2015年4月30日 IoTやM2Mの周波数帯とプロトコル?

昨年あたりから、どの企業の説明会に行っても、中長期の計画で必ず出るのが、IoTや、M2M、である。アナリストのレポートや本も出ている。ヒトだけでなく、全てのモノにセンサーやアンテナがついて、ネットワークにつながる、それは分かる。しかし、問題は、無線を使う以上、どこの周波数帯を使い、どういうプロトコルなのかが鍵である。既に、都心では経験されている方も多いが、電波は足りないし、電話やメールであれば、多少の遅延も許されるが、M2Mとなると、まさにリアルタイムでないと、制御不能になり、音声やメールのプロトコル、あるいはネットワークの設計思想、プロトコルも同じでいいのか、という問題がある。しかも新しい周波数帯を使うとなると、実用化までに開発実験に5年、商用化に5年で計10年はかかる。クルマに関しては幾つかのプロトコルや標準化が進んでいるが、それとの連携もある。そうなると、2020年の中計には間に合わず、2025年頃の話となる。そもそも、今ですら、足りない周波数が、M2Mとなって、500億個のモノに繋がるとして、アドレスはIPV6で大丈夫だとしても、周波数はリアルタイムで足りるのか、基地局はスモールセル化するだろうが、場所の確保や、隣接するエリアの干渉、等なども課題だ。巷にIoTM2Mに関する本もレポートも多いが、夢と可能性を述べるだけで、こうした疑問や矛盾に答えてくれるものがなかった。

それで、説明会等の度に聞いているが、NEC、富士通、日本電産の研究所、アンリツ、電気興業や村田製作所など部品メーカー等である。

この中で最も的確な回答をして頂いたのは、NECと富士通研究所である。NECの回答は、「5Gになるのではないか、これから標準化作業だが、ガラパゴスにならないようにしたい」、富士通研は「まず5Gだろうが、その後は、ソフト周波数になるのではないか(周波数帯域を固定せずに、使いまわす)」というものであった。部品メーカーの回答はWiFiではないか、というものが多かった。今回、アンリツの説明会なのでもだいぶクリアになってきて、IoT5Gだということが濃厚になってきた。

これらに加え、最新号の日経エレクトロニクス中道理記者による3月の「Mobile World Congress2015」の報告記事や、http://5g-ppp.eu/ によると、明らかになってきたことは以下であろう。

欧州委員会とメーカーから構成される「5G PPP」が発表した「VISION for 5G」という声明である。http://5g-ppp.eu/our-vision/ 

すでに、2014年にECでは5G PPPを設立、ここでは、IoTを想定して、システム要件を決め、10Tbps/㎡のデータ容量、最大通信速度100Gbps、移動性500km/hr、デバイスの数100万個/k㎡、エネルギー効率現在の10%、信頼性99.999%、エンドツーエンド遅延5msである。ロードマップでは、201511月でジュネーブで開催されるITUによる4年毎の国際会議「WRC15」では、LTEAdvanced6GHz以下の周波数割当が議論され、5Gは、その次の2019年「WRC19」で決まる。しかし、その時には勝負はついており、まさに今から2017年当りで標準化や議論、評価、実験などが盛んとなる。色々なアイデアが出ており、クラウドの活用は当然だが、これ以外に、更なる小セル化は必須だろうし、複数の周波数帯の使用(LTEを継続互換性をもつ、無線LANも同時に使える)や、無線方式とネットワークの分離など、これまでと変わる提案も多い。

いずれにせよ、アンテナが増えること、基地局が増えること、中継ではメモリやプロセッサが増えるだろうし、クラウド使用なら、いろいろこれまでとアーキテクチャが端末側、インフラ側でも大きく変わりそうだ。

もしかしたら、最近の欧州の通信機メーカーの合従連衡や、ドイツのインダストリ4.0も、これと連動しているだろうし、複数のかなり離れた帯域の周波数を同時に使うなら、PLLで周波数をつくれるMEMS発振器が関係するかもしれない。日本がガラパゴスになっていないことを願うばかりである。