2015年4月26日 シリコン発振器が水晶発振器を駆逐する?

MEMS市場は、センサーで拡大しており、特に、ウェラブルや、IoTなど酷な環境では、2019年には4億個を超えるというHISのレポートもある。また、実際に2014年秋のMEMS関連の学会では、MEMSの技術者募集が話題になった程である。

水晶とSi MEMSを比較すると、発振器では、これまでは、「MEMS発振器は、PLLで任意の周波数を容易に得られるが、回路構成が複雑で消費電流が大きくなりMEMS共振子の温度補正を行うPLL回路から発生する周波数ジャンプも影響でノイズやジッター特性が劣化する」(エプソンのレポート)、要するに、①周波数温度特性、②位相ジッタ、③消費電流、④周波数起動特性、⑤周波数安定度に問題があった。それゆえ、せいぜい、ローエンドであり、ハイエンドは無理だろうというのがコンセンサスだった。しかし、この多くは半導体の回路で修正できるものであり、消費電流も微細化などで減るし、水晶も、それ単体では使われず、実際には周辺回路が必要である。

Si 発振が評価されているのは、①小さくなること、②耐衝撃性、のようだ。これについては、SiTIMEによると、①ノイズ耐性(電源で7倍、EMI50)、②耐振動(40)、③信頼性、などが水晶より優れるとしている。

市場では、SiTIMEがシェア80%以上、あとはディセラ、の模様。SiTIMEは、日本の独立系ファブレス半導体メーカーのメガチップスが半年ほど前に約2億ドル(200億円強)で買収したことから、注目されたファブレス企業である。

現時点では、まだ量産規模も小さく、投入は8インチで数k程度、歩留まりも十分には高くないが、習熟効果でコストが下がりトラックレコードができてくれば、市場が拡大しよう。そうすれば、現在の水晶発振器を駆逐する素地さえあろう。強いとされる電子部品の水晶業界だが、ローエンドでは中国勢も強く、市場は飽和し、かつての雄の東洋通信機は、エプソンに統合、キンセキは京セラに統合されるなど、合従連衡が激しく、工業会の参加企業は減りつつある。かつて真空管が半導体に、ブラウン管が液晶に代替されてきたのと同様の運命さえあるかもしれない。