2015年4月29日 連休前の決算ピーク~日立国際、アンリツ、京セラ、三菱電機、パナソニック、NEC

428日は、連休前の決算ピークである。TELAMAT破談で、注目される10時開始の日立国際の説明会に参加、11時に終了後、10時半から開始のアンリツにタクシーを飛ばして遅れて参加した。午後は、13時から京セラ、16時から三菱電機に参加した。その後、コネクタを主力とする日本航空電子とリコー、パナソニックかで迷ったが、18時のNECに遅刻なく参加を考えると、場所が近いパナソニックに参加、途中退出して、NECに向かった。なお、多くの企業は説明会はHPで視聴でき、質疑も文書で公開、パナソニックは質疑も視聴でき、大変助かる。決算業績の数字や説明はセルサイドアナリストから上ブレ下ブレ等を中心に出るので、ここでは、それ以外の中長期的視点の話を書きたい。

 日立国際電気

説明会は、必ず翌日の午前、説明は簡潔で質疑が多いことが特徴であり、数字確認+景況や経営の議論、というパターンである。いつも業績予想は慎重、それが確認されて午後に株価が反発することが多い。

同社は、2000年に、国際電気、日立電子、八木アンテナの3つの一部上場企業が合併して誕生した。国際電気は、ケータイの基地局と端末、ポケベルという移動通信と、半導体製造装置の拡散炉という二つのコアを保有するユニークな会社であり、基地局ではアナログ時代は日本無線とシェア二分、ポケベルではトップシェアであり、拡散炉では縦型の開発にいち早く成功、株式市場でも外人や玄人好みの優良企業として名をはせた。日立電子は、放送局カメラで実績のある芝電気と旧日立電子(昭和電子)が合併した企業であり、放送や監視カメラの他、列車無線、フライトシミュレータなど、国内向けニッチ市場で高度な製品群を有していた。八木アンテナは、八木アンテナを発明した八木秀次東北帝大教授が創業した会社である。国際電気、日立電子共に30年近い御付き合いだが、日立電子については企業レポートを書いた数少ないアナリストだと思う。

 決算は、終盤に韓国メモリーでの発注が入ったこともあり上ブレたが、それ以上に2010年に策定された2015中計の売上1800億円、営業利益180億円(OPM10%)1年前倒しで達成できた(売上1904億円、営業利益211億円(OPM11.5%)ことが特筆されるべきだろう。装置は売上受注利益とも過去最高、映像無線NWも受注1000億円を突破、海外への布石も打った。なお今期からIFRS移行だが影響はなし。また、次の2018年に向けての中計は策定中で年内に公表の模様。

達成の背景には、固定費削減やスマトラ効果もあるが今後にもつながる、シリコンサイクルの影響を受けにくいビジネスモデルの変革や、それとも関係するサービスや海外新市場開拓の兆しや、その効果があることにより注目すべきだろう。

その意味では、技術志向が強いがそれぞれに課題もあった一部上場3社が合併し15年弱、会社の基盤も整備されてきたといえよう。合併前からの課題は、半導体製造装置はシリコンサイクルの影響が大きく、無線通信や放送関係も受注変動の影響が受けやすく、長い時間軸ではいいのだが、1年という会計期間ではどうしても業績変動が大きくなってしまうことである。

脱線すると、1年ルールの根拠は何であろうか?サンプリング理論的に考えると、企業の固有周期の半分の周期であれば十分にチェックできることになり、それは6年であれば3年である、1年がナイキスト周波数なら会社の固有周期は2年であり、韓国台湾向きの会計ルールといえる、こうした矛盾と税対策であるのが減価償却費だともいえる。 

経営重心の視点では、固有桁数は、合併前から、八木アンテナをのぞけば、二桁から五桁くらいに分布して、日本が強い領域でまとまっているが、固有周期が3年サイクルの半導体装置と5から10年の無線や放送とやや広く、位相があまり合いすぎないように制御するのが大変だった(合いすぎると業績変動が大きくなる、うまくずれていると安定する)

製造装置においては、「プロダクト・ライフサイクル・ビジネス」であり、部品、中古、改造、トレーニングが相当する。2014年には装置の25%に迫り、さらに2015年度は30%に迫る模様。これが上限ではなく34年後に300億円を超える可能性もあろう。従来型のハード事業よりも収益性は高いようだ。

これで、シリコンサイクルが大底でも、これまでにように赤字転落ということは少なくとも避けられ、収益が安定しよう。これまでは、部門利益率は赤字からOPM20%弱を推移したが、数%の黒字からOPM25%あたりで安定的に推移することになろう。

さらに、同社にとってだけでなく、顧客にとっても、メリットは大きい。さらにビッグデータを活用しリアルタイムで顧客の拡散炉の稼動状況がわかればサービス向上にも役立ち、震災や火事などの対応も早まるし、景況感の把握にもいいだろう。それが更に進むと、コピーやプリンタのビジネスモデルの一歩手前、さらに進むと、データセンターのように、装置を装置メーカーが保有し、そこから貸し出すということになる。しかし、データセンターならぬ装置センターというのは、ハード故にそれは荒唐無稽だし、コピープリンタにしても、半導体の場合はより技術革新の進歩が大きく先行投資も必要であるため、コピーメーカーの場合のようにハードで赤字で消耗品で儲けるというのは間違いであり、ハードでも、これまで同様、ある一定の収益確保は当然だろう。

もう一つはこれまで国内中心官公需依存度が高かった映像無線NWのグローバル化である。米国コマーク社をM&A、ブラジル、トルコの社会インフラ投資の取り込み、新興国、南米アフリカも含め地上放送デジタル化で日本方式普及、通信放送周波数再編、監視セキュリティの高度化を取り込む。2015年にはグローバル比率が15%を超える見込みである。他方、国内も消防防災はピークアウトだが、インフラ老朽化対策、セキュリティ、業務用無線デジタル化、4k8kTV対応の放送インフラ、4Gから5GIoTなど含め公共系無線インフラ増強もある。国内中心の場合は、どうしても受注の波が多い上、3月に集中し上期赤字を1-3月で挽回というパターンであるが、グローバル化により四半期損益も安定化し、新興国への展開で、各国で導入のサイクルが異なる上、日本のシステムの「N倍化」(経営重心理論では桁数上昇)による収益力向上も期待できよう。

次期中計までの2018年はもちろん、2020年まではシリコンサイクルで多少の波乱はあり、消防無線のピークアウトはあっても、これらの方策や2020年を見据えた4k8kTVやセキュリティ、等の社会インフラ投資で堅調に推移しよう。

売上20002500億円、営業利益200250億円あたりが目線であろうが、M&Aやグループ内での多少の再編の影響で変わろう。より「変わる日立国際」の中身に、数字の質に注目したい。その後は、そうした種まきの成果とビッグデータ関連が注目される。

ビッグデータビジネスでは、まず、リアルデータの争奪戦が激しく、交通渋滞、通信のトラフィック、ウェアラブルによる人体、各種のエネルギー、ドローンによる空間データ把握など各社如何にしてデータを取り込むかの仕組み作りを510年に向けて進めている。日立グループにおいても、装置や無線関係、監視カメラ、さらに防災等では同社はリアルデータを取りやすい位置にあり、それをどう生かすかであろう。

 

アンリツ

ここの説明会も決算発表の翌日昼前にあり、この5年で参加者が急増、アナリストカバレッジも増え、再び投資家からの関心も高く満員の状況にある。創業120年を迎えるハイテクではあるが老舗である。かつては広尾に本社があり、株式市場でも、「光のアンリツ」として、玄人好みの花形企業であった。

マルコーニが無線電信に成功した1895年創業の石杉社を祖とする。日本海海戦において、信濃丸が「敵艦見ゆ」の信号を発信した発信機は、祖である安中電機製。その後、石杉社を祖とする共立電機と安中電機が合併、安立電気となる。戦前は、無線と通信の技術をベースに、TV放送機、公衆電話機、時期録音機、同軸ケーブル、ラジオ受信機などエレクトロニクス全般に幅広い。戦後は、公衆電話、船舶無線機、光測定器、精密計測機などを中心に成長した。

電電ファミリーの一角として、計測、公衆電話でトップシェアを誇り、公衆電話などNTT設備投資の追い風もあり、1987年度に単独で売上850億円弱で営業利益100億円を突破、単独でも90年に売上1000億円を超え、安定して営業利益90億円台を維持していた。連結では90年度に営業利益110億円となった。売上構成はNTT向け公衆電話など有線機器が3035%、計測機が35%、無線通信が10%弱、産業機械が15%前後、情報機器が10%前後であり、NTT依存度20%弱、輸出20%程度と分散されていた。

1990年台半ばに公衆電話の一巡もあり業績は一時停滞、92年度から94年度は営業利益は50億円以下となったが、2000年のITバブルに向けて、ケータイ基地局投資や、ブロードバンド投資に関わる計測器需要が本格化、加えて公衆電話のICカード化需要もあり、業績は拡大、2000年度には売上1590億円、営業利益238億円と、約10年強ぶりに最高益を達成した。しかし、ITバブル崩壊の影響が直撃、2001年度は期初予想250億円から76億円に下方修正、2002年度は赤字となった。

2003年度からは大きくリストラを進め、公衆電話や無線を縮小、脱NTTで、テスター中心にポートフォリオを大きく変えた。2002年度~2003年度は売上は800億円を割り込み、これは2000年度や2001年度の期初計画から半減と凄まじく、もはやNTT等のサポートもない中で輸出と民需が中心でありながら、赤字とはいえよく持ちこたえたといえる。

この厳しい体験は、同社の戦略や中計の策定でも大きな影響を与えているだろう。2003年度から2007年度までは、順調に回復傾向にあり、営業利益50億円規模まで戻ったが、再びリーマンショックで2008年度は大幅下方修正となったが、それまでのリストラで筋肉体質になったこともあり、2009年度、2010年度は上方修正、2011年度は久しぶりに営業利益は150億円弱まで回復した。2012年度は157億円を達成、当期利益は140億円と過去最高だったが、営業利益は2000年度に及ばなかった。現在では、光・計測技術を中心に、オリジナル&ハイレベルな技術を活用し、モバイル&インターネット関連市場を始め、産業機器、セキュリティ関連市場および環境関連市場に、電子・情報通信・計測ソリューションを提供している。

また、由緒あるハイテク企業であるが、M&Aにも積極的であり、1990年には、米ウィルトロン社を買収、2005年にはデンマークのネットテスト社を買収し、外国人の経営陣も擁するなど、グローバル性もあり、投資家との対話やガバナンスにも積極的である。また、IFRS導入も早かった。

 説明会では、業績説明と、中期計画GLP2014レビュー、新中計のGLP2017が示された。2015年度は売上1030億円、営業利益110億円から2017年度は売上1200億円、営業利益170億円、ROE15%以上を目指す。主力の計測では市場の平均成長率35%を上回る7%以上を成長ドライバーである①IoT、②LTE5G、③新基地局のスモールセルのネットワーク向けテスターなどにより達成、営業利益率で20%以上を目指す。ここ数年は先行投資で部門の販管費率が適正の30%から35%と増えていたが30%に絞る。また、産業機械でも、7%増収、営業利益率12%を目指す

質疑では、ここのところは、2012年度以降、業績が停滞しているため、足元の業績動向に関心が多いが、今回も同様であった。また、中計の数字の確認や、コストが絞り込めるか、などの指摘があった。ここ数年は、収益源であった、国内ケータイメーカーの縮小が大きく、足を引っ張り、海外顧客を強化しており、営業や開発のリソースの内外の再配分は一巡してきただろう。目先の利益を犠牲に先行投資してきた海外向けの対応が結実するかどうかを見極めたい。また、おそらく、会社も密かに抱いている不安は、これまで、10年強毎に、90年前後のNTTバブル、2000年のITバブル(光通信)2010年からの無線スマホと、サイクルがあり、ここ数年の無線やスマホの成長が急だけに、その反動があるかどうかであろう。

今回は、IoTなど無線やネットの世界が広がっているので、杞憂かもしれないが、スマホに限れば中国での飽和感もあり、会社側も、開発用テスターには自信があるが、建設保守系もまあまあ、しかし製造用テスターは過剰感があることを認めている。

経営重心理論の視点では、同社のテスターは開発用であれ製造用であれスマホ向けが多いとすると、固有周期は短く固有桁数は多いゾーンに位置する。確かに、同社は単純なハード売りではなく、計測機の進化にそってソフトを提供するソリューションビジネスが本質である。しかしアジアのスマホメーカー向けが増えると危険ゾーンに入り、やや中サイクルで中桁数の開発用やキャリア用、基地局用、産業機械では補えず、注意が必要であり、車載やIoTM2Mの流れの中で顧客層を広げられるかが鍵だろう。

もう一つは、チップテスターなどは、半導体ロジックテスターとセットのテスターとの境界が不明瞭になりつつある点である。半導体テスターは歩留まりチェックの導通と電圧や電流などだが、セットでは、プロトコルや周波数など多様である。現在は、半導体チップをテストして、それをボード上に搭載して再びセットで機能や性能している。スマホでは信頼性が高い部品を個々に搭載前に品質チェックをせずにボードに乗せてから歩留まりを検査する場合が多い。そうなれば、セット側のテスターがロジックテスターをカバーすることもあり得る。アジレントは、アドバンテストに買収されたベリジーを切り離す前は、両方のテスタがあり、かつては日本の安藤電気(半導体テスター部門は横河電気に買収後、リストラ)もそうだった。また、再び、半導体テスター、セットのテスターが業界に再編が起きるかもしれないが、その中での位置づけも興味深いところである。

京セラ

この説明会は午後1時から、四半期決算はテレコンだが、上期と本決算は社長も出席で説明会がある。シニアのアナリストが引退し、世代交代があった総合電機や大手家電と異なり、電子部品は、世代交代はそれほどではなくレベルも落ちてはいないが、業界が短期で変動しやすく株価も月次受注などで動くため、どうしても関心が短期にはなる。日本が強いとされる電子部品業界であるが、京セラはDNAは部品だろうが、アメーバ経営故に、事業内容からいえば、部品だけではなく、M&Aにより獲得した通信機やOA機器もあり、ソーラーなどは部品というカテゴリーではないだろう。部品アナリストではないが、直接担当したこともあり、ここも20年以上の付き合いになり、90年代にDDIを設立、キャリアに参入したことが興味深い。

今期は大幅増益だが、昨年は、ソーラーや通信機が不振であり、デバイスで液晶等のリストラがあったことを考慮すれば、計画としては当然ともいえ、逆に、昨年同様に、通信機とソーラーの損益改善が鍵であり、それがわかるのは後半になる。

説明会では、中期に、情報通信、自動車、環境エネルギー、医療ヘルスケアの重点4分野に、M&Aも含め注力、今期計画の売上1.6兆円、税前利益1840億円から、目標として時期は明示しなかったが(後の質疑回答では2016年度、遅くても2017年度とされた)、売上2兆円、税前利益2000億円が示された。車載とEMS(エネルギーマネジメント)では社長直轄組織を作るなど、意欲が感じられた。また、株主還元についても、自社株買いには慎重だが配当で報いる姿勢など、やや変化が見られた。ROEについても、それありきで分母を減らすようなことは否定したが、意識はしつつあるようだ。

質疑では、私が最初に二つ質問した。その後、業績や株主還元などの質問があった。

資料には少しでたが、経営基盤の強化の具体策について、聞くとアメーバ経営の強化や海外生産拠点とのことであった。短信のセグメント別の事業投下資産内訳で本社部門と関連子会社等がここ数年毎年3000億円増加しているので、何か強化しているのかと思ったが、子会社の株価の評価が高まったことが大半を占めるようだ。

二つ目の質問は、先日も紹介したMEMS発振器も含めたMEMS事業である。スマホだけでなく車載でも重要であり、また水晶部門にはリスクにもなる。これについては、社内ではMEMSはあまりやっていないとの回答だったが、後のM&Aの対象についての質問で、MEMSなど保有しない分野には関心あるとのことだった。

一人二問なので聞けず他のアナリストが聞いてくれて助かったのは、デバイス部門の絞り込みである。AVXは強いが、水晶や液晶など、あとはそれほど収益性が出ていないかシェアが低い。オプトレックスから買収した液晶は、ようやくタッチパネル関係のリストラを終え、社内にあるSTNも絞り込み、今後は産業用や車載で伸ばす方針のようだ。また、説明会後にシャープの救済に関して聞いたが、液晶だけあるいはOA機器だけなどの部門のみの出資などについても、否定的であった。日本が強い電子部品だが、京セラは、セラミック部品やセラミック応用、半導体パッケージ等は強いが、いわゆる電子部品は強くなく、水晶などはリスクがあろう。液晶もまだこれかれであり、今後の注目点であろう。

投資家還元やキャッシュ使途に絡んで、KDDI株については売却も買い増しもしないことが明言された。このあたりの株価評価でROEEが大きくなっているゆえ、ROEは低く見えるがゆえに悩ましいところではある。

私もいわゆる数字ありきのROE経営には批判的で、それは会社側も同感だろうが、現場発信のアメーバ経営と、トップダウンのROE経営を結びつける工夫がほしいところではあり、オムロンのROIC2.0などは参考になろう。

三菱電機 

最近は午後1時過ぎに発表されることが多い。説明会は引け後で昔ながらのCFOによる決算短信のみの説明会であるが実があり、他方、社長による説明会や研究開発あるいは事業説明会の頻度も多い。ほぼ満員であり、最近は、総合電機では最初なので、足元の受注動向や景況感に関する質問が多い。

 業績は主力の産メカがFA、車載共に好調で、全体利益の半分を占め、営業利益率も10%以上を維持している。特にFA15%を超える。クルマも8%を維持。重電では発送電や交通公共からなる社会インフラはやや端境期で4%だが、ビルは8%。ただビルは持分法に中国ビル関連があり、実態は10%に迫ろう。パワー等を持つデバイスも10%超え、エアコンなど白物も6%であり、全体的にバランスも取れている。

 経営重心視点からは、総合電機の中で、一番である。日本が強いストライクゾーン、周期では5年から10年、ボリュームでは3桁から7桁位に全てのポートフォリオが入っている。また、景気先行のFAと遅行の重電など位相のバランスもとれている。また、研究開発の変貌もある程度、先行している印象もある。

リスクとしては、スマホ向けFAやエレベータなど、パワーも含め最終は、中国関連が多いこと、逆にチャンスは、本来の通信やネットワークなどの技術力を十分に直接、業績に顕在化していないことだろうか。

 

パナソニック

 マスコミ向けに続いてアナリスト向けの説明会、いつもながら、CFOによる説明だが、社長も同席し、質疑には答える形式。説明会資料は、よく考えられており非常に簡潔明瞭。また、セグメント開示も更にクリアになってきた。津賀社長の回答も明快である。

ただ、以前に報告したように、既に326日に、中計を発表しており、その場で、今期の方向性も示されている。大きなリストラは終わり、赤字事業はほぼ目途がつき、利益率を改善すべき6事業部の、エアコン、ライティング、ハウジング、インフォテイメント、二次電池、パナホーム)の売上と損益も示された。これら事業部の改善、他の部門の成長に向け進捗を見守りたい。なおIFRS適用は2016年度から。

セグメントは、やや変更され、モータの入れ替えがあった。アプライアンス(AP:白物、TV、ほぼ旧本体のセット)、エコソリューションズ(ES:照明、住宅など旧電工に近い)AVCネットワークス(デジカメと、旧通工)、オートモーティブ&インダストリシステムズ(AIS:旧通工と、本体のデバイス、FA系など)、である。

NEC 

決算説明会はいつも最終だが、他とぶつからないように配慮されている。そのせいもあって、満員。質疑は、他とは異なり、名前を呼ばれるが、それが、会社側との対話を促進、討論をするという雰囲気になり、また、遠藤社長の実直な性格もあり、単なる数字だけでなく、活発に経営について議論する場となっていることは喜ばしい。

決算は、2015年度の計画が、先行投資に150億円追加するため、中計の1500億円を下回る1350億円となったので、これに関する質問や、特に当期利益に影響が大きいと期待されている、IFRS導入や、欠損金の税活用についてが、多い他は、中期での各ビジネスの成長性や競合環境に関するものが多い。

2013年度は準備でR&Dの再編や財務地盤強化、2014年度は実績で、①クラウド、②SDN、③ビッグデータ、④セイフティという、社会ソリューションの成長分野に布石を打ち、2015年度は成長へ、という。この4分野は2014年度10%だったが、2015年度は15%へ拡大する。

NECは再生し、元気が出てきた、説明会でのトップやスタッフの様子、M&Aや日々のニュースを見ても、違和感がない。よくなったのは事実であり、役員も団結、社内の雰囲気もいいだろう。経営重心の視点でも中から長サイクル、ボリュームは中から小のところに分布し安定感がある。他方、工場ではモノづくりなどで実績が出ている。

NECは、90年代、中期の営業利益の目標は3000億円であり、半導体で10001500億円、通信で1000億円、まだPCが中心だったコンピュータで1000億円、あとは消去調整が-500億円という目算であったと考える。しかし、半導体はDRAM中心でボラが高く、PCも日本中心であり、アップルtoアップルで比較すると、今は半導体もPCもないので、1500億円程度になる。その意味では、ITバブル崩壊後、リストラ続きであり、ようやく本来の姿に戻ったともいえる。足元は2020年まで国内の社会インフラ投資やマイナンバーの恩恵はあるが、逆にいえば、更に現在のポートフォリオでかつての3000億円はおろか、2000億円もそう簡単ではなく、海外での拡大というかつてと同じアジェンダに戻る。

そういう問題意識のもとに、トップを切って質問したが、中期の次の目標数字は明らかにされなかったが、非常に重要な鍵は、「1to1から1to多」である、これは他社でいえば、N倍化であり、SIやインフラ事業で重要である。

経営重心で言えば、一桁のものを2桁、3桁にあげ、セットやデバイスとは意味がやや異なるが、量産効果を享受するということである。国内の社会インフラ向けだけでは、開発費がかかるが、これを新興国向けに展開すれば、二つ目以降は、開発効率もあがりロスコンも減る。また、更新などの受注タイミングもずれせ、これにより、収益向上と安定化が期待できる。

二つ目は、同社のセグメントでは、パブリックが700800億円、エンタプライズが100億円前後、テレコムキャリアが600億円強、システムが300億円、他が数十億円に対し、相殺消去が-500~-600億円とやや大きいが、経費節減などで減らないかという問いであったが、すぐは難しいようだった。

三つめは、非常に大変な質問だが重要なので聞いたが、社長の任期である。他社では、せっかくいい雰囲気でこれからという時に退任するケースもあり、短いのは論外だが、長いのもついつい責任感が強すぎたり、花道を飾ろうとして却って晩節を汚す場合もあり難しく、予め、米国大統領にように決めた方がいいのではないか、という問題意識がある。そして、最低でも、会社の固有周期くらいは、在任すべきではないかと考えている。社長の答えは、「Quite Good Question」として、かつての中計5年は長く、今は3年が中計だが、それでは短く、中計を二回分の6年が妥当で、その上であと3年なら3年というものであり、極めて納得がいく回答であった。かつて、重電系の日立や東芝は8年~10年とされたが、三菱電機はFAが増え、やや短期化しているように思う。NECはかつては6年でよかったが、8年は長いが7年くらいという感じはする。

少なくともしばらくは雰囲気のいい中で遠藤社長体制が続くことはポジティブであり、かつそういう問題意識をもたれていたことも評価されよう。

これ以外にも、多くの質問が出て、濃密な説明会であった。