2015年5月12日 ディスコ~設備投資主役の交替?とサービス化

ディスコに初めて訪問したのは90年代初期だろうから25年位の付き合いであり、半導体業界の動向チェックはもちろん、直接担当もし、またSEMISEAJなど半導体業界業界のイベント、特に幾度か招待講演で行ったハワイのITPCでもお世話になった。ヘッジファンドの運用時代にも、何度か工場見学にも参加、また四半期決算もほぼ欠かさずテレコン参加、個別取材をさせて頂き、累積INPUT回数は数百はあるだろう。

同社のIRは洗練し、確立さている。速報性、深堀したい人、それぞれに助かり、公平性もある。四半期毎に受注や売上の速報があり、数値が公開され、そのコメントをビデオコンファレンスで聞ける。本日もそうだったが、決算発表直後、テレコンがあり、翌日、本社でトップによる説明会がある。ほぼ毎年、工場見学会や技術セミナーもある。敢て言うと、勿体ないのは、決算集中日ゆえに、翌日の本社(大森海岸)の説明会にいけず、評判が高いトップの肉声を直接聞けないことだ。開示の中身や株主還元などもいい。これまで、いつも半年先以降は見通せないとして、上期は納得ある計画だが、下期が極めて慎重な数字が入っており、年間では妙に弱気の数字になったが、今回は、それを改善して上期のみとされた。これは他社でも見られる傾向であり、よりクリアになろう。また、常にその時点で最適な予想を出すため、年間で方向が異なる修正をする場合があり、その場合は「機械的」に計算して決められる配当が変わる場合もあるが、それはそれでクリアであり、同社の経営哲学の一端を垣間見るようで面白い。

半導体の後工程の雄であり、「切る削る磨く」に特化、その技術と、オーナー系の強みときちんとした管理を併せた経営力で、国際競争力を維持、高成長と高収益性を維持している。誤解を恐れずにいえば、半導体における「村田」のような会社である。

あえて難をいえば、建屋も含め、設備投資が好きなことくらいであり、「切る削る磨く」に絞っても、もっと開発やM&Aに使えば、いいということくらいだろうか。ただ、それ故に高収益性も維持できているとはいえよう。

先ほど19時からのテレコンは、説明は簡潔に5分強、1時間弱の質疑であった。業績は極めて好調であり、2014年度は連続最高益更新、この上期計画も増収増益であり、また、それさえも慎重そうだ。

3月は、過去最高の受注、前月比60%増、4月は若干反動減ながら昨年のピーク水準は維持、5月はまた20%増、6月も強そうで、ほぼ固まっている4-6月期と、7月位までは織り込んでいるが、やや不明の8月以降を慎重に見ており、7-9月期は受注減の計画である。しかも、この中身が不安定な台湾のOSATはそれほどでもなく、日本や欧米系などであり、どこかで台湾OSATが動くと更に底上げになる。為替もプラスにきき、粗利率も最高である。

ほぼ質問は今期の業績と足元の市況に集中したが、その中から、私の質問でも、長期のトレンドではないかという兆しもあった。

その第一は、グラインダーが上期見通しで倍増、半導体がNANDフラッシュやCMOSセンサーの薄化対応でいいのはわかるし、ソニーの空前の設備投資からも納得がいくが、驚いたには電子部品である。4Q実績では、これまでせいぜい10%だった電子部品向けが26%であり、上期もこの水準が続くようだ。既に発表された村田、京セラ、ロームなどが過去最高水準の設備投資であり、SAWデバイスはじめとする、薄いスマホ向けの電子部品の薄化に対応するニーズが大きなトレンドであり、電子部品の設備投資額を見ても、半導体だけでなく電子部品が大きな得意先として浮上している。

第二は、その他・子会社のウェイトが全体の25%まで増え、上期も10%増である。これは、あまり注目もされてこなかったが、その中身が、半分が、装置の消耗品やメンテとなっていることである。TEL、ニコン、日立国際でも確認されているように、ユーザーの要求も中古改造がふえ、装置メーカー側も戦略的に、強化している。ダイサーが多いのか、グラインダーが多いかが不明だが、これまでの累積設置から、ダイサー出が多く、少なからず、全体の粗利率上昇に貢献しているようだ。粗利率トップは、精密ダイヤであり、60%を超えていると思われるが、その次くらいになっていよう。全社の比率は15%弱であり、他の装置メーカーと比べば同水準だが、精密ダイヤの10%も含めると、25%となり多いほうになる。

この2点は、大きな流れであり、特に業績の安定性にもプラスだろう。

他方、一点だけ気になったのが、研究開発で4Qに将来性が減ったとして資産計上を取り崩したものが数十億円くらいあった。大きなテーマで期待していたということから、LED関連かTSVかもしれない。