2022年10月~12月

CEATEC2024見学とパーティー参加

 今年も、CEATECが幕張で開催された。25周年であるが、今年は、東京モーターショーから発展した「Japan Mobility Show Bizweek 2024」も併催された。CEATECは、JEITA主催、Japan Mobility Show Bizweekは自工会主催である。15日が初日で午後から一般参加、18日まで開催。25周年特別企画「AI for All」も用意され、AIを中心とした出展が多い。カンファレンスでは100超のセッション開催。

 

 昼過ぎから16時頃まで各ブースを見学、特にJEITA半導体部会のブースは今年も半導体人生ゲームがある。午前はプレミアムタイムであり、また、隣のJapan Mobility Showへの参加者もあり、また衆議院選挙スタートもあり、政治家や官僚系などVIPの方々は見えず、全体的にやや少なめな印象か。その中では半導体ブースは若者中心に訪問者が多いようだった。

続きを読む

念をイノベーションに昇華するには

日本の大企業で新規事業が上手くいかない理由には、VBや海外のように「01」でなく、「-10」があるからだろう。これは、多くの経営者からも賛同を得て、その前提で新規事業戦略という授業をMOT2023年から開講したが、大変好評だった。新規事業にはリソースがいるが、他部門と新人しかいない。多くの場合、そのトップは成功体験も多いエースでも、他部署からのメンバーは「使えない」「あぶれ者」や過去に新規事業で失敗した人間が多い。その失敗はそれ自身だけでなく、様々経営環境の変化もある。スキルが無いか、スキルがあっても、経営環境等が不幸だった場合などは、恨みや怨念を持つ場合も多い。

続きを読む

半導体工業団地立地、台湾と九州~地政学リスクと列島改造論の中で

九州と台湾が連携して、台湾の新竹サイエンスパークをモデルに、九州半導体パークを再現しようとしているようだ。九州はもともと、70年代から、シリコンアイランドと称され、半導体工場も多く、既に、インフラや産業クラスターが充実している。また、九州と台湾は、面積や形状も近い。

 TSMC熊本誘致は大正解だったが、これから更に発展させるとなると、台湾の5欠と同時、用地に加え、水、人、電力(将来、EUVも入れるなら原発も必要)、大学などハイエンド人材もいる。地震のリスクも同じだ。歴史遺産もあり、地勢的に、熊本、福岡、佐賀、長崎は厳しく、大分、宮崎、鹿児島は交通が不便だろう。そもそも、新竹は90年代に大発展したが、毎年、訪問するたびに、様変わりして、ショックを受けた。そこでは、海亀と言われる米留学からの帰国組があり発展を支えた。

続きを読む

JX金属上場へ~レゾナックに次ぐ半導体素材メーカー

ENEOS傘下の非鉄大手JX金属が108日、東京証券取引所に上場申請と発表した。ENEOS完全子会社から上場によりHD持ち株比率は50%未満になる見通し。時価総額は7000億円超。JX金属は上場を機に資源・製錬から半導体材料に事業の軸足を移すようだ。上場時期は202534月予定、ENEOSにとってはコングロマリット・ディスカウント解消、JX金属は半導体で更なる成長を目指せる。    JX金属が上場申請、時価総額7000億円 東京メトロ上回る - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

JVCケンウッドと富士通~無線技術の差異

今後、デジタルインフラでは無線技術は極めて重要である。その中で、NTTドコモは基地局を富士通製からノキアなどに変えるそうだ。5Gで先行する海外製を増や、し国産機器優先の従来方針からオープンな調達先開拓に転換し課題の通信品質改善につなげる。2025年度までの2年で計1000億円規模を充てる。NTTドコモ、基地局の国産優先を転換 5G改善へ1000億円 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

かつて、富士通はガリヒ素デバイスからシステムまで無線にも強かったが、残念だ。ただ、富士通は、よりシステムやソフトにシフトするそうだ。NECや、日立国際電気、日本無線にも期待したい。

 

他方、携帯電話などの通信キャリア向けとは異なるが、今後注目すべきは防災無線や業務用無線などもある。そこで注目すべきは、アマチュア無線が祖業のJVCケンウッドである。業績回復が著しいが無線事業の貢献だ。JVCケンウッド、祖業開花で株最高値 次はカーナビ改革 窪田真奈 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

防衛テックの見方とDualユース そして、対ドローンのスウォーム

 石破総理就任で国内でも一層防衛産業が注目されている。世界では、数年前から、株式市場やファンド、VCからも「防衛テック」として関心があったようだ。

[FT]防衛テック、投資の是非は 革新加速倫理面に懸念 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ウクライナや中東での戦争で起こっていることと、過去の戦争との差異は、前線からのフィードバックに応じて急激なイノベーションを進めてVCや裕福な献金者から資金を調達、国全体の戦費を拡大であり、いわば戦争の「民営化」であり、北米と欧州全土で防衛テック投資が急増する背景になっている。

続きを読む

米半導体政策から日本の政策も考える

 これまでの半導体政策と異なり、今回は、日本は、TSMC熊本誘致、ラピダス千歳建設など社会実装で先行と評価、米はアリゾナで遅れていると言ってきたが、注目すべき点もあり、日本での見方と異なる面もあるようだ。[FT]米半導体戦略に潜む危険 テック各社 湾岸諸国と提携 - 日本済新聞 (nikkei.com)

日経FT誌のラナ氏によると、9月上司に試験生産で台湾の工場と同様の歩留まりを実現、また労働者の育成や教育でも大きな貢献があるようだ、等と指摘している

続きを読む

ノーベル賞はAIだらけ

今年度のノーベル賞は、物理学は基礎原理、化学賞は応用、に関するものであり、最近の生成系AIのインパクトにノーベル賞の委員会も影響を受けたようだった。

ノーベル物理学賞に「AIの父」、ヒントン氏とホップフィールド氏 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

生成系AIの黎明期、その基礎には、日本の甘利俊一先生やNHK福島氏の貢献がある。930日のブログで、理科大MOT秋入学修了式での石川学長祝辞で「甘利先生の生成系AIの貢献とそれを日本が価値、イノベーションに繋げることができなかったことの悔しさと反省」についての話題を紹介した。もしかしたら、石川学長はノーベル賞のこのことを知っておられたのかもしれない。

【ノーベル賞2024】ディープラーニングの基礎、日本にも 福島邦彦氏や甘利俊一氏らが貢献 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日経が生成系AIに関連して、世界を変えた7つの論文を紹介している、これはなかなかいい記事だが、ブレークしたのは2012年つい最近のことであり、また、カナダが多いことに改めて驚かされる。確かに、カナダは生成系AIなどICTのメッカであり、欧米人と中国系が入り交じり、独特の文化が醸成されかつ科学技術政策もユニークだ。2012年は、日本はリーマンショックや東日本大震災など厳しい時代であり、アベノミクス前であったことが悔やまれる。もう少し後なら少しはチャンスを活かしていたかもしれない。

この中で、原理や応用は①②④⑤⑥で、③と⑦は経済社会への影響だが、実は③が恐ろしい内容であり、プリファードネットワークの岡野原CTOの著書にも紹介され、以前のブログでも取りあげたが、R&Dのあり方を変えるものだ。他方、⑦は昔から良くある論文で同一子するのは違和感がある。

 

AIを劇的進化、世界を変えた7つの論文 テクノ新世 もっと人間らしく ルポ編(1 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

横串横連携の鍵は固有周期差など時間軸要素

アカデミアでも企業内でも産業界でも横串や横連携は難しい。それがイノベーションの妨げにもなっている。ここ数年、自分なりに、研究あるいは実践的に試行錯誤しているが、その鍵というか理由は第一に、「固有周期の差異、時間軸のレンジの差異で、これを「テレワークやフレックスタイム制度」が余計複雑にしている。そして、第二に「人事の流動性が低い日本ではクリティカルに効くが二刀流など複数の専門よりも、この道一筋を尊重し深堀する文化」ではないか、と思うようになった。

 

 個人でも組織でも活動サイクルが異なる。メールや連絡、特に会合のアポイントがきた場合、どの位の時間差で返事をするか、その返事の時刻は全く様々である。自身がアポイント系は調整者のことを考えて、ほぼ即答するが、1時間から数時間、数日まである。酷い例は数週間だ。また、朝一で来る場合、夕方来る場合、夜中の場合もある。通勤中、会議中などは即答が難しい。

続きを読む

アップルウオッチは世界シェア10%~初代から10年

 アップルウオッチの世界シェアは初代から10年たつが、10%まで来たがスイス勢に及ばない。自身も愛用しているが意外と低いと感じた。アップルウオッチの世界シェア1割 迫る中印勢、安さ強み 初代から10年、スイス勢追う - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 2015年に、経営重心の視点で分析した。時計かウェアラブル端末かで異なり、時計ではないとの考えだった。それが故に、日本のカシオも検討しているとの認識である。

続きを読む

中国から脱出か景気減速か~チャイナイノベーションの表と裏

日米欧の中国離れが加速している。EV不振や不動産冷え込みも含め、景気減速による現地ビジネス撤退や、競争力を中国企業に奪われ結果、工場撤退などもある。

米企業であるIBMGM、マイクロソフト、アップルは、R&D部門が多く、米中摩擦、国家安全保障が背景だろう。IBMが中国R&D閉鎖、1600人超に影響 現地メディア報道 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 米の2023年の対中投資は前年比4割減という。2014年以降の10年で5割減という。知財リスクや従業員のリスクもある。IBMGMが中国事業縮小 アメリカの対中投資、前年比4割減 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

検証とEBPM、ファクトテック機関~無駄遣いを無くす無駄遣い~臨機応変

経営学や経済学は検証が大好きだ。F検定やt検定から、一時はp値が大流行、今は因果推論が流行している。その中で、政策をきちんと評価検定しようということで、EBPMが注目されている。半導体政策でも、EBPMTSMC誘致効果を検証されている。欧米では、1960年代まで遡るが、本格化はオバマ政権2016年という。米国におけるEvidence-based PolicymakingEBPM)の動向 (rieti.go.jp)

 

日本においては、EBPMという用語を用いたのは、2017年だという。それまでの政策評価(正当化)は、有識者会議などが中心であった。1 我が国におけるEBPM の取組 (ndl.go.jp)

続きを読む

世界の政府債務が過去最大へ

 世界の政府債務が91.4兆ドル(1.3京円)と過去最大になったそうだ。IIF(国際金融協会)が発表した。IIFは、四半期毎に世界の国々の家計/企業/政府/金融機関が抱える債務を集計分析、報告書「グローバル債務モニター」として公表している。Institute of International Finance (iif.com)

 

気候変動に伴う投資資金の多くが政府債務によってまかなわれている現状を踏まえ、世界の政府債務が2030年までに145兆ドル以上、50年までに440兆ドル以上に急増するとの予測も公表した。GDP300%だが、日本も多い。世界の政府債務、最大の92兆ドル 気候変動で急増懸念 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

もはやネット空間は誤情報ばかり

かつて、90年代にインターネットが登場、普及した時代、それは自由な空間であり、真実の宝があり、民主的であった。回線は不十分であり、画像も稚拙であり、動画も少なったが、本音や良心もあり、匿名性もあった。しかし、PCからスマホの時代になる中でGAFAも登場、PFモデル、フリーミアムモデルが導入され、多くの弊害が生まれた。メールも含めて、日々、偽メール、ウイルス、個人情報漏洩、監視リスクが気にしないといけない。PWも二重三重になる。検索サイトも商業主義に溢れ、ほぼ広告ばかり重要な情報や欲しい情報は無く、あっても確認に時間を要する。

 その中で、政治的な話や選挙においては、デマも含め様々な動画の応酬合戦となっている。日々色んな情報が送られ、頭や心が麻痺する。精神的なマイナス面も多くなっている。

続きを読む

原子力とAI再び、DCはどうなる

生成系AIの勢いが止まらない。まさに、イノベーションが進んでいる。そして、DCの在り方も変えつつある。生成系AIを前提としたDCは、これまでのハイパースケーラーと言われたものでも数百MWだったが、数GW級になる。カーボンニュートラルの観点から、再生可能エネルギーを使った地産地消や、電力網と情報通信網の最適化、最適マッチングをしても、なお、容易ではない。世界では、グーグルのCEOは、AI-DC拠点で原発活用検討を表明した。既に、ウランは需要増で原子力ルネサンス以来の高値になっている。DXAIGXの原子力が、DCで不可分のものとなりつつある。

続きを読む

ラピダス後工程に期待~TSMCにない新たなビジネスモデル

かねてから、NEDOプロジェクトにも採用されていたが、後工程の研究ラインが千歳で着工が始まり、具体化する。ラピダス、「後工程」研究ライン着工 電力消費10分の1狙う - 日本経済新聞 (nikkei.com)

セイコーエプソンの液晶ラインを使い、9000㎡クリーンルームを設け、254月から装置搬入を始め、264月に稼働するため、前工程より早い。

続きを読む

総務省経産省デジタルインフラDC中間取りまとめ3.0と沿岸監視レーダー

 政治が大きく動いている間に、総務省経産省から、デジタルインフラ(DC)中間取りまとめ3.0が公表された。中間取りまとめ(中間取りまとめ1.0)20221月に公表された。これは「重要性が高まっているデジタルインフラの整備(DC)に当たり、レジリエンス強化、エネルギー・通信の確保といった立地に係る要件を検討するとともに、経済安全保障の観点から担い手となる企業の健全な育成を図るため」が目的であり、当初から有識者として関与している。座長は慶応教授の村井純先生である。

000777068.pdf (soumu.go.jp)

続きを読む

石破総理の所信表明演説

 石破新総理の所信表明演説をTVで視聴した。いつも視聴しているわけではないので単なる感想だが、内外の政治家スピーチは聞いているが、半導体というキーワードは確認でき良かったが今回は色んな政策満載だがストーリー性もなく分かり難い印象だった。

続きを読む

投資される側のリスクリターン

リスクリターンといえば、投資する側の論理あるいは議論であり、投資される側からの議論はこれまであまり無かったように思う。投融資される側は、リターンに相当するのは株主コストや利率であり低い方がよく、リスクは期間や経営への介入度合や関係性だろう。それが近年多くのMBOで特に時間軸での認識差が問題となっている。これをGX債に絡め、今度、研究イノベーション学会で発表する。

続きを読む

検索と生成系AIどっちが有用か~AI若林教授を開発

 もはや、日常業務にも研究にも検索は欠かせない。辞書を使うことは減ってきた。むしろ、このブログも含め過去書いた書類を検索することが有用だ、先日、原稿〆切に終われていた時、長年愛用しているExcite検索がトラブルで使えなくなり、グーグルやウィンドウズの検索を使ったが、全く使い物にならず、困り果てた。以前に、先行研究などが不十分だと指摘したら、ゼミ生などから「なぜ先生はそんなに検索が直ぐに出てくるのか」と聞かれたが、キーワードに加えてExciteらしいと分かり学生にも勧めている。

 グーグル等ではどうしても一般的なものが上位に出てくるので、自分の思惑にヒットしない。MS検索などは論外のレベルだ。長年Exciteを使っているせいか、ある程度、PCだか検索エンジンが賢くなっているのかもしれない。生成系AIを使ったが、チャットGPTはまだいいが、Copilotは使い物にならないレベルで気の利いたキーワードを入れた検索の方がマシだ。チャットGPTも含め一番困ったことは平気で「ウソをつき」(ハルシネーション)、簡単な計算間違いをすることである。結局、自分で検算をしないといけない。更に。生成系AIは答えの範囲が狭く、Excite検索で出てくる意外な関連付けが出てこない。Exciteで検索しながら、自分で自問自答して知識が広がるが、生成系AIは全くダメである。

 日経新聞によれば、「オープンAIがチャットGPTに新音声機能アドバンスト・ボイス・モードを加え、最大の違いは応答の速さで、35秒かかっていた人の呼びかけへの反応時間を平均0.3秒に縮め、不自然な間がなくなり、AIとのやりとりに人間味が増した。GPT-4oを基盤として動き、音声を文字に変換せず、音声のまま処理する。声のトーンや話す速さもデータとして取り込み分析、利用者の感情に合わせて返答内容を変えられる」らしい。ChatGPT、会話の「間」0.3秒に 人間味増し悪用リスクも - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 いま、研究費を使って「AI若林教授」を開発してもらっているが、要は。私が書いた色々な文章をデータベースとする検索エンジンだ。

続きを読む

石川学長の卒業式の御言葉と甘利先生

 先日、秋入学生の修了式があり、ゼミで7名を送り出したので指導教授として、出席し祝った。春入学は大人数で武道館での挙式で学部や学科毎の代表である総代が学長から証書を頂くがが、秋は少人数なので大学の講堂で開催され学長から直々に全員が修了証書を渡され、全体で記念撮影があるのもメリットだ。対象は修士と博士だが、秋入学ということもあり、外国人が半数を占める。

 学長からの祝辞は、いつもの「知識を価値創造に使う、多様な論理性の取得」に加え、今回は生成系AIの話であり、その先駆けが甘利俊一先生だったことが話題だった。

続きを読む

石破新総裁に望む政策~半導体デジタルはどうなる

 自民党で石破氏が新総裁となった。高市氏なら半導体デジタル戦略は既定路線の継続だが、石破氏は、あまり発言では半導体デジタルがなく懸念ではある。大和証券の著名ストラテジスト木野内氏によれば、高市氏と石破氏を対立してマッピングしているようだ。共通は防衛であり、原発核融合と再エネを対比、高市氏にはある量子コンピュータ等がない。差異はアベノミクス、金融政策だろう。いずれも半導体は無いが、どれに成ろうが、必須の基盤であろう。

続きを読む

ラピダスに各社追加出資

日経新聞によるとラピダスに3メガバンク、DBJに加え、NTTやソニー等が出資の模様であり、合計1000億円を目指すようだ。

3メガバンク・日本政策投資銀行がラピダスに出資へ 最大250億円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

NTT・ソニーグループなど、ラピダスに追加出資意向 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

NTTやソニーの他、NEC、キオクシアも応じるようだ。デンソーの他、ソフトバンクは言及がないが、トヨタなどもありうるだろう。

続きを読む

今年も研究イノベーション学会予稿5本書いた

今年も研究イノベーション学会が10月末にあるが、25日の〆切に、自身の予稿を5本、ゼミで30本を提出した(予稿は、15000字程度で、46頁である)

年々、知力、気力、体力も衰える中で、自身の5本とゼミ生25本程度を仕上げるのは、今年は、正直きつかった。特に、今年は例年より、バラエティーに富み、高度なものも多い。しかし、日頃から温めている、アイデアを自分なりに検証を試み、まとめ上げられたものを眺める爽快感は格別で、癖になる。また、ゼミ生が、長年社会人として悩んできたMOT的な多様なテーマを、議論し、アドバイスして、予稿として完成させ、お互いに、共有し、議論するほど楽しいことはない。半数程度は、学会発表経験もあるが、学会発表経験もなく、当然、予稿を書いた経験もないゼミ生を一から指導し形にするのも大変だが、彼らの自信に満ちた顔を見るのも嬉しい。

 

ゼミ生の予稿指導は今年が最後であり、寂しい感じもする。しかし、体力気力からも、そろそろ限界だろう。あとは、自身でどこまで、研究成果を発表し続けられるかだ。

続きを読む

キオクシア上場延期へ

日経新聞によると、「上場時期が従来想定の10月から遅れる」「半導体株が世界的に軟調に推移するなか上場後時価総額が目標の15000億円超に届かないと判断、上場方針は維持11月以降の早期上場を目指す」としている。キオクシア、上場11月以降に後ろ倒し 半導体株の調整で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 ロイター、その他も同様の報道である。色々マスコミが探っており、他方で、ステークホルダーが、アドバルーンをあげているのだろう。

続きを読む

リガクが上場へ~JEOLと提携

リガクが上場するようだ。予定日1025日。新規上場会社情報 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

日経新聞報道では、上場時想定売り出し価格1230円から時価総額は2770億円程度となるようだ。上場に伴い大株主である米大手ファンドのカーライルが75%の保有株式の一部を売り出しカーライルは4割程度になる模様。リガク、1025日東証プライム上場 時価総額2770億円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

リガクは1951年設立、X線分析装置等が主である。202312月期連結業績(IFRS)は、売上収益が27%798億円、粗利益467億円(58%)、営業利益2.4倍の152億円(19%)EBITDA197億円、海外売上高比率7割である。 202412885億円、粗利546億円(62%)、営業利益174億円、EBITDA220億円である。中長期計画を920日に公表しているが売上成長率10%、調整後EBITDA20%台後半、R&D比率9%CAPEX比率5%としている。リガク・ホールディングス株式会社 (rigaku-holdings.com)

続きを読む

インテルを救うのは~40年ぶりの危機

インテルが、ほぼ40年ぶり、日本のDRAMメーカーとの競争に敗れ、DRAMから撤退以来の苦境に陥っている。リストラ1.5万人である。ファウンドリ事業は厳しく、SCMでも難しかった。光電融合では技術力はあるものの、先端パッケージ技術は弱く、チップレットではUCIeコンソーシアムを立上げたが、OSATへのエコシステムが強いわけではない。M&Aでも、FPGAを買ったが十分でないようだ。また、「コピーエグザクトリモデル」がTSMCなどの思想と真逆である。そもそも、先端ロジックではファブレス/ファンドリモデルが主になる中で、IDMを貫いてきたが、ビジネスモデル転換が難しかった。

米では、官民で救済案が出ているらしい。ファウンドリを分社案もある、Qコムからの買収提案もある。米もチップス法で、半導体復権といっても、肝心の主役がこれでは難しい。まさに先端ロジックでアジア、台湾に敗れた、日米で、支援も含め、似たような構図である。

インテル救済に官民一丸 半導体受託製造に4200億円補助 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

米半導体クアルコム、業績不振のインテルに買収提案 WSJ報道 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

産業連関表の問題点か?~資本減耗の内訳

 半導体政策のEBPM的効果の検証には、産業連関表を使った報告が多い。EY「先端半導体の生産施設整備施策の効果検証等に関する委託調査事業」(2023年)はEBPM重視、産業連関分析やCGEモデルを使い、半導体メーカーへの支援などをシナリオ別に分析、20222034年のGDP影響を3.14.2兆円、雇用は延べ12.446.3万人としているが、シリコンサイクルの影響などが不明である。また乗数効果は明示されず、同じ支援を他産業にした場合の比較がない。DBJと価値総合研による「九州における半導体産業とその未来」(2023)5]は、熊本県を中心に九州全域も含め半導体産業を取引構造からグループを分け、TSMC進出前後の変化や雇用動向についても分析、有益な結果が多い。

しかしながら、産業連関分析では半導体製造装置は業務用機械に分類され、中間投入ではなく(産業連関表では中間投入0%である(下記の表で薄いピンク)、

続きを読む

落ち目のインテルとの付き合い方

 半導体戦略では、TSMCIBMIMECに続きインテルとの提携は必要であろう。日経新聞報道によると、産総研との提携で最先端半導体の製造装置と素材のR&D拠点を国内に設置する。

今後、インテルとの関係は重要だが、提携する場合に製造が鍵になる。インテルは残念ながら「落ち目」であり、ファウンドリ事業は転換点だ。SCMでも難しかった。光電融合では技術力はあるものの、先端パッケージ技術は弱く、チップレットではUCIeコンソーシアムを立上げたが、OSATへのエコシステムが強いわけではない。また、コピーエグザクトリモデルが、TSMCなどの思想と真逆である。

日経記事は、三兎を追うモデルの限界と指摘する。2024年は、86年以来38年ぶりに通年営業赤字に陥るリスクもある。既に1.5万人規模の人員削減を決め、ファウンドリ撤退もありうる。

 

40年ぶり危機のインテル 三兎追うモデル、限界か 編集委 小柳建彦 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

iPhoneから液晶が無くなる~アップルの変心を読めなかったのか

 日経新聞が「iPhone液晶ゼロに、日本勢の液晶パネル退場」「アップルの変心読めず」などと報じている。日本液晶パネルの敗退、「Appleの変心」読み切れず - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 しかし、日経報道で欠けているのは、サムスンの存在である。すなわち、当時、アップルの変心を読めないのではなく、スマホで競合しており、OLEDで圧倒的なサムスンから、OLEDパネルを供給する筈がなく、よって、アップルはLCDを使い続け、むしろ、そこが機会だと、勝手に都合よく解釈していた。

続きを読む

台湾有事27年説を前に起きている恐ろしい事実

日経新聞が台湾有事を自民党総裁選や財源に関連して取り上げている。米中の軍事力は2030年に逆転、2027年にも軍事侵攻の可能性を指摘している。被害に関しては、笹川平和財団の調査から、死傷者は、日本3500人、米1.1万人、中国4万人以上、戦闘機損失は日本144機、米400機、中国168機という。

自民党総裁選、防衛財源の議論逃げるな 台湾有事抑止に直結 自民総裁選2024 リーダーの試練 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 経済や金融の影響は記載がないが、実業之日本フォーラム調査では株価2056%下落、為替は10%強の円高(130)20%強の円安(180)、金利は低下圧力、石油価格は上昇、GDPはマイナス4.6%~15.1%は太平洋戦争並みの可能性もある。

続きを読む

国の開発インフラとしてのEUV共同利用センター~あとは総合EDA

日経新聞が「米インテルと国立研究機関である産業技術総合研究所(産総研)は、最先端半導体の製造装置と素材の研究開発(R&D)拠点を国内に設置する。新拠点は35年後をメドに設立し、極端紫外線(EUV)露光装置を日本の研究機関として初めて導入する。産総研が運営主体となり、インテルがEUVを使った半導体の製造ノウハウなどを提供する。総投資額は数百億円規模になる見通し。企業が利用料を支払い、EUVを使って試作や試験をする。新拠点では米国の研究機関との技術協力や人材交流も検討する。

インテル・産総研が日本に開発拠点 最先端の半導体素材 - 日本経済新聞 (nikkei.com)                                                                         デジタル列島進化論p210に「政府の関与でビヨンド2ナノの民主化のためにまずEUV共同利用センターのような組織を立上げる手もある。開発用に1台から始め、企業だけでなく、大学や研究機関、スタートアップ等の利用も可能とする」と記載、まさにその方向性である。エッジファウンドリをラピダスが担い、あとは総合EDAができれば、2020年から主張してきた3つのインフラが揃う。

 

続きを読む

エヌビディアの凄さはCUDAエコシステム

 エヌビディアの凄さは、チップ、技術力、CUDAを基盤としたエコシステム(CUDAダウンロード数4500万回/年、開発者400万人)、また、ビジネスモデルであり、その結果、シェア(AIサーバー向けGPU96%)、業績の成長性と収益性、そして、時価総額である。

続きを読む

政府はDCを地方分散へ

日経新聞が91日に「データセンター地方分散へ」と報じている。総務省は日本企業が強みを持つ光の高速通信技術を生かし、データセンターの地方分散を後押しする。整備費用の補助などで、都市部に集中するデータセンターを各地に分散させる。同時にNTTが開発中の次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」などの実用化に弾みをつける。総務省が活用を後押しするのが電気信号に代わりデータ処理と通信に光を使う光電融合技術だ。データセンター、都市から地方へ 政府が光技術活用支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

デジタル列島進化論でもp119にもDCの地方分散について強調している。当時は生成AIはまだ登場していないが、生成AIは学習と推論が分かれ、特にユーザーに近い場所で推論、AIサービスを提供するDCの流れが加速しよう。再生可能エネルギーとの相性もよく、エネルギー、データ(エッジのレイテンシーが重要な自動運転、医療、農業、防災デジタルツイン等)、雇用は、地産地消であるべきだ。

続きを読む

文科省にない横グシの発想と横グシ人材育成

文科省はイノベーション創出のため、日本の科学技術力低下を底上げするべく色々、努力されているようだ。博士課程充実もそうだろう。医療でも雑用を減らし、分野を超えた人材交流も重視し、研究費支援の採択条件にするという。大学病院、研究時間確保しやすく 文科省が効率化を支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 しかし、何故か、肝心なところが伝わっていないというか欠けている。

続きを読む

GX推進機構が、債務、最大全額保証へ~筒井理事長

半導体政策で、マスコミは、ラピダスに関連して、債務保証の件を批判しているが、日経新聞が830日のGX推進機構の筒井理事長のインタビュー記事を掲載、注目すべき発言である。

「脱炭素に貢献する先端技術を開発する企業向けの銀行融資を巡り、最大で全額の債務保証を付ける方針を示し、2025年中にも初案件の実現を目指す」とのことである。「GX推進機構は民間の投資の呼び水となるための債務保証や出資を手がける。民間金融機関は預金者や株主がいるなかでリスクをとりきれない分野が出てくると言及、機構はリスクを補完し後押、保証の形態は100%もありうると話した。具体的な支援分野としては水素関連やアンモニア、化学コンビナート施設、再生航空燃料、再生可能エネルギーの事業と述べた。政府GX実行会議が重点とする16分野と重なり、次世代型原発の革新軽水炉の支援もあり得る、石炭の代わりに水素を使う製鉄方法などを念頭に技術的な問題について日本はクリアしていけると指摘、GX機構の役割を、『脱炭素や産業競争力だけではなく、地方創生や経済安全保障にも関わる。地域経済や地政学への影響が大きいと判断した事業には全額の債務保証を付ける可能性がある』」という。

 

GX機構の筒井義信理事長「債務を全額保証も」 25年に初案件へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

岩﨑通信機が上場廃止へ

 岩崎通信機が上場廃止となる。同社は、電電ファミリーの一角で、交換機を担う「Aメーカー」の日立、NEC、富士通、沖電気に対し、端末が中心の「Bメーカー」として、黒電話器、公衆電話をはじめ、計測機が有名であった。あいホールディングスが買収した。あいホールディングスは、ドッドウエル ビー・エム・エスが中心で、商社系からM&Aで拡大中である。ありとあらゆるハイテク系を傘下に収め、日本電計も持分法適用としている。

 

あいホールディングスの株価、63カ月ぶり高値 好決算で買い優勢 銘柄診断 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

有事や将来に備え、日台の姉妹都市構築、デジタル引っ越しを急げ

8月に入り、中国空軍が長崎五島列島沖で領空侵犯、中国海軍の測量艦は鹿児島沖で領海侵入、また、台湾周辺に中国軍が威嚇展開など不穏な動きが増えている。台湾側も軍事演習、日台の研究会も増えている。さらに、朝鮮半島でも米韓が軍事演習を行っている。海上自衛隊は組織編成を変えた。

中国海軍の測量艦、鹿児島沖で領海侵入 防衛省発表 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

中国軍機が領空侵犯、中国側の狙いは 識者に聞く - 日本経済新聞 (nikkei.com)

頼総統「台湾守る決意必要」、離島・金門島で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾、中国の「封鎖」に焦り OB研究会で日米に次々要望 台北支局 羽田野主 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾が東部で「持久戦」も 中国侵攻を念頭、軍事演習 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾周辺に中国軍、ペロシ米下院議長訪台以来の水準 頼清徳政権を威嚇 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 台湾有事には多くの書籍、先行研究もあるが、経済や金融への影響を分析した事例は少なかったが、研究にアドバイザーとして参画した実業之日本社総研、実業之日本フォーラムでは報告書を出している。研究報告書「米中の対立構造と台湾有事シナリオ・プランニング」を公表 | 実業之日本フォーラム (j-n.co.jp)

 

 しかし、更に長期の台湾の香港化なども想定して、急ぐべきは、台湾の友人や台湾にいる日本人や日本企業の安全確保である。日本と台湾は多くの深い交流があり、近年は半導体で密接な関係がある。しかし。台湾の主要都市と日本の自治体との姉妹都市、あるいは大学や小中校との連携は少ない。

続きを読む

パワー半導体~SiCを強化、気になるシェアの記述

日経新聞がスクープとして、パワー半導体強化を報じている。重要な記事ではあるが、スクープというよりは、従来から、経産省やNEDOのプロジェクトで頑張っている話である。

レゾナックやローム、パワー半導体の次世代素材を国内量産 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 気になったのはシェアの記述だ。パワー半導体もキャプティブ市場をどうカウントするか?

続きを読む

装置と材料の垣根がなくなる~デバイス支援産業へ~SEMIの通り

 半導体関連業界の中で、製造装置と材料はSEMIという業界団体には属しているが、分けて捉えられ、統計数字も別であった。しかし、その垣根は崩れつつある。背景にあるのは、チップレット技術などMore than Mooreのトレンド、各社の多角化やシナジー創出など経営戦略であろう。そして、意外と米中摩擦の中で輸出規制なども微妙に関係があるかもしれない。

続きを読む

キオクシア上場との報道

キオクシアが、10月上場に向け上場申請、時価総額1.5兆円めざす等と日経新聞などが823日に報じている。キオクシアHD10月上場へ 時価総額1.5兆円目指す - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ブルンバーグは、株主のベインがIPO計画復活、数週間以内にIPOプロセスを開始の可能性、5億ドル規模と関係者が明らかにしている。キオクシアが東証上場に向け準備、5億ドル規模か関係者 - Bloomberg

ロイターは626日報道で「8月末に本申請、10月末上場を目指す。通常のIPOより急ピッチで準備を進めるが、12月にずれ込む可能性も。三菱UFJモルガン・スタンレー証券と野村証券が東証への上場を支援」としている。キオクシア、近く東証へ予備申請 10月末上場の方針固める=関係者 | ロイター (reuters.com)

 このため、サプライズではないが、NAND市況、株式市場などを見極めていたのだろう。なお、JPXHP、キオクシアHPには記載はない。

新規上場会社情報 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

 

ニュース | キオクシアホールディングス株式会社 (kioxia-holdings.com)

続きを読む

新たなメモリ構造~SCM、HDM、CXL、PiM/CiMも登場

88年頃に、フラッシュメモリの存在を知ってから、メモリのピラミッド階層構造に関心をもってきたが、DRAMSSDの間に、SCMが登場したが本格離陸は難しい。ここ数年弱は、メモリセントリックの流れ、GPUTPUの登場や、HDMさらにCXLも出てきて、そもそも、かつてのアクセススピードとコスト、揮発か不揮発という階層でいいのか、不揮発といっても、QLC1000回程度で劣化すれば、そもそも不揮発といえるか、アクセス単位も、単純なbit単位から、様々な単位が増え、RAMROMかの区別も意味が薄れ、更に、広いバンド幅の価値をどう表現するか等も難しい。最近は、PiMや、CiMとも登場してきた。

続きを読む

チップレット時代の後工程

ここのところ、チップレット時代の後工程がどうなるかリサーチしている。チップレットの構造がどうなるかについては、数多くの文献や図があるが、詳細な工程フローチャートは、意外とない。もちろん、2.5D/3Dパッケージだけ、あるいはチップレットの試作ラインはあるが、本格量産ラインにどうなるかはわからない。そういう中で、招待講演をする機会があった第88回半導体・集積回路技術シンポジウムに参加、多くのヒントを得た。88回半導体・集積回路シンポジウム | 電子材料委員会 - 電気化学会 (electrochem.jp)

 現在の後工程と、チップレット時代の「後工程」の差異は下図のようである。

続きを読む

チップレットの7つのメリット

 チップレットには多くのメリットがあるが、それを少し整理してみた。チップレットでは、これまでの、「平面での微細化が2年で2倍」から「体積接続密度が年率2倍」という新法則やロードマップが登場するだろう。体積密度だけでなく、関連して期待されるKPIは、①消費電力、②レイテンシ、③帯域幅、④コスト、⑤チップサイズやコア数、に加え、これまでのMoore則のロードマップと異なり、カーボンニュートラルの中、消費電力を含めた他のKPIとの組み合わせ等があるだろう。チップレットのメリットは何だろうか。もともと、先端ロジックに特性、特に、CPUGPUでのコア数の増大、ダイサイズの大型化があった。生成系AIでは加えて広帯域バンド幅、多くのメモリも必要となってきた。

続きを読む

パーティー・スピーチでの俯瞰力の陸海空

 始めて会う人が多い会合やパーティー等で気の利いた話や自己紹介をするのは、意外と難しい。1人の持ち時間は、せいぜい3分以内、全体の人間関係を短い時間に俯瞰して、その雰囲気に合わせ、硬からず、柔らかすぎず、主催者ホストや他のゲストのためになり、かつ、自分を覚えてもらうような話でなければならない。

人数は、5人なら、簡単だろうが、スパン数を超える10人でも、数人はいるだろう知己は大体、理解してくれるだろう。しかし、未知の人間が10人を超え、参加者の中で半数が知らない同士となり、20人、30人、40人となると難しい。

そこで注目され聞いてもらえるかは、肩書と声や表情と話の中身である。新入社員や新入生のクラスでの自己紹介なら趣味や近況もいいが。参加者の中で大多数が、一期一会なら、余程、興味深い趣味でないと聞いてくれないだろう。話す順番もある。

続きを読む

基準を決める基準

 技術力であれ、国際競争力であれ、客観的な基準が必要であり、それは、複数の単位系からなるKPIの函数である。その基準が、業界や各国でバラバラであれば、評価が異なる。どの国、基準が正しいか、その「絶対基準」がいる。

続きを読む

アンケートか脳の直接観察~憎悪の科学

これまで、社会科学を中心に、人間の行動に関し、アンケートという手法を使って、色々な事実を分析、解明してきた。この前提は、①アンケートに答える方と答えなない方に差異がない、②アンケート回答者が本人である、③アンケートの聞き方が適切であり、「正直」に答えている、④アンケートの回答数nが一定以上で、適切な統計分析が成されている、⑤その他、色々なバイアスを補正できる等であろう。

このうち、特に、①は問題であり、声なき声をどう聞き出すかは重要であるし、②は社長アンケート等の場合、大半がウソであり、社長室や企画室の若者が適当に答えたりしている(経験もある)。長年、上記の③~⑤は工夫され、改善されているが、①や②が解決されない以上、限界があるだろう。さらに、人間の行動は合理的でなく、単純な因果関係で決まらず、複雑系であり、その時の気分や体調もある。これは自然科学でも複雑系はそうであり、再現性が高くない現象も多い。それゆえ、nを多く取るには難しいし、信頼関係と適切な聞き方を前提だが、適切なインタビューや議論を、1-2時間、何度も繰り返し行う方が真実を解明するには適切ではないかと思っている。

 

さて、他方、f-MRIなど、脳の活動を可視化する科学と脳科学の進展で、アンケートでなく、いわば、脳を直接観察して、心理状態が分かるようになってきた。ヘイトクライムの世界的権威であるマシュー・ウィリアムズ(白人男性でゲイだという)による「憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき」(2023年河出書房)は、世界を揺るがすヘイトクライム(憎悪犯罪)はなぜ起きるのかについて、神経科学やデータサイエンスなどを駆使、先史時代からAI時代にいたるまでの「憎悪」の構造を解明している。著者の脳のカラー画像もあり、興味深い。憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき | マシュー・ウィリアムズ, 中里 京子 | | 通販 | Amazon

続きを読む

MOTやMBAに欠けている政治との付き合い

 最近、MOTのテーマに政策提言タイプが増えている。原子力産業、防衛産業だけでなく、半導体でも、企業の「自由」な活動というより政策と連動することが重要になっている。経営学あるいは経営戦略では、政治にあまり触れてこなかった。ポーターは、国の競争優位、環境対応、都市問題、医療システムなどについて多数の研究をしている。

しかし、個別企業の経営において、いかに政治とうまく連携していくか、どういうやり方があり、効果はどうかについての研究論文は少ない。政策そのものの研究は公共政策分野で多いが、企業との絡みの話は少ないようだ。RIETI - 政治的なつながりのある企業は輸出しやすいのか?

これは、米では、ロビー活動であり、日本では業界団体、MOF担や談合など企業では秘中の常識だが、アカデミアでは、あまり取り上げず、ビジネススクールでも、そういう授業はない。

続きを読む

岸田退陣と内閣の成果と財源難4兄弟

 岸田総理が次期、総裁選立候補をせず、退陣が決まった。内閣支持率から、退任は時間の問題であり、そのタイミングも、オリンピック後は想定範囲だろう。また、植田日銀総裁発言後の株価暴落なども時期と決断を早めたかもしれない。

日経新聞は、岸田内閣の遺産を財源難4兄弟というそうだ。もともと、岸田政権の目玉政策である防衛・少子化・GXは霞が関の通称で「財源難3兄弟」であり共通するのは相当規模の財源が必要なのに、どう調達するのかという問題を抱えているという認識で、これに半導体を加えて、4兄弟ということだ。

岸田文雄首相が残した「4兄弟」 歳出先行で財源あいまい - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ハト的であり、かつ宏池会系ゆえに財務省的財政規律派のようで、実際は、それ故に実行可能だったのかもしれないが、この財源4兄弟は、岸田総理の功績でもある。

続きを読む

SBIレオスひふみ投信の説明会

久しぶりにレオスキャピタル(202441日に持株会社とSBIレオスひふみ株式会社)の説明会にオンラインで参加した。藤野さんは永らく知己であり、理科大MOTでもゲストスピーカーで登場して頂き上席特任教授としても多大な貢献をしてもらっている。決算説明会だが、藤野さんの金融や投資運用から見た世界観が有益だ。同社は「目利きのチカラ」を活かして新たな事業領域に展開し「世界をカラフル」にすることを目指しますがモットーだ。今回注目すべき内容は、まず、株価暴落時、ひふみ投信が 5 超の下落時の顧客の行動であり、スポット買付1は平常時より増加している。

もう一つは「ひふみクロスオーバーPro」だ。未上場企業へ投資を行い、上場後もその株式を継続的に保有、企業成長を支援するものだ。日本のスタートアップが上場後に成長が伸び悩む「死の谷」の解消を目指し、未上場企業への投資機会を広げる、すなわち、未上場投資の民主化という画期的なものである。

続きを読む

メモリ回復と復権~キオクシア黒字化とCXLメモリ

 メモリ市況は、DRAMに続き、NANDにも及んできた。キオクシアの1Q決算は、売上4285億円は過去最高、OP1259億円(Opm29%)Dep785億円、Q/Q1064億円増収、820億円増益、Dep31億円減だがPPA絵影響も少なくなってきた。需給バランス改善で単価増(Q/Q20%増、ドル10%台半ば)、出荷も10%台前半増、円安も効く。ユーザー在庫は適正、需給は均衡、PC回復弱含み、スマホは緩やか。DC向けは伸長、AI用途期待。トピックスとして、AI向け第8世代BiCSフラッシュ2TbQLCをサンプル出荷、CBA(CMOS directly Bonded to Array)技術採用の1TbTLC量産、北上K2建屋完成、25年秋稼働も期待できる。IPO時期は不明だが、今なら最適だ。Financial-Results-FY2024-1Q-ja.pdf (kioxia-holdings.com)

 その場合の鍵は、SKとの関係、WDとの関係やMUとの提携で、NAND一本足打法から脱することだが、NANDもこれまで通りでは、価格弾力性が低下し、コスト低下余地も飽和、いずれ長江など中国勢との泥沼価格低下競争では、これまで通り、激しい業績変動の繰り返しだ。そこで、重要なのは、新たな市場であり、DRAMHBMに相当する広帯域のCXL向けNANDに期待である。メモリ市場構造ではSSDDRAMの間、これまでもSCMと言われてきた領域であるが、過去との違いは広帯域ニーズである。

続きを読む

非上場の中での東芝の決算

非上場になったので、アナリストレポートもなく、マスコミもあまり取り上げないが、日経だけは1Q決算を記載している。【決算】東芝、46月最終黒字383億円 キオクシア回復で転換 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 重電や防衛が好調で、営業利益も増だが、最終損益はキオクシア回復が持分法寄与で大きい。送変電・配電等、公共インフラの業績が2023年度に引き続いて好調に推移していることに加え、鉄道・産業システムやHDD他、ビルソリューションの改善、為替影響等により、全体で増収増益。ただ、半導体は1Qにおいては市況回復の途上であるため対前同では悪化。引当金も計上。受注高はエネルギーシステムの大型案件受注に伴い対前同で増加、受注残もエネルギーシステムの大型案件、インフラシステムの受注規模の増加に伴い対前同で増加し、堅調に推移のようだ。財務・業績 | 投資家情報(IR) | 東芝 (global.toshiba)

続きを読む

NEDOの真面目な審査

東洋経済がラピダス中心に政府の半導体やデータセンタなどの政策を批判している。6月に編集委員の大野氏から依頼があり、7月上旬に1時間半丁寧に、こちらから、なるべく、中立に客観的に対応した。しかし、少し質問はあったが、殆ど、触れなかった、後工程だかチップレットの件だけ、東工大の教授が批判的にコメントしているのに、前向きなコメントとして、引用された。一部、図表を使いだいと言っていたのも使われず、彼らの事前ストーリーに沿わない話や事実は無視である。いつもながら、マスコミのお得意の「抜き取り検証」である。ポスト5Gプロジェクトで、チップレット関連の多くの審査員はしているが、このラピダス関連の後工程については関与していないので、詳細な目標KPIは知らない。チップレットに期待はあくまで一般論である。他方、この東工大の教授はラピダス関連の後工程の審査員なのだろうか、目標数字は知っていて達成は難しいとコメントしているようだ。その点も明確に伝えたのだが、一般論としてのチップレットの期待とラピダス関連後工程の話が一緒にされ、いかにも政策に甘口のような印象操作になっているのは不愉快である。

 さらに、NEDOプロジェクトの審査の中身を請求し、黒塗りだったと批判しているが、ポスト5Gに関する審査委員の多くは公開されておらず、当然だろう。NEDOの名誉にために言うが、極めて真面目に、時間とコストをかけて審査している。

続きを読む

人事制度~日経NEO-COMPANY特集より

 日経新聞が7月にNEO-COMPANY特集で興味深いデータを提供していた。ポイントは中年が「幸せ」であり、給与をケチらない企業は業績が良く、給与伸びと業績伸び、から高循環型企業を目指すべきだとしている。具体的には、キーエンスである。中年が幸せな企業ランキングでは、楽天やアクセンチュア、LINEヤフー、トヨタ、ソフトバンク等であり、これらは全年齢層でも幸せだという。高循環型企業ランキングでは、霞が関キャピタルの他、メルカリ、ディスコが上位である。

中年が幸せな企業、楽天グループやアクセンチュアがランキング上位 40歳超でも主役 NEO-COMPANY 私たちの逆襲 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

解剖キーエンス流 20代年収2500万円、でもスタバ禁止 NEO-COMPANY 私たちの逆襲 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

なぜ、日本のスポーツ国際競争力は強いのか

 パリ五輪で日本の活躍が素晴らしいようだ。大学時代に属したレスリングは、もともと、日本の御家芸である上、女子などは、富山氏ら指導者の戦略性だが、それだけでなく多くの競技で実績を出した。また、プロ野球では、大谷翔平はじめ多くの日本人が大リーグで活躍している。40年前には考えられなかったことだ。

 他方、40年前と異なり、日本企業の競争力は低下、マクロ経済でのGDPや生産性、さらにアカデミアや教育分野でも厳しい。特に、理工系は低下に歯止めがかからない。理系では、比較的、検討しているのが、医学、特に、臨床系だろう。寿命ランキングも含め日本の医療はトップだろう。あと、政治や哲学、アートなどはよくわからない。社会科学はそもそも、過去も含めトップではないだろう。

 スポーツ分野は、発展途上国や低所得では難しいこともあるが、日本の競争力が上がったことは事実だろう。企業や産業、理工系アカデミアなどは、この40年で低下したのに、真逆となったのは何故だろうか。政策の効果か、ハイテク産業やアカデミアに行くより、スポーツはコスパがいいと考え、教育投資や選択をする国民の行動結果なのか。こういう視点でスポーツ分野を他と比較した分析の先行研究はあまり見当たらないようだ。

 これを組織人事文化論の視点から考えると、スポーツと臨床は、類似の点が多い。

続きを読む

あと半年やり残し、四半世紀やり残し

 秋入学生のゼミ生7名のグラデュエーションペーパーを無事提出して、いよいよ、MOTもあと半年を切った。

 

 もとから、65歳定年は分かっていたことではあるが、途中で定年延長の話もあり、また、当初、大学教授はノンビリジックリ研究に打ち込めると勘違いしていたので、やり残したことが多すぎる。

続きを読む

日清紡HDの上期説明会~日立国際電気がグループ入り

 日清紡HD上期説明会にWEB参加した。特に今回は日立国際電気がグループ参加入り後の初の説明会であり、佐久間社長は2018年上場廃止以来、久方ぶりの株式市場との対話になる。

 日清紡HDは、グループ会社である、JRC、日清紡マイクロデバイス(旧 新日本無線)、日立国際電気そのものも、統合する前の国際電気や日立電子は、アナリスト時代カバー、ヘッジファンド時代も、カバーしており、長年のお付き合いである。

続きを読む

フルヤ金属のリアル決算説明会に参加

コロナ禍以降、決算説明会を対面で開催する企業はめっきり減り、大半がWEB開催であり、説明会が質疑も含めHPに掲載され、資料も充実している。また、こちらも、大学の教授会やNEDO審査会などと重なる場合が多く、WEB参加よりも、あとで掲載録画を倍速で視聴することが多くなった。

 その中でフルヤ金属はリアル説明会を継続している。フルヤ金属は2006年にジャスダック上場したが、ヘッジファンド時代には即座に株主となり、自身が退任するまで長きにわたってファンドで保有していた。その技術力とユニークなビジネスモデルに着目していた。

続きを読む

理科大MOT総仕上げ前の発表会

 今年も理科大MOTのグラデュエーションペーパー発表会が開催された。今回は、秋入学生9名の最終発表会と春入学生60名弱の中間発表会であった。2017年に赴任、旧MOT時代の1回分も含め、春入学は20251月の発表会で8回、秋は今回で3回目である。学年60名程度であるから、累計500名近い社会人大学院生が会社での勤務をしながら、イノベーションや技術経営を中心テーマとして2年間かけて書き上げた多様な内容の5万字、50-100頁のペーパーの成果を審査してきたことになる。その中で若林ゼミは累計85名であり、ほぼ全員の主査として指導させて頂いた。そうした内容自体が日本企業の課題や可能性を凝縮している。また、2019年からは発表会には、教員だけではなく、上席特任教授はじめ外部有識者など30名程度に参加頂き、また、企業派遣学生については派遣元の経営トップも参加するため、10分程度の質疑での濃厚なやりとりやコメントは珠玉の内容である。

NHK視点論点に登場~9月2日Eテレ12:50~13:00放送予定

 これまで、NHKでは色々な番組に出てきたが、今回、Eテレの視点論点に登場する。たまに、視聴したことはあるが、改めて、チェックして、そのカバー範囲の広さと切り口に感心した。その時々の重要な話題について、所属経歴は様々だが素晴らしい有識者が9分で分かり易く語るものである。だいたい、御名前を聞いたことがある方が多く、橘川先生や森川先生など知己も登場していた。ハイテクの話題はAIから5Gまであったが、半導体業界等の話題はあまりなかった。直近のテーマは下記だが、まさに、多様で興味がない視点である。エピソード - 視点・論点 - NHK

続きを読む

研究所クリーンルーム見学の記憶~数十年ぶり

この78月に、各地の半導体工場見学させていただいた。クリーンルームにも入り、嬉しい限りである。場所も、愛知県、兵庫県、福岡県、神奈川県と様々だ。

各社、クリーンルームの中身は違うが、今回、白いスーツも異なり、エアシャワーもあったり無かったり、ゴム手袋もつけない場合もあり、驚いた。いずれも、過去に見学はしたが記憶は曖昧なものもある。

その中で、先週の訪問は、工場でなく、研究所だったが、その中のクリーンルームである。入る過程で、少しずつ記憶が蘇り、何度か行ったと思いだしたが、果たしてそうだった。

続きを読む

後出しじゃんけんと評価意見一致が経営アカデミアの常識なのか

 最近、一部の経営アカデミアには驚くことが多い。大学でもオリンピックでも選挙などでも、評価基準を試合後に変えることはあり得ないだろう。

続きを読む

乱高下する株価と為替

82日ブログで「金融緩和時代の終わりとリーマン1年前の8月相場」と題して、コメントしたが、85日にブラックマンデーを超える下げ幅4451(率は12.4%とブラックマンデー14.9%以下)となった。TOPIX先物が8%安で、サーキットブレーカー発動、長期国債先物にもサーキットブレーカー発動、日経平均先物も午後に2度もサーキットブレーカー発動という異常事態だった。円は141円に急伸した。

続きを読む

金融緩和時代の終わりとリーマン1年前の8月相場

 8月に入り、急速な円高と株価大幅安が起こった。円高の背景は、「もしトラ」のドル安政策の懸念、160円を超えた水準での政府の巨額な介入が効き、日銀の利上げ幅は想定線だが、植田総裁の更なる利上げの可能性のタカ派発言、米の景気後退リスクでのFRB利下げ前倒し観測などである。植田総裁のタカ派発言とFRB利下げ前倒しは想定外だった。このため、「ミス渡辺」と言われるような個人の為替トレーダーも含めた投機筋が円売りショートポジションの手じまいをしたのだろう。

 株価大幅安は、日経平均の大きな構成要素であるハイテク株が、円高メリットが大きいと認識され、かつ米国景気依存度が高いことに加え、植田総裁がタカ派である場合のリスクもあるだろう。政治が空白の場合は財務省や日銀が強くなりがちであり、アベノミクスの終わりどころか、金融引き締めに転換する可能性も否定できず、かつ財政規律ならば、「半導体祭り」も終わる懸念もある。米でも、トランプなら台湾やTSMCには厳しそうで(ただ、その場合は、日本のデバイスメーカーにはプラスも多いのだが)、世界の「半導体祭り」が終焉するかもしれない。

 今回、やや驚いたのは、僅かな金利で、為替水準と日経平均の乱高下が大きいことである。もしかしたら、想定以上に日本企業の体力は衰えており、金利の弾性値が大きいのかもしれない。

続きを読む

時間管理の目標と実績~意外と目標がない

 コンサルやSIerはコストの大半が「人月」であり、時間管理は重要だ。実際、野村総研時代に細かい時間管理勤務簿のようなものがあり、驚いた覚えがある。細かい管理はしないが、大学では、時間管理について、研究、教育、マネジメントを1/3ずつだという了解がある。アナリスト時代は、実績を細かくつけることは無かったが、自身として、INPUTOUTPUTのバランスを自身で把握するため、ある程度、定量的に把握していた。

 社員以上に、経営トップの時間管理は重要であり、この視点から研究したのが、HBSのニティン・ノーリア学長とマイケル・ポーター教授による12年に及ぶ大企業のCEOの時間の使い方に関する研究結果である。HBSの最新研究が明かす、成功したCEOたちのタイムマネジメント術 (newspicks.com)

 どういう事にトップが時間を割いているかは、リーダーシップや社長の再定義にも関係する。社長の再定義を、象徴型、調整型など6分類したが、これはまさに社長が何に時間を割いているかで分類される(冠婚葬祭や朝礼など儀式が多ければ象徴型、社内調整で会議が多ければ調整型、自らトップセールスが多ければ事業型、など)【スライド解説・若林秀樹】日本の社長はこうしてつくられる (newspicks.com)

しかし、トップがタイムマネジメントに関して、実績だけでなく、あるべき姿を認識し、歴代の社長や他の役員との差異を意識している例は少ないようだ。

これは、社員でも同様であり、MOTでも聞いてみると、意外にも、タイムマネジメントのあるべき姿についての認識が少なく驚いた。

続きを読む

中国との付き合い~R&Dをどうする

今年は内外で選挙が多く、政治的な不確定要素が高まると指摘されていたが、日米では、予想以上だ。これが来年以降の対中政策にどう影響を及ぼすか難しい。

 

 対中との関係では、輸出規制や中国生産、セキュリティクリアランス等の議論はあるが、R&Dが最も悩ましいだろう。中国生産に関しては、サプライチェーン変革もあり、地産地消で、各国の国内生産回帰でいいだろう。しかしR&Dは難しい。日本も含め多くの大学で大学院はほぼ中国人が多く、アカデミアの運営は、中国人なしには難しい。米でも多くの共同研究は中国人が中心である。さらに、悩ましいことには、実は、中国には、既に欧米が多くの拠点があるという。

続きを読む

教育の輸出と輸入(大学・教員は輸入、学生は輸出)

日本の産業界の競争力や輸出入、貿易赤字の議論はあるが、教育についてはどうだろうか。グローバルに世界は広がってきたが、この視点から少し愚考を試みる。

歴史的には、隋や唐の時代に、学問は仏教と共に輸入された。遣隋使などの「留学生」はいたが「輸出」ではなく、現地で学んで導入するだけだった。さらに、戦国時代にも、最先端の科学技術知識がキリスト教と共に入り、そして、明治期には多くの「お雇い」教師が、教育システムと共に輸入された。

続きを読む

NEDOでMOT研修

ここ数年、NEDOには大変お世話になっている。2021年から技術委員に就任、ポスト5G基金やGI基金の半導体関連のかなりの案件の審査をさせて頂いたが大変勉強になる。各社の最新の取組みもそうだが、多数の案件で、真剣勝負の質問票や審査評価を作成、審査委員会では一流の専門家のコメントや意見交換は参考になり、ステージゲートの実態も確認できる。MOTの授業でもお世話になっている。

続きを読む

電力網と情報通信網の最適ミックスは

カーボンニュートラルに向け電力政策の議論は多く、電力網についても、再生可能エネルギーとの関係やスマートグリッドなどの研究、エネ庁はじめ極めて多い。045_04_02.pdf (meti.go.jp)

送電網増強、再エネ普及左右 電力システム改革の課題 伊藤公一朗・シカゴ大学准教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

脱炭素時代へ蓄エネが鍵 電力安定供給の課題 古山通久・信州大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

系統運用、公的機関へ移行を 発送電分離の課題 伊藤公一朗 シカゴ大学准教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

大規模な事業再編の契機に 発送電分離の課題 橘川武郎 東京理科大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 他方、近年、DCが、webやメール閲覧のインターネットDCから、クラウド向けハイパースケーラーDC、更に、AI-DCに移る中で、学習はクラウドでGW級、推論はMW級、エッジDCという棲み分けが議論されている。その場合に、電力網と情報通信網が、それぞれのあるべき姿、また、電力会社のあり方と通信キャリアのあり方についての議論はこれからである。

続きを読む

オンプレの復権、セキュリティソフトトラブルで推論はオンプレ、学習はクラウドでは

 先日719日に世界中で起きたシステム障害は、インターネットやクラウドのリスクを再認識した。

大規模IT障害、クラウド型の最新セキュリティーに死角 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

原因は、ウィンドウズ搭載のコンピューターにあるセキュリティー大手米クラウドストライク社のソフト「ファルコン」のアップデートが原因であり、「ファルコン」がクラウドを通じ企業等の端末やシステムを常時監視するソフトであり、クラウドを通じてあらゆる端末とつながっているため不具合が拡散したようだ。大規模システム障害 1社の綻び、バグ拡大で世界がまひ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 これが、手術や戦争中であれば、悲劇である。再度、インターネットやDCのあり方を考え直すべきだろう。幸い、生成AIでは、学習はクラウドで行い、推論は、レイテンシの観点や、再生可能エネルギーを利用する利点もあり、エッジDCでユーザーに近いところに置く傾向となっている。

続きを読む

企業の競争力を殺すスマート志向~サムスンも労働スト

あのサムスンがストライキに揺れている。全従業員12万人のうち約3万員が属する、サムスン電子の最大労働組合「全国サムスン電子労組」で大半が半導体部門に属する。半導体業績不振で成果給に不満、賃金交渉を巡り78日に始めたストライキを無期限で続けると発表。6000人超が引き続きストに加わる見通しという。

サムスンのストライキ延長へ、労組「無期限で続ける」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

サムスン電子最大の労働組合、初のストライキ宣言 成果給要求 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

「最強サムスン」にストライキの波、エリート成果主義曲がり角 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

研究でも政策でもAIでも問こそが鍵

 幼少期から好奇心が強く質問をしてきたが、リサーチャ、アナリストでは、まさに質問力が重要であり、決算説明会でも鋭い質問をするので、会社側、同業のアナリスト、顧客であるファンドマネージャーや投資家など有名であり、質問は「得意」だと自認していた。ただ正直、質問が得意などというのは、自身の価値観や美意識からは否定的に考えていたし、むしろ解決能力、提案能力こそ、重要であり、そこを切磋琢磨しなければならないと自問自答してきた。

そういう中で、大学で教員をし、研究をし、修士論文指導をする中で改めて、問の重要性を再認識した。研究においては、良い問を発見すれば、かなり、研究の質は決まったようなものである。更に、生成AI時代を迎え、一層、問(チャットGPTでは、プロンプトという)が、問が重要になっている。

続きを読む

心理的安全性と生命的安全性そして多様性

東京に出てきて、予備校や大学に入り、一番、嬉しかったことは、心理的安全性と生命的安全性である。70年代の地方都市においては、日々、暴力があり、生命的安全性が無かった。

続きを読む

重心論の発展

おおよそ、10年前に、経営重心論を発表して、それなりに、普及し評価を頂いている。機関投資家やアナリスト、コンサル、経営者、学者、マスコミに、累計1000以上のプレゼンを行い。議論やフィードバックを頂いた。Newspicksでも5回連続の特集記事で1000pikcsを獲得した。MOTでは2017年以降で累計500名近い履修生がおり、ゼミでも好評である。

日立の小島社長は、就任記者会見で経営重心につきコメント、東芝の綱川元社長もやはり記者会見で、コメントされた。執行役会長および執行役社長の異動に関する説明会 - 日立 - YouTube

マスコミでは、日経新聞では中山淳史氏や西條編集委員はじめ、10回以上のジャパンストライクゾーン等の考えが引用されている他、日経ビジネスやTVでも取り上げられ、BCNの千人回峰でも紹介された。

続きを読む

価値の配分を定量化(テックからマネジメント、ビジョナリーへ)

製品、サービス、あるいは企業全体であれ、その価値のモノとコトと言った中身の構成比の定量化を試みる。過去、2021年と2023年に、研究イノベーション学会での2つの発表をベースにする。

1GAFAM/BATと日本企業を分けたもの~DAAE構想とQCD思想の比較kouen36_195.pdf (jaist.ac.jp)

 

2)モノからコトへの転換は単位系による価値創造kouen38_208.pdf (jaist.ac.jp)

続きを読む

KOKUSAIと日立国際電気の決断

 KOKUSAI ELECTRIC(コクサイエレ6525)が話題をよんでいる。半導体相場の中で、時価総額は既に1兆円を超えた。202310月上場時の時価総額は約4800億円で2023年最大IPOだったが、そこから、2倍以上である。同社を抱えていた日立国際電気の上場廃止時の時価総額は3200億円であり、IPO時点でそれを上回っていたが、当時と比べると4倍近い。

業績も好調で、2023年度の売上1808億円、OP378億円から2024年度は2175億円、OP510億円を見込む。20182019年度は決算期がイレギュラーであり比較が難しいが、2020年度では売上1780億円、OP600億円である。

続きを読む

ファウンドリと製造装置の両立

日本は半導体デバイスではシェア10%を割り込んだが、製造装置では30%以上、材料では50%以上のシェアを維持している。半デジ会議では、政府の目標は1兆㌦時代にデバイスを15兆円、シャア1015%である。この可能性を、デバイスのシェア回復、更に突っ込むと、日本でのファウンドリでの存在感と、製造装置と材料のシェア維持の両立という視点から論じたい。

地域別にみると、米は、デバイスでもほぼファブレスであり、ファウンドリはGFくらいで、OSATも小さい。製造装置は前工程中心に強いが材料は小さい。

続きを読む

半導体における政策と戦略の階層

政府の半導体政策やラピダス戦略について、批判する人が多いが、議論に際し、階層で整理すべきだと思う。そこで、中国の古典、六韜三略に倣って、また、太平洋戦争の真珠湾攻撃と比較しながら分析した。

 まず最上位階層は政治であり、真珠湾攻撃では戦争決意であり、今回の半導体政策では、復活挑戦決断である。次の階層は大戦略であり、開戦劈頭に真珠湾奇襲、半導体では、議連活動や予算の大枠、米との関係構築等である。ここまでは最近は概ね評価する声が大きい。その下が具体的な活動になり、空母機動部隊編成や、先端ロジックに傾注、ラピダスやLSTC設立である。ここは、批判もあり、議論が分かれるところである。

続きを読む

政治と選挙区の不条理

 79日に、甘利明先生の勉強会が東京プリンスホテルで開催された。半導体をテーマに、甘利先生とSEMIジャパントップ浜島氏と私で10分ずつポジショントーク、その後、私がファシリテーターを務め、30分のパネル討論である。

ここ数年、半導体政策に関連して、甘利先生にプレゼンを行い、御相談する機会が増え、また、甘利先生が本部長を務められる国家安全保障の会議でもプレゼンをした。また、理科大MOTの御講義に来ていただいた。このような中で、甘利先生の半導体はじめイノベーションに関わる政策での御実績には、改めて感銘を受けている。最初にプレゼンをさせて頂いた時、EDAというキーワードに反応され、その勘の鋭さに感心した。およそ政治家らしくなく、知的レベルが高い上、世界の今後の行方やイノベーションについても洞察力が深い。数少ない世界に通用する政治家だと考える。

 しかし、自民党のゴタゴタやドタバタの逆風や選挙区変更もあり、次の選挙は油断できないようだ。もし、選挙区が半導体・イノベーション区があったら圧勝だろうが、実際の選挙区はそうはいかない。世界的あるいは日本的な貢献が、地元の票とは関係が無い。これは、まさに不条理である。

続きを読む

最近の私の履歴書に見る階層社会

日経新聞「私の履歴書」が最近、あまり面白くない。退任直後のタイミングで登場した黒田前日銀総裁以外は、有名人は多いものの躍動感が少ない。その理由を考えると、戦後生まれが増えてきて、波乱万丈の人生でなくなってきたからかもしれない。さらに、芸術家や科学者などは、親などが、それなりのハイソであり、周囲に学者や芸術家も多く、もちろん、本人に才能も努力があったにせよ、幼少期から家庭教師をつけられる等、エリート教育をされており、一般庶民からは、人生の学びが少なくなっている。また、一時、多かった欧米人の登場が少ない。経営者においても、2000年以降、いわば、日本企業の凋落が顕著になってからであり、グローバルな感じがしない。出世もワンパターンだ。

 戦後、80年近くなり、平和はいいことだが、「革命」混乱もなく、社会構造が階層化してきた。

続きを読む

演習や論文の必要性

あと1年を切った、理科大MOTでの教員生活を振り返りつつ、ゼミでのグラデュエーションペーパー指導を味わい楽しんでいる。

 そこで、改めて認識したことは、ビジネススクールに、もはや座学は不要、時間の無駄ではないか、ということだ。

続きを読む

トラブル処理と現場力

企業であれ、アカデミアであれ、役所であれ、トラブル処理時での現場力が低下しているように思う。トラブルにも、組織側に原因があるもの、外部環境に起因するもの、そのうち、一定の頻度で起こり、その対策がある程度可能なもの、全く予想できないもの、起きても、影響を防げるもの、ダメージが避けられないものと色々である。日々の飲食店、駅の窓口などでは、以前なら、臨機応変な対応があったのに、トラブル時の対応が拙く、イライラすることが増えている。

続きを読む

日本に欠けている教育

MOTで社会人教育に携わり、最近は、経産省の半導体デジタル会議で、人材教育問題にも関与して、日本に欠けている教育は下記ではないかと確信しつつある。

 日本はタテ割りの専門分野では幾つか強い分野があるが、金融、IT、英語は極めて弱い。金融教育は、そもそも無く、英語は昔から注力されているが散々だ。ITは工夫次第だろう。

 むしろ意識さえ無いのが横グシ的なものであり、俯瞰力抽象化、問を立てる能力、統合力などである。

続きを読む

正義のビジネスモデルは無いのか

最近、正義のビジネスモデルに関心がある。大きく時代が変る中で、正義についても、多少は、認識が変る場合もあり、特に経済的正義はなおさらだ。

独禁法など公正取引、さらに、証券取引は、数十年単位では、法が変ることもある。1980年代以前は、株価操縦もインサイダー取引も無かった。独禁法は米国でも大きく変遷している。プラットフォーマモデルは2015年までは、画期的なビジネスモデルとして、アカデミアでも評価されていたが、最近は異なってきた。国家安全保障を巡っては、対中貿易などは、既に要注意である。

 

そうした正義を超えた絶対的な、善悪はあり、経世済民の視点から、石田梅岩の商売道や、三方良しやフリーミアム等は、善であり、かつ、ビジネスモデルとしても黒字を維持し継続可能な良いものである。

続きを読む

円安の背景と有事

再び、為替が160円を突破、日米金利差仮説だけでは説明できず、そもそも国内の利上げは債券や弱い金融機関にマイナスだ。農中の巨額損失はその象徴だ。為替介入もそうそうできず、神田財務官も退任、さすがに、これまで「理論的には円安はおかしい」といった日経新聞の論調も変わり、長期、円安問題を捉えようというスタンスに変ったように思える。狭い金融論でなく俯瞰的に円安を論ずるべきだ。

 

同意するのは、渡辺博史元財務官の「経済体力に市場が疑問符」622日付けのインタビュー記事だ。デジタル赤字もある。「円=安全通貨」は誤解だった 渡辺博史元財務官が説く復権策 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

データセンター動向~付加価値とビジネスモデル

 COMNEXT特別講演セッションで「環太平洋と日本列島のデジタルインフラを担うデータセンター(DC)の最新動向とビジネスモデル」と題して2024628() 1230分~14時東京ビッグサイトでパネル討論のファシリテーターを務めた。これからの日本のデータセンターのゆくえ (cbw-expo.jp)

 

パネラーはデジタルインフラ会議の有識者を中心に、総務省データ通信課長西潟氏、METIソフト室長渡辺氏、IBM森本CTO、さくらインターネット田中社長、総務省OBでもある読谷山延岡市長である。

続きを読む

リーダーシップ組織人事は、状況(有事と平事)、階層による

 リーダーシップや組織人事は、幼少期から軍記物その他で関心があり、武将などのリーダーシップに心躍らせ、また組織図を描いて遊んでいたが、大学時代に野中先生の「失敗の本質」を読み感動、また当時人気雑誌だったプレジデントの経営者話も愛読していた。MOTに来てからは、技術系リーダーシップ論を担当、アドバンストリーダーシップ、R&Dマネジメント、実践CXOケーススタディなどでも、技術系やイノベーションとの関係で研究教育に関与した。また、昨年からは、組織人事やイノベーション人事も専門外ながら担当する中で、講義を通じ、社会人学生との議論から、改めて、現場では当たり前の事実がアカデミアの研究では当たり前ではない事に気がついた。

 まず、組織人事で、組織か人事かについては、階層で全く異なり、リーダーシップも平時と有事、更に、階層で異なる。組織全体をマクロに見ると、個々の人事よりも、組織構造が重要であり、西洋的な組織論が当て嵌まるが、ミクロな現場では組織構造より、個別の人事、ヒトの要素が大きく東洋的な教えが当て嵌まる。これが、多くの教科書や理論では同一に議論されている。

続きを読む

バランスの良いチーム~役員会、審査会

イノベーションを起こし、支援でき、あるいは、正しい判断ができる目利き力があるチームとは、どういう構成メンバーがいいのだろうか。多様性は重要だが、人種や性別、年齢など人口統計学的多様性といった表層的多様性でなく、専門分野や考え方の違いも含めた、認知的多様性すなわち深層的多様性である。開発チーム、役員会、審査委員会、有識者メンバー、パネル討論会、さらには、MOTでのゼミや授業でのグループ討議のメンバーでも、多様性はある。多くの場合は、その分野の権威で、主流派と反主流派、別の分野の専門家、専門家ではないが、有名人で鋭い切り口を持っている方であれば、有益な示唆が得られる。しかし、意外に、構成員に含めていないのが、横グシあるいは、π型人材である。複数の分野について、専門家と十分な議論ができ、全体を俯瞰できる人材である。本来は、ファシリテーターが適しているが、この人材がいると、議論が発散せず、個々の専門家や全くの素人を繋ぐことができる。

続きを読む

半導体市況~メモリ回復だがアナログ等は厳しい

WSTSが、64日に最新の市場見通しを公表した。2023 年市場は、8.2%減であったが、ディスクリートとロジックはプラス、メモリの29減が響いた他、センサ等やアナログも二桁近いマイナスだった。2024 年は16.0%増、2025年は12.5%増を予測。

続きを読む

私学法改正とガバナンス

いま、私立大学は、私学法改正で、てんやわんやであるようだ。大学における「憲法」は「寄附行為」といわれ、大きく改正される。日大の元理事長の事件を契機に、私学のガバナンスが求められ、20232月に閣議決定され。20254月施行となる。大学や短大を運営する法人の場合、合併・解散といった重要事項の議決権や理事の解任請求権を評議員会に認めるのが柱。理事らの背任行為や贈収賄には罰則を設ける。改正案によると、法人の監視・監督を担う評議員会は、理事会の諮問機関との位置付けは変わらない。理事会へのチェック機能を果たすため理事と評議員の兼任は禁止する。評議員会の議決が必要なのは法人の根幹に関わる事項とした。不祥事があっても理事が辞めない場合を想定し、評議員会に解任請求権を与える。大学運営の監視機能強化 私学法改正案を閣議決定 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

改正私立学校法に基づく寄附行為変更認可申請(令和67月以降受付)について(文部科学大臣所轄学校法人):文部科学省 (mext.go.jp)

これまでの私学のガバナンスでは、評議員の位置付けは、国のガバナンスに例えると、いわば国会議員であり、そこから、いわば内閣に相当する理事を選ぶというものだったが、今回は上場企業のガバナンスに近い。すなわち、そのコンセプトは理事会、評議員会、監事という3つの機関の間で執行と監視・監督の役割を明確化・分離になる。理事長、業務執行理事などの経営陣の不祥事を防ぐため、評議員会の機能強化に一番の主眼が置かれた。現状ではチェックされる側の理事全員がする側の評議員を兼務している場合が多い。改正法では評議員会の独立性を担保するため、理事との兼任を一律に禁じ、理事・理事会選任の評議員は2分の1以内、教職員評議員は3分の1以内にするなど評議員の構成にも制約を課した。

 

変わる私学ガバナンス 法改正を機に経営改革進めよ 大河原遼平・TMI総合法律事務所弁護士 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

続きを読む

理由とは~3シン因と相関、因果、そしてネットワーク構造

「理由」「原因」の構造について、3「シン」因分析、直接の新因(近因)と、本質的な理由の真因、更に深い深因と構造化して分けて考案すべきだと提案している。普通に原因とされるのは、新因か真因であり、深因は、ある場合にはプラスだがある時はマイナスというような、文化に根差したような避けがたいもので、他のケースにも当て嵌まるようなものである。この3シン因分析を使って、半導体の敗因も分析した。 原因とされる、①油断、②日米摩擦や米戦略、③国内政策、電電解体等、④水平分業遅れ、⑤品質拘り、⑥マーケティングや情報軽視、⑦経営者とビジネス力、⑧自前主義や横並び体質、につき考察した。   時期によって、本質的な場合もあり関係の無い場合もある。新因(直接の原因)は、日米摩擦や水平分業等、トップ次第戦略次第で対応できたものが多い。その真因は、経営と技術の分断、構造変化に弱い等があり、これらは、半導体だけではなく、電機業界全体の問題でもあるが、中期では、教育等で対応可能かもしれない。深因は、油断し易いくせに、自暴自棄になりがちで、目先の和(周囲と時間軸でも)を重視するが中長期目線がなく、その癖、対応が遅い等の国民性もある」

しかし、上記の8つの原因のそれぞれの関係性や因果関係については言及せず、3因との対応は主観的な考察になっている。そこで、客観視するため、ネットワーク科学で、それぞれの因果を分析した。

続きを読む

ネットワーク時代に過剰品質は悪?

ここ数年、製造業の品質不正が問題になっている。三菱電機のケースもショッキングだったが、今回のトヨタなどのケースは大きなショックだった。しかし、トヨタのケースは、基準以上の「過剰品質検査」であり、これまでとやや違う面もある。また、トップ企業の「特別採用(トクサイ)」という側面も大きいのではないか。これまでは過剰品質がもたらすマイナス面が指摘され、実際には十分だから、過剰品質のための検査は無くても大丈夫だ、といことが議論の一つにあった。しかし、今回は、それ過剰検査でも国が定めた基準とは違うことが一つの論点である。 日本企業過剰品質の問題については、コストや管理会計、下請け論、ガバナンス面など多くの指摘や先行研究がある。しかし、ネットワーク、繋がり、標準という観点はまだ多くないようだ。

品質不祥事と管理会計 Quality Scandals and Management ...

繰り返される品質不正問題に企業は終止符を打てるのか

品質不正を生むリソース不足と厳しい納期、過剰品質という ...

品質不正、いま何をすべきか。QC学会トップからの警告

日本的経営と品質管理 - 名古屋学院大学リポジトリ

品質力は「落ちている」と「変わらない」が拮抗 - MONOist

これまでの品質管理は、スタンドアロンでの話だが、これからは、ハードもソフトも多様な種類と階層でネットワークとして繋がり、あるいは、プラットフォームの上で、データ連携が必須になる。

続きを読む

オンラインネット空間とリアル空間とどちらの情報量が多いか

リアルとオンラインの会議や会合等、どちらが良いかについては、それぞれプラス面マイナス面があり、棲み分ける面も多いことは共通認識になっている。海外や遠距離との会合、数百など多人数で会議、知識伝達や決定事項の通達などはオンラインでもいいが、教育、アイデア創出、深いコミュニケーションはリアルだろう。オンライン飲み会は味気ない。ただ、まだ一部、オンラインに拘る方々も、アカデミアにも多い。リアル情報とネット空間情報のどちらを学習させるかになると、生成系AIの可能性にも関係する。

 MOT2020年に行ったアンケートでは、リアル授業の価値は、桁違いではないが、数倍であった。また、オンライン時代にこそ、リアルやライブの価値は高まり、リアル授業はそうしたライブ感でのワクワクやドキドキをしないといけない。これは早稲田MBA入山教授も同意見であり盛り上がった。人間は五感をフルに動かし、環境認識をしてモデルを作り、環境に介入し、その反応を、五感でフィードバックして学習していることが明らかになっている。その点、ネットワークから多様な情報を得ていても、自ら動かず、五感を持たない生成系AIの学習推論とは異なる。これは先日、人間の対面営業と生成系AIによる営業とどちらが勝つかという実験をして、自らが実験台になって確認した。

その中で、そもそも、自らリアル空間を動き回り、五感からの情報を得る場合と、ネット空間から主として、画像や文字と音声を収集している(片方向)場合とで、どちらが多くの情報を得るか、考察を続けている。

続きを読む

DCはAIファクトリー

この5月末から6月上旬にかけ、総務省経産省開催のデジタルインフラ会議が開催され、有識者委員として参画、積極的に議論をした。慶応大学の村井純先生を座長に、東大江崎先生、ソフトバンク宮川社長、IBM森本CTOなど素晴らしいメンバーである。生成系AI時代に、データセンター(DC)を中心に、5G6G基地局や光ファイバー網のデジタルインフラのあるべき姿、カーボンニュートラル観点から、電力網などとの関係、国家安全保障やレジリエンス、地方活性化や街づくりの観点が議論された。拙著「デジタル列島進化論」で分散DCを都道府県に1カ所、50以上設置を主張していたが、宮川社長のプレゼンでは47都道府県に1つ置き、信号、河川管理、上下水道など日本国のインフラをデータと推論エッジAIで管理することが必要だと示されている。村井先生の資料では更にAI-DCを数百、1000以上とある。

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第6回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合| デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第8回)配布資料 (soumu.go.jp)

 会議ではAI-DCAIファクトリーと称したのは至言である。AIファクトリーが日本の未来を。

続きを読む