2022年10月~12月

次数相関性~気が合う同じ階層

 ネットワーク科学の魅力に取りつかれている。何せ、自然科学、社会科学、人文科学と適用範囲が広く、その定量的な結果がしっくりくる。ゼミの学生も同様らしい。色んな話題をネットワーク科学用語で語り合う程である。

中でも、次数相関は面白い。次数相関は「次数の多い人ほど次数の多い人と結びつく」という傾向である。

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今年も研究イノベーション学会に自分で5本、学生は計25本の発表

 今年も、研究イノベーション学会に自身で5本、学生は、秋入学2年生7本、春入学2年生17(うち1名が2)、秋入学修了生1本と計25本を発表するため、20日に、約6000字程度の予稿、A46枚程度のものを提出した。

 学生にとっては、グラデュエーションペーパー提出半年(秋入学は1年半前、中間発表半年前)に際し、良い準備となる。また、いわば、アジャイル開発の中で、POCあるいはMVPのようなものである。いちおう最後まで仕上げてみると全体が見通せるし不足点もわかる。

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稼働率とTATを渋滞学から

前工程での短TATにおいて重要なことは稼働率をフルにしないことであることは、業界常識であり、個々に技術的には研究されているが、半導体工場の最適稼働率とTAT関係式は見当たらない。

 

しかし、西成による渋滞学 を適用すれば、TATと最適稼働率の関係は導かれるだろう。渋滞では、車のスピード(交通量)と車の密度(車間距離)の関係で密度を横軸に縦軸に流量を取ると、ある密度を超えると渋滞が起こる。西成活裕 東大西成総研 (u-tokyo.ac.jp)

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新オープン&クローズ戦略とAIデータ

 機械学習等のAIデータには、INPUTされるデータとAI生成によるデータもあるが、過去の営業秘密やレシピ等と多くの点で異なる。これまでのデータはコピーされれば、キャッチアップが容易であるが、ビッグデータはどんどん増え、先に集めた方が優位であり、先行者メリットが存在する。また、これまでのデータは、初期条件で不変、アルゴリズムに依存せず、再現性もあるが、後者は初期条件でも変わるため再現性はなく、アルゴリズムとの組合せでも多様に変わる。

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経営重心論ジャパンストライクゾーンとアーキテクチャ論の重なり

経営重心論でのジャパンストライクゾーン (以下、JSZと呼ぶ)の中心概ね固有周期6年、固有桁数6を原点とし、再マッピング、アーキテクチャ論の4区分を重ねた。ジャパンストライクゾーンは国際競争力を失う中でも、比較的競争優位な領域である。JSZ原点からの距離と日本のシェアを示す。距離が近いゾーンでは高いが距離が10以上で急激にシェアを落としている。

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新たな専門分野とは~縦から横へ~学会やマスコミ区分とミスマッチ

 産業構造変化や学問の進化の中で、あるいは、ビジネススクールの経験も踏まえ、どうも専門分野の再定義が必要ではないかと感じている。特に領域の融合、横グシ、架橋が必要である。

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未熟さの系譜に見る日本文化の本質~宝塚、ジャニーズとメディアと米政策

流石に、連日のニュースで、これだけ、ジャニーズが出てくると認識するようになった。

 

 半年ほど前に興味を持って買っていたのが「未熟さの系譜」で、多忙でツンドク状態であったが、実は、ジャニーズにも触れている。     「未熟さ」の系譜 (新潮選書) | 周東 美材 | | 通販 | Amazon

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ついにKOKUSAI上場へ

日立国際電気に2017年まで属していて、2018年に分離された、製造装置部門のKOKUSAI ELECTRICが、ついに、10月に上場するで、近く上場承認がおりるようだ。

 

KOKUSAI(旧日立国際電気)10月上場へ 想定時価4000億円 半導体装置 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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米中対応と財政問題、株主重視と独占政策の4象限

 今、世界情勢も、経営を巡る環境変化も、50年に1度だ。そこで、政策のマトリックスを考えてみた。

 

米中対応でと財政問題では、自由貿易を重視し、対中規制を緩和すべきとの意見と国家安全保障の中で、対中規制をすべしとの考えがある。財政問題では、今は、半導体だけでなく、色々なインフラの劣化もあり、教育など、多くの分野で、最後で最大の機会に予算を使うべきだという考えと、国家財政破綻の懸念から、財政規律を重視すべきとの見方がある。

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ナンチェッテ2nm

Rapidusの先端ロジックに関連して、日本は、半導体で、10nm台はなく、二周回遅れだという記事が多い。先端ロジックでは、プレーナから、今世界はFin-FETであり、Rapidusが目指すのはGAAであり、その通りだ。微細化ルールが分かりやすいが、実際はトランジスタ構造である。

 メモリでは、DRAM10nm前半、NAND15nmであり、配線では、10nm台がないわけではない。無いのは、Fin-FETであり、GAAである。

 また、Fin-FETの何nmも、それまでと異なり、実際の物理的な線幅ではなく、あくまで、プレーナ型からの換算値である。

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もし半デジ会議が無かったら

今回、日本の半導体政策は、これまでの「遅い小出し絵に描いた餅」と違うと、海外から驚かれているようだ。熊本のJASMの工場は建設が進んでいるし、先日、Rapidus千歳も鍬入れ式があった。報道での金額は巨額だが、遅々として進んでいない海外とは異なる。

 これらは、2019~2020年までの水面下の産官学の入念な議論を経て、2021年から、半デジ会議で決まったものだが、もし、それが無かったら、熊本や北海道の盛り上がりもない。熊本では、24兆円の経済効果と言われている。北海道はそれ以上だろう。さらに、今回、他の地方も、これで、もし、半導体が来て、データセンタも来たら、地元が活性化されると、希望や夢が持てるようになったようだ。

 教育面でも、地方毎に、各大学や高専などが連携している効果も大きい。これは、中期的に、日本の底上げになるだろう。今、50年前の1970年代に似ている。輸出立国なら可能である。

しかし、このチャンスを逃せば、次は戦後の混乱期並みだろう。食うにも困る時代だ。まさに、三流国への転落であり、既に起こっている海外への出稼ぎと観光しかない。1950年代のように、労働争議も勃発、混乱の時代だ。もちろん、G7どころかG20にも入れない。もはや、輸出立国にさえ戻れない。もう、既に、労働生産性や賃金では、韓国台湾以下だが、次は、ベトナムやタイ、そして、北朝鮮並みだ。

米国も見捨てるかもしれない。台湾やイスラエル、ウクライナは、国民の気概に加え、ハイテクシールド故でもある。観光だけの日本に、米が守る価値はない。近隣諸国が攻めてきても、どうしようもない。これは、まさに、1940年代後半である。当時は、若者がいて、気概もあった。しかし、老人と、気概も無い国民では、蹂躙されて終わりだろう。

 

半デジ会議無くば、真の最後の敗戦、亡国が待っている。

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モノコト経済と収益性

企業の価値転換や多角化で、「モノコト」が叫ばれて久しいが、その定義はまだ曖昧である。そこで、単位系に注目して、モノコト指数を作成し、産業別の収益性との関係を分析した。

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組織構造をネットワーク分析

 組織構造とリーダーシップの関係を見るため、代表的な企業組織を想定し、ネットワーク科学で分析した。社長、役員、部長、課長、平社員という5階層、部門は、R&D、営業、財務だけ、かつ、スパン数も2-3程度、30名程度というシンプルな組織を想定、ワンマン型、ピラミッド型、マトリックス型、につき、それぞれが、同部門での連携の有無、同職位(日本においては例えば同期)の連携がある場合、さらに、社長への直接パスが、全員にある場合、部長、課長、平社員にある場合について、また、ツートップの場合について、シミュレーションを行った。

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労組と投資家の対決が50年前を想起~西武そごうのストの水面下

西武そごう労組のストライキで、昭和の昔のストを思い出した方も多いのではないか。昨年から、拙著「デジタル列島改造論」でも指摘しているが、東西対立、インフレ、円安、など、50年前のような事象がおこり、これは偶然でなく、歴史のサイクル性、同じことを繰り返すわけではないが、韻を踏む。ストは1974が山だった。1970年代との相似形~労働紛争と東西対立 - 若林秀樹アナリスト (circle-cross.com)

1960年代から70年代の国鉄などの激しい労働争議や学生運動の背景には、高度成長下での矛盾や東西対立の中でのインテリジェンスの動きもあったかもしれない。再び、東西対立、経営環境が変わる中で、富の分配を巡り、三方良しどころか、経営側と投資家側と労働者での対立が復活するかもしれない。

経営の今後のリスクは、労働争議や学生運動である。90年代以降は、日本では、東西対立も労働争議も無かったし、80年代以前の激しさで経験知のある経営者も少ない中で、これは大きな見えざるリスクかもしれない。コロナ禍でのリアルなコミュニケーション不足、少子高齢化の中でジョブ型も含めた働き方改革、利上げ、円安とインフレ、チャットGPTなどAIによる影響など、労働者や就職を巡っては、混沌としてきている。

現在は、経団連など経営側も、インフレ対応もあり、賃上げでは労組と協調しているが、今後、不況下では、どうなるか分からない。この西武そごうのトラブルが広がるもしれない。米ITや金融では、空前のリストラも始まっている。再び、共産党や社会党系が復活するかもしれない。

 

過去の労組は、経営者との対立だったが、今回、興味深いのは、ファンドである。多様なステークホルダーが、どちらを選ぶか。例えば、東芝問題をめぐって、動きは無かったが、労組が声を上げると、どうなっただろうか。経営側とアクテティビストを中心に、一般投資家という構造から、労組が出て、従業員が絡むと、三体問題になる。

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クリスミラー先生との対話で深入りしなかったDRAM敗因と朝鮮半島有事

 お陰様で、クリスミラー先生との対談が話題をよんでいる。実際には、619日に、来日時に行ったものである。私が英語で質問し、ミラー先生が英語で回答し、それを通訳が訳して、司会など編集側に伝えるというもので、3時間弱であった。当初は、私が日本語で聴き、通訳、ミラー先生からの回答を通訳、という用意であったが、時間がかかり、かつミラー先生が私の下手な英語を理解してくださり、私に解るように、おそらく、ゆっくり目に話してくださったので、直接の対談にした。ただ、その分、私の下手な英語のテープ起こしと和訳などに時間がかかったかもしれない。

 

 対談は、丁々発止だったが、二か所だけ、敢えて、あまり深入りしなかった点がある。DRAM戦略と朝鮮半島有事である。

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NANDビジネスモデルの新たな兆候~WD講演での価格弾性と4技術

 NANDが、サムスンでさえ赤字という不況の中で、ビジネスモデルの新な兆候が始まるかもしれない。NAND等フラッシュメモリ関係のシンポジウム(FMS: Flash Memory Summit)」が202387日~10日にシリコンバレーSCCCで開催された。キオクシア、SKWDが次世代NANDを発表した。

【福田昭のセミコン業界最前線】Western Digitalが明らかにする3D NANDフラッシュの「不都合な真実」 - PC Watch (impress.co.jp)

 

価格弾性効果についての言及が興味深く,これこそがビジネスモデルだ。ASPが低下により新需要が生まれ、メモリの売上げが伸び、そこから開発や量産などの投資、技術開発によりコストが下がる。90年代に小生が書いたレポートでは、値段が半値ならビット需要が4倍であった。

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新規事業戦略の授業とグループ発表からの示唆

 前期の授業で、新規事業戦略が無事終了した。これまでも、新規事業やスタートアップの授業は、あったが、いずれも、「0」⇒「1」、であり、日本の大企業にありがちな「-1」⇒「0」の発想がなかった。今回は、新規事業のアイデアだけでなく、社内の政治力学、反対派と賛成派、主流派と亜流派に分かれ、社取、各ステークホルダーなども、取り込みながら、如何に、離陸させ、成長させるか、という学びを、仮想役員会、株主総会/記者会見などのロールプレイも含め、実感するという趣旨である。

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組織人事の授業とグループ発表からの示唆

今回、MOTでの新科目であった組織人事が無事おわった。通常の大学院でも、ビジネススクールでも無い、欧米の経営学、フレームワーク、中国古典など東洋の「経営論」、更に、ネットワーク科学や熱力学や生物学などの理系のフレームワークも総動員して、通常の企業だけでなく、官僚、教員、芸能、軍隊、ヤクザ等まで、あらゆる組織を対象に、分析し、提案を試みるという、これまでに無い挑戦的な試みであったが、学生はENJOYしてくれたようであった。組織人事を自分事として、色々な角度から考える契機になったようだ。アンケートも概ね高評価であった。

 

自社組織人事の良い点悪い点を列挙させ、様々な組織を紹介、それに対し、グループワークで、議論させ、その後、輪読、欧米の経営理論フレームワーク、中国古典、理系の関連する理論を紹介、夫々で、グループワークで、組織人事に適用する。中国古典が難しかったようだ。最後は、12班に分け、グループ発表会である。

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公共系クラウドの在り形とオンプレ回帰を考える

公共クラウド、特に、政府系クラウドの議論が進んでいる。実は、半導体デジタル会議では、当初、重要な課題であった。政府クラウドでは、脱外資系の動きが、強いようだ。しかし、国内ITでは、ハードルが高く、選定は米ITだけとなった。また、クラウド人材育成を官民で育成が急務である。

政府クラウド、「脱外資依存」の動き 欧州で先行 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

政府クラウドとは 選定、22年度は米IT大手のみ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

クラウド人材、官民で育成 - 本経済新聞 (nikkei.com)

また、意外とクラウドが進んでおらず、オンプレ回帰もある。

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東芝非公開化の余波~デバイス部門はパワー半導体とNFTと芝メカ、そしてローム

東芝の非公開化の影響で、東芝テックに続き、芝メカの株も売却される。東芝、ニューフレアテクノロジー、東芝保険サービス3社は、822日に計、凡そ16%175億円を売る。芝メカは需給悪化を避けるため、36億円を上限に自社株買いを実施。その効果や業績好調やJPX日経日本株構成銘柄に選定された等もあってか、影響は軽微だった。JPX選定に関するお知らせ (eir-parts.net)

芝メカは83日に、1Q決算を発表、半導体前工程やウェハー向けが好調で枚葉式リン酸エッチが強く、後工程も先端パッケージが好調、受注では生成AIGPU好調で先端パッケージボンダが強い。このため、上期を売上260290億円、OP3140億円へ上方修正、通期は売上590億円、OP73億円で、下期を下げた形だが、実態は上ブレの可能性もあるだろう。

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新たな時代の半導体経営

誕生して60年を超え、今や100兆円になる半導体産業だが、これまでのような、需給と、先行投資、厳しい競争、激しいシリコンサイクルという「高血圧体質」のビジネスモデルや経営でいいのか、考えている。環境問題、エネルギー、サプライチェーンもある。

 

そこで、脳や量子コンピュータなどについても考えると、半導体産業の高血圧体質は、ノイマン型で始まったのではないか。大昔、アセンブラで、Z80などを動かしていたときは、メモリが少く、それゆえ、なるべく、容量を減らす工夫をして、それがスマートだと思っていた。それゆえ、当時は、メモリもそんな需要が無いという説もあったのである。その後、ノイマン全盛で、AIやコンピュータの進化も、アルゴリズムや回路の工夫よりも、半導体技術を使った、大量のメモリとコンピュータのパワーを活用、それが当たり前になっている。

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脳と芸術と量子コンピュータ

人間の脳について、勉強すればするほど、現在のコンピュータとは異なる点は多すぎる。最近、量子コンピュータや右脳左脳とアナログ回路設計者との関係について、関係する論文や資料を読み、また、下記の書籍を読んだ結果である。「脳は世界をどう見ているのか: 知能の謎を解く1000の脳理論」2022/4/20ジェフ・ホーキンス ()脳の創造とARTAI」塚田稔 ()、である。塚田先生は、昨年、MOTで妄想ビジョナリーに講義にゲストスピーカーで招き、少し話してもらった。ホーキンスと塚田先生の主張は面白いほど共通している(後述)

 さて、あえて、人間の脳とコンピュータを、構造、仕組み、特徴などについて、比較してみた。部分的に似ている点もあるが、根本的に差が大きいことに驚いた。特に、五感等と動きの有無が大きく、人間の脳は、常にダイナミックに予測しモデルを作る点が根本的に異なる。

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2023年8月20日 半導体のビジネスモデルの整理

 半導体市場が100兆円になり、国家安全保障視点が必要となり、More than Mooreの変化もある中で、半導体のビジネスモデルの過去の常識は変らざるを得ないだろう。10兆円産業であれば、2030%変動でも、23兆円だが、100兆円であれば、2030兆円であり、企業はおろか、国家も打撃を受ける。そこで、半導体のビジネスモデルを、クリスミラー先生の「Chip War」も参考にして、歴史的かつ各国別に再整理した。

 

 半導体のビジネスモデルは、大規模先行投資をイメージしがちだが、こうしてみると、各国の事情や成長段階で異なる。

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チップレットでFEOLとBEOLを分け並列生産するメリットのシミュレーション

 チップレットで、これまで一般には、あまり言及されていないが、並列生産による短TAT化は、大きなメリットであろう(小生は実装エレクトロニクス学会はじめ、あちこちで発表しており、専門家からも、概ね、面白いとの意見を頂いている)。最先端で低歩留まりのTr工程中心のFEOLと配線が中心のBEOLに分けると、全体の歩留まりは、あがる可能性もある。もちろん、設計コストや、チップレット化のコストはある。プラス面は、①歩留まり向上、②短TAT ③無駄な在庫なし、マイナス面(課題)はノード別設計できるか、そのコスト増であり、最大の課題はチップレットでの組立、検査の技術開発とコスト増である。問題は、FEOLBEOLを分けて、並列生産にした場合のコストメリットや業績に与える影響度合が実際どの位になるかである。

 そこで、下記の表に示すように、前提を置いて、シミュレーションを行った。

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短TATで稼働率が落ちるが、それをカバーするに必要な値上げは

 Rapidusの成功の鍵は短TATである。それは、前工程での生産だけでなく、設計から後工程、そして経営判断、キャッシュフロー回収(CCC)Albanyからの技術移転など、全てである。設計では、シリコンコンパイラから、オープンAIも最大限活用しなければならない。オープンEDAセンターをLSTCで考えることも必要だろう。

 

 前工程での短TATにおいて重要なことは、稼働率をフルにしないことである。技術的に短TATを実現すると、これまで日本では、DRAMMCUに代表される標準品の工場が多かったこともあり、また、装置を有効活用すべく、フル稼働にしていた。このため、見かけ上、1年間のコストは下がったが、結果、在庫を積み、シリコンサイクルの中で、評価損となり、数年のレンジで見れば、マイナス面も多かった。

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TSMCのノード別粗利率は、先端と成熟とどっちが高いか

 TSMCの粗利率について、先端品と成熟品でどっちが高いのか、について、先端品の価格水準と同様、昨年の今頃から議論をしてきた。当然ながら、会社側は、会社全体の売上、粗利率や出荷数量やウェハーはアニュアルレポートで公表され、平均単価も計算できる。また、プロセスノードの売上構成についても、ある程度の括りでは公表されているが、ノード別の平均単価やコスト、出荷数量は推定するしかない。

 幸い、UMC等も会社全体の数値が公開されており、TSMCとの比較から、TSMCにのみある、5nm/7nmの状況を推定できる。

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中国のバブル崩壊、日本の円安をどう考えるか

中国のバブル崩壊が始まった。不動産大手の恒大集団も米で破産法申請となった。

「中国版リーマンショック」に発展か人民元、16年ぶり安値-Chosun online 朝鮮日報

不動産大手の中国恒大集団、米国で破産法の適用申請 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

中国のGDP成長は、不動産に依存しており、2014年以降30%近く、個人資産も住宅が60%以上である。

かつ、北京や上海の不動産価格は、東京やNYと比べても、異常であり、老人依存度も高い。

 

転換を迫られる中国経済 | リコー経済社会研究所 | リコーグループ 企業・IR | リコー (ricoh.co.jp)

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会社のプレゼン力とビジネス開発力

アナリストやファンドマネージャーの立場から、企業のトップ等のプレゼンを聞き、面談で議論して、それを横比較すると、流石に違いやレベルの差はわかってくる。

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量子コンピュータのデバイスは無線機か

量子コンピュータは、ムーアの法則とノイマンのアーキテクチャの限界を超えるとも言える。精密工学会誌の特集「量子コンピューティング~ポストムーア時代の精密工学」の「超伝導量子ビット技術」(201912by阿部、玉手)で、指摘されているように、ムーア則の物理空間制約(ファインマンが、もう空間が残っていない)を、ヒルベルト空間という量子ビットが住む抽象空間の活用で解決するアプローチであり、「0」「1」のビットでなく、その重ね合わせを許す量子ビットゆえ、2n乗のビット列を同時に表現できる。

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ソフトの部品表SBOMをどう使うか

BOMは、アナリストの間でも有名で、BOMコスト等というが、ソフトのSBOMがあり、注目されている。OSS開発の流れの中で、ソフト開発者は、独自に一から作るのではなく、専用サイト「ギットハブ」で公開される無料のプログラムなどの部品を活用、組合わせる。ソフトウェア部品表 (SBOM) - GitHub Docs

 経産省は、サイバーセキュリティとして、企業にSBOM作成を促す。米国では、2021年に大統領令で指示されている。ソフトの脆弱性に即応「SBOM」とは? 経産省導入促す - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

国内では、トヨタや富士通が導入しているが、まだ少なく、欧米では当然となっている。これがあれば、脆弱なプログラムの利用有無を早期に把握、攻撃を未然に防ぎ、迅速な復旧が可能で、医療や自動車では必須となるだろう。

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東芝は非上場化へ~メタモルフォーゼを

東芝1Qの決算説明会が、投資家アナリスト、マスコミ向けにオンラインで開催された。併せて非上場化につき、渡辺取締役会議長および島田太郎社長より説明があった。業績は新CFOの松永が対応。質問はマスコミからが多く、TOB可否、非上場化の意味や長短や感想、今後のあるべき方向性、2017年に非上場化すればよかったのでは?などの意見、キオクシアの状況や影響、東芝テックについて等だった。

 1980年代後半から長年、アナリストあるいはファンドマネージャーという立場から、30年以上にわたり、東芝株および東芝という会社をフォローしてきた者として、感無量である。非上場化しても会社は無くなるわけではなく、「少し休憩」し、再度、強い会社として、東芝らしいイノベーティブな企業文化は残しつつ、「変態(メタモルフォーゼ)」に期待したい。非上場化はBestな解ではないが、「マグロの解体ショー」にならないのであれば、これ以上の期間、混乱が続き、島田社長はじめ有為な役職員が、そのようなことに時間を費やすよりは、Betterであると思う。特に、製造業を中心とした多くの企業が出資に賛同したことは、経営重心論の固有周期の時間軸とリスクの取り方から、ファンドだけが株主であるよりは、好ましいだろう。今後の鍵は、キオクシアと東芝テックもある。

2017年に非上場化していたら良かったのではとの論調は多いが、そうであれば、状況が曖昧、混沌の中で、東芝の企業価値や、その経営資源や文化風土の長短について、よく検証されないまま、解体ショーとなり、会社そのものは雲散霧消した可能性もあろう。この8年は長かったのは事実だが、社内も社外も、東芝について、よく考える機会を与えたのは事実だし、ある意味、残った社員の愛社精神は深まった面もあるだろう。IRの開示も格段に改善した。人生でいえば、少し長い浪人生活あるいは入院期間かもしれないが、そうした不遇の経験を踏まえ、立派な業績を残した方は、池田勇人はじめ、少なくない。

 

また、この8年では、経営環境は、大きく変わった。2017年には、カーボンニュートラル、米中摩擦、国家安全保障、コロナも無かった。こうした変化により、東芝の持つ、エネルギー、電池、半導体関連、量子通信の重要性に対する認識は各段に高まった。さらに、CPSのプラットフォーマモデルも浸透した。2017年に非上場化され、解体ショーがあれば、こうした重要技術が、他国に流出した危険もあるだろう。CPSデータのビジネスモデルが無ければ、古い「選択と集中」モデルで、解体ありきだったろう。

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メモリ不況下でHBMが救世主か

今回のシリコンサイクルは、ほぼ、2021年末の予想通りで推移しており、メモリが厳しい状況になっている。その中で、アナリストも含め、意見が分かれたのは、メモリの底打ちが、DRAMが先かNANDが先かであった。現時点では、DRAMが先であったようだ。サムスンの減産効果やチャットGPTに使うHBM需要もあるだろう。DRAM6月大口下げ止まり 余剰感後退し2カ月横ばい - 日本経済新聞 (nikkei.com)

NANDはキオクシア北上工場稼働延期もあり、遅れている。HBMは、チャットGPTに使うAIプロセッサのNビデアではバンド幅が広く、消費電力を下げる理由から使われ、DDR5の後を担う。まだ、数倍と高価であり市況影響もある。ハイニクスが先行、シェア50%を超え、次いでサムスン、マイクロンは遅れているようだ。

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専門職大学院の修士論文とは

日本のMBAの質が低い背景には、修了論文が必須でないことが理由であると主張したのは、早稲田MBAで長年教鞭をとったローランドベルガーのトップも務めた遠藤功氏だが、理科大MOTでは、創立以来、修了ペーパーを課している。研究大学院では、理文を問わず、修士論文が必須だが、専門職大学院のMBAは、文科省基準ではそうでもない。MBAMOTにも、研究大学院もあり、ややこしい。また、教員のバックグラウンドで、考え方が異なり、難しい点だ。

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単位系発展による価値創造~モノコト更にイミへ

 モノコト創発学会で2017年に入って、発表して以来、モノコトの単位系と価値創造について、研究している。動植物は、自身のセンサーで、寒い暑い、痛い、等の感覚は持っているが、数値化はしていない。ただ、温度や圧力で、閾値が変わると、氷が水になり、あるいは、火がついたりするので、一定のレンジでは、客観的な尺度は持っている。

それを数値化したのが、様々な単位系であり、下記のようにも分類できる。単純な単位は、長さ、広さ、重さであり、農耕時代あるいは、それ以前の物々交換でも尺度になっていただろう。もちろん、希少な金銀と、土では価値は違うが、その差をどういう背景で考えていたか、有用性か希少性か芸術性(綺麗、光る)は不明だが、五感と日々の経験で理解していたのかもしれない。

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役所と大学は時間コスト意識が希薄で組織人事は一般解幻想

 何度も指摘しているが、大学だけでなく、研究機関なども含め役所や学会等(あるいは一般の大企業も)は、時間コスト意識が薄く、タイミングに対し無頓着だ。

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半導体プロジェクトの危険な兆候

 今回2020年頃から経産省も主導して、TSMC誘致、RapidusLSTC設立、IBMIMECの連携、先端ロジックだけでなく、メモリやパワー半導体、実装後工程にも広がり、更に、半導体人材強化なども進んでいる。これまで批判されてきた「遅い、小出し、画餅」と違う動きになっている。厳しい批判も。少し減り、政財官ともに、盛り上がっているようだ。

 

ただ、ここに来て、少し危険な兆候が懸念される。この流れにのろう、巨額な補助金を目当てに、バスに乗り遅れるな、というような動きが、あちこちで盛り上がり、制御不能になるのではと感じる。

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人民元が初のドル越え~中国相手の貿易・資本取引決済

中国が取引相手となる2国間決済で人民元が初のドル越えとなった。金融開放やロシアとの取引拡大の影響が大きい。中国相手の貿易・資本取引決済 人民元、初のドル超え - 日本経済新聞 (nikkei.com)

世界全体の決済シェアでは人民元比率は2.77%5(米ドル42%、ユーロ31%、ポンドは概ね6%、日本3%)であり、世界GDPシェアに対しては少ないが、5年前の2%以下からは徐々に上昇している。

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ゼミWヘッダー制は成功したか

 ゼミでは、MOTの来週のグラデュエーションペーパーの中間発表(秋入学は最終発表等)を控え、パワポ資料作成やプレゼンの練習やチェックを行って、あとは当日を待つのみである。また、全員が、研究イノベーション学会で、発表するので、申込のための300字の概要提出もある。

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アーキテクチャ論における構造と機能の別パターン

 アーキテクチャ論では、構造と機能を対応させ、モジュラーかインテグラルかを分けてきた。かつてのPCのように、11対応で、行列で示した場合、対角行列であれば、モジュラーであり、そうでなければ、インテグラルである。これに関して、ASMLEUVや原発等の部品点数が多く、長期間メンテが必要なシステムは、経営重心論から、インテグラルを超えた「第二モジュラー」だと定義して、論じた。

 しかし、考えてみれば、構造も綺麗に分離されているか、機能も綺麗に切り分けられるかは疑問である。

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ものづくり太郎とMOTを語る

 昨年末から親交を深め、既に、5回ほど、MOTに来て頂き、講演対談、授業でも登場してもらっているが、チャネル登録数23万人の著名YouTuberである、ものづくり太郎氏に、MOTを取り上げて頂いた。

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米国の政策転換~教育と独占禁止法

 最近、注意すべき大きな米国の政策あるいは価値観の転換になる可能性がある出来事があった。一つは、ハーバード大学の入学者選考についての判決であり、もう一つは、独占禁止法強化である。これが大きな流れになるなら、日本にも、影響が大きく、日本人の価値観を変えるかもしれない。

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東アジアの地政学リスクをネットワーク分析で

 台湾有事リスクや朝鮮半島などの地政学リスクを、ネットワーク分析で考えてみた。日本以外は、地理的に近い、米、韓国、台湾、韓国、中国、ロシア、北朝鮮の、計7か国である。7か国なので、ネットワーク分析をするまでも無いが、それでも気づきがあり、国数を増やした場合に有効かもしれない。

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台湾有事リスクと日本の姉妹都市

 台湾有事リスクの中で、台湾主要都市と日本の友好関係、そのハイテク度合、有事リスクを調べてみた。台湾は、中国に面する西側が開けており、世界のハイテク拠点である台北、新竹、桃園、台南、高雄などがある。また、海は比較的遠浅である。東側は、山が多く平野が少なく、ハイテク拠点は少ない。また、海は深い。

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組織人事論における東西差

 日本では、通常、ビジネススクールの組織人事論の科目では、欧米(特に、米)の学者による、組織論による場合が多い。確かに、「組織の経営学(理論と設計)」、「グローバル企業の組織設計」等の良書はあり、コングルエンスモデルや星形モデル等のフレームワークもある。しかし、組織や人事では、西洋と東洋の文化の差に加え、制度の差も大きく、その「理論」を、そのまま適用しても、マッチングしない場合もある。また、中国の古典には、長い歴史の教訓を踏まえ、貞観政要、六韜三略、孫子、韓非子、菜根譚などもあるが、ごく一部のビジネススクールで紹介されている程度である。

 他方、会社の研修では、こうした中国の古典を導入している場合もある。実際、松下幸之助や稲盛和夫等の有名な経営者による私塾では、リーダーシップやココロを重視してきた。

しかし、欧米的な組織人事論と東洋的な組織人事論を踏まえて、どうすればいいのか、についての議論が少ないのではないか。

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トヨタ ギガキャストの衝撃

先週、トヨタが恐るべき発表を起こった。ギガキャストである。以前から、NIDECなどで言及され、テスラも導入していたが、ついに、トヨタも、EVに「ギガキャスト=アルミ鋳造などによる一体成型」を2026年に搭載するそうだ。トヨタ、新生産技術「ギガキャスト」 EV26年搭載 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

トヨタの技術戦略とクルマづくりの方向性/副社長・Chief Technology Officer 中嶋 裕樹 - YouTube

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AI時代に問われるのは、問う能力~大学・アカデミアとアナリストの生き残り条件

生成AI登場で、大学教授やアナリスト等の知的ホワイトカラーの存在が、一層問われている。米では、業務の1/4が自動化されるそうだ。〈テクノ新

その生き残りの条件は、東大柳川教授が指摘するように、これまでの、どういう答えを出すからはなく、どういう問を立てられるか、問う能力である。問われるのは「問う力」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 また、東大佐倉教授が、指摘する、答えの適当さを見抜く能力だろう。広く深い教養に加え、身体知も必要だ。生成AI、教育に生かすには 答えの「適当さ」見抜く力を - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 すなわち、生成系AIは、サイバーのネット空間で、ある時期より昔の「言語等」から情報を得て、適当に「記号操作」しているだけであり、そこには、大昔や直近のデータや、五感で得られるデータもなく、因果関係や意味は、関係が無い。また、問の能力は薄いだろう。

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大学ファンドの赤字

 大学10兆円ファンド(JST)が、2022年度は604億円の赤字であった。GPIFは長期的に公的年金を給付すればいいが、大学ファンドは運用開始5年以内に大学へ、年3000億円の給付金を支給する予定であり、その意味では厳しい。大学10兆円ファンド、604億円赤字 22年度は厳しい船出 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

大学ファンドは、国内外の資産区分は不明だが、グローバル株式65&グローバル債券35%をレファレンス・ポートフォリオにしており、運用を始めたばかりであるため、2022年度末の資産配分はグローバル債券が55%、グローバル株式17%、短期資産28%と債券比率が高かった。

 

海外金利上昇で、債券比率が高いことが、マイナス要因であろう。ただ、赤字といっても、0.6%であり、取り立てて、批判するほどではないだろう。

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地方データセンタ公社のケーススタディ

ロシアによるウクライナ侵攻で、国家のデータが消失するリスクから、全体のデータを持ち出す、いわば、「デジタル引越し、デジタル夜逃げ」から、国家や地方自治体や企業にあるデータを、災害や有事の前に、急ぎ、安全な場所のデータセンタに移管することの重要性が再認識された。いざという時の引越し先を確保しておくことも大事だが、それをまず、デジタルで進めるのである。

この議論から、データセンタを分散化させることの利点は、「デジタル市町村合併」、「デジタル遷都」、「デジタル引越し」でもある

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書評のポイント

これまで、大量の原稿を書いてきたが、書評は少なかった。今年になり、2回、書評を書いた。前回は、東大山西先生のものを「数理科学」に寄稿した。今回は、日経新聞の書評欄「今を読み解く」である。

 字数に加え、幾つかの条件があり、評するのは、全体で56冊、うち、半分は、最近のもの、日経系は2冊程度、また、報告書の類やアナリストレポート、雑誌はダメだそうだ。もちろん、自著はダメである。最初に思いついた必読書は、半デジ会議報告書やJEITA半導体部会政策提言タスクフォース提言書やアナリストレポート、日経エレクトロニクス等なのだが、ダメだということだ。

 

 どんな原稿でも、独創性が少しでもあれば、と挑戦するので、日々言っている「人生シリコンサイクル」すなわち、人生は七転び八起きであり、良い時は油断せず、悪い時こそ投資であり、短期でクヨクヨせず、長期で明るく、という意味で、半導体に関わる技術者や経営者の人生も含めて、読者に参考になるような書き方を考えた。登場した多くの方が、お会いしたことがある方であり、長い付き合いの方も多い。

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役所の産業政策と金融政策の財布

世界中で、国家と市場の関係、あるいは、官と民の役割が変わってきている。地球環境や安全保障に関わる課題や、巨額な資金が必要な課題は、一企業では難しい。GAFAなどの巨大企業は、資金的な能力はあるかも知れないが、利益優先の方向性や独占により、社会的課題解決どころか、マイナス面もある。

 まさに半導体は、国家同士の知恵とカネの出し合いの競争になっている。先日は、JSRJIC傘下の動きもあり、政府や役所が、産業政策、あるいは、金融政策において、どこから、カネが出てくるのかについて、触れてみたい。役人ではないため、誤解があるかもしれないが、御容赦願いたい。

 最近、兆円クラスの資金も出ている経産省では、NEDO資金がある。これまでは、技術開発中心であり、数百億円程度であったが、工場建設など社会実装にも使えるようになったのが大きい。

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COMNEXTで半導体キーマンのパネル討論

630日昼に、リアル受講者593名を集め、東京ビッグサイトにて、COMNEXTセミナー特別講演「2030年に国内売上高15兆円(20年比約3倍)となる半導体産業について、国家戦略、インフラ構築、アプリケーションの観点で各ポジションの代表が議論する」とのテーマにて、90分のパネル討論のモデレーターを務めた。パネラーは、経産省金指さん、Rapidus小池社長、デンソー役員の加藤CTONTT塚野IOWNセンター長である。パネル討論に先立ち、自民党の半導体議連の甘利衆議院議員から、挨拶があった。まず、チャットGPTの話題とジョークから始まり、半導体を巡る国際情勢と国策について5分程度のスピーチ。通常なら、多くの政治家は、挨拶して「公務があるから」と退出するが、甘利先生は、そこが違うところで、30分以上、最前列で、パネラーのポジショントークと討論に耳を傾けられていた。

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組織論研究の最先端

新科目の「組織と人事」では、MBAの教科書として、古典的な「組織の経営学」をベースに、通常の講義や社会人同士の議論、グループワークだけでなく、日本の大企業の問題を論じている、沼上幹の「組織戦略の考え方」を輪読、さらに、最先端のアカデミアの研究成果を組織レビューⅢとⅣ、経産省OBの新原氏の近著「組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織」も紹介した。

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組織と人事の講義

MOT3.0では、新科目「組織と人事」を担当しているが、MOTの組織と人事の問題を抱えている、当事者が教えているのは皮肉だ。まず、学生が属する組織人事について、有名なコングルエンスモデルや両利きの経営のフレームワークを考慮して、良い点や悪い点をあげてもらった。教員3名も、属した組織について、整理する。若林自身で言えば、下記の表のようである。ヘッジファンドは小規模のベンチャー的組織であり、省略し、日米欧のアナリスト部隊を比較した形になっているが、個人と組織全体のベクトルが一致しており、人事もグローバル同様に流動性があり、評価もアナリストランキング等があり、ある程度、客観的だ。その意味では、日本の伝統的大企業に比べ運営は楽だった。

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JSRがJICに~新たな再編の形か

先週、JSRが、JIC傘下になることが決まったようだ。正直、ニュースを見て、驚いたが、何となく腑に落ちた。

 

 半導体では、JSRはレジストでトップ、ドライ系のラムリサーチと異なり、ウェット系で、TELなど装置メーカーと、強いサプライチェーンを築いており、特に、EUVでは鍵であり、IMECにとっても重要である。2019年には、565億円を投じ、米国ベンチャーのInpria(2007年設立以来、EUV用メタルレジストの開発に取り組み、スズ酸化物を主成分とした材料はEUV露光系で世界最高性能の限界解像度を達成)。半導体製造のエコシステム上、更に重要性を増した。

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日本では、PDCAの時間比率と人数比率はどうなっているか

日本の企業も、大学も、PDCAが好きなようだが、PDCAのそれぞれに、時間であれ、人であれ、どの位の経営リソースを割いているかのアンケート調査や先行研究は見当たらない。

 PDCAサイクルは、同一組織か、それぞれで分かれているか不明だが、通常、Pは企画や経営トップ、Dは現場、Cは、経営トップや社外役員や監査、Aはまた現場である。もちろん、状況次第であり、クラシカルな戦略とアダプティブな場合でも異なる。

 モノづくりのアナロジーなら、Pは設計、Dは生産、Cは検査、Aは手直し、バグ取り、等であろうか。半導体産業なら、Pはファブレス、Dがファンドリ、Cがテストハウス、ロジックなら、Pが半分強を占め、Dがその次、Cは少ない。メモリなら、Pよりも、Dが大きく、CAもやや多い。

 

これが、あまりに、CAが多いようであれば、採算的には問題であろうし、Pに問題があるのだろう。一人で何かやる場合も、Dが重要であろう。

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一般の方の素直な質問~TV朝日の番組と比喩

 先日、民放テレビに出演して、半導体の微細化で、ナノの話となり、そこで、常連の有識者のコメンテーターが、ナノという微細な半導体チップを製造するなら、さぞ、小さいロボットが必要なのでは、と聞かれ、驚いた。工場見学で、クリーンルームに入り、巨大な露光機やエッチャ―など、実際のラインを見ていると、そういう発想には、ならないが、確かに、素人ならではの鋭い質問だ。こうした有識者ですら、そうなのだから、一般の方は、ナノの微細な加工には、ナノではないが、同等の大きさのロボットがいるというふうに、思われているのかもしれない。これを、正しく説明するのは難しい。

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開放オフィスは相互監視

昔から、日本に多い、課長席を中心に、「島を」作って、並べる、開放オフィスは、コミュニケーションに良いとうが、実際は相互監視である。

 新しいオフィスは、フリーアドレスで、開放的だが、どうしても、相互監視が残る。そこに、日本の「和を尊ぶ文化」があり、仕事が終わり、早く帰ろうとしても、気を遣って、机の上の整理をしたりして、ダラダラしているのではないか。

 外資系は、狭くても、個室になったりしており、いるのか、いないのか不明であり、個人主義も徹底している面もあり、それゆえ、他の社員が何をしているか、関心がなくなる。それゆえ、さっさと帰る。もちろん、日々のコミュニケーションの問題はある。

 

 そこで、贅沢だが、家が、自分の部屋や書斎、子供部屋と、リビングがあるように、オフィスも、個室と開放的な空間と二つ設けてはいかかだろうか。テレワークも進み、空いている部屋もあるだろう。集中したり、クライアントと商談は、個室で、気分転換に、開放共用スペースでも、作業すると、適度なコミュニケーションもでき、自分のペースで仕事を始め、仕事を終えられる。

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単位系による価値創造戦略~モノからコトは、\/kgから、\/㎡、\/bit、\/bit/J、・・・

モノからコトへの転換、が叫ばれているが、ハードからソフト、あるいは、パッケージからソリューション、だとか、色々な解釈があるが、曖昧だ。

 実は、単位系で、考えると、モノからコトは、明らかだ。モノとは、要は、価値が、\/kg、あるいは、\/㎡など、単純な物理量で測れるものではないか。これに対し、bit等、新たな概念の単位や、カーボンニュートラル志向で、bit/Jなど、複数の単位系が組合されたりすると、そこに新たな価値観が創造され、コトへの転換が生じるのではないか。

 半導体では、シリコンはkg単位で売られるが、ウェハーになると、品質やエピ等の再はあるが、8φ、12φ、と基本は、㎡単位である。これが、メモリになると、やはり、品種などの差はあるが、bit単位になる。カーボンニュートラルが重視されると、そうした単位をJで割ったりする。ディスプレイでは、最初はガラス板だが、それに膜が形成され、やはり、8G10Gと㎡や、画素数等が単位になる。画像センサーも画素数だが、ダイナミックレンジ等、用途に応じた価値観で値段が変わる。

 ソフトでも、紙はkgや枚数だが、原稿料は字数だ。プログラムならコード数や人月であり、そこに、価値観の違いはない。そうであれは、ソフトでもモノだ。

これが、コトになるためには、新たな単位系が必要になる。

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経営重心論をディスアグリゲーションに使う~部品ビジネス転換

経営重心論でジャパンストライクゾーンの右上は、日本では、スケールできず、スピードが追いつかない領域、左下は、日本的な摺合せでは難しい領域だ。右上は、オーナー系部品メーカーのように、トップダウンで臨機応変にやるしかない。左下は、天才的なアーキテクチャによるトップダウンか、第二モジュラー(簡単なモジュラーではなく、原発や宇宙衛星基地など長期に亘り使用せねばならず、かつ、複雑すぎるシステムを、デジタルツインにより、シミュレーションしながら、設計製造保守する)しかないだろう。露光機も、かつては、日本的な摺合せで対応できたが、EUVLになると、この第二モジュラーしかない。ジャパンストライクゾーンは、スケールが難しく、モジュール設計もせず、摺合せ、時間をかけ、勘と経験で対応する領域ともいえ、それが日本の産業の成長が難しい本質でもある。

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商売道と規律

ビジネスであれば、結果は明らかであり、反省して、改善や修正し、そこに進歩がある。それゆえに、最低限の規律というか、それがモラルになっている。ウソや屁理屈を言えば、相手にされないし、信用がビジネスの基本である。

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AIが無限に発達した場合の可能性をカントールの無限集合論から~長沼伸一郎来たる

ゼミで、直観シリーズで著名な物理数学者の長沼伸一郎先生を招いて、「世界の経済・経営・科学技術と人類を直観で理解する~AIが無限大に発達した場合、人類は勝てるかの数学的証明の試み」と題し、最初二人でパネル討論、その後、50名のリアル参加者の質疑、約3時間の知的刺激に溢れる空間だった。

 

 長沼先生とのパネル討論では、「経済数学の直観的方法」の序文での文明論、理系文系、経済学アプローチ論、「物理数学の直観的方法」の「やや長めの後記」での三体問題、n乗行列での西欧と中東文明の差異、「現代経済学の直観的方法」での、貨幣論、貿易論、投資家/企業家/労働者の関係、経済学の歴史、等に、少し触れた。これからの新しい資本主義を考える場合、3層の対立関係が鍵だが、これも3体問題と関係があるように思えた。

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日経平均ドルベース

ここ数日、日経平均が史上最高値を更新していることが話題になっているが、グローバル視点からは、ドル建て日経平均が重要であり、それは既に20211月に、275ドル(105/$)と最高値を更新している。バブル時点では、891228日には当時の最高値となる274ドル(142/$)だった。日経平均は上昇だが、円安が進んだ分、ドル建て日経平均では下落している。その後。2023年に入り、230ドルあたりまで回復している。その意味では、海外投資から見れば、割安だと感じている。半導体等政策や輸出立国の回復等も期待があると思いたい。

日経平均は、あくまで大型株中心の指数であり。より実態を表わしているのは、日証の時価総額であり、こちらは新興勢力も入っている。バブル期の600兆円を超え、800兆円に迫っているが、世界は60兆$を超えている。GAFA1社で100兆円級、国内ではトヨタ等が10兆円クラブである。

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半導体市況、2023年は二桁減~WSTS

WSTS 202366日、2023年春季世界半導体市場予測を発表、CY2023は前年比、10.3%減の515095億ドル、202211月秋季予測の4.1%減から、下方修正、2019年以来4 年ぶりマイナス。ICでは、13%減。CY2024は、全体で11.8%増、IC13.9%増。過去のシリコンサイクルの比較では、ITバブル崩壊よりは、マシであり、リーマンショック程度、コロナショックよりは悪い。

なお、OMDIA2023522日に、7.5%減と予測、証券アナリストは概ね二桁減、自身も、半デジ会議でも以前から二桁減と主張しており、それほどサプライズは無いであろう。なお為替は、2022年は131.4 /$2023 年以降は132.4/$前提

 

興味深いのが、日本市場で2022年は+31.7%、金額で約6.3兆円から、2023年は自動車が下支え、+1.9%とプラス成長、約6.4兆円、2024 年は+7.8%、約6.95兆円、ほぼ7兆円である。この統計ベースでは、日本市場は、2021年に7%だったが、2022年に8%台、2023年から9%台に回復している。

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イスラエルセミナー(5月31日開催)に参加

5月末に、Chartered Group 2023 Deep-Tech Tokyo Eventが、東京ミッドタウン八重洲セントラルタワー 37階で開催され、午後の企業別のプレゼンやブースに訪問した。久しぶりに、イスラエルのイノベーションの熱気に触れた。

 

 注目したのは、超遠距離(イスラエルと日本)から操縦できるドローンのXTEND社、使い捨て型内視鏡のZsquare社、フォトニックコンピューターを開発しているCognifiber社、ベテランの暗黙知をAI化するInnerEye社などである。XTENDは、実際にデジタルツインで、リアルと比較して操縦デモは圧巻。また、ビジネスモデルも、ドローンそのものではなく、そのOSを売ることにあることも、感心した。XTENDは、ファイバーが使い捨てで、画像センサやライトは本体にあり、波長なども可変、様々な部位に対応できる。既に、実績もあるようだ。光コンピュータは、やはり、通常のコンピュータとの接続が鍵であろう。InnerEyeは、マクニカと提携、脳波計などで展開している。

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生成AIの弱点と共存

チャットGPTなどの生成AIの脅威や、インパクトに関する議論が多いが、その弱点も次第に明らかになってきた。当然ながら、過去の文書やデータから機械学習するわけだから、あまり、データが集まっていない、直近の話題や、個別性の高い話題は、精度が落ちる。例えば、マーケティングで、最近の売れ行きについて、聞いても、直近の数か月の動向や、あまりにマイナーな分野は、役に立たないだろう。他方、企業が欲しいのは、まさに、自社が関わる狭い範囲の直近の動きだろう。

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両利きの経営の経営で使えるリソースは

両利きの経営でのポイントは、下記の4点である。増補版もよんだが、同様である。

1.トップのコミットメントとリーダーシップ・・・しかし、いずれは、トップの任期もある。

2.組織構造運営を分ける・・・当たり前だが、より詳細は特別解であり、触れていない

3.共通のアイデンティティ・・・言うは易く行うは難しいだろう。

 

4.リソースの活用・・・ここが、大企業故に有利だとされており、ユニークな点だろうが、問題がある。すなわち、合うものと合わないもの、カニバリがあるもの汎用性があるものないものはある。特に、スケールする段階では問題になる。ここの考察が欠けているのではないか。

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新規事業は二体問題から三体問題

多くの会社が新規事業で悩む。新規事業を考えるフレームワークはアンゾフマトリックスである。これは、二行二列の行列である。

 問題となるのは、これが、新たな新規事業を行う場合になる。既存事業と「新」既存事業と「新たな」新規事業あるいは、既存事業と二つの新規事業3つになるとややこしいろう。オーガニックな新規事業だろうが、M&Aによる新規事業だろうが、ポートフォリオ問題製品や技術や顧客だけでなく、ビジネスモデルや文化も密接に関係した事業ドメインになる。

 

いずれにせよ、ポートフォリオ問題になるが、三体問題ゆえに難しい(組織構造、シナジー、etc

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チャットGPTと生産性のジレンマ

チャットGPTなど生成AIが注目を浴びているが、我々の生産性をあげてくれるのだろうか。これに関連して、日経新聞に、東大渡辺安虎教授の興味深い論考を寄稿している。

海外の最近の論文では、ソフトウエア企業のカスタマーサポート部門に対し、ChatGPT導入効果を検証。生産性が平均14%上昇。その効果の大半は低スキルの人の生産性上昇によるもので、高スキルの人には効果はなかったそうだ。また、専門的な記事を書くライターにChatGPTを提供、影響を推定するフィールド実験で、生産性の低い人ほど改善効果が大きかった。渡辺安虎氏の、タクシードライバーの生産性に関する論文でも、AIの生産性上昇効果は低スキルの人に集中。つまり、共通するのは、低スキルの人ほど生産性が大きく上昇する点だ。これはAIが、スキルそのものの価値を低下させかねないことを意味する。これまでのインターネットやITは、高スキルの人の生産性をより高めたが、AIが仕事にもたらす影響は、逆である。ChatGPTが「底上げ」する生産性 渡辺安虎・東京大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 そもそも、IT活用によって、生産性があがるかというと、日本のIT業界ではそうではない。人月制であり、生産性をあげると反って、時間が減り、給料が減るからだ。

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パワー半導体の業界構造設計を

 パワー半導体は、ロジックやメモリと、技術やトランジスタの構造も異なるが、業界構造や国際競争力も大きく異なる。デジタルでは水平分業であり、ファブレス/ファンドリモデルであり、デバイス階層での横連携統合が多かった。

しかし、パワー半導体は装置や材料も異なり、応用分野との関連が強く、縦連携も重要だ。

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世界が半導体で動いた

広島サミットもあるが、世界が、半導体や国家安全保障などで、大きく動いた5月であった。驚くべきことは、世界の半導体トップ企業、IMECIBM等も含めて、来日したことであり、かつてない動きである。日本も欧米も大きく変化している。

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コロナ初罹患

既に、日本人の多くが罹患している、コロナ(オミクロン)に感染した。519日、授業から帰宅したのが、22時過ぎ、マッサージを予約していたが、咳も酷く、キャンセル、風呂もシャワーだけで早くすませたが、23時頃に発熱37度台後半、検査スティックで、深夜1時に、よもやの陽性が判明。先週から、延岡から戻り、12日は日経モーニングプラス生出演のため、5時起きで6時半にスタジオ入り、授業の後も2224時で会食相談、13日もゼミ、公明党国会議員プレゼン、北海道新聞の取材など、声が枯れていた。数日前から、咳と痰はあったので、チェックはしていたが、陰性であった。

 

流石に、ショックだった。心臓の持病があり、高リスク対象ゆえに、日頃から人一倍に注意し、ウガイや、紫外線照射殺菌、手洗いを徹底、ただ、最近は、マスクを外すこともあり、油断していた。

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半導体デジタル戦略について公明党議連にプレゼン

 経産省から、半導体デジタル戦略について、公明党の国会議員の先生方に、プレゼン要請の依頼があり、半導体デジタル産業検討会議有識メンバーとしての責務、最後で最大の機会を生かすため、引き受けた。国会議員では、自民党の甘利明先生には何度もお世話になっており、他の与野党でも知り合いはいるが、公明党は初めてだ。国会議員11名と公明新聞の記者、経産省の方が参加、約1時間の会議で、私の他、日経の太田さんとで。20分ずつのプレゼン、5問程の質問も含め、20分の質疑意見交換があった。

 

 同じ与党であるが、自民党の場合は、国家安全保障的なウェイトが大きいが、公明党の場合は、より、地域活性化のような視点が重要だろうということで、デジタル列島進化論をベースに、昨年秋以降の地方対応、佐賀県、三重県、東京都、山口県、延岡市に対して行ったプレゼン内容も入れ込み、新たな工場の立地、街づくり、さらに、データセンタ等の話も織り込んだ。その中で、地方で強かに生きる地場産業や中小企業の話題を、中国や韓国との対比の中で行った。

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Rapidusは2030年代に売上1兆円か

 日経新聞報道によると、Rapidusのラピダスの小池社長は、インタビューに応じ、AIや自動化により、技術者半数の500人で対応、2025年にEUVを入れ、2nmプロセスで、2027年に量産開始、2030年代半ばには、売上1兆円を見込むようだ。経産省の半導体デジタル会議で公表された見通しでは2030年の国内全体は15兆円である。ラピダス、技師半数で先端半導体 30年代に売上高1兆円 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 売りの規模感は、違和感はなく、2030年に国内半導体売上15兆円や、同業他社との規模感からのトップダウン、想定される需要やウェハー単価と量産数量などのボトムアップからも、妥当だろう。

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両利きの経営とイノベーションのジレンマの関係

オライリーの「両利きの経営」が大変人気のようだ。売れっ子の早稲田の入山教授などが勧めており、コンサルタントも利用しているようだ。この「理論」によると、クリステンセン「イノベーションのジレンマ」では、分けないと難しかった新規事業(探索事業)と既存事業(深耕事業)が、同時にできるそうであり、旭硝子や富士フイルムが成功例として取り上げられている。

 

何か腑に落ちず、熟読する気もないが、広島修道大の中園宏幸准教授が、同志社大学学術リポジトリに「両利きの曖昧さ : イノベーターのジレンマを解くほど器用か」で論考しており参考になる。 もともと、原著の「Ambidextrous Organizations」の「ambidexterity」は、二刀流などの意だが、両利きが定着した。中園氏によると、両利きが想定しているイノベーションと、ジレンマの想定しているイノベーションが異なり上、問題設定が曖昧なままに、その適用範囲を広げたという。同志社大学学術リポジトリ (nii.ac.jp)

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兵法三十六計と半導体戦略~先端ロジックと異なるパワーと後工程、サムスンとインテル

経産省の半導体産業の戦略は、ステップ1であるIoT用半導体確保のためのTSMC熊本誘致とJASM設立、ステップ2は、最先端ロジック半導体の国内生産確保のためのRapidusLSTC設立、IMECIBM連携など、海外も驚くほどスピード感を持って実装が進んでいる。ステップ3は、IOWN等の光電融合を進め、ゲームチェンジである。新たに公表された半導体戦略2.0では、分野別に再編、先端ロジック、先端メモリ、スペシャリティ(アナログパワー)、先端パッケージ、製造装置、素材と、ロードマップが策定されている。分野別では、先端ロジックは、焼け野原からの立上げであり、日本の競争力は2週遅れだが、それ以外は、競争力を維持しており、センサやアナログパワー、製造装置、素材では、トップの例もあり、先端パッケージは世界でリードしている

中国の兵法で有名な三十六計は。戦略を自軍の優位性に応じて、分けている。

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TDKの決算説明会

去る428日に、TDKの決算説明会がオンラインで開催、プレゼンはCFOの山西氏と社長の斎藤氏である。多くの電子部品メーカーが減益の中で、2022年度も2023年度も増益維持は興味深い。質疑は、MLCC市況や電池の動向。

 2022年度は、売上2.18兆円、OP1688億円、セグメント別には、受動部品が増収増益、その内訳も、MLCC等のセラコン、アルミフィルムコン、インダクティブで、増収増益、高周波は減少減益、圧電等はクルマや産機が増収減益。センサ応用は、増収黒字化、温度圧力は増収減益、磁気は増収増益、MEMSはゲームやウェアラブル、クルマが好調。磁気応用は減収、赤字。エナジーデバイスは、増収増益、二次電池は好調、電源はEV向けでリストラ費用あり。

 

 2023年度は、売上2.02兆円と微減収、OP1900億円と増益続く。受動部品は、9~12%増、センサ応用は7~10%増、磁気応用は2~5%増、エナジー応用は、厳しく、中型二次電池のCATLとのJV移管もあり、22~19%減。なお、中型二次電池は、厦門に生産拠点、2030年に売上5000億円を目指すようだ。

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東芝の決算説明会~平田CFO退任

去る512日に、東芝の決算説明会がマスコミ投資家アナリスト合同でオンライン開催、プレゼンは平田CFOが中心に、次期CFOの松永氏が対応した。マスコミからは、非上場化に関して、CFOからは、答えようがない無意味な質問が多い。ただ、今回、平田CFOは退任であり、アナリスト、マスコミからも、労いのコメントが多かった。

 思えば、2015年に東芝テックからCFOに就任以来、その間、社長は、田中→室町→綱川→車谷→綱川(畠澤)→島田と6名は最多、主要事業の売却は、メディカル、メモリ、PCWH、家電、など、過去最大、不正会計問題や、GC注記もあり、記録的な御苦労であろう。同時に、IR活動では、開示も大きく進んだ。

 

 色々、残念なことはあるが、そうした中で、真摯に、株主や市場関係者と対峙されてこその、マスコミからすらの労いだっただろう。

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ローム決算~パワー半導体に関心

ロームの決算説明会が5109時からオンライン開催、松本社長、東専務、伊野CFOなど。質疑は、市況や業績もさることながら、パワー半導体に関することが多い。

 2022年度通期業種は売上52005078億円、OP900923億円、NP800803億円、EBITDA14851484億円と利益が上方修正。

半導体市況全体は厳しかったが、パワーは好調であり、車、産機は予想通りで堅調だった。セグメントでは、LSIが売上2337億円、OP481億円(20%)、ディスクリート売上2122億円、OP345億円(16%)、モジュール売上343億円、OP42億円(12%)、その他の売上276億円、OP50億円(18%)、であり、LSIがディスクリートをOP率で上回ったのは久しく見ない。

 2023年度は、売上5400億円、OP750億円、NP700億円、EBITDA1590億円と増収減益ながら、EBITDAは増益、CAPEX1600億円と前年の1261億円から増加で、Dep276億円など固定費増426億円がある。年間の月次売上トレンドは4月、5月は前年比低いが、6月以降前年並み、9月からは大きく伸びる模様。在庫は、トランジスタやダイオードは1ヶ月分減らすが、パワーやアナログは在庫増が必要、ただ、在庫回転月数は4Qがピークの4.8ヶ月から減少へ。

 足元の受注は、クルマは堅調、産機は2022年度下期調整から、FAや再生エネ等が既に改善へ、

 中計は、2025年度の売上6000億円以上、OP20%、ROE9%以上は不変。パワーとアナログで車載向けを大きく増やす。

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芝浦メカトロニクス決算(5月11日)~過去最高益100億円を達成、売上1000億円を狙う

去る511日に決算及び新中計の説明会に参加した。新中計の「芝浦ビジョン2033」ビジョン期間内で、売上1000億円、OP200億円が示された。今村社長によるプレゼン、質疑は、中計より、市況や製品詳細についてが多く、少し残念だった。PCトラブルでテレコン参加のため質問できなかった。

業績は上振れ、中計も達成

 2022年度業績は、受注768億円と半導体前工程中心に好調、売上610億円、OP109億円、NP92億円、と上振れ。利益ベースではOPNPともに過去最高(2004年度OP88億円、NP51億円)を大きく更新は素晴らしい。人件費アップ、R&D費アップの中で、OP18%GP40%ROE32%は、グローバルのSPE企業でも立派。中計目標の売上510億円、OP51億円、ROE13%を上回る。

 半導体は前工程がロジックファウンドリ、パワー、ウェハー向けが好調な上、顧客評価が完了した貸出評価機の売上計上もあった。後工程も全体は減少だが、先端パッケージ向けは堅調。FPDは、前工程は低調だが、後工程がTVやモニタ向けが堅調。真空系も好調。

2023年度は、通期は売上590億円、OP73億円、NP52億円と減収減益ではあるが、成長投資費用増30億円の中で、昨年の2022年度の期初予想や中計目標レベルを上回っており立派。質でも、OP12%強、ROE15%も十分。半導体は一時的な投資計画修正があり、FPD投資低迷が長期化。

 

グローバルニッチトップ実績、IMEC参加、他社連携増える

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日本のディスプレイ産業の8年~シャープとJDIの行末

シャープは、511日、JDI(ジャパンディスプレイ)は、512日に、それぞれ、2022年度の決算を発表した。

シャープは、2015年度以降6年ぶりOP以下赤字、OP257億円(ディスプレイ部門のみ664億円の赤字)NP2608億円赤字(SDP減損1884億円)だ。堺工場がベースのSDPはテリーゴーの投資会社となったが、20226月にディスプレイ市況が最悪で工場が低稼働率のタイミングで、シャープが買い戻すことになったことが問題視されている。

JDIは上場後、OPこそ、2014年度と2015年度は若干の黒字だったが、NPは、万年赤字、2016年度以降はOPも赤字である。トップも数年毎に代り、2020年から、いちごトラストの傘下となり、現在のキャロン氏がトップとなった。当初は1兆円を目指していたが、売上は1/4水準であり、リストラ、減損続く。関連会社だったJOLEDも破綻した。eLeap等の新市場は期待したいが、これからだ。

2014-2015年頃は、経営不振のシャープを巡って、鴻海とINCJが経営権を争い、INCJは、シャープのディスプレイ部門をJDIに統合させ、そこに、産業再編資金を投入しようと画策しているようだったが、鴻海が経営権を勝ち取った。鴻海は、噂されていた工場や人員のリストラはせず、生産や調達のスケールメリットを生かし、2016年度には黒字化、OP1000億円規模が可能になった。テリーゴーは、シャープのIGZO等の液晶技術、さらにはOLED技術の可能性に期待し、アップルへのサプライチェーン入りを目論んでいたが、台湾のAUO等に比べ、液晶技術は高いものではなく、液晶からOLEDへの移行が想定より早かった。これは、JDIも、同様であり、液晶技術の優位性を発揮することなく、OLED化も遅れた。

そもそも、半導体と異なり、ディスプレイは価格弾力性効果が小さく、スマホでも、PCでも、何枚も使うわけではなく、面積拡大も限りがあり、キャプティブでなければ、難しい。

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イノテック決算オンライン説明会(5月12日)

決算および戦略見通し説明会が512日にオンラインで開催され参加した。大塚社長以下、トップが登場、説明は棚橋専務、質疑はEDA戦略に関して、小生のみ。決算集中日もあり。

業績は好調だが慎重か

 業績22年度は、売上386億円、GP32%OP23億円、NP17億円、増収減益。下期からの半導体市況悪化あり、テスターがNAND向け厳しく、STArもプローブカード減速で赤字転落、R&D負担も。他方、EDAITアクセス、ガイオ等が好調。はあるが、NPは過去最高。FCFも強い。テスターはじめ半導体関連が強い。EDAでは、米中摩擦の影響は無いようだ。

 

 23年度計画は、売上430億円、GP31%OP30億円、NP20億円、テスターはメモリ回復に加え、新分野、STArも改善。EDA安定、モーデック黒字化。

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地方の分散データセンタの条件

 拙著「デジタル列島進化論」では、東京や大阪に並ぶ地方の大型拠点だけでなく、地方のエッジ型分散データセンタが50程度(都道府県に1-2カ所)の必要性を訴えている。地震などのリスクヘッジだけでなく、遅延問題があるスマート工場/農業、遠隔医療や自動運転のアプリケーション、過疎化対策、再生可能エネルギーの有効利用などが理由だ。これにより、情報とエネルギーと人材の地産地消を目指すべきだ。

そこで問題になるのが、採算性であり、ビジネスモデルである。

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国際外交の現場

 Finland大使館の招待があり、身の程知らずにも、パーティーに行った。まさに紳士淑女の中で、自分は大変場違いだった。

 

私のような立場の人間は少なく、半導体の話も聞いた事はあるがという程度であり、知己の関係者の他は、話題が難しかった。

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2070年の日本の人口とGDPを主要国と比較

国立社会保障人口問題研究所が426日、2070年までの日本の将来推計人口を公表、30%減となることが話題を呼んでいる。2070年に3割減の8700万人 将来推計人口、まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 5歳刻みで、年齢分布の予測の公表もあるので、平均年齢を計算する(平均値をとる、0~4歳なら2)と、2070年は53.5歳、2020年が47.1歳だから6歳もシニアになる。なお、2035年に50歳を超える。

 

 47歳から53歳になると、労働生産性は25%程度下落するようだ(下図 製造業は半減)

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経営理論とは

MOTは、技術経営であるが、経営理論とは何だろうか。経営学と経営理論、フレームワーク、実際の経営との関係はどうなのだろうか。

早稲田MBA入山氏によれば、「両者は時に『似たようなもの』として扱われることもあるが、実際は根本的に異なる」のだそうだ。氏は「大きな違いは、『why(なぜそうなるの』という、人間や組織の思考・行動の原理を根本から問うような視座の有無であり、「フレームワークは事象や物事を整理・分類はするが、その背景にあるwhyに答えてくれることは決してない」という。

 

これらのように、経済学、社会学、心理学の重要性は、認識しており、同意はする。しかしながら、違和感は、第一に、Whyに答えるのが理論か、第二に、経営理論は経済学、社会学、心理学だけか?

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三菱電機の決算説明会

三菱電機の決算説明会が428日にオンラインで開催、漆間CEOのプレゼン後、各ビジネスエリア(BA)トップが説明。BAは、インフラ(社会システム、電力・産業システム、防衛・宇宙システムの各事業本部)、インダストリー・モビリティ(FAシステム、自動車機器の各事業本部)、ライフ(ビルシステム、リビング・デジタルメディア)、ビジネスプラットフォーム(インフォメーションシステム)、そして半導体・デバイスである。かつてとセグメント区分は変更されたが、事業本部ベースでは、従来同様である。開示は2021年度以降に改善され、事業本部別の損益が資料に開示されるようになっている(かつては口頭ベースでラフな%開示で誤差が生じていた。不祥事の副産物か。

 事業本部別の損益は、かつてと大きく異なっている。稼ぎ頭であった自動車機器は赤字転落が続き、10%前後のOP率だったビルは5%前後となった。逆に、インフォメーションシステムが安定好採算だ。

業績は、2022年度は、売上5兆円、OP2623億円、NP2139億円、と増収増益。値上げ等も浸透、サプライチェーン混乱も一巡。

 

2023年度も売上5.2兆円、OP3300億円、NP2600億円と増収増益と品質不正問題にケリ、6年ぶりの最高益更新。為替125/$135/€。

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村田製作所の決算説明会

 村田製作所の決算説明会が42815時半開催。中島社長より業績説明のあと、質疑、対応は他に、南出氏、MLCCの大森氏など。既に2月に通期の業績を下方修正、その線での着地だったが、2023年度も減収減益が続き、スマホ等が不振。

2022年度業績は期初から22日の下方修正を経て着地は、売上1.821.681.69兆円、OP380029502979億円、NP297022602537億円。為替は135/$

 

2023年度は、売上1.64兆円、OP2200億円、NP1640億円、ただ、R&D1300億円、Capex2200億円、は増加、Dep1700億円も増、為替は127/$と慎重。1円でOP50億円ゆえ、135円なら、OP2600億円と減益幅は減る。MLCCBBレシオは回復傾向だが1割れ、稼働率も80%程度と厳しい。

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ソニーの決算説明会~吉田氏から十時氏へ~OIBDAをKPIに

ソニーの決算説明会が428日で開催された。今回は、これまでプレゼンを行ってきた吉田CEOでなく、4月に代表取締役となった十時COO/CFOがプレゼン。エレクトロニクス業界が不況入りの中で、プラットフォーマモデルが奏功、音楽映画が下支え、増収増益だった。今期も慎重ながら、売上10兆円、OP1兆円台を堅持。新たなKPIであるOIBDAに注目。EBITDAからOP外収支を除いたものであり、セグメント目標には適切だろう。

 業績は2022年度、売上11.5兆円、OP1.2兆円、EBITDA1.7兆円、OIBDA1.7兆円であった。為替は135/$141/€。

 

 2023年度は、売上11.5兆円、OP1.17兆円は微減、EBITDA1.77兆円、OIBDA1.75兆円、為替は130/$138/€。

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三権分立~大学マネジメント 事件の教訓

 今日、三権分立は、民主主義国家の常識であろう。そして、それは、国民のためだと思っていたが、もしかしたら、為政者側の知恵かもしれないと考えるようになった。クーデターや革命は、権力や富が集中する場合に起き、為政者だけでなく、多くの層が殺され、財産を奪われるが、政治や経済は混乱し、最終的には、国民もマイナス影響を受ける場合が多い。それゆえ、クーデターは国家反逆罪として重い。

日本は、天皇はかつて奈良時代頃までは象徴だけでなく、権力(もちろん武力)も財力も持っていたが、それゆえ、戦乱が絶えず、命を奪われることも多かった。それが、本郷和人が指摘しているように、宗教司祭的や文化面での知見で象徴として君臨することで、長く皇家を継続できた。明治維新以降は多少、権力もあったが、どちらかというと、拒否権が中心であり、戦後は再び象徴としての役割に戻った。

日本のマネジメント構造は、飛鳥奈良時代や、源平合戦、南北朝の騒乱、戦国時代等を経て、歴史的な教訓から、権力、財力、そして、象徴(君臨)あるいは知名度という有名力という三つのパワーのバランスあるいは分散が基本だろう。天皇あるいは学者等の有名力、官僚の権力、産業界の財力、三つのバランスが取れていて、国民も納得する。政策立案も、有名学者が有識者であり、産業界の有力者、官僚というパターンである。しかも、夫々の役割は固定している。

 

米では、比較的、大統領に全てが集中しているが、大統領自身がスター的であり、スターが大統領になることもある。更に、実業家が大統領にもなる。夫々が流動している。

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1970年代との相似形~労働紛争と東西対立

 拙著「デジタル列島進化論」を出した昨年から、今日の情勢は、1972年の田中角栄の日本列島改造論、二つのニクソンショック、東西対立、輸出立国、インフレ等、50年前に似ていることを指摘してきた。

 そこで一つ、加えるべきは、労働争議や学生運動である。大学も企業も、コロナ禍でのリアルなコミュニケーション不足、少子高齢化の中でジョブ型も含めた働き方改革、そして、利上げ不況、チャットGPTなどAIによる影響など、労働者や就職を巡っては、混沌としてきている。大学も、高校生現象の中で、統合もある。

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ニデック説明会4月25日開催

ニデックの決算説明会が425日に久しぶりにリアルでも(オンラインもあり)開催された。残念ながら、リアル参加申し込みした段階では、既に満員で締め切られた後だった。

 

 会場の熱気はオンラインでも感じられたが、中央に永守CEO、左右に小部COOCFO、両脇には、早舩氏とIR永安氏という雛壇。質疑からは、かつての永守節だったが、最初のプレゼンでは、ネクタイも変わり、メモを見ながら、これまでより話が長かった印象。質疑は、新体制、車載、特にモジュールやインバータやパワー半導体に関するもの、新事業部門の機械本部についてのものが多かった。

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三井ハイテックの決算説明会(3月14日開催)

去る314日に、三井ハイテックがリアルで20231月期の決算説明会を開催、はじめて参加した。三井ハイテックは、半導体では、後工程パッケージに使うリードフレームで業界3位。数年で、急成長、20191月期は、売上820億円、OP5億円から、直近は売上1746億円、OP226億円だ。

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要求品質が業界構造を決める

モノであれ、コトであれ、商品であれ、サービスであれ、もし、ユーザーの要求を正確に定義できれば、それが全てといえるだろうか。それは、あくまで最低のスペックであり、狩野モデルの「当たり前品質」に相当する。しかし、シェアや売行きに影響を及ぼすのは、「一元的品質」「魅力的品質」「無関心品質」「逆品質」等である。その品質はISO等のテストで確認され、ある意味、テストが品質を決める。

 

 これは、まさに入試や単位認定と同じだ。大学は卒業生に学士の資格を与えるが、それは、単位数や卒論等の成績で決まる。そのプロセスは、どうであれ、テストで一定の点数をとり、合格すればいい。しかし、その過程で、深く学ぶ場合も、一夜漬けで山があたった場合でも、変らない。本来、そのプロセスも含めてみることで、学生の実力や潜在能力がわかるが、あくまで、結果である。

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組織と文書と動かないプログラム

かつて、今ならAIだろうが、ソフトウェアの研究で、構想は素晴らしく見えたが、そのプログラムは動かず、卒論が遅れた友人がいた。理系では、ソフトもプログラムも、機械等を動かしてナンボの世界である。企業なら、技術が動き、実装してこそ価値がある。

 大学は、膨大な規定や規約等の文章があり、それで組織を「規定」しているが、それが本当に規定しているかどうかは不明である。最初にできたのが、昭和の大昔であったりするが、抜本的な改正には、多くの教授の賛同が必要であり、継ぎ接ぎ的なその場しのぎが多い。中には戦前のような難解な漢字があり、定義や意味が不明なものも多い。

 

 そもそも、そうした文書で、組織を決めても、その通り、動くかどうかは難しい。日本語故に、曖昧な表現も多く、矛盾もあるかもしれない。さらに、組織の品質も定めておらず、文書により規定された組織が、きちんと動いたかどうかの評価もできない。難解な文書を作って、それで自己満足し、組織も創った気になっているだけである。特に、実際の組織では、多様な環境変化があり、そのシミュレーションすらできない。

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