30日 6月 2017
去る5月11日9時半〜昼過ぎにかけ、TDKの説明会が開催され参加した。広い会場だったが、同社への期待や変貌への関心からか超満員。参加者も、石黒社長、植村副社長、逢坂常務、齋藤常務、Zichlarz常務、永田執行役、山西執行役、Ong執行役、エナジーデバイスの指田氏、技術知財の松岡氏、磁気センサのBopp氏、AmperexのLam氏と、幹部の大半が出席。プレゼンは、まず、山西氏による決算業績説明、その後、石黒社長が全社戦略、受動部品戦略が植村氏とZichlarz氏、センサ戦略が齋藤氏、Bopp氏、HDDヘッド戦略がOng氏、エナジーデバイス戦略が指田氏とLam氏、その後が質疑。同社では、これほど、大人数かつ長時間の説明会は、初めてであり、実態は、いわゆるIRデーだ。また。他社も含め、私の知る限り、こうした説明会に外国人が多数プレゼンするのも例がない。 こうした大勢の参加は、個々の性格やプレゼン能力も相対比較でき、幹部同士の雰囲気もわかり、会社を理解する上で、大変参考になる。当然ではあろうが、最もメッセージが伝わったのは社長であった。 決算は入繰り多く実態ベースに注意 2016年度は売上1.17兆円、OP2087億円、NP1451億円だが、QコムへのRF系の事業譲渡益1444億円や減損212億円を除くと、実質はOP855億円。ただ、ここから、RF部門の切り出しが、SAWフィルタなどがあり、これを除くと、売上1.05兆円、OP600億円となる。 2017年度は売上1.11兆円、OP800億円、NP550億円であるから、やや減収減益になるが、実態は、売上1.05兆円、OP600億円からになるため、増収増益。為替は108円/$、118円/€と横這い見込み。CAPEX1600億円、DEP880億円、R&D860億円。前期は同順に、1676億円、875億円、913億円。 なお、セグメント変更あり、これまでの受動部品、磁気応用、フィルム応用、その他、から、受動部品、センサ応用(受動部品より温度圧力センサ、磁気応用より磁気センサ、その他からMEMSマイクロフォン)、磁気応用製品、フィルム応用となった。 石黒社長は、現中計では2017年度のOPM10%以上、ROE10%以上の計画に対し、現在のガイダンスが、それぞれ7.2%、6.8%である理由として、受動部品や二次電池の収益水準、買収企業の収益貢献タイミング、磁石事業の再構築遅れ、また、一部、M&Aが実現しなかったことをあげた。その上で、今後は、Qコムとの提携関係を利用しながら、事業を大きく再構築することを主張した。 こうした施策により、2020年度には売上1.5兆円、OP2000億円規模を目指すようだ。まさに、下図のように、Qコムと連携しながら、ICT、クルマ、産機などに、センサやアクチュエーター、パワーを提供していく戦略である。センサ売上は現状900億円強だが、2020年度に2000億円程度、OPM二桁を目指す模様。買収したインベンセンスはファブレスゆえに製造面でシナジーがあり、応用も、技術も、磁気以外の分野が多く補完関係にある。 もはや、TDKは、村田以上に、これまでのような、電子部品メーカーではなく、センサ・モジュール・デバイスメーカーだ。村田が垂直統合でクローズド戦略に対し、TDKはオープンイノベーション志向であり、また、スマホからよりクルマやIOTへシフト。
30日 6月 2017
恒例の、また、毎年楽しみにしている日立の研究開発インフォメーションミーティングが、昨年と同じ6月28日14:00~18:30、横浜研究所(昨年は中央研究所)で開催された。横浜研究所には、オープンラボがあり、ユーザーと共創できる施設があるようだ。プレゼンは、CTOの鈴木氏、インサイトラボのDayal氏、テクノロジーイノベーション統括本部長の青木氏、知財の戸田氏。知財の話題は一昨年以来。日立のR&D体制は3層構造であり、顧客と協創のCSIから北米のインサイトラボでITより、CTIのトップが材料より、と上手く選択されている。プレゼンが14時〜15時、質疑15時〜15時40分で、質問もした。その後、展示会、懇親会だが、大変残念ながら、理科大の講義の関係で、展示会をざっと見て、失礼した。 R&D体制は協創、グローバル・オープンイノベーションを強化 日立のR&Dは、2015年に、いわば、本体を先導する形で、3層構造に大改革となったが、2年を経て、だいぶ浸透してきたようだ。また、先日のIRデーとも連動し、R&Dのミッションは、社会イノベーションを興す注力4分野に関連する主力製品・サービス、Lumadaへのユースケースの貢献であると明確でわかりやすい。過去の日立の歴史の中でも、これまでになく、全社事業戦略とR&Dが同期している印象。 AI・IOTの研究は売上よりもコスト削減 AIやIOTに関しては、こうした研究が、事業効率をあげ、有用であることは理解するが、それゆえに、売上拡大よりも、コスト削減になる。これでは、事業や経済が逆スパイラルで縮小するだけになり、人間から仕事を奪うだけだが、まだ、その有効な方策はなく、未来投資で考えて居るようだ。 R&D費とイノベーションに対するリスクの取り方の哲学 全社のR&D費は2016年度3238億円から2017年度3500億円で売上比4%、このうち20%の700億円がコーポレートのR&Dであり(これが2700人、一人当たり2500万円)注力4分野の比率が2016年度63%から2017年度76%へ、デジタルソリューション比率が同順に24%から68%へフォーカスされている。 インサイトラボの役割 Dayal氏のプレゼンは、日立が強い注力4事業のOTとAIの掛け算から、如何に、Lumadaのユースケースを増やすかについて、実例を踏まえ、AIや予測、最適化、画像認識などのアナリテクス技術が共通に使え、発展することが理解できた。 材料技術が牽引するモノづくりコトづくり革新 青木氏の今回のプレゼンは、これまでに無かったもので面白かった。材料技術やモノ作りは、伝統的に日立が強い領域だが、これまでは、バリューチェーンの中で、設計から生産くらいに材料技術の成果を結びつけていなかったのが、企画から保守や廃棄までのフローで考えるというものだ。 知財活動が重要 戸田氏の知財がゲームチェンジを促進、知財でエコシステムを構築という主張は全く同感だ。これまでと異なり、知財戦略も、3層のフロント・CSI、プラットフォーム・CTI、プロダクト・CERでは、全く異なり、それぞれ組織を分け、同順に、社会イノベーション知財部、知財プラットフォーム部、知財マネージメント本部となっているのは、他社に例を見ないユニークなものである。 展示はこれまでと一新 オープンラボでの展示は初めてであり、昨年までの、特設ではなく、常設であることもあり、非常に工夫されている。1Fから6Fまであり、展示は1F、2Fだが、かなり広く、実際の工作機械などがあり、ユーザーが実際に実験できるようだ。
29日 6月 2017
6月29日の株主総会は、波乱も予想されたが、議案は可決、サプライズなし。出席者によると、マスコミ報道とやや異なり、ガラガラの会場で淡々と進んだらしい。他方、会社側から正式発表があった、「日米韓連合」は、28日に締結を目指したものの遅れている。WDとの諍いは複雑化、連立多元微分方程式は特別解も探すのが難しい。また27日の日経新聞「複眼」コーナーで「日の丸半導体生き残る道は」について、元エルピーダ坂本氏等と共に掲載。http://www.nikkei.com/article/DGXKZO18111880W7A620C1TCR000/ 株主総会と綱川氏の評価 株主総会の、厳しい批判や株主の意見はもっともだと思うが、その上で、綱川社長については、一定の評価をすべきだろう。過去の氏の責任外のWHに係る特損がなければ、過去最高益だったこと、WHを切り離したこと、メモリ社のカーブアウト決定は、英断だ。もちろん他方で、PWCやWDとの件は問題であり、マイナス点だろう。また、氏は、もともと、不正会計とは無縁であり、文化風土も異なる「亜流」のヘルスケア出身であることを理解すべきだろう。 BSジャパンでの要点はSKハイニクスと日米韓連合の正体、なぜメモリ社売却を急ぐのか 今回のTV出演でのポイントは、日米韓連合の鍵となるSKハイニクスと、韓国の産業政策も含めた議論と、なぜ、メモリ社売却を急ぐかについて、①債務超過解消だけでなく、②重電文化で金欠の東芝では、果敢に巨額投資ができない、③メモリ社の価値がNAND市況に連動、その市況は先行き不透明感があるためだと解説した。また、上場廃止になった場合の、外資ファンドによる「マグロ解体ショー」のリスクについて、議論した。 SKハイニクスはアジア危機の後の産業再編誕生 今後、韓国産業政策は原子力か ハイニクスの4000億円のローンはDESでエクイティ転換か 資金繰りは厳しさを増す
25日 6月 2017
去る5月17日にアナ協主催の説明会(決算は5月12日発表)に参加、質問もした。出席者は古橋社長以下、本保氏など幹部、柏井氏の決算報告の後、古橋氏による臨場感溢れる詳細説明。...
25日 6月 2017
去る5月10日の決算説明会(発表は4月28日)に参加、質問もした。出席は、吉沢社長以下、成川専務、岸常務など、決算は田中氏、その後、経営戦略など吉沢社長。アップル新製品の影響もあり、足元の業績動向に関する質疑が多い。 業績は、2016年度が売上1609億円、OP30億円、NP11億円、2017年度は売上1600億円、OP60億円、NP30億円、為替は105円/$前提。...
24日 6月 2017
6月23日17-18時、マスコミ・機関投資家アナリスト合同の、有報提出延期、二部降格、業績修正、メモリ社売却などに関する説明会が開催された。リークその他、マスコミ報道が錯綜する中で、HPだけでなく、きちんと、フェースtoフェースの会話を重視し、説明会を開く姿勢は評価したい。...
21日 6月 2017
日経報道によると、21日の取締役で、「東芝メモリ」の売却に関し、INCJ、米ベインキャピタル、ハイニックスの連合と優先的に交渉する方向で協議、検討に入ったようだ。買収金額は2兆円を超え、ハイニックスも融資の形で資金を出すようだ。2兆円という条件に加え、NAND市況変調の可能性の中で、独禁法を早期にクリアし、売却へのスピード感からは理解できる選択肢である。また、ハイニックスは、これまで提携関係もあり、元トップの小林清志氏の評価も高そうだ。ただ、リーク元が、以前、東芝の一部、経産省その他であり、WDも強硬姿勢を変えず、未だ不明な点も多い。 4陣営の整理 現状、候補として名が挙がっている4陣営について整理すると下記である。2兆円以上が条件とされる今回の出資・融資金額だけでなく、毎年3000億円以上の継続投資に加え、文化面など、東芝の独自性、スピード感、独禁法、安全保障、メモリ階層から考察している。これまでと変わったのは、鴻海の継続投資と安全保障面であり、SBファンドやテリー氏個人資産を考慮、また、シャープを通じた投融資であれば、外為規制は難しいだろう。ブロードコムは目的が不明な上、ファブレスであり、文化面、また継続投資が疑問だ。経産省や業界でも、これらを懸念する声が大きい。 時間との闘い こうして考えると、WD問題を抜きにすれば妥当に見える。しかし、当初から中国はともかく、台湾も排除しており、独禁法では中国が難しく、こことWDが連携すれば、時間を武器にしてくるだろう。 しかし、NAND市況はリスクが高まり、一旦、債務超過回避を最優先すべきだろう。株価は、現在よりも先行きを反映するため、各陣営が、2兆円以上を提示しなくなる化膿性もあり、また、米国株式市場動向次第では、ファンド勢の資金が懸念される。それゆえ、キャッシュで1兆円くらいは、早期に支払うことを新たに条件に入れるべきだろう。 NAND市況がこのまま下落するとすれば、時間が経過すればするほど、WDはもちろん、候補先は安値を要求し、優位となる。ただ、債務超過が決定し、上場廃止になれば、現経営陣は責任をとって、総退陣だろうから、メモリ社売却という基本戦略も見直しになる可能性が高く、そうなれば、各社にとってマイナスである。また、東芝本体を時価1.4兆円で、メモリ社も含め割安で買えることから、既に、ファンド勢が株主になっている可能性(実際、エフィッシモ、キャピタルリサーチ、ブラックロックは夫々10%近く保有)もあり、彼らが、メモリ社の件について口を出す可能性もある。つまり、WDはじめ、各陣営は、ギリギリ上場廃止にならない程度に、焦らしてくるだろう。もちろん、独禁法審査時間も重要だ。 入札にすべきではなかった そもそも、今回は、東芝メディカルシステムズの売却時と異なり、入札云々も含め、会社側から明確な条件が公表されず、マスコミ報道主導の中で、入札や2兆円が既定の事実のようになってしまった。東芝メディカル社は、既に子会社であり、複雑な出資関係も無く、独禁法や安全保障でも大きいハードルは無かったが、今回は、米中半導体摩擦に中で、これらに加え、WDとのJVや長年の関係もあった。それゆえ、入札でなく、個別に整理しつつ、東芝が主導して、交渉すべきだった。 そこが、WDとのボタンの掛け違いの元にもなっている。他陣営と異なり、WDはあまりに失うものが大きい。15年以上の提携関係や、投資した技術資産も失う恐れすらあり、NAND戦略の再見直となる。そもそも、サンディスクの買収が失敗だったということになる。 最大のリスクは、自分も失うものが大きいから、東芝の債務超過もやむなしと、焦らせて、あるいは、台湾、中国などと連携して、独禁法の手段に訴え、時間切れアウトを狙ってくることだ。そして、東芝本体に出資しているファンド勢と連携すれば、現在の経営陣を引かせ、東芝「巨大マグロ解体ショー」の中で、メモリ全体を手中にするかもしれない。 東芝上場廃止、民事再生リスク 上場廃止、民事再生は、確かに、いろいろな問題がクリアになり、借金もなくなることから、それを良し、とする識者も多いが、ファンド勢による「マグロの解体ショー」の中で、金融機関やコンサル、M&A業者は事業機会が多いが、最も不利益となるのは、一般株主と従業員だろう。
19日 6月 2017
去る6月8日9時より、恒例8回目の日立IRデーが開催。午後の前半まで参加、質問もした、最後の原子力以下は、HPで視聴。...
19日 6月 2017
有機EL討論会第24回例会が、6月15日〜16日にかけ、NHK放送技術研究所にて開催され、参加し、パネル討論でも議論した。過去最高の325名の参加者。...
12日 6月 2017
6月15日の経営会議での東芝の決断が注目される。毎日のように、どこが有利だとか、どこと、どこが組むなどの報道があるが、しょせん、利害関係者のリークだろう。...