2015年5月7日 決算メモ  ブラザーの決算説明会

ブラザーについては、NRIや証券会社のアナリスト時代には担当ではなく、せいぜい、同僚について数度、訪問したくらいであり、あとは精密ということで、学生時代にリクルートで訪問か見学をした程度である。ただ、台湾企業の取材で、キャッチャー(以下C社)などで関連があり、注目はしつつあった。前職のフィノウェイブインベストメンツ時代にカバレッジを広げ注目し、決算説明会やスモール参加、IR訪問を受けるようになった。それゆえ、担当歴は実質10年であり、累計のこれらInput回数も20回以下、十分な知見がないことは告白しておく。

 説明会は、本決算と上期は社長、CFOが参加、あとはテレコンでCFOが対応、その間に、証券会社主催のスモールがあるという形である。

 同社の発展は、ミシンから始まっているが、ミシンと通して得られたコアの精密加工技術(表明焼入れ、鋳造、切削、プレス)やモーターなどのメカ技術をベースに多角化し、電子技術や印字技術が融合してメカトロ技術によって、一つはタイプライターからプリンタ、複合機へ、もう一つは工作機械へと広がっている。面白い分野としては、通信カラオケなどもある。かつての本業であるミシン、タイプライターが斜陽となる中で、技術をベースに、比較的短期間に多角化を遂げたという意味では、その企業文化や技術の底にある基盤力にも関心があるが、まだ、分析しきっていない。BtoBのようで、一般向けにも使いやすい製品であるのは、ミシンで培われたマンマシンインターフェイスの経験でもあろう。そういう意味では、どこに発展していくのか、楽しみでもある。将来、また、どこかのコア事業が飽和しても、また新たなコアを生み出す力があり、通信カラオケや文具などは、そういう見方で考察した方がいいかもしれない。

 そういう同社をカバーしているアナリストは、一つはプリンタをエプソンなどと同様に見ている精密アナリストであり、もう一つは、ファナックなどを見ている機械アナリストであり、両方の視点から見ている例はまだ少ない。また、投資家や、景気ウォッチャあるいは、電機アナリストも、半導体やスマホのサプライチェーンを見る上で、スマホの先行指標として見ている例も多いだろう。

 連休明け、夕方で他に重なる発表もなかったこともあったが、連休明けの景気動向チェックという意味、また注目されたドミノ社のM&Aという話題もあり満員だった。

 小池社長の説明のポイントは、業績については、創業107年で売上7000億円こえ、最高益、P&H部門も500億円超え、M&S1000億円こえだったこと、今期計画は売上7600億円、営業利益580億円は、中計を超える水準となりそう。ドミノ社については、415日の株主総会で圧倒的多数で賛成、独禁法も既に米国で通り、順調な進捗のようだ。

 藤井CFOの説明では、2014年度4Qベースのセグメント別の前年比較の状況、特にM&Sが大きく伸びたことが確認された。また、2015年度の計画では、全体横ばいの中でM&Sが減益見通しである。また、2016年度よりIFRS導入についてもコメントされた。質問でも出たが、売上げで販管費の販促や広告費が800億円あり、これがIFRS基準では売上減になる、あとはノレン、R&Dの資産化、年金関連だが、これらは影響は少ないとされた。

 質疑では、①プリンタ市場の見通しや大容量タンク投入の影響、②ドミノのM&Aについて、③マシンの市況感、など。

  1. プリンタ関連では、まだ市場飽和の中で激化が続く印象で、大容量タンクは投入時期や価格帯は明らかにされないが、既に2月から生産、新興国では半年後くらいの模様で、自信がありそうで、レーザーとのカニバリもないようだ。

  2. ドミノ社のM&A関連では、5年前に1500億円の予算であり、もうしばらくはないのかという問いには、現在のキャッシュやCFなどから、単発ではなく、継続的にやる可能性がある、とのこと。また、提携でもよかったのでは、という問いには、30年の歴史をもつピエゾの技術で産業用にも伸ばしたいゆえにM&Aにしたとの回答であった。

  3. マシンの市況は、納期2-3カ月ゆえ不透明でわからないとの回答だったが、ファナックが先の決算で、今がピークで今後減速懸念というが、そうなのかという確認についても明確な回答はなかった。ただスマホだけでは不安なので、現在、IT:自動車二輪の6:4の比率を自動車関連を上げていく方針。

    これに絡んで、私が聞いたのは、プリンタやカラオケで実績のある通信ネットワーク技術を工作機に導入し、ビッグデータ活用など考えるか?ということだが、開発戦略については非開示だが、WiFiなどの技術があり、当然、そういうことを検討していると自信たっぷりであったことから、既に開発、次期種で出てくるのだろう。

    また、将来、ITに分類されている、C社等の企業が、自動車などに多角化する場合、どう分類されるか、確認したが、そのままであるということであった。C社はまだ7割くらいの依存度と推定するが、C社自身の多角化や、他のスマホ関連の顧客が多角化する中で、実質のスマホ依存度は低くなっている可能性があろう。その場合は、稼働が安定する。

    最初のビッグデータ利用機の投入も合わせ、将来は、M&Sの収益変動がより安定化し、会社側も自信をもって説明される日が近いかもしれない。