2015年5月15日 東芝の不正会計リスク

201551519時半~2010分、東芝本社で田中社長が、アナリスト投資家、マスコミ向けに説明会を行った。参加し質問もしたので報告する。説明会では、2011年以降が対象、IFRSとは関係ない、おそらくWHの減損もない等、クリアになった部分も多い。


説明会

 説明会では、広報が司会、田中社長のみの出席、マスコミ、投資家アナリストで満員の中、冒頭、当時者意識にあふれる誠意のある謝罪がなされた。資料は報道資料のみ。

 説明の要点は、以下。

まず、第三者委員会の目的である。これまで調査を行ってきた特別調査委員会(委員長は室町会長)から引継ぎ、調査経過を検証の上で活用、必要に応じ、独自の調査も行う。メンバーは、元検事長の上田弁護士(委員長)、松井弁護士、伊藤公認会計士、山田公認会計士で、中立性独立性がある。丸の内総合法律事務所とデロイトトーマファイナンシャルアドバイザリー合同会社を調査補助者とする。

特別調査委員会は、43日以降7回行われた。20112013年での、電力システム社、社会インフラシステム社、コミュニティソリューション社、の3社内カンパニーの工事進行基準250件を対象に調査した結果、9件、営業損益ベースで500億円のマイナスが判明した。

電力システム 4件 60

社会インフラ 4件 300億円

コミュニティソリューション 1件 140億円

工事進行基準案件で予算達成プレッシャ、新規性が高い案件について内部統制は不十分であり、工事基準以外でも懸念があるので、上記以外の社内カンパニーや、連結対象子会社も、網羅的に調査が必要となり、これを第三者委員会が行う。

調査項目は、①損失引当計上の時期と金額の妥当性、②経費計上時期の妥当性、③在庫の評価の妥当性、など。この③は、工事進行基準外でも影響する。

第三者委員会、東証にもアドバイスを受け協力する。調査期間など決まれば速やかに報告、なお、役員と執行役は報酬を自主返上の模様。

質疑

20143Q時点3.5兆円の受注残が合ったが対象か?←工事進行基準は対象。

9件は関連性あるか?国内か?←関連性はない、国内が大半。

WHなど海外や子会社も対象か?←その通り。

・在庫も対象か?←その通り。

・たまたまタイミングが一致するがIFRS導入と関係あるか←ない。

2010年以前も対象か?2013年度に計上されていた案件なのでない。

・対象となる案件の定義は?←工事進行基準は1年以上、金額10億円以上。

・当時はあったが、譲渡やリストラされた事業も対象か←対象ではない。

・きっかけは何か?いつ知ったか?←NA

・不正もあるか?旧トップも対象か?現場かトップが主導か?←第三者委員会の判断。

・なぜ、会見が遅れたか?←できるだけ正確な情報をと思った。

6月末までに遅れると上場廃止だが←東証の判断

・無配の理由は?←決算間に合わない、今後検討。

印象と残された疑問

 説明や、質疑を通じて、かなりクリアになった。

まず、IFRSは関係ないということであり、まだ導入前でもあり、これで心配されたWHなどの減損のリスクは小さそうだ。そうすると、財務は痛むが、巨額でファイナンスしなければいけないほど財務基盤は切迫はしないように思う。もちろん失われた信用を取り戻すのは大変だが。

また、期間も2011年以降であり、これも、影響度を限定できる。

さらに、当初、大方が可能性として考えていた、大半が東電福島案件ではないか、という疑念は、電力システム社が4件だが60億円と少ないことから除外してよいだろう。むしろ、件数と金額の大きさから、府中工場などで手がける、公共、環境、交通など、社会システムが中心であり、よくあるパターンのような印象をもった。

残された疑問は、なぜ、知ったのか?また、通常であれば、2013年度の決算でも社外役員や監査役、監査法人がチェックしており、そこでは問題が無かったはずなのに、なぜ、この2014年度なのか、ということであろう。