2015年5月8日 ヒロセ電機の決算説明会 社長初登場

本日、11-12時、品川プリンスホテルにて、説明会があった。なお、決算そのものは去る428日に発表されている。今回の目玉は、社長の初登場である。当社は四半期毎に、だいたい同一の時刻、同一の場所で、説明会があり、IRを統括する執行役員の福本氏が説明、その後、串本副会長(99年に管理本部長就任以来、代取時代も含め19年間IRに尽力され、今回退任)が景況感や経営戦略について補足説明、というパターンである。同社は、IR意識が高く、従来から経常利益率30%以上を経営の大きな目標としてきており、株主に占める外国人投資家の割合が高い。このため、電子部品のアナリストだけでなく、機関投資家の参加も多い。また、資料で四半期での応用分野別コネクタ売上指数が記載され、串田氏による景況感についてのコメントが参考(事実、リーマンショック時に他社に先駆けて下方修正、厳しい見通しだったが、それがズバリ当ったことは記憶に新しい)になる。株式市場では、かつてはノキア関連であり、部品の中では、業績変動が少なく、成長性はそれほど大きくなくとも、高い収益性や株主還元から、ややデフェンシブ銘柄とされている。

NRI時代やセルサイドアナリスト時代は、直接の担当ではなかったため、それほど深い付き合いではなかったが、前職からはほぼ必ず説明会に参加、かつ個別取材も幾度かした。10年間で累計20回程度の説明会参加と個別取材だろう。

なお、電子部品業界については、30年前から評価が高かったが、当時コネクタは、ローテクのイメージが強く、無線化されて無くなるとか、アジアに負けるという見方も多かったように思う。しかし、実際には、負けたのはハイテクのイメージがあった半導体であり、液晶であった。

そして、コネクタは無くなりせず、日本企業の強力も収益性も維持された。もっとも、世界では、日本企業のシェアは村田のコンデンサなどと異なり、モレックス、AMP、タイコ、そしてホンハイなど、米や台湾が強く、日本では、ヒロセ以外では、日本航空電子、SMK、あと新興の、第一精工、鈴木、などが有名であり、フォローもしてきた。なお、矢崎創業は大手だが未上場。その中でコネクタ業界の秘密は、金型技術と、多様で個性的な戦略(ヒロセはファブレスなど)、業界の中での微妙なすみ分けにあると思う。

ヒロセに関しては、「スモール(少数精鋭)」で「英知をつなぎ」、「ファブレス」、「先行先端差異化」、「ハイフライヤー(常に高い収益性なら、危機が来ても大丈夫)」などのキーワードに戦略が集約されてよう。これによって少ないアセットで30%の経常利益率を維持するのである。特に、開発と販売は自社で、生産は外部に委ねる「直販外作」のファブレス戦略をとっており、他社と異なる。これは、人的資源をマーケティングと技術革新に集中させ、生産に関するノウハウや技術も、外部を有効に活用する。子会社である国内の3工場も、生産の多くは外部協力会社に委ね、工場内では生産に関する先端的な技術開発や、生産管理や品質管理に特化している。ただし、組立や金型、めっきなどの中でもコアとなる部分(全体の約2割程度、なお今回の質疑では自社生産比率は36%とされた)は自社で手掛け技術を維持する。

今回、説明会で初登場の石井社長の挨拶では、2020年に向け、成長分野は、クルマ、産機、IoTであり、現在の売上構成でスマホ34%、コンシューマ12%、産機22%、クルマ16%を、スマホ25%以下、ウェアラブルを含むコンシューマは15%程度、あと、産機やクルマも大きく構成比を上げる方針。ただ具体的な売上や利益はこれから。

福本氏の業績説明では、実績の上ぶれが円安と、スマホの3月の改善によることが示され、特に3月に中国向けが伸びたようだ。年間では中国は30%伸びたが、韓国が不振でマイナス15%だった。クルマは堅調だが、一部国内が不振。海外生産がやや減はヒロセコリアの減。また、経営課題として、個人株主対策があげられた。今期の前提は、スマホ2%増、クルマ、産機は10%増。

串田氏の補足では、スマホは見通しにくいが、4月、5月も中国好調、またヒロセコリアは、クルマや産機も展開、岩手宮古と共に、マイクロコネクタの工場としても活用すると強調。

質問は業績についての確認、2020年の具体性だったが、NA。またヒロセコリアについて、クルマや産機なら他の場所でもよかったのではとの質問もあった。

私は、既に記した2020年のコンシューマが増える理由、マイクロコネクタになると金型投資が、これまでのトレンドより増えるのではないか、さらにセグメント損益開示について、短信では製品別(2分類で収益性差なし)、資料では応用別と異なっている背景について聞いた。

マイクロコネクタは、すでに全体に30%であるが償却費は8%であり、10%以上にはしないとの回答。よくコスト意識はされていると感じた。

セグメントは、社内組織は製品別であり慣行通り、ただ顧客別には開示できないと強調された。当然だろうが、逆にいえば、顧客別で相当に収益性が異なるのだろう。

全体感としては、引き続き、ヒロセの伝統は生きるのだろうが、社長の交替で、これまでとどう変化があるのか(カリスマ的ワンマン的だといわれた、これまでの社長の肉声を知らないので、評価できないが、他社と比べて、そう変わらないに感じた)不明である。また、ファブレスについても、以前ほどは、他社と対照的でなくなってきたように思う。また、成長分野が、IoT、クルマ、産機というのも他社と同様である。生産体制も整い、成長への素地はできただろうが、業界平均を大きく上まれるかどうかは確証が持てなかった。