2015年5月15日 決算発表に見るトレンド 日東電工と日立

決算発表、説明会も、峠を越えた。日東電工(フル)、日本無線(質疑で退出)、日立(前半で退出)、ニコン(前半で退出)、シャープ(フル)であったが、いずれも、重要な決算の上、中計もあった。

 IRという面では、日東電工が、壇上で、社長と女性社員の対談方式がユニークであった。また質問の目線が、全く投資家・アナリストと同じであり、共通の質問が多く、個々に質問を受け付けいたら、数時間かかったような話が30分くらいで済んだ上、問題意識が共有できた。ここ数年の説明会としては最高であった。かなり下準備もしたのであろうが、双方が、自然であった。そういう演出をできるIRあるいは会社の工夫というものが実際のビジネスでも発揮されていようことは、想像に難くない。受付でもIRでも印象が悪いのは、通常のビジネスでも同様に顧客に対し同様だろう。日東電工の底力を垣間見た。

 また、説明会の中身では、特に、日立の会社の経営のレベルが、一頭上に出てきた感がある。

第一に、日立では、営業利益のレベルが6000億円を超え、前期も今期も先憂後楽の保守的な減損を500億円しているが、これが他社であれば、大きな下方修正の原因となる。

第二に、M&Aである。これは、日立だけでなく、ニコン、その他でも、多いが、目利き力が格段に上がっているように思う。話題先行や、投資銀行がしかけたようなものではなく、事業の最前線でいい案件を見つけている感がする。

規模は大きくないが、「本城を攻める前に、周囲の小城を調略している」ようである。まさに、オープンイノベーションでもあり、その後のフォローやシナジーもうまい。

第三が、ユーザーとの協創である。単に売り切り、コンサルではなく、まさに顧客のところで、一緒に価値を創造し、成果を分け合うというのが当たり前のビジネスモデルになってきた。これは日東電工のロールtoパネルでもそうである。これは、より多くの多様な顧客と付き合って、じわじわノウハウができるものであろう。契約や利益配分、その中での双方にプラスとなる共有プラットホーム構築が鍵であろう。

第四が、IT、特にビッグデータの活用や、さまざまなKPIである。多くの会社は、ROEとか、営業利益率だが、日立では、CCC5日短縮することが1300億円のキャッシュ創出になるとかの例があるが、こうした指標がITを基盤にして、実感を持って普通に出てくる。この背景には、世界トップの経営者が社外役員におり、また、そういう付き合いが、そういう経営マインドを当然にしていて、それが中堅幹部にも広がっているような印象を受けた。

第五が、総合力である。昔は、エレクトロニクス企業で、物流や金融は、ノンコアであったが、ITバブルのころに、それがむしろ重要だと認識され始めたが、それが、ビッグデータ、IOTの時代に、実態をともなって、シナジー効果が出てきた感がある。他のグローバルのライバルは流石に流通部門はないものも多く(アマゾンやグーグルは強化しているかもしれない)、それが強みになってきた。

この日立の後に、シャープに行ったから、余計、格差を感じた。リーマンショックの頃、ほんの5年少し前は、そんなに差も無く、むしろ、シャープに勢いがあり、日立は、沈みつつある巨艦であった。同じ5年といっても、時が早く流れて大きく変わる5年とゆるやかな5年とあるような気がする。大きく時代が変わる時に、その流れに乗れないと、その差が一気に広がる怖さを痛感した。