2017年2月27日 東芝メモリの価値と提案

 

将来、どこが株主になるか未定な点もあるが、臨時株主総会を経て、41日に、東芝メモリ株式会社(社長成毛氏)が誕生する。そこで、同社の価値を再考すると共に、ビジネスモデルについても提案したい。

 

価値は市場構造変化を織り込む現状では2.5兆円もありうる

 

従来、市場価値を、市況次第で、12兆円程度、セルサイドアナリストの意見では1.5兆円、東芝は売却条件として、2兆円を下限としているようだ。この価値は、市況次第と相手にもよる。

 

https://www.circle-cross.com/2016/09/15/2016915-東芝の価値試算とポートフォリオ/

 

また、仮に、WD/サンディスク以外の会社をメインとし、JVを解消とする場合は、その持ち分(50%60%以上がある、本来50%だが、サムスンによるサンディスク買収を懸念して、持ち分を増やした)の買い取りもあり、余計に数千億円いるだろう。

 

本来は、入札前に、WD/サンディスクを選ぶか否かによらず、JVを全部50%に揃えておくべきだ

 

さて、価値だが、一つの根拠が、WD201510月にサンディスクを買った1.4兆円であるが、当時のNANDスポット価格は16GbMLC1.5ドル強、32GbMLC2ドル前後と底値だった。現在は、同順に2ドル、2.5ドル、多くは50%以上の値上がりもある。モジュールメーカーの在庫はなく、サムスンは他社スマホの供給を控えているという。スマホの裏期であり、スマホが決して好調もない中で、この状況は異常であり、データマネジメント需要による構造変化という見方も出てきている。

 

https://www.circle-cross.com/2017/02/20/2017219-デバイス需要-何が起こっているのか/

 

その中で、同業のマイクロンやSKハイニックスの業績も改善、株価も上昇しており、ほぼ、NANDスポット価格の上昇幅に近い50-60%アップである。それゆえ、仮に、今、サンディスクを買うなら、当時の5割増の2.1兆円だろう。これまでの需給によるレンジの中での価値ではなく、構造変化の中での価値を考慮すべきだろう。

 

また、これまで総合電機の中での、経営判断が遅い、資金が少ない、等の長年のデメリットやディスカウントから解き放たれることで業績改善が期待されるなら、マイクロンの2.5兆円(201510月は1.7兆円)SKハイニックスの3.5兆円(201510月は2.1兆円)と比べ、2.5兆円もありうるだろう。

 

新しいビジネスモデルを

 

 せっかく、新会社になり、グローバルに発展する中で、考慮してほしいのは、新しいビジネスモデルだ。

 

NANDにしろ、DRAMにしろ、ボラの高いメモリ事業について、以前から、モノ作りの発想だけでなく、金融工学的発想も重要であり、リスクヘッジをすべきだと主張してきた。90年代後半、DRAM競争力低下には、為替や銅などでは、リスクヘッジをするのに、半導体では、裸で市況のボラに晒されることもあると考えて居た。そこで、当時、諮問委員をしていた半導体産業研究所の諮問委員会で、DRAM先物市場創設を訴えたのである。しかし、業界の関連企業には同意する例もあり、JPモルガンでも、社内で同意者があり、準備をしていたが、肝心の総合電機メーカーには理解されなかった。その後、ヘッジファンドで再度、試みたが、顧客である年金基金などに理解されなかった。

 

https://www.circle-cross.com/2015/11/16/20151114-前職でやり残した3つのこと/

 当時は、あくまで、リスクヘッジとしてであったが、今は、ボラを積極的に活用、そこでもリターンを得るべきだと考える。