2015年5月8日 ソニー決算の感想と中期(4月30日電話会議視聴)

今回、430日に開催されたソニーの説明会については、後日、HPからの視聴である上、時間も経過しているので、ポイントに絞って記述する。

ソニーとの付き合いも長いが、直接担当だったことはなく、むしろ、同僚と一緒に訪問や、あるいは、半導体やディスプレィ、研究所、SCEなどの分野に特化した付き合いが多い。もちろん、説明会や訪問件数も数100近くあるだろうし、累積INPUTも、1000時間はあるだろうが、やや狭い。産エレ各社はもちろん、家電系でも、パナソニックやシャープに比べても少ない。工場見学等も、長崎、熊本などの半導体と、液晶、TV、厚木の研究所くらいであり、限定される。

これらの方は素晴らしかったが、他方で、直接の付き合いがないトップや幹部の印象はそれほどよくないし、特に出井氏、ストリンガー氏、平井氏は、説明会やセミナーでのやりとりや直接の質疑もあったが、違和感を覚えた。出井氏は、講演でレジメもなく軽井沢の別荘での軽い話で、重電のトップが口下手ながら詳細なレジメで切々と話されていたのに対し、対照的であった。出井氏は、説明会でも、私の質問にまともに答えられず、隣の席に座っていた役員が補足してくれたのだが、またそれに意味不明なコメントをして失笑をかった。平井氏も、一見プレゼンはうまいが、目が空を見ていて、やはり想定質問以外には、難しかったが、これは当時のスタッフの見識の反映でもあろう。

それゆえに、私のソニーに対する認識は偏っているかもしれないし、浅いものも多いことを了解頂きたい。また、それ故に、特に以前は世間と認識が大きく異なっていたように思うし、戦略のあり方についても、それ故に、数年前までは「ソニーらしい」TVやスマホを強化すべきというコンセンサスとは全く異なっていた。

多くのマスメディアやアナリスト、学者は、ソニーをスマートなエレクトロニクス企業と見ていたが、私は限定された付き合いの中で穿った見方かもしれないが、本質は、オーナー経営の延長のメカトロに強い中小企業あるいは、町工場が、そのままで、大きくなってしまった会社だと考えていた。

斬新な製品はあったが、要はメカトロとセンシングが中心で、2台買ったPCは直ぐ壊れたし、ソニーの製品には時限装置がついているとの都市伝説も当然かと思っていた。実態は、90年代半ばにはもう限界があり、逆に過去の遺産と、まだ多くいた技術屋の個人個人の力のイナーシャーで業績はまあまあだったが、よくもっていたとう印象を抱いていた。それゆえに逆に、金融映画音楽に軸を移すという戦略は、ある意味理解でき、その点では出井氏も評価されるかもしれない。

久多良木氏が、SCEをつくって、SCEがソニーにとって代わる、あるいはSCEが外からソニーをもう一度再生することが最後のチャンスだったように思っていた。私の理解では、SCECはコンピュータだが、その真意はプロセッサを含む半導体であり、CCDCMOSセンサーも含まれ、Eは映画音楽金融ゲームである。また、後者のコンテンツは、前者の半導体の処理能力によって実現もされる。そこには、セットのTVPC、ケータイ・スマホもなく、この半導体のCとコンテンツのEのスマイルカーブの笑窪にある二極がソニーのコアであり、目指す姿だと、当時も思ったし、今もそう考えており、そういう方向性になって経営重心的にも腑に落ちている。

その久多良木氏がSCEと共にソニーに取り込まれた時、終わったと感じた。出井氏の方向性を変えるのは彼しかいないと思っていたので、その後のストリンガー氏や平井社長の失われた10数年は、ある意味余韻であり、当然とも、よく潰れなかったというのが正直な感想だ。

ソニーの説明会は、電機の中で、これまでは、最低の部類に属していただろう。電機の中では、唯一、計画のセグメント内訳を開示せず、説明会でも、プレゼン資料と話す順番が、異なっており、見づらかった。短信には、注記で細かく重要な点が記載してあったりするのだが、発表直後、決算が集中する中で、説明会までに、そこまで予習するのは難しく、配慮がほしかった。中計の説明会資料も、他社が赤字で苦境の場合には、何とか頑張るから見守って欲しいという姿勢が表れていたが、ソニーは上から目線のように感じた。ただ、唯一素晴らしいのは過去50年近い業績データが入手、過去のアニュアルレポートもHPにあることである。

しかし、吉田CFOになり、IR姿勢は大幅に改善された。IRデーも導入され、新しくセグメント別ROICなども開示され、質疑も、誠意が感じられた。それは、日立の川村氏が決算説明会で見せた姿勢と重なるものである。おそらく社内のマネジメントも透明性が高まっているだろう。

経営重心的にも、映画音楽金融ゲームというコンテンツ系と、CMOSセンサーなど半導体系のコア二極というのも納得できる(もちろん、東芝同様に、その異なる事業を同一会社で制御することの困難性はあるが)し、TVやスマホを絞りこむというのも、同感である。ゲームなど既に普及している「アセット」を活用するとうコピー同様の戦略、リカーリング型事業の強化も、固有周期の制御であり、評価できる。また、中計で示された、事業を成長牽引領域(デバイス、映画音楽ゲーム、成長に向け集中投資、安定収益領域(イメージング、ビデオサウンド等、大規模な投資はせず安定CF創出)、事業変動リスクコントロール領域(TV、スマホ)に分けたのも経営重心的な発想と同様である。また、事業変動リスクコントロール領域は在庫管理を重視しているのも評価される。

心配は、吉田CFOの体調であり、声色だけだが、かなり無理をされていると感じた。CFO中心に改革を推進されているチームの求心力が鍵であり、そのスピード感と持続性のバランスに注視していきたい。

 説明会の内容は中計の経営説明会が218日にあり、また527日にIRデーも予定されていることから、業績に集中している。

実績は上ぶれ営業利益は685億円、今期計画は、平井社長が目線とコメントしていた4000億円には至らず3200億円だが、当社のエレキ事業に大きくマイナスとなる円安が進行しているのでやむを得ないだろう。

2500億円の増益だが、マクロ的には、全体のリストラ費用が3300億円が一巡し一部課題事業が数百億円はあるが3000億円が改善され、またこの効果が400億円出るが、これを計画策定時からの為替の変化(事業部の前提が118/ドル、130/€から、現状120/ドル、125/€になっている)からマイナス分650億円を本社でリスクを見ており、またVAIOのアフターサービスコスト等もあり、800億円強のマイナスとなり辻褄があう。

セグメント別には、MC(モバイルコミニケーション)が減損の一巡等で2000億円弱の改善、調整消去でのリストラ費用減で500億円の改善、ゲームが先行投資やPS3切り替えが早く80億円減益、イメージングもデジカメ等が厳しく50億円弱の減益、ホームも微減益、映画音楽では200億円弱の増益、デバイスで300億円強の増益、金融で200億円弱の減益である。

このうち、デバイスの実績は890億円であり、金融に次ぐ稼ぎ頭だが、200億円の引当などリストラ費用が4Qに計上されているため、実態は1100億円であることから、今期の増益は円安メリットもあることから慎重のようだが、設備投資を一気に2900億円と倍増させることから償却負担も増えることが要因の模様。また金融はアベノミクス効果での日経平均上昇がプラスであり、今期は慎重にみているが、これは日経平均次第だろう。

リストラなど特集要因が一巡したソニーのセグメント利益は、現在の為替水準なら、MCはトントン、ゲームは500億円、イメージングとホームで500億円前後、デバイスで1500億円、映画音楽金融で3000億円、全社消去1000億円であり、4500億円前後となり、エレキ系も全体の半分を占めるようにもなるが、合計では、会社が意識している97年度の5257億円に今一歩及ばない。もちろん、市況や先行投資次第で、デバイスは2000億円、ゲームも800億円はあろうが、それで5300億円であり、巡航というより瞬間風速のイメージである。逆に、スマホやTVやデジカメ等は併せて1000億円の赤字もあろうし、デバイスも500億円程度の水準に落ちる可能性もあろう。そうなると全体で営業利益2000億円、為替が更にドルは円安、ユーロ円高となると、1000億円の影響はあり、全体で営業利益1000億円億円となる。

その意味では、早期に為替変動の中立化と、TVやスマホ事業の更なる縮小か、商社ビジネス化あるいはリカーリングビジネス化が鍵だろう。中期では、当面は、絶好調のCMOSセンサーも、スマホそのものやカメラの搭載個数の増加もいずれ限界が来るし、その場合には、DRAMNANDと同様の事業特性となる。イメージセンサについてはメモリー同様に垂直統合でよく、まだファンドリーモデルではないと思うが、幾つか、指摘すると、まず、円安メリットが大きい故に、円高のリスクもあり、前工程は国内集中だとしても、後工程は海外分散であろう。また、いずれサムスン等の攻勢もあり、先行投資と利益化のバランスが重要だろう。