2015年4月28日 本格決算シーズン到来 メルコ、オムロン、日立ハイテク、東京エレクトロンに出席

先週から日本電産など電機精密業界の決算が始まったが、今週は連休前のピークを迎える。

 メルコホールディングスの説明会に10時半から参加したが、満員であり、質疑も活発であった。この会社も、上場前から30年の付き合いであり、80年代後半、PC時代の本格到来を前に、当時の牧社長(現会長)と、売上1000億円になるかどうか(既に突破した)、議論したことが懐かしい。同社はPCを使いやすくすることを使命に、PC市場拡大と共に発展、DRAM搭載のメモリーボードで業績を上げてきた。特に牧会長はDRAM市況を読みの名人であった。それゆえ、この説明会には、メルコに関心があるだけでなく、DRAM市況やNANDフラッシュの市況について知見を得たいというアナリストや投資家も多く参加してきた。現在は、国内PC市場は成熟する中で、1000年企業を目指して森の経営を強化、かつてのメモリーボードからNASやネットワーク等に、BtoCからBtoBへ、収益源を移しつつあり、M&Aにも積極的である。同社の本質は、かつて使いずらいPCを使いやすくしたことに象徴されるように、新技術が広まる時にいろいろな問題が出てくるが、それを技術力や工夫で使いやすくすることにあり、IoTや、4k8kTVなどの普及過程でビジネスチャンスが広がるだろう。

 午後は、1550分がキヤノン、16時がアドバンテスト、とオムロン、1715分が日立ハイテクと迷うところだが、キヤノンは1Q決算でもあり、アドバンテストは関心があったが場所が遠いため、オムロンに参加、その後、日立ハイテク、18時半の東京エレクトロンに行くことにした。ここで、よもやというかやっぱりというか東京エレクトロンとAMATの統合が破談、オムロンは質疑は見送り、日立ハイテクに急ぎ、東京エレクトロンは質問のため、最前列に座席を確保すべく早めに行くことにした。

 オムロンも、いつも通り満員である。今回は、社長によるプレゼンのみであったが、通常は、二部構成で、業績の話と、各事業部のトップが事業を語るというものであり、参考になる。なお、これは先日の東陽テクニカ、たまにアンリツ、半期毎に横河電機も行っている。オムロンは、この5年で企業価値を大きく伸ばした、アンリツ、横河電機と共に「計測制御の優良トリオ」の一角であり、3社ともに、業績もさることながら、株主価値向上に取り組んでいるところが素晴らしい。

中でも、オムロンは、FAや、車載系だけではなく、血圧計に代表されるヘルスケアや、駅務などの社会システム、また、その他部門でも、スマホ向けバックライトなど、そのポートフォリオが適度に分散されている。経営重心視点でも、FA、車載、ヘルスケアは、中サイクル中ボリュームで日本が強い領域であり、景気先行のFAと遅行のヘルスケアがあり、安定感もある。

8090年代はファジーコンピュータなどやや研究開発で心配であったが、その蓄積も、現業に形をかえて役に立っていることだろう。M&Aにもそこそこ積極的であり、ヘルスケアで、ネブライザーの企業を買収したのもうまい。

課題でもありチャンスでもあるのが、その他にある環境事業とバックライトである。強化すべきコアか否かが迷うところだが、バックライトは、電子部品部門にあるコネクタなどと統合して管理した方が解りやすいように思う。また、環境は、社会システムに近いが、中期の位置ずけでは、やや不安である。また、日立とのATMJVも解消して日立に集約し、その資金で他の事業を強化した方がいいように思う。

  今回、感心し関心もあったのが、まず、ROIC2.0という指標であり、現場から生まれたもののようだ。分子は顧客価値のV、分母は、必要な資源のNと不要な資源のLの和であり、これを現場レベルから転換していって、通常のROICにもっていくというものである。

 次が、CTOの創設でヘルスケアのトップが就任、CTOの創設は普通だが、CFOCTOも含めて、事業のトップ経験者に限る、としたところが素晴らしく非常に同意できるところである。

 この2点と、あと、インダストリー4.0への対応と事業機会について聞きたかったが、それを聞いていると日立ハイテクに遅れ、東京エレクトロンで最前列に座れないので、後ろ髪を引かれる思いで、退室させていただいた。

 

 

 

 

 日立ハイテクは、かつては、日製産業であり、当時は、決算発表が一番早く、かつ、説明会は昼で、必ず美味しい弁当が出ていた。日立の決算に先んじて、景況感を見ておこうという人間と、弁当が目的で来る輩も多かった。その伝統は守らており、美味しいカツサンドが出る。これを食べて元気をつけてレポートを書けということだろう。

 投資家、アナリストにとっての位置ずけは、半導体製造装置銘柄と、島津など、科学医用関連であり、これに絡んだ質問が多い。今回は、IFRS移行でもあり、これに絡んだ質問と、あとはいつもながら、半導体設備投資動向に絡んだ話、ここ数年赤字でリストラ対象のファインテック部門の動向である。

 私は、半導体設備投資動向の確認の他、日立グループでの研究開発再編の影響、先端材料の売上が大きく伸びる背景を聞いた。前者は、喜ばしい方向だということだが、やや想定外質問だったようで、この場でこれ以上聞くのはやめておいた。後者は、日立グループのスマトラ計画の中で、同社に調達機能を担わせようという構造的背景のようだ。

 その意味では、同社は、商社部門とモノづくり部門を併せ持つユニーク性があるが、説明でも強調されたように、これまでは十分、そのシナジー、その利点が発揮されてこなかったので、グループで、この特徴を生かしていこうということだろう。先日の東陽テクニカでも言及したように、ハイテク商社の機能は、単なる右から左への販売ではなく、ファンド的、VC的役割、カスタマイズ・ソリューション的役割、そしてメンテの役割がある。日立グループの中で、物流、キャピタルとのシナジーも生かして、装置や科学医用とバランスが取れれば、素晴らしいのではないか。

 

東京エレクトロンAMATとの破談があり満員。業績は好調なのだが、1年以上かけて努力してきただけに、東社長以下、役員、説明者も疲労困憊のよう。後部席には弁護士らしいスタッフもおり、終わったことを詰めても仕方がないので、まず、私が最前列で先頭を切って、この統合騒動を通して、学んだこと、これから役立てたいこと、また改めてAMATの優れた点、意外と東京エレクトロンの優れた点をあげて欲しいという未来志向の質問をした。

AMATについては、グローバルトップ企業としての経営力、利益に対する一貫した姿勢、株主への考え方、多様な人材などを褒めていた。

他方、同社が優れた点は、顧客からの信頼、顧客第一主義、社員の和、などをあげた。また、いったん統合を覚悟した社員の意識も変わったのは大きな収穫だろう。

統合が流れた背景は、米司法省が、オバマ政権下での反アンチ大企業という風潮がまだ続くのか、そこまで独禁法をふりかざすか、というのを読みきれてなかったことにつきようが、世に出ていない開発まで対象となるというのは、我々も違和感があり、アル意味、読めなかったとしても仕方が無い面もある。むしろ、これ以上、統合に向け継続しても金と時間を浪費するだけなので、やや遅かったがよい決断だっただろう。いちおう違約金もなく全員一致だったようだ。

おそらく、統合されていれば、AMAT主導でリストラもあり、同社の工場は集約されいた可能性もあり、その意味では、地元や社員にはプラスであろう。われわれにとっても、カバー銘柄が減らずにすみ、ポートフォリオの上で、また情報収集の上で、ガードが固い米企業でなくなり、安心した面もあろう。

今後を見極めるのは難しいが、既に、水面下で、次の相手さがしは始まっている可能性がある。独禁法にふれない組み合わせという意味では、AMATは日本で、東京エレクトロンは海外で、製品ポートフォリオが狭いがある分野ではシェアが高く、中堅クラスの会社がターゲットになるかもしれない。その意味では、会社側もいつもより、各製品のシェアの説明、アナリストも一部に、シェアを聞くものがあったのが不気味ではあった。

東京エレクトロンが日本株に戻る影響、また、国内装置メーカーがAMATの連携の対象となるという意味では、当面、株式市場も、半導体関連業界も、忙しいことだろう。