2015年5月24日 セグメント開示~続き

先に、セグメント開示について書いた。http://www.circle-cross.com/2015/05/04/201553-オールヌードになる-セグメント開示/

何人かの方からフィードバックを頂いたり、また説明会で、幾度か、質問したが、やはり、会社側は、丸裸にならないように、注意しているようだ。 第一には、まず実態をぼかす、第二に、顧客別にはしない(ある意味、これがもっとも本質的だからだろう)、第三に、微妙に、他社と同じくくりにならないようにする、第四に、拡大を狙っているところは、良く見えるようにする、第五に、悪いところが出ない様にする、第六に、あまり儲けすぎだと思われないように工夫する、などであり、その中で、ある程度、投資家アナリストに実態をわかるように調整してきたというところだろう。

 前回は、半導体、特に、DRAMの例を出したが、実は、DRAMでも大きく異なる。汎用PC向け、とスマホ向け、でもそうだが、もっと重要なのは、その形態である。

大きく分ければ、チップベースと、パッケージベース、モジュールベース、があり、チップベースでは変動費はウェハーと加工に使う薬液くらいだが、パッケージベースだと、パッケージやワイヤが加わり、限界利益率は減るし、さらにモジュールベースだと、他の部品やチップが入るので、さらに限界利益率は減る。それゆえ、平均単価も異なるし、収益性も異なるため、ユーザー別や品種別だけでなく、こういう形態別を聞くことがもっと本質的になる。これは、在庫の分析でも同様だ。DRAMに関わらず、半導体もそうだし、液晶では、セルベース、パネルベース、モジュールベースで、やはり、単価も、限界利益率も異なるのである。

これは各社の取引形態や、顧客でも異なる上、時系列でも異なるため、時系列比較でも横比較でも注意が必要だ。また、ロームなどは、ウェハーや部材の一部を内製しており、液晶では、外部売りと内部向けでは、仕切りが当然異なり、分析上も、ある程度、そこを考慮しないといけない。TSMCは営業利益率が高い一因は、ウェハーベースだからであり、もしパッケージベースで、ファブレスに供給すれば、その分は利益率が下がる。また、液晶などの製造工程の一部を担う場合は、前工程の部材が、有償支給であったり、無償支給もある。それが、途中で変わることもある。

それゆえ、どういう計上基準になっているかを確認しないと、P/L分析してもしようがない。営業利益率が改善していても、計上や取引形態を変えただけというものも多い。しかし、実態は、その辺りを、いろいろ混ぜて塗して、見えにくくしていることも多い。特に、最近は、EMSもはいり、サプライチェーンが複雑化している。

最近、ROE経営が盛んで、ROEを分解して、回転率と自己資本比率、売上利益率とかやっているが、ROEに相当するのは、P/Lでは、分子が当期利益、分母は限界利益ではなかろうか。変動費と限界利益の関係は、顧客との競争優位性や関係性から起こるが、限界利益を、そう固定費と営業利益に配分し、固定費の中で、人件費と償却費などにどう配分するか、は会社の判断になり、そこに価値基準がはいるからである。

個々の固定費の内訳は出せないだろうが、今後の開示で限界利益が開示されれば、素晴らしいし、これが、GDP計算とも整合性があい、統計処理による分析もすすもう。また、企業の見え方も変わってくる筈だ。

会社の本来の損益状況に近いセグメント限界利益が、最終目標だが、全社の限界利益と、セグメント開示についての哲学理念、その理由も開示してほしいところである。