戦劈頭に真珠湾奇襲、半導体では、議連活動や予算の大枠、米との関係構築等である。ここまでは最近は概ね評価する声が大きい。その下が具体的な活動になり、空母機動部隊編成や、先端ロジックに傾注、ラピダスやLSTC設立である。ここは、批判もあり、議論が分かれるところである。

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政治と選挙区の不条理

 79日に、甘利明先生の勉強会が東京プリンスホテルで開催された。半導体をテーマに、甘利先生とSEMIジャパントップ浜島氏と私で10分ずつポジショントーク、その後、私がファシリテーターを務め、30分のパネル討論である。

ここ数年、半導体政策に関連して、甘利先生にプレゼンを行い、御相談する機会が増え、また、甘利先生が本部長を務められる国家安全保障の会議でもプレゼンをした。また、理科大MOTの御講義に来ていただいた。このような中で、甘利先生の半導体はじめイノベーションに関わる政策での御実績には、改めて感銘を受けている。最初にプレゼンをさせて頂いた時、EDAというキーワードに反応され、その勘の鋭さに感心した。およそ政治家らしくなく、知的レベルが高い上、世界の今後の行方やイノベーションについても洞察力が深い。数少ない世界に通用する政治家だと考える。

 しかし、自民党のゴタゴタやドタバタの逆風や選挙区変更もあり、次の選挙は油断できないようだ。もし、選挙区が半導体・イノベーション区があったら圧勝だろうが、実際の選挙区はそうはいかない。世界的あるいは日本的な貢献が、地元の票とは関係が無い。これは、まさに不条理である。

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最近の私の履歴書に見る階層社会

日経新聞「私の履歴書」が最近、あまり面白くない。退任直後のタイミングで登場した黒田前日銀総裁以外は、有名人は多いものの躍動感が少ない。その理由を考えると、戦後生まれが増えてきて、波乱万丈の人生でなくなってきたからかもしれない。さらに、芸術家や科学者などは、親などが、それなりのハイソであり、周囲に学者や芸術家も多く、もちろん、本人に才能も努力があったにせよ、幼少期から家庭教師をつけられる等、エリート教育をされており、一般庶民からは、人生の学びが少なくなっている。また、一時、多かった欧米人の登場が少ない。経営者においても、2000年以降、いわば、日本企業の凋落が顕著になってからであり、グローバルな感じがしない。出世もワンパターンだ。

 戦後、80年近くなり、平和はいいことだが、「革命」混乱もなく、社会構造が階層化してきた。

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演習や論文の必要性

あと1年を切った、理科大MOTでの教員生活を振り返りつつ、ゼミでのグラデュエーションペーパー指導を味わい楽しんでいる。

 そこで、改めて認識したことは、ビジネススクールに、もはや座学は不要、時間の無駄ではないか、ということだ。

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トラブル処理と現場力

企業であれ、アカデミアであれ、役所であれ、トラブル処理時での現場力が低下しているように思う。トラブルにも、組織側に原因があるもの、外部環境に起因するもの、そのうち、一定の頻度で起こり、その対策がある程度可能なもの、全く予想できないもの、起きても、影響を防げるもの、ダメージが避けられないものと色々である。日々の飲食店、駅の窓口などでは、以前なら、臨機応変な対応があったのに、トラブル時の対応が拙く、イライラすることが増えている。

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日本に欠けている教育

MOTで社会人教育に携わり、最近は、経産省の半導体デジタル会議で、人材教育問題にも関与して、日本に欠けている教育は下記ではないかと確信しつつある。

 日本はタテ割りの専門分野では幾つか強い分野があるが、金融、IT、英語は極めて弱い。金融教育は、そもそも無く、英語は昔から注力されているが散々だ。ITは工夫次第だろう。

 むしろ意識さえ無いのが横グシ的なものであり、俯瞰力抽象化、問を立てる能力、統合力などである。

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正義のビジネスモデルは無いのか

最近、正義のビジネスモデルに関心がある。大きく時代が変る中で、正義についても、多少は、認識が変る場合もあり、特に経済的正義はなおさらだ。

独禁法など公正取引、さらに、証券取引は、数十年単位では、法が変ることもある。1980年代以前は、株価操縦もインサイダー取引も無かった。独禁法は米国でも大きく変遷している。プラットフォーマモデルは2015年までは、画期的なビジネスモデルとして、アカデミアでも評価されていたが、最近は異なってきた。国家安全保障を巡っては、対中貿易などは、既に要注意である。

 

そうした正義を超えた絶対的な、善悪はあり、経世済民の視点から、石田梅岩の商売道や、三方良しやフリーミアム等は、善であり、かつ、ビジネスモデルとしても黒字を維持し継続可能な良いものである。

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円安の背景と有事

再び、為替が160円を突破、日米金利差仮説だけでは説明できず、そもそも国内の利上げは債券や弱い金融機関にマイナスだ。農中の巨額損失はその象徴だ。為替介入もそうそうできず、神田財務官も退任、さすがに、これまで「理論的には円安はおかしい」といった日経新聞の論調も変わり、長期、円安問題を捉えようというスタンスに変ったように思える。狭い金融論でなく俯瞰的に円安を論ずるべきだ。

 

同意するのは、渡辺博史元財務官の「経済体力に市場が疑問符」622日付けのインタビュー記事だ。デジタル赤字もある。「円=安全通貨」は誤解だった 渡辺博史元財務官が説く復権策 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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データセンター動向~付加価値とビジネスモデル

 COMNEXT特別講演セッションで「環太平洋と日本列島のデジタルインフラを担うデータセンター(DC)の最新動向とビジネスモデル」と題して2024628() 1230分~14時東京ビッグサイトでパネル討論のファシリテーターを務めた。これからの日本のデータセンターのゆくえ (cbw-expo.jp)

 

パネラーはデジタルインフラ会議の有識者を中心に、総務省データ通信課長西潟氏、METIソフト室長渡辺氏、IBM森本CTO、さくらインターネット田中社長、総務省OBでもある読谷山延岡市長である。

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リーダーシップ組織人事は、状況(有事と平事)、階層による

 リーダーシップや組織人事は、幼少期から軍記物その他で関心があり、武将などのリーダーシップに心躍らせ、また組織図を描いて遊んでいたが、大学時代に野中先生の「失敗の本質」を読み感動、また当時人気雑誌だったプレジデントの経営者話も愛読していた。MOTに来てからは、技術系リーダーシップ論を担当、アドバンストリーダーシップ、R&Dマネジメント、実践CXOケーススタディなどでも、技術系やイノベーションとの関係で研究教育に関与した。また、昨年からは、組織人事やイノベーション人事も専門外ながら担当する中で、講義を通じ、社会人学生との議論から、改めて、現場では当たり前の事実がアカデミアの研究では当たり前ではない事に気がついた。

 まず、組織人事で、組織か人事かについては、階層で全く異なり、リーダーシップも平時と有事、更に、階層で異なる。組織全体をマクロに見ると、個々の人事よりも、組織構造が重要であり、西洋的な組織論が当て嵌まるが、ミクロな現場では組織構造より、個別の人事、ヒトの要素が大きく東洋的な教えが当て嵌まる。これが、多くの教科書や理論では同一に議論されている。

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バランスの良いチーム~役員会、審査会

イノベーションを起こし、支援でき、あるいは、正しい判断ができる目利き力があるチームとは、どういう構成メンバーがいいのだろうか。多様性は重要だが、人種や性別、年齢など人口統計学的多様性といった表層的多様性でなく、専門分野や考え方の違いも含めた、認知的多様性すなわち深層的多様性である。開発チーム、役員会、審査委員会、有識者メンバー、パネル討論会、さらには、MOTでのゼミや授業でのグループ討議のメンバーでも、多様性はある。多くの場合は、その分野の権威で、主流派と反主流派、別の分野の専門家、専門家ではないが、有名人で鋭い切り口を持っている方であれば、有益な示唆が得られる。しかし、意外に、構成員に含めていないのが、横グシあるいは、π型人材である。複数の分野について、専門家と十分な議論ができ、全体を俯瞰できる人材である。本来は、ファシリテーターが適しているが、この人材がいると、議論が発散せず、個々の専門家や全くの素人を繋ぐことができる。

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半導体市況~メモリ回復だがアナログ等は厳しい

WSTSが、64日に最新の市場見通しを公表した。2023 年市場は、8.2%減であったが、ディスクリートとロジックはプラス、メモリの29減が響いた他、センサ等やアナログも二桁近いマイナスだった。2024 年は16.0%増、2025年は12.5%増を予測。

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私学法改正とガバナンス

いま、私立大学は、私学法改正で、てんやわんやであるようだ。大学における「憲法」は「寄附行為」といわれ、大きく改正される。日大の元理事長の事件を契機に、私学のガバナンスが求められ、20232月に閣議決定され。20254月施行となる。大学や短大を運営する法人の場合、合併・解散といった重要事項の議決権や理事の解任請求権を評議員会に認めるのが柱。理事らの背任行為や贈収賄には罰則を設ける。改正案によると、法人の監視・監督を担う評議員会は、理事会の諮問機関との位置付けは変わらない。理事会へのチェック機能を果たすため理事と評議員の兼任は禁止する。評議員会の議決が必要なのは法人の根幹に関わる事項とした。不祥事があっても理事が辞めない場合を想定し、評議員会に解任請求権を与える。大学運営の監視機能強化 私学法改正案を閣議決定 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

改正私立学校法に基づく寄附行為変更認可申請(令和67月以降受付)について(文部科学大臣所轄学校法人):文部科学省 (mext.go.jp)

これまでの私学のガバナンスでは、評議員の位置付けは、国のガバナンスに例えると、いわば国会議員であり、そこから、いわば内閣に相当する理事を選ぶというものだったが、今回は上場企業のガバナンスに近い。すなわち、そのコンセプトは理事会、評議員会、監事という3つの機関の間で執行と監視・監督の役割を明確化・分離になる。理事長、業務執行理事などの経営陣の不祥事を防ぐため、評議員会の機能強化に一番の主眼が置かれた。現状ではチェックされる側の理事全員がする側の評議員を兼務している場合が多い。改正法では評議員会の独立性を担保するため、理事との兼任を一律に禁じ、理事・理事会選任の評議員は2分の1以内、教職員評議員は3分の1以内にするなど評議員の構成にも制約を課した。

 

変わる私学ガバナンス 法改正を機に経営改革進めよ 大河原遼平・TMI総合法律事務所弁護士 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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理由とは~3シン因と相関、因果、そしてネットワーク構造

「理由」「原因」の構造について、3「シン」因分析、直接の新因(近因)と、本質的な理由の真因、更に深い深因と構造化して分けて考案すべきだと提案している。普通に原因とされるのは、新因か真因であり、深因は、ある場合にはプラスだがある時はマイナスというような、文化に根差したような避けがたいもので、他のケースにも当て嵌まるようなものである。この3シン因分析を使って、半導体の敗因も分析した。 原因とされる、①油断、②日米摩擦や米戦略、③国内政策、電電解体等、④水平分業遅れ、⑤品質拘り、⑥マーケティングや情報軽視、⑦経営者とビジネス力、⑧自前主義や横並び体質、につき考察した。   時期によって、本質的な場合もあり関係の無い場合もある。新因(直接の原因)は、日米摩擦や水平分業等、トップ次第戦略次第で対応できたものが多い。その真因は、経営と技術の分断、構造変化に弱い等があり、これらは、半導体だけではなく、電機業界全体の問題でもあるが、中期では、教育等で対応可能かもしれない。深因は、油断し易いくせに、自暴自棄になりがちで、目先の和(周囲と時間軸でも)を重視するが中長期目線がなく、その癖、対応が遅い等の国民性もある」

しかし、上記の8つの原因のそれぞれの関係性や因果関係については言及せず、3因との対応は主観的な考察になっている。そこで、客観視するため、ネットワーク科学で、それぞれの因果を分析した。

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ネットワーク時代に過剰品質は悪?

ここ数年、製造業の品質不正が問題になっている。三菱電機のケースもショッキングだったが、今回のトヨタなどのケースは大きなショックだった。しかし、トヨタのケースは、基準以上の「過剰品質検査」であり、これまでとやや違う面もある。また、トップ企業の「特別採用(トクサイ)」という側面も大きいのではないか。これまでは過剰品質がもたらすマイナス面が指摘され、実際には十分だから、過剰品質のための検査は無くても大丈夫だ、といことが議論の一つにあった。しかし、今回は、それ過剰検査でも国が定めた基準とは違うことが一つの論点である。 日本企業過剰品質の問題については、コストや管理会計、下請け論、ガバナンス面など多くの指摘や先行研究がある。しかし、ネットワーク、繋がり、標準という観点はまだ多くないようだ。

品質不祥事と管理会計 Quality Scandals and Management ...

繰り返される品質不正問題に企業は終止符を打てるのか

品質不正を生むリソース不足と厳しい納期、過剰品質という ...

品質不正、いま何をすべきか。QC学会トップからの警告

日本的経営と品質管理 - 名古屋学院大学リポジトリ

品質力は「落ちている」と「変わらない」が拮抗 - MONOist

これまでの品質管理は、スタンドアロンでの話だが、これからは、ハードもソフトも多様な種類と階層でネットワークとして繋がり、あるいは、プラットフォームの上で、データ連携が必須になる。

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オンラインネット空間とリアル空間とどちらの情報量が多いか

リアルとオンラインの会議や会合等、どちらが良いかについては、それぞれプラス面マイナス面があり、棲み分ける面も多いことは共通認識になっている。海外や遠距離との会合、数百など多人数で会議、知識伝達や決定事項の通達などはオンラインでもいいが、教育、アイデア創出、深いコミュニケーションはリアルだろう。オンライン飲み会は味気ない。ただ、まだ一部、オンラインに拘る方々も、アカデミアにも多い。リアル情報とネット空間情報のどちらを学習させるかになると、生成系AIの可能性にも関係する。

 MOT2020年に行ったアンケートでは、リアル授業の価値は、桁違いではないが、数倍であった。また、オンライン時代にこそ、リアルやライブの価値は高まり、リアル授業はそうしたライブ感でのワクワクやドキドキをしないといけない。これは早稲田MBA入山教授も同意見であり盛り上がった。人間は五感をフルに動かし、環境認識をしてモデルを作り、環境に介入し、その反応を、五感でフィードバックして学習していることが明らかになっている。その点、ネットワークから多様な情報を得ていても、自ら動かず、五感を持たない生成系AIの学習推論とは異なる。これは先日、人間の対面営業と生成系AIによる営業とどちらが勝つかという実験をして、自らが実験台になって確認した。

その中で、そもそも、自らリアル空間を動き回り、五感からの情報を得る場合と、ネット空間から主として、画像や文字と音声を収集している(片方向)場合とで、どちらが多くの情報を得るか、考察を続けている。

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DCはAIファクトリー

この5月末から6月上旬にかけ、総務省経産省開催のデジタルインフラ会議が開催され、有識者委員として参画、積極的に議論をした。慶応大学の村井純先生を座長に、東大江崎先生、ソフトバンク宮川社長、IBM森本CTOなど素晴らしいメンバーである。生成系AI時代に、データセンター(DC)を中心に、5G6G基地局や光ファイバー網のデジタルインフラのあるべき姿、カーボンニュートラル観点から、電力網などとの関係、国家安全保障やレジリエンス、地方活性化や街づくりの観点が議論された。拙著「デジタル列島進化論」で分散DCを都道府県に1カ所、50以上設置を主張していたが、宮川社長のプレゼンでは47都道府県に1つ置き、信号、河川管理、上下水道など日本国のインフラをデータと推論エッジAIで管理することが必要だと示されている。村井先生の資料では更にAI-DCを数百、1000以上とある。

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第6回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合| デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第8回)配布資料 (soumu.go.jp)

 会議ではAI-DCAIファクトリーと称したのは至言である。AIファクトリーが日本の未来を。

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スマホニュースに続き、TVも新聞も、ニュースは広告~PFビジネスモデルの罪と罰

 スマホニュースは、既に、ニュースだと思ったら、本や商品の広告だったりする場合が多いが、TVや新聞や雑誌もそうなりつつある。かつてたまに出ていたWBSも企業関係のニュースは、広告代理店経由で、スポンサーがつき、ポジティブな発言をする識者が選ばれる。

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シンクタンクの限界~手法とデータが同じなら結果も似てくる

ここのところ複数の政府系、民間系のシンクタンクの方々と将来予測について、意見を聞かれ、議論することが多いが、アプローチが酷似しているのに驚いた。どれもこれも、社会ニーズ(ウェルビーイング、社会課題等々)、科学技術動向、市場動向を踏まえ、1020年後の将来からバックキャスト、分析データは、財務データ、論文、特許、主要な大企業とスタートアップ動向、有識者発言をベースに、ヒヤリングやアンケートを行うというものだ。

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レガシー半導体液晶工場をデータセンターに

日本の液晶産業は衰退、その工場の利用方法として、データセンター(DC)や半導体のチップレットへの転用が注目されているようだ。DCへの活用は、20223月のブログや拙著「デジタル列島進化論」でも指摘、チップレットへの転用はガラスインターポーザの視点から2023年に何度か指摘している。

ソフトバンクも堺にAIデータ拠点 シャープと本格交渉へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

インテル、シャープの液晶工場で半導体 研究拠点に活用 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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半導体とDCの乗数効果と雇用創出効果

デジタル列島改造論の一つの狙いは、地方の活性化である。そこで、半導体とデータセンター(DC)について、乗数効果と雇用創出効果を、一般のハコモノと比べ考えてみた。

 不況時の公共投資で土木建築が多いのは、乗数効果が大きいからである。建築には、多くの工事作業者が関与し動き寝泊まりし、飲み食いし、トラックがモノを運ぶ。多くの人間が仕事にありつけ恩恵を被る。しかし工事が終われば、それで終わりであり、次は20年後の修繕時までは周辺への経済効果は薄い。しかし、半導体やDCは、事前に電力線を引き、建物ができた後は、装置を据え付け、サーバーを入れる。そして、運用は24時間であり、DCでは少なくとも50~100人必要で、多くの雇用が生まれる。

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ゼミの新たな形~オープンイノベーション

 来年3月に向け有終の美を飾るべく、ゼミのあり方も進化させている。多くの場合は、ゼミはグループ討議や合宿、OB参加、一部個別指導位だが、当ゼミは、工場見学や一部外部スピーカーを招聘してきた。また、立命館MBAとの交流会も行ってきた。

今年からは、外部スピーカーを呼ぶ回数を増やし、既に7名、6月末で9名である。

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どこを狙うか~教員のストライクゾーン

事業でも学術でも、レポートやMOTのグラデュエーションペーパーでも、自身のテーマが属する領域のどこを狙うかが鍵である。通常の研究大学院では研究室毎にテーマやアプローチが決まっており、それを逸脱することはない。建築学で半導体物性は難しいだろうし、経済学で宇宙工学はできない。もっとも、アカデミアでも横グシ研究はあり、あるいは、経済や社会等のテーマを物理アプローチや工学アプローチで解明するなど実績も出てきている。MOTのテーマは多様であり、学生自身がテーマに関して、専門家であり、また、プローチも多様である。

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流行語「深掘り」と「簡単ですが以上です」

MOTだけでなく、いろいろな機会に発表を聞いていると、必ず最後の一言が、「深掘りをします」と「簡単ですが以上です」だ。これほどまで全員がそうなのだから、彼らが属する会社でも、上司も同様なのであろう。半デジ会議などでも、14分の発言と言われているのに、長々と10分近く話しても、「簡単ですが以上です」で締めくくるトップも多い。

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日本電子の75周年記念シンポ

 日本電子は531日に、帝国ホテルで決算説明会と75周年記念シンポジウムが開催された。会場には、多くの新製品など実機の展示があり、シンポジウムではMARS産学連携による新世代電子顕微鏡開発」by東大柴田教授、「経営哲学とイノベーション」byIHI特別顧問(NEDO元理事長)齋藤氏、ピアノ演奏を挟み、「逆タイムマシン経営論」by一橋大特任教授楠木氏、ノーベル賞受賞者である大隅氏の講演という豪華なものであった。

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ラピダスの資金調達問題

日経新聞その他複数が、ラピダス向けの融資に政府保証を付ける方針と報じた。銀行が躊躇、個別企業に異例とも。「ラピダス向けの融資に政府保証を付ける方針だ。2027年からの最先端半導体の量産には5兆円が必要とされる。民間金融機関の融資実績がないラピダスは資金調達が課題だった。政府保証で融資の決断がしやすくなるとみている。31日の検討会でラピダスの政府保証の根拠となる法案をつくる計画を提示する。」ラピダス向け融資に政府保証 経済産業省、最先端半導体の量産支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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チップレット時代の半導体ビジネスモデル

ファブレス/ファウンドリモデルだからと言って、ファブレス側は製造を知らなくていいという訳ではなく、ファウンドリも設計を知らなくて言い訳ではないのは当然である。これは、OSATEMSでも同様である。TSMCの強みは、設計についても十分な知識やツールがある。ファブレスもユーザーとの関係で、アーキテクチャからやるか、仕様からか、デザインか、更に、回路設計からか、など多岐に渉る。

 今後、チップレット時代、カーボンニュートラルもあり性能からも消費電力削減が必要な時代には、これらの垣根が変ってくる。また、最終ユーザーとファブレス、ファウンドリが十分なコミュニケーションをする必要がある。

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先端半導体も需給はAI向けに逼迫

先端半導体はAI専用チップが、今後急増していく。チップサイズと省エネの問題から、当然、ビオンド2nmになる。また、アプリケーション毎の専用化が求められる。生成AIがこうしたトレンドを加速している。他方で、EUVの導入やGAAの難しさから供給は限られる。さらに、台湾有事リスクもある。

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シリコンサイクルの周期をFFT

 シリコンサイクルの周期がいったい何年なのかは古くて新しい問題である。PCサイクル説なら34年、大統領の4年説、最近はスマホの2年サイクル、インテルやTSMCの先端ロードマップ、ムーア則なら34年だが、実際は需給の結果ではある。

統計がある1985年からで40年近いが、統計的には、N9程度である。下記でピークとピークかボトムとボトムを取ると、平均4.56年、σ=1.25である。

かつて、ヘッジファンド時代に、正確を期すべく、FFTではWSTS902010年の月次データから周波数解析をすると、3.9年に周期の山があり、これが該当するだろう。

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経営の再現性と授業の再現性

 来年3月で理科大を去るので、1月の講義が「最後の授業」になる。20072009年の非常勤講師時代の経験も経て、改良してきた。これまで8年間に多くの科目を担当あるいは新科目を開講してきた

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トランプ政権の側近カミロ氏の講演に日米関係を思う

去る土曜日のゼミに、藤末先生の紹介で、元トランプ政権での側近のカミロ氏に来ていただき、1時間のスピーチをしていただき、こちらからも、先方に関心がありそうなテーマにつき、三菱UFJ銀行からの企業派遣学生による半導体産業に対する金融支援、東芝学生による防衛産業構想についてプレゼンをし、フィードバックを貰った。カミロ氏は、少年時代、三沢で過ごし、親日的である。親切な英語でゆっくり話てくれ、ほぼ理解できたし、こちら側の下手な英語も理解してくれた。

 カミロ氏は、米国の政治情勢、選挙システム、データを用いた選挙運動、日米関係、トランプ氏の実態や故安部総理との友情などについて、興味深い話であった。

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エッジとクラウドと半導体

 AI半導体の進化が著しい。これまで、クラウド側、データセンタにあったAIチップが、PCやスマホの端末側に掲載される時代がやってきた。

 半導体をおおらかにメモリ(ストレージのNANDなど)、とプロセッサに分けると、データが小さいが、生で腐り易い場合と、大きいが加工、いわば「〆」「血抜き」された場合、また、通信回線とエッジAI半導体の処理スピードで下記のようになるだろう。

 

 かつて、スタンドアロンだった時代は、エッジ側にメモリもプロセッサもあった。しかし、通信回線が高速になれば、端末の負担を軽くして、メモリ機能もプロセッサ機能もクラウド側になる。

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予測と希望は別なのに

予測と希望は似て非なるものだ。予測は、主観的な面もあるが、あくまで客観的に将来がどうなりそうかを論じるものであり、明るい場合も暗い場合も、希望する場合もしない場合もある。希望は、明るいものであり、意志がある。日本では、これらが混同される。

 為替については、20225月から150円の円安を「予測」している。理由は金利差、貿易収支、日本の国力(人口と生産性からのGDP)などである。個人的には、円高の方が有難い。その方が生活は豊かで、輸入品を安く買え海外出張でも楽だからだ。しかし、そうした希望とは異なり円安になると考える。その場合、それをどう利用するか、が重要だと思う。

 台湾有事は、もちろん、希望ではない。予測とも言えないがシナリオの中で無視するわけにはいかないし、そうであれば、対応対策を練らなければならない。それが、TSMC誘致であり、ラピダス設立である。

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後継者はリレーか駅伝か

カリスマ名経営者でも後継者選びや、そのタイミングを誤る場合は多い。ジョブス、ゲイツ、グローブ、モリス・チャンも成功したとは言えない。日本では、ニデック永守氏のケースが思い浮かぶ。誰を後継にするかは、古来より世の東西を問わず国家元首や大名から個人事業でも大きな問題であり、老舗中小企業では永遠の課題だ。タイミングも難しい。経営が悪い状態では、無責任に引退する訳はいかず、良い状態で安心して花道を飾ろうとして、想いに反して、ズルズル引きずる場合も多い。

 

この課題については、古典も含め無数の先行研究があるが、その中で、「リレー」というキーワードで論じているのがNRI松田氏であり、タイミングは9年が最適としたが、これは経営重心論での固有周期に近い結果である。「経営リレー」論(前編)経営陣の「祟たたるメカニズム」「託すメカニズム」 (nri.com)

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ミニマルファブの現状

生産技術の方向性には、巨大化によるコストダウン、逆に、ミニチュア化によるコストダウン、そして時間軸の中で、短TAT、カンバン、枚葉、整流化などの方向性だろう。巨大化は、半導体ウェハーや液晶ガラスサイズがあるが、サイズに限界がある。固定費は大きいが、量産で下がる。これと並行して、行われるのが、短TATなどだが、技術の発展で工程数は増える。これと逆なのが、半導体そのもののコストダウンでは有効な微細化などミニチュア化だが、工場そのものでは、あまり上手くいっていない。

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迂回型イノベーションと最近技術

研究イノベーション学会において、TFT液晶、NANDフラッシュ、Li電池など、デバイス中心だが、迂回型イノベーションモデルを提唱した。迂回型イノベーションモデルは、当初、巨大市場でのライバル技術の置換えを狙うが、難しく、回避して、別の市場で離陸、その後、様々な技術の貢献で、新市場にも巡りあり、ぐるっと一周2030年かかるが、当初狙っていた市場を取り込み初志貫徹するというものだ。OLEDや炭素繊維なども、このパターンだ。AIも広い意味で近いかもしれない。一周が何年かは分野によるだろうが、どのタイミングで最初の市場から転戦し、やり方を変え、良いニッチ市場を見つけるかが鍵だ。デバイスのケースだといずれも、発明から5年程度で転戦、10年では良い市場を見つけて、一定事業基盤(開発を継続できる)の地位を得ている。そうでないと、理解あったトップも変わり、累積赤字も膨大になるし、開発チームも抜けていき、チームリーダーも老いる。

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水面下の東芝

非上場化の東芝が中計を発表した。決算数字もあるが、セグメント開示はない。当然ながら、投資家やアナリストでなく、マスコミ向けなので、素人向けのレベルの低い内容になっており、厳しい質問が浴びせられたであろう。非上場化は煩いアナリストとの無駄なコミュニケーションコストは減るが弛んでしまわないか不安だ。未達背景を安易な成長のための先行投資、固定費増と結論づけているが、島田DX戦略の総括は無い。中身的に欠けているのは、①28年以降の姿、②セグメント別の想定資本コストがなく、ROSだけで考えている、③ベンチマーク比較、④FCFも運転資本やCCC想定、⑤R&D戦略、⑥為替前提、等である。

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液晶産業の終活コスト

0年代世界を席巻した液晶産業が国内で終焉が近づいてきたようだ。シャープは1500億円の最終赤字、ディスプレイのみで832億円の営業赤字、ディスプレイ関係の減損などが1200億円近い。堺のTV向けは停止、中小型も縮小、OLEDラインは閉鎖。最終赤字が2年連続1000億円超は、同じく液晶パネルの赤字で経営危機に陥った2015年度以来8年ぶり。SDPを取り込んだのが痛かった。22年度の有報では堺は約260億円の建屋が資産計上、半導体後工程やデータ・センタ向け転換が難しければ、700人の人員も含め、更に損失が広がる可能性があろう。ジャパンディスプレイは2023年度も赤字、創業以来、10年連続の連結最終赤字を計上した。日経では「かつて半導体と並び日本の電機業界をけん引した液晶産業が終焉」と評している。日の丸液晶終焉へ シャープ大型撤退、JDI10期連続赤字 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

様々な指摘があるが、液晶での苦戦は日本だけでなく台湾も厳しい。韓国も楽ではない。中国の一人勝ちであり、OLEDとの戦いにも負けた。

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台湾の工業高校の高レベルと大学制度~普通大と科技大

長年、台湾ハイテク産業を研究調査してきたが、教育制度については、恥ずかしながら、最近の動向については不十分だった。最初に台湾を訪問した95年前に、文献で調べ(当時はネットもなく大変だった)、、ITRIを訪問する際に、教育制度についてヒヤリングは行い、また市内の書店で入試問題や受験参考書を買い、数学や理科のレベルの高さに感心はしていた。ただ、その後、フォローしていなかった。

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人口減少対策としての半導体/DC誘致の効果

経産省の半導体デジタル政策、とりわけ、TSMC熊本誘致やラピダス千歳工場などの経済効果は、既に地元のシンクタンクなどから大きく報道されている。また実際、地価アップも含め顕在化している。

人口減少に悩む地方自治体にとっては、半導体工場やDC建設が、どのくらい影響があるか、について、半導体の乗数効果と人口減少予測の視点から考察した。

人口戦略会議20241月に公表の「人口ビジョン2100」から日経が4月に消滅可能性自治体を報道した。地図で見る「消滅可能性自治体」 2050年、あなたのまちは? 全国1729自治体・地域 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 報告書では、全国1729自治体地域を4分類、A「自立持続可能性自治体」、B「ブラックホール型自治体」という出生率が低く他地域からの人口流入に依存するもの、C「消滅可能性自治体」、D「その他の自治体」である。A65Bは都市部など25C744D895である。

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SUMCOの1Q決算説明会~生成AI市場とGAA向けウェハー

 SUMCOの説明会が59日にあり参加した。市況や技術動向は橋本会長、今回は生成AI市場についての分析があり、また、GAA向けウェハーについて興味深い発言があった。

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ラピダスの検証~ビジネスモデルと収益モデルの仮説と現状比較

この数年、地政学の変化、経産省も人財を得て、半導体にはフォローの風が吹いていた。そうした中で、ラピダス経営陣も、これに、まさに迅速、適切に対応した。少なくとも、この2年余りの経営については、高く評価すべきであろう。

 他方、世界情勢の混乱、「もしトラ」のリスク、自民党の混乱、財務面でのアゲインストの風、今後、数年は厳しい情勢も覚悟しなければならない。その中で、ラピダスは社会実装に向けて、正念場だ。

 リスクはGAA微細化という技術的な面と、収益化のビジネスの面があり、前者は、各社苦闘しており、過去の実績からは、TSMCが断トツにせよ、まだ分からないし、十分な機会がある。後者は、短TATやチップレット化を活かせば、十分な機会がある。

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R&Dモデルとビジネスモデルとストークス4象限

イノベーションは、R&Dだけでなくビジネスモデルも考えながら進める必要がある。そこで、イノベーションモデルを整理して図示し、ストークスの4象限との関係も考察した。

 

 R&Dでは、基礎研究、応用研究、そして開発となるが、次第に、ビジネス要素が増えてくる。ステージゲートでも事業化を意識した項目が増える。目標KPIも当初は、物理化学単位である電子移動度やビット速度などが多いが、次第に、金銭やTATなどの単位が増える。その意味では、純粋なR&Dの軸とビジネスの軸をとると分かり易い。

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因果、推測、予測、そして、真実

アナリスト時代は、公開情報から会社の成長性や競争力の真実を探り、そこから将来を予想するという作業の繰り返しであった。推定された会社の実力から予想される業績予想の当否により、自身のロジックや推測ルールを検証、修正し改善を加えてきた。その一例が、経営重心論などである。

 さて、今は、教授という立場で、またNEDOの審査委員などの立場で、マル秘情報や、場合によっては、経営陣も知らないか意識していない情報に接する。あるいは、過去の真実も確認でき、ある意味、昔の答え合わせができる、というわけだ。

 過去については、真実はあっても、当事者がいなくなり、あるいは複数いると、事実の解釈や因果関係が難しい。現在については、当事者は既知であっても、関係者が多いと、解釈は異なり、全体像は不明になったりする。こうした過去の事実から、法則性や普遍的事実などの「ロジック」を見出し、そこから、未来を予想する。

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Z世代と転職問題と多様性

 世界中でZ世代の行動が注目されているようだ。Z世代は、90年代半ばから2010年代前半に生まれた世代を指し、今なら10歳から20歳代後半だ。インターネットが普及した環境で育ったため、SNS等で情報を収集し、発信力も高く、環境に対する意識も高く、多様性や人権を重視、さらに、社会貢献や働きがい、起業志向もあるようだ。Z世代とは 環境や人権を重視 きょうのことば - 日本経済新聞 (nikkei.com)

こうしたキーワードを並べると素晴らしい世代といえる。加えて、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視、仕事にイミを見出したい傾向もある。また、2020年からコロナ禍環境でZOOMを使ったため、オンラインによるコミュニケーションを当然と認識しているだろう。SNS発信やスマホのリテラシー以外は、社会貢献、仕事でのイミ、多様性、起業志向、タイパ、等は、同感かつ同様である。この世代は、ちょうど、我々の子供の世代であり、我々の価値観や文化が伝搬した面もあるのではないか。

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生成系AIと営業対決

これまで、長年、営業一筋30有余年のゼミ学生が、グラデュエーションペーパーのテーマに、生成系AIと営業に関するものを選んで、昨年から研究を続けている。生成系AIと人間の仕事の関係については、既に数多くの先行研究があり、営業に関連しては、マーケティング関連はあるが、対面営業などについての実証研究はまだ多くない。そこで、ゼミOBの阿部氏が社長のPXストア(メルコHDのグループ会社)の協力で、パルコ錦糸町内の店舗で54日に実験を行った。PXストアは輸入お菓子などを扱い、阿部社長がグラデュエーションペーパーにて、独自コンセプトである新4P(PeerprettyPridePF)を打ち出した魅力的な品揃えと陳列になっている。会社概要 株式会社PXストア (px-store.com)

 PCにある生成系AI(Copilot)と人間とで、どちらが、接客対応がいいかを、比較するものだ。具体的には、顧客が、店のお勧め商品を尋ねて対応するもので、私自身が実験台になった。

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生成系AIと東大入試~苦手科目は数学と物理、古文

 日経新聞が生成系AIに関する特集「AI、東大入試に挑む」を連載、かつての受験生として、興味深く読んだ。数学が1点では…ChatGPT、英語8割超も「東大不合格」 AI、東大入試に挑む - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 共通テストでは、チャットGPT7割近くより、特に英語、理科社会が高得点、数学は低い。二次試験の過去問では指示文の強化で、平均得点率が上昇したが、本番では、合格レベルに遠い。特に、数学が厳しかったが、英語はかなりの高得点。国語は現代文と漢文はいいが、古文が苦手、理系では、物理が厳しく、世界史などは高得点である。

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台湾が失望しないように

TSMCが九州に進出、この機会に、日本と台湾の友好関係が深まっている。素晴らしいことだ。台湾は数少ない親日国であり、台湾のダムを建設した八田與一などへの尊敬や、かつての半導体立国の日本へのイメージもあるだろう。

 

 しかし、TSMCには、多くの失望が生まれているようだ。日本人のスピード感の無さ、リスクを取らない、英語ができない、等々は、台湾だけでなく、日本側の自覚も含めた共通認識だろうが、それだけでなく、勤勉や意欲、仕事ができないことが、明らかになりつつある。日本人は何でこんなに仕事をしない、できないのか、と怒りが起きているらしい。住まいや教育レベルも不満らしい。

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新たなシンクタンク構想~MOT社会実装の場

これまで、多くの政策は必ずしも、社会実装に成功してきたとは言えないが、それは、PDCAPDの主体が異なることに原因があるのではないか。政治家や官僚やアカデミアの着想(いわば、論文でいえば、問)から、それを有識者会議やアンケート調査で、いわば検証し、それを民間にやらせ、実証する、というパターンが多い。現場をしらない5W2Hの境界条件を軽視するアカデミアの思い付きは、実装させられる民間側から見れば、なかなか難しし、やらされ仕事ではモチベーションも下がる。アイデアは、むしろ民間側から出る場合も多く、PDCAの主体が一致している方が5W2Hの境界条件がわかり、修正も容易だ。何よりモチベーションが高くなる。

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上場の意味とエンゲージメント~透明性と即時性、手応えとヤリガイ

これまで、上場のメリットとして、資金調達、信用が高まる、知名度もあがり、人材採用が容易、などが挙げられきた。最近、アナリスト時代に担当し、フォローしてきた、東芝、日立国際電気、日本無線、新日本無線が非上場化する中で、これまで、アカデミアの論文などではあまり言及されてこなかった上場のメリットとして、エンゲージメント、モラルが大きいに気が付いた。上場会社のエンゲージメントというと、ストックオプションなど金銭面中心に語られてきたが、そうではない。

 

 大企業であれ、中堅中小であれ、上場することは、まさに公の存在として、マスコミやアナリスト投資家との対話が必要になる。経営の良し悪しや、社員が発明した新技術新製品の売行きで、株価も反応する。そこに、緊張感と、やりがいも生まれる。これまで、そうしたマスコミや投資家などとの対話は、コミュニケーションコスト増加として、マイナス面として語られることが多かったが、逆ではないか。

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TSMCに学ぶ~その文化とビジネスモデル、経営手法

TSMCは、いまや、日本でも大変有名になったが、実は、半導体産業での存在感だけでなく、その経営スタイルや文化も大変参考になるだろう。

 最初に、台湾のTSMCを訪問したのは95年頃である。既にPC関連でEMSは成長し、新竹科学技術工業団地が整備され、DRAMで、東芝や三菱電機、沖電気などと提携が始まり、LCDも離陸しつつあった。そこで「台湾シリコンバレー紀行」と題したレポートを執筆した。

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ニデック決算~永守節と冷却事業とPF化

ニデックの決算説明会をオンラインで視聴した。トップが再び交代、ソニー出身で常務として、スマホ事業のリストラを担当した64歳の岸田氏が社長となる新体制となったが、相変わらずの永守節だった。79歳の永守氏は、会長兼CEOから代表取締役グローバルグループ代表に就いたが、永守氏は今期の事業計画の策定につき、新しい体制で決め、自身は参画していないとコメントした。これまでより、やや永守氏の発言ウェイトは減ったかもしれないが、雰囲気は変わらない。ただ、やや話し方がスローになったかもしれない。

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ソシオネクストの決算でのチップレットにDCの新アーキテクチャ

 ソシオネクストの決算説明会をオンラインで視聴した。業績は好調で、肥塚CEOも、手応えと自信を持っておられるようだ。肥塚さんとは、通算省電子課長以来の長い付き合いだが、アナリスト向け説明会で質疑対応をされ、こちらが大学の教員という立場は、当時からは、想像を超え、脳みそが捩れそうだ。

 ソシオネクストは、ソリューションSoCというビジネスモデルが注目され、特に、NREモデルが鍵である。その開発プラットフォームが、そのまま、チップレットに親和性が高い。

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生成系AIと省エネ時代の新たなDCメモリ階層アーキテクチャ

 省エネ化が重視される中、生成系AI時代の、ディスアグリゲーションを活用した、グリーンDCでは、メモリ階層はどうなるのだろうか。現在主流のエヌビディアは、従来型のノイマン型であり、故に、熱を食うDRAMHBMにして省エネを試みているが、限界がある。あらたな非ノイマン的なプロセッサが出てくれば、DRAMへのアクセスを減らせる、スイッチのようなアプリケーションでは十分可能だろう。さらに、NANDは、これまでは、ストレージ階層であり、ビットコストが安いことが重要であったが、広いバンド幅の需要が出てくれば、DRAMのある階層をリプレースすることもある。さらに、チップレットが、そのトレンドを加速する。

 そういう時代には、下記のようなメモリ階層ピラミッドも出てくる。

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MOTはインテグラル、MBAはモジュラー

経営学は発展途上の学問と言われているが、それでも、様々な学派があり、経営の要素を分割、様々な分野に分かれており、大学や大学院で科目となっている。こうした科目は、ある程度、標準化され、タテ割りになり、細分化して研究が進み、知識がそれぞれの「サイロ」に蓄積されている。その意味で、これらの知識は、モジュラー化されている。MBAでは、それぞれ科目毎に、授業で教えられている。

 

しかし、実際の経営では、細文化された知識を再統合し、抽象化された一般論を具体化して、適用する能力が求められる。一般的な経営だけでなく、新規事業や起業、イノベーションを起こす場合も、これらの各科目に細分化された知識をフルに活用し、それだけで、足りなければ、理工学はじめ、他分野から、知見を取り込み、新たな理論を編み出し、利用しなければならない。また、アカデミアの研究でさえも、細文化された各分野を掘り下げるだけでなく、横グシを通し、いわば異なる分野を結合することで、独自性や示唆性も生まれる。

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チップレットのビジネスモデル~ラピダスとキオクシアが合体したら

チップレットでは、主体となる企業が全体を統合設計し、自社品も含めた様々なチップを調達しなければならない。自社チップが中心になれば、Depが重いファウンドリモデルに近いし、他社調達が多ければ、設計や調達力が価値の中心となる。そこに、多様なビジネスモデルが存在するのではないか。

 

 また、アプリケーションにより、どこまでのチップを必要とするかが決まり、設計の標準化やツールがカバーする範囲、さらに、重視するKPIも変わる。通常の自動運転なら、デジタル半導体だけでいいが、EVを考えると、パワー半導体も含めたモジュールまでとなる。DCであれば、エネルギー消費が重要でIOWNを導入するなら、光電融合のための光素子も含まれる。そうした要素で、基板の大きさや形状、インターポーザも変わる。自社品内製と他者チップ調達力とのバランスや総合的な設計力が鍵を握る。

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チップレットとDCが業界を変える

チップレットとDCが、2000年頃のファブレス/ファンドリモデル登場に匹敵する業界構造変化をもたらすだろう。かつては、エレクトロニクス企業は、家電やメインフレーム向けにIDM垂直統合であったが、90年代後半から、PCへ、ユーザーの変化、WINTELの影響、スマホの登場、設備投資の巨大化から、水平分業の中で、ファブレス/ファンドリモデル、またOSATEMSが台頭した。

しかし、こうしたモデルはサプライチェーンの複雑化を生み、また、DCにおいては、エネルギー消費の増大となった。デジタルの時代においては、多様な構造のデータが経営の鍵であり、それゆえ、DCを社内に持つことも重要である。

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為替は金融だけに閉じない

多くの「専門家」「理論」とは、違って、円安が進んでいる。為替や金融の専門家ではないがファンドマネジャーという実務家の経験から、為替についてコメントしている。2022年春の時点で、150200円の円安がありうると「デジタル列島進化論」でも書いた。ファンドは株式市場が中心だが、為替相場にも多少関わらざるをえず、エコノミストから意見を聞いたが、それなりに自身でも理解し見解を持っていないといけない。

専門家の「理論」によると日米金利差などから、いまの水準はオカシイという。しかし、そのオカシイという水準が2年以上、政府日銀の介入にもかかわらず続いている。本来、理論というなら、新たな視点を入れ、修正するか、外れた理由を述べるべきだ。専門家でもない小生が、円安を論じているのは、金利差だけでなく、日本のファンダメンタルズ、政治や国家安全保障なども考慮している。

すなわち、識者の言う「理論」は、金融とう閉じた系だけでの理論であり、実際には、開いた系で考えなければならない。

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東芝リストラとキオクシア上場報道

 日経新聞などに東芝のリストラ報道が記載されている。報道機関により、人数やニュアンスは異なるが、JIPその他、関係者のアドバルーンであろう。上場廃止ゆえに、IR室は廃止となり、当然、説明会もなく、アナリストもいない。広報が「当社より発表したものではない」とあるだけだ。こうしたマスコミと関係者の体質は不変だ。東芝が5000人削減、デジタルに資源集中 国内社員1割弱 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 関係者か広報が作戦をたて、マスコミを操作し、反対意見をいう識者は排除するやり方も、変らない。4月上旬から、「落ちた巨象」として、シリーズを出していたのも、広報戦略をコンサルが仕切っているのだろう。落ちた巨象、東芝が挑む改革 再出発支える現場から 東芝再出発〜デジタル敗戦の向こうへ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 多くのマスコミ報道は、上場廃止のメリットを喧伝し、小生は、財務負担や社員エンジニアを保護する視点や情報開示から、一貫して反対を唱えてきた。最終的には「マグロの解体ショー」でなく、島田社長のプラットフォーマモデルを前提に、ベターな選択と評価した。今になって、マスコミや識者が財務負担からリストラが必要といい、情報公開不透明を指摘しないのは、いかがなものか。

 ポイントはリストラの中身であり、技術者でない間接部門であれば、プラスだろう。表面的な、コストカットでなく、この際、非連結だが、人的に深い関係にある様々な関連会社の「みなし人件費固定費」や不平等条約的な契約を切るべきだろう。当然ながら社外経営陣やコンサルに払う費用もカットすべきだ。報道では今回数百億円の固定費削減というが、MBOなどに際し、コンサルにそれ以上の費用を支払っていることはIR資料にも開示済みだが、マスコミは批判もしない。

 また、ほぼ同じタイミングで、キオクシア上場の観測記事が出ている。当然ながら、東芝記事とも連動しているだろう。キオクシア、24年内にも上場へ 半導体市況回復で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

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債券のリスクとR&Dのリスク

以前から、資産運用とR&Dは、リスクとリターン、投資期間、損切りEXIT、などに於いて、多くの共通点があり、そこから、R&Dのポートフォリオに、金融工学のポートフォリオ理論が適用できることは論じてきた。違いは、R&Dではシナジーもあるが、資産運用ではシナジーは無いことだ。これまでは、株式のポートフォリオで論じてきたが、債券や為替などもある。

 

 他方、近年、東大が債券を発行、さらに、2024年は、GX債が発行されるなど巨大な資金がいる社会課題に、債券が利用され、興味深い。

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環太平洋に中国脅威

今後、世界で人口ボーナス効果が大きいのは、アフリカ以外ではインド、インドネシア、フィリピンなどである。同時に、これらの国は、環太平洋圏であり、国家安全保障上、サプライチェーンの上で、重要である。

 

ところが、アジア太平洋諸国のデジタルインフラを考える場合に、4G/5G基地局の設置では、Huaweiなどの中国系メーカーのシェアが高い。米が安全保障上の懸念から中国排除にも関わらず、アジアアセアン、ではコスト面から官民連携するケースが相次ぐ(インドネシアはHuawei、タイはZTEHuaweiなど)。ここから、DCや防災無線等席巻されるリスクがある。

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合併会社のPMIにアメーバやWILL~表面反応理論

M&Aや企業合併で難しいのは、PMIであり、特に、企業文化の差異が大きな障害になる。通常、合併しても、元の組織が残っており、元の会社が混じりあうことはない。例えば、本部が一つになったとしても、ぞれぞれの会社を継承する二つの部が並立している。あるいは部が一つでも課が異なったりする。もちろん異なる文化が残っていてもいいが、それが対立状態にあり、イノベーションを起こす障害になるのではシナジーも生まれない。

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台湾のレジリエンス~半導体だけでない多くの学び

台湾で3日午前に深度6強、過去25年で最大だが、前回は1999年の921地震だ。当時、台湾半導体各社はかなりの被害をうけた。当時はまだTSMCは巨大ではなくDRAM各社が注目された。酷かったのは、石英管の破損で、日本の装置メーカーが協力した。DRAMLCDの市況に影響した。この25年で、半導体における台湾の存在は大きくなったが、半導体だけでなく、国全体が教訓から学び、そのレジリエンスには驚く。921地震からの25周年間における台湾の防災システムの軌跡 (dri.ne.jp)

 

TSMCの熊本誘致では、半導体だけでなく、こうしたレジリエンスや学びや教訓を生かせるだろう。日本は毎年地震があるが学びもなく、25年どころか50年以上、同じ、体育館に避難である。

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政策実装には問と仮説と実装者の一気通貫と伴走者モデルを

ここ数年、政策プロセスについて、間近に触れる機会が増えており、また、政治家や役人も含め、議論して、うまくいく場合とそうでない場合の差異を考えてみた。

 政策には、民間や大衆からの陳情もあるが、他方で、大所高所からのトップダウンの場合も多いだろう。その「問=テーマ」は有力政治家や官僚やアカデミアとの勉強会などから生まれる場合が多い。もちろん、民間も参加するが、経団連トップや、大企業の著名な経営者、TVに登場する著名起業家、多くの有識者会議の常連コンサルタントなどであり、中堅企業の技術系経営者や最前線の現場の研究者は、彼らが実は実装する当事者になるにも関わらず、参加は少ないだろう。そうした「問」の検証は、常連のアカデミアや経営者を中心に、人数を増やし、有識者会議が開催され、あるいはアンケート調査でEBPMを踏まえ、成される。しかし、社会実装の担い手は、これらの政治家や官僚、有識者会議メンバーの大企業経営者や学者、コンサルタントではなく、大企業から中堅中小の民間企業である。すなわち、問や検証をする者と実装者が別々であり、それゆえ実装の5W2Hの境界条件が異なり、さらに、PDCAの主体も別々になる。

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インテルの巨大ファウンドリ赤字とUMC連携

インテルは、TSMCやサムスンとビオンド2nmGAA開発を競い、あるいはファウンドリ事業に挑戦してきたが、ここに来て、新たな動きが出てきた。

2023年のファウンドリ部門の営業損失が69.6億㌦(1500億円)となったことが明らかになった。ファウンドリ部門の赤字は前年から大きく膨らんでいる。ファウンドリ売上は189億㌦(2.9兆円)ゆえ赤字率37%と厳しい。2022年度は売上274.9億㌦(41600億円)、営業赤字51.7億㌦(7800億円)から31%減収、赤字拡大である。投資家向けのプレゼンでは、同社のパット・ゲルシンガーCEOは「2024年はファウンドリ事業にとって、最悪の営業損失を計上、2027年頃に損益分岐点に達する」、「ASMLEUVリソグラフィ装置の買替えを渋った等の誤った判断がファウンドリ事業に打撃を与えた」とコメントしている。Intelの半導体製造部門が1兆円超の営業損失を出したとが明らかに - GIGAZINE

 こうした中、CHIPS法の補助金活用で、85億㌦(1.2兆円)の先端投資を行い、27年に1.4nmにメドをつけるという。インテル、半導体微細化で巻き返し アメリカの先端工場に6兆円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

また、台湾UMCと組み、2027年から通信やクルマ向けの成熟品、12nmで連携するようだ。インテルは光電融合では強く、さらに、チップレットでは、UCIeで標準化を早々に専攻し、不気味である。台湾UMC、米市場を開拓 インテルと半導体を受託生産 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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FEOLとBEOLを分離できるか~アプリケーションを想定して生産ラインを考える

今や、先端半導体の鍵はチップレットであり、ラピダスの場合は、短TATと絡めて、どう戦略を立て、エコシステムを形成するかだろう。そこで、短TAT効果を上げるために、チップレットで可能なノード別の並列生産が鍵となる。

 そこでは、製造が難しいGAA中心のFEOLと、微細化がやや緩い配線工程が中心のBEOLを分けて、生産することが鍵であり、財務シミュレーションでは累損解消前倒しや投資効果の有効性を示した。そこでの問題点は、そうした並列生産を可能にするため、設計の負担がどこまで大きくなるか、である。

 

 最先端の半導体の設計経験が無いため、どの程度大変なのかの実感が難しいが、複数のプロから無理ではないが、難しい点も多そうではある。ただ、黒田忠弘教授は、チップレットのシンポジウムで、GAAFEOLを量産して作りだめの提案をしており、また、産総研のスーパーCRは、GAAだけを想定しており、実際の半導体生産には、BEOL工程の追加投資が必要になる。これは、FEOLBEOLを、分離生産できることを前提にしており、GAAEUVLだろうがNILだろうが、BEOLとは独立であり、GAAあるいはFEOLファウンドリ、BEOLファウンドリが成り立つことを示している。

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ラピダスに5900億円だがチップレット500億円が鍵

 ラピダスにNEDOポスト5G基金から追加で5900億円の支援が決まった。内訳は前工程が5365億円、後工程が535億円である。「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」に係る実施体制の決定について | 公募 | NEDO

前工程は、GAA2nmだけでなく、短TAT製造技術のR&Dが入り、いよいよEUVも入り正念場だ。関連して、米の拠点などもある。

今回は、興味深いのが、後工程であり、まさにチップレットである。

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技術視点の多角化でなく、文化風土視点の多角化を

企業の多角化は、アンゾフマトリックスで、技術と顧客という視点から語られる。つまり、同じ顧客に対し、既存技術から新技術を提供する。あるいは、既存技術を新顧客に提出する。

 そうした場合、失敗するのは、文化風土を変えない場合である。同じ技術であっても、その提供の仕方は、顧客が変れば、QCDなどの要求ニーズも変わる。B2Cであれば、売切りでもいいが、広告宣伝が必要になるだろう。国内と海外でも異なる。同じ顧客であっても、技術が変れば、コストの下げ方、生産、サプライチェーン構築、原価構成も異なる。重電メーカーが半導体に参入しても、同じやり方では、通用しない。まさに、これらは、経営重心論で指摘したことである。「両利効きの経営」でも、こうした視点がなく、様々なリソースの特性と事業の特性のマッチングについて、楽観的すぎる。

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市場シェアでなく志シェアを

政府は1兆ドル時代に、国内でデバイス15兆円を目指している。これが、為替次第で、100兆円ならシェア15%150兆円ならシェア10%とメッセージが異なるが、いずれにしても、かつての50%などは難しいし、目指すべきでもないだろう。既に、中国、欧州など、各国、各地域が、シェア30%以上などを掲げており、合計すると100%を超え、過剰生産、過酷な競争になってしまう。

 目指すべきは、単純なシェアでなく、エコシステムや連携でのシェアである。

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科学のあり方

科学のあり方について、大学に入って、一層、悩みが深くなってきた。科学の大きな目的は真実の探求だが、アカデミアの分野によって、科学や真実の定義が異なるようだ。真の科学が備える4つの価値観は、マートンの規範によると、①普遍性②無私性③共有性④組織的な懐疑主義(非権威主義)という。この中で、②から④は科学者の姿勢だが、難しいのは、①の普遍性であり、換言すれば、再現性でもある。心理学者であるスチュアート・リッチー著「Science Fictions あなたが知らない科学の真実」は、この4つの価値観、特に、再現性に関する話題を取り上げている。

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シャープが液晶事業を縮小か~ディスプレイ事業の難しさ

シャープが液晶事業縮小を検討しているという。鴻海との取引が問題視された赤字の堺のSDPが中心だろうが、JDIから譲渡された白山工場、亀山、多気の3拠点の事業改善策についても、今後詰めるようだ。シャープ、液晶事業の縮小検討 堺ディスプレイプロダクトの生産停止も視野 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

かつて、「液晶のシャープ」と言われ、実際、数多くの液晶ディスプレイ搭載製品を生み出し、液晶は事業の柱であった。シャープは、鷲塚元専務や辻元社長が目指していたように、「液晶応用」のシャープであって、「液晶TV」や「液晶ディスプレイ」のシャープではなかったのに、堺工場建設当時の社長だった町田氏は「液晶TV」のシャープを、その後に社長となった片山氏は「液晶ディスプレイ(パネル)」のシャープを目指したのではないか。ディスプレイ事業は、キャプティブであるべきで、半導体や電子部品と異なり、外販は不向きである。

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TSMCは後工程にも上陸

各種報道によれば、TSMCは日本に「先端パッケージング」と呼ばれる半導体後工程の生産拠点設置を検討していると報じた。318日のロイター通信によると、製造装置や材料メーカーが集積する日本を設置先の候補として検討、ただ、検討は初期段階で規模や時期など詳細は未定。経済産業省幹部は「支援したい意向」を示しているという。一方、台湾の行政院などは18日、台湾南部嘉義県の工業団地に先端パッケージングの2工場を新設するとの計画を発表、一つ目の工場は5月に着工、2028年量産を目指すという。TSMC、日本に半導体後工程の設置検討か ロイター報道 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 TSMCは、ファウンダリゆえ前工程が中心だが、チップレット時代を見据え、後工程を重視しており、材料や装置の技術基盤が日本にあることから、つくばに、3Dパッケージセンタの拠点を持つ。NEDOのプロジェクトでは、日本の材料メーカーも参画している。これが、R&Dだけでなく、実際の量産拠点を持つのであれば、喜ばしいことだ。

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生成系AIが変えるR&D法則

生成系AIのインパクトは、様々なところで、語られているが、R&Dのリスクとリターンのあり方をも大きく変えることを、岡野原氏「大規模言語モデルは新たな知識か」を読んで知った。それは言語モデルのべき乗則の発見である。すなわち、①訓練データ量、②利用するモデルのパラメータ数(モデルサイズ)、③投入計算量の三つの要因と、言語モデルの検証データの予測誤差(クロスエントロピー損失)の間にべき乗則が成り立つ、というのである。そうであれば、更にここから、第一に、投資対効果が前もって予測できる、第二に、大きなモデルほど汎化し学習効率が改善する、ということであり、これまでのR&Dはリスクがあり、投資対効果が不明だという常識を覆す。

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チップレット時代にはもの作り力が生きる

この数週間、ゼミ内での相互の工場見学会を催している。ゼミの社会人学生の多くは、研究所や工場など技術者が多いので、自身の専門分野のもの作りは精通しているが、他分野の工場の現場は、自社内ですら見たことはなく、ましてや、他社の他分野の工場の現場は、様々な気づきが多いはずだ。

国内の関東圏の工場なので、デバイスでも後工程の試作ライン、開発センター、インフラ機器、メカ系機器、また多品種少量が多いが、動きが見えるラインゆえ、動きが見えにくい半導体等よりも、もの作りの基本がわかり、再確認ができる。

 

製品も異なり、生産数量も異なり、装置も異なり、部品点数も異なり、TATも様々だが、それだけに、共通点を考察すれば、5Sや可視化、流れ、在庫、省エネ、ロスを無くす、等の基本は同じ筈だ。

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東大黒田忠弘先生最終講義

 黒田忠弘先生の最終講義「半導体超進化論」が、去る31315~17時、武田ホール(武田先端知ビル5階)で開催(事前登録制定員240)され参加した。17時半から、懇親会があり、さらに、その後、懐かしい知己とお会いし、二次会で、半導体の昔話と未来話を語り合った。

 講義も素晴らしかったが、会場で多くの知己に会えたのは嬉しい収穫だったが、中でも香山さんや桜井先生が黒田先生の上司であることを再認識できたこと、また半導体について議論できたことも貴重な機会であった。

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EUV装置のキーワードは「250」~250ケースに分け250人が250日かけ組立

ビオンド2nmで必須となるEUV導入の課題が明らかになってきた。今後、国内にも、ラピダスや広島マイクロンに導入されるが、配慮が必要だ。

 

装置の価格が1台当たり、5nmプロセスで約150億円、3nmプロセスで約200億円、2nmプロセスに至っては、価格は約500億円以上(TWINSCAN EXE:5000380mil$)であるが、装置は250ケースに分けて輸送され、250人のエンジニアが、6カ月(土日を考えると250)かけて組み立てるという。

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エヌビデアAIチップはスパコン並み

生成系AI、時価総額2兆ドルとなったエヌビデアの4nmチップH100を搭載した80GB品は3万ドル、500万円近い。これだけで、かつてのミニコンやEWSくらいだ。もちろん、HBM812層のせたHBMや冷却、インターポーザその他を載せている。

 

 H100は、TSMC4nmプロセスでダイサイズは、814㎟である。

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アセアンの5Gが中国勢に席巻~国家安全保障リスク

ファーウェイは、日米はじめ西側諸国にとって、ハイテク派遣、国家安全保障上のリスクであることは共通認識であろう。既に、基地局はじめ、デジタルインフラには規制がかけられている。

 他方、今後、人口増加や経済成長が著しいのは、東南アジア、アセアンであり、現在は日本や中国韓国に比べ、シンガポール、マレーシア、インド、インドネシアの5G普及率は急速に上昇する。スマホ当たりのデータ利用料も同様である。そこで、必要なのは5G基地局インフラであり、データセンターだろう。

 

しかし、東南アジアでも、は5G関連設備や機器供給元として中国勢が存在感を高めている。欧米は。国家安全保障上の懸念から中国系メーカーの排除に傾くが、東南アジアでは、コスト競争力が鍵となり、官民で、中国勢と連携するケースが相次いでいる。

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人口増のアフリカに特化する中国スマホ

アフリカは、現在の人口は13億人であり今後、人口は急増する。2050年に向け、ナイジェリア4.1億人、コンゴ、エチオピアが2億人前後、ウガンダ、エチオピア、タンザニアが1.5億人、南アが1億前後と日本を大きく超える。平均年齢は20歳以下が多く、2050年には、20歳代後半であり、60歳に近づく日本とは大違いだ。

既に、スマホの普及率は40%を超え、加入者は5億近く、四半期の出荷台数では2000万台以上と年間1億台を超える。ここで、注目されるのは、Transsion(伝音科技)、アフリカ市場に特化している中国企業である。「Tecno」、「Infinix」、「Itel のブランドで販売、合計シェアは50%近く、エチオピアに工場がある。

黒人ならではの「美黒効果」が奏功している。

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勝負師の条件とベイジアン確率

孫子など中国古典の紹介本を著す守屋淳氏による「勝負師の条件」を読んで驚いた。冒頭に、氏が絶賛する4人の勝負師をあげている。すなわち、スクエアエニックスのトップだった和田洋一さん、キヤノン電子の酒巻さん、大森義夫氏(元内閣情報調査室長)、澤上さん(さわかみファンド)である。和田さんは野村時代から知り合いであり、MOTの授業でも何度もゲストスピーカーとして招聘、懇親もしている。酒巻さんもMOT授業でゲストスピーカーをして頂き、打合せでは、独特の素晴らしい社長室で懇談した。澤上さんは親しくは無いがファンドの世界で知り合いだ。少なくとも4人中2人は知己である。さらに、匿名で登場する、神のような、素晴らしいファンドマネージャーの話が出るが、おそらく、Hoさんだ。ロングのみで、通常の相場では、資産を数倍にし、下げ相場でもプラスにする。控えめな目立たない方だが、地道で、神のような勘があり、さらに、伊達直人のように、儲けた分を寄附、自分の会社では、証券会社をリストラされた若者を雇う等、私生活面でも神のようだった。ヘッジファンド時代には、アドバイザーとして、毎週一度会議に来ていただき、運用の一から教わり忠実に100%真似をした。

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直観と理系の理論、文系の理論

理論の嬉しさや有難さは、二種類あるだろう。直観でもわかり、経験できるが、理論によりスッキリし、さらに理論を定量化数式化し予測可能、社会実装可能にできる。もう一つは、直観では割り難いが、理論展開により思わぬ事実を明らかにし、しかも実用に可能なもの。これぞ、理論であるといえる。

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株運用3.11の思い出~あれから13年、13回忌は一昔前

 能登地震から3か月、また、忘れもしない3.11からは、もう13年だ。あの日、多くの方が亡くなったが、13回忌となる。しかし、まだ、今は、記憶に鮮明に残っているが、徐々に忘れていくだろう。

 ヘッジファンドを始めて軌道にのり、リーマンショックも乗り越え、リーマンショック前でも後でも、プラス10%を叩き出し、日本株ヘッジファンドで表彰され、企業年金からも認められ、ファンドの金額も増え、これから更に発展という時だった。原発ルネサンスを信じていたわけではないが、日立や東芝、さらに、東北地方に工場を持つアルパインなどを保有、年度末の3月を何とかプラスで乗り越えようとしていた。オフィスは日本橋人形町のペンシルビルの8階と陣容強化もあり、9階も借り、拡張していた。

 相場が終わる15分前は、臨戦態勢で殺気立つ。個別株をドタバタと売り買いはしていないが、ヘッジファンドは、ロングとショートの比率(ネットロングレシオ)や、どれだけ、レバレッジを効かせるか(グロスレシオ)など、幾つかの重要な指数を、現物株の状況に応じ、先物を使って調整する。

 その246分にグラグラと大揺れ、ペンシルビル故に、震度6以上はあったろう。棚は倒れ、コピー機も机も滑り、反対側の壁にぶつかり、明らかに部屋が傾くのを実感し、死という言葉がよぎった。

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日本企業最大の株主日銀ETF、GX債も4割保有

日銀のETF買いについては、過去、その是非を議論してきた。日経平均史上最高値更新の時も、その時点では、マスコミの論説であまり触れられていなかった日銀ETFの影響や今後の日銀の動向について記した。日経平均が史上最高値を更新 - 若林秀樹アナリスト (circle-cross.com)

 日経新聞310日に、ニッセイ基礎研究所井手氏試算によると、ETF含み益34兆円、時価71兆円、簿価37兆円である。日銀ETFの含み益34兆円 株高で過去最大、活用策を議論 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 この71兆円の保有ETFは東証プライム市場時価総額950兆円の7%であり、GPIFを超え、トップの保有比率である。配当(日銀では分配金収入)2022年度1兆円である。71兆円は税収相当であり、1兆円も巨額である。また、7%という「株主」と立場で企業に対して影響力を及ぼせる可能性はある。

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「もしトラ」シナリオ~台湾有事への影響

じわじわと「もしトラ」が現実のものとなりつつある。米でも日本でも、政府や産業界は、「もしトラ」シナリオを前提として、動いているようだ。政治や国際問題などは門外漢だが記したい。

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生成系AIの本質とリスク

生成系AIは、コンピュータ業界だけでなく、むしろ、生成系AIが社会や企業、経営戦略に及ぼす影響についての話題が大きい。テクノロジーの話ではあるが、誰もが飛びつき、議論できる。

 

 テーマとしては、1年前なら、生成系AIが営業をどう変えるか、等は、あまり先行研究や事例は無かったが、膨大な先行研究が登場している。雇用や社会については、従来から、コンピュータが仕事を奪うか否か、AIが奪うか否か、の議論はある。

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大学のアドミッションポリシー

 入試シーズンも終わり、あちこちで合格発表が始まっている。大学も大学院も最も重要なイベントは、入試であろう。卒業、修了も重要だが、多くの場合、入試は不合格も多く、思い出、話題になるが、卒業は、それほど、留年や落第はなく、話題になることは少ないのではないか。

 入学に関しては、どういう方を対象としているか、大学側が希望しているか、については、極めて重要であり、それがアドミッションポリシーとして公開されている。そのアドミッションポリシーに基づいて、入学試験もあるわけである。入試では、そうしたアドミッションポリシーに基づいた学力なり能力を前提として、カリキュラムが決まるわけである。

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憲法が阻害するイノベーション~会計検査院と科研費

 野村総研時代からイノベーションに関して研究を続けている。学会にも入っており、MOTでも多くの科目を創設、国際比較やイノベーションを支える、教育制度、金融、文化、政治などについて考え、シンポジウムも開催、学会発表もしてきた。最近は、イノベーションの阻害要因について、深堀をしている。

イノベーションは、本来、リスクがあり、成果やリソース等が、計画通りにいくものではないだろう。しかし、資金や人員などリソースを使う以上、計画も必要である。大学での科研費などの申請や、NEDOプロジェクトでも、期待される成果や応用分野を記述し、必要な設備や人員、そして時間などコストを見積もり、それをステージゲートでチェック、修正すべきところは修正していく。

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技術の特性をN軸マップで表現する

イノベーションを起こすためには、技術の特性に応じたイノベーションモデルが必要であり、近年では、初期から社会実装を考えて、ビジネスモデルやエコシステムを築いていかなければならない。

 トランジスタや創薬なら、リニアモデルかもしれないし、家電であれば、ノンリニアモデルだろうし、アポロやマンハッタン計画など巨大技術であれば、プロジェクトマネジメントが重要になる。技術によって、リスクリターン特性も異なり、人月リソース多寡が成功確率を上昇する場合もあれば、1人の天才が成功確率を決める場合もあるだろう。それによって、研究所の配置や組織構造も変わるし、社内中心か、オープンイノベーションが中心か、も異なるだろう。

 ビジネスモデルも、その技術が設備投資型か、人件費依存型か、サプライチェーンが複雑か否か、などで異なる。

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坂本幸雄さんの遺言

坂本幸雄さん急逝をようやく各紙が報じている。しかし、国内各紙より、海外の方が大きく取り上げ、国内主要紙でも、事実を知らない方が多かったようだ。

 国内半導体に巨額な資金が投じられ、これだけ話題になるのを、皮肉と捉えるよりは、坂本幸雄さんの念や努力が通じたというべきだろう。

 

 坂本幸雄さんの、これまでのメールを、𠮟咤激励、アドバイス、あるいは、遺言と考え、下記に一部を紹介したい。2020年から2024213日まで、計2.9万字に及び、内容は半導体が中心だが、多岐にわたり、まさに、我々への遺言である。示唆に富み、参考になるので、少し紹介する。

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経済教室でW若林教授がチップレットに言及

この2月後半は、TSMC熊本の開所式に合わせたのか、ハイテク株中心に日経平均史上更新、などもあり、経済教室は、半導体復活はあるか、というテーマだった。そこで、偶然か、寄稿者は、W若林(私、理科大若林教授と、東工大若林教授)であった。若林整教授はNEDO委員会で数回ご一緒した程度だが、私に負けず劣らず辛口率直で、あるプロジェクトに対し、私と同様厳しい意見だった。

 

私は、国家安全保障など追い風の中で、チップレットを利用した、ノード別並列生産によるコストダウンと短TAT効果を試算した上で、OSATEMSとの統合、更にチップレットがもたらす業界構造変化をビジネスモデルにどう生かすかを論考した上で、技術と経営の二刀流、すなわち、我田引水ながら、MOTの重要性を訴えている。また、東工大若林教授は、10年前からジャパンファウンドリ構想を持っていた(国際情勢変化やファブレスも無く、More Moore真っ最中で疑問だが)そうだが、半導体関連業界をクロスSWOT分析、チップレットがチャンスであり、イノベーション起業する国際人材とMOT的人材が必要という。まさに、チップレットとMOTが共通点だ。

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ラピダスとLSTCのストークス4象限

コンピュータ、半導体など分野に限らずハイテクの成功は、R&Dの成果を社会実装する上で、それらを担う組織を、ストークス4象限で適切な位置づけることにある。鍵はパスツール象限だ。

日本は、海外との対比でパスツール象限に相当する組織が弱いことにある。欧米では、パスツール象限には、フラウンホーファー研究機構、DARPAIMECITRIなどがある。かつては、日本も電電通研があったが今は薄い。半導体ももちろんだ。そこで、先端ロジックに関係するラピダスとLSTC、産総研、JSTを、メンバーベースでマッピングすると、パスツール象限が弱く、LSTCがボーア象限と、パスツール象限でもエジソン象限に近いところに位置し、実装に向けた開発の橋渡し、コミュニケーションが難しい可能性がある。

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GX移行債発行と株式市場の中国株外し、そして外れる日経の為替予想

マスコミは日経平均史上更新に湧いているが、その中で、214日に、財務省は、GX経済移行債の10年債入札を、ついに、初めて実施した。環境貢献度の高さを重視した「グリーニアム」高価格(低利回り)は発生したが、利回りは通常債を0.005%下回るも、市場予想の0.06%ほどにはならなかった。14日は発行予定額8000億円に対し、金融機関から23212億円の応札があったが、27日にも5年債で8000億円の入札の予定がある。GX債、熱狂なき滑り出し 緑のプレミアムは期待届かず - 日本経済新聞 (nikkei.com)

GX経済移行債は2050年の温暖化ガスの排出実質ゼロの実現に向け、政府が企業の脱炭素の取り組みを支援する資金を調達するため発行する新しい国債だ。23年度は総額1.6兆円を発行し、10年間で20兆円規模の発行を予定する。

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