2015年5月29日 電気興業の説明会

 2015529日、10時より、決算説明会が開催された。決算は既に集中日の515日に発表済みである。同社のIRは上期と通期、いつもこの方式であり、松澤社長が業績動向と、事業環境や中期戦略について説明、専務や技術担当役員が質疑に対応する。特に、事業環境では、LTE4G、マイクロセル等移動通信、4k8kTVの技術動向など話題のトピックスについての説明もあり参考になる。通常は、参加人数も多く質疑もそこそこあるが、今回は、同一時間に富士電機の中計発表があり、アナリストの担当が重なることから、やや人数も少なく、質疑に至っては、私だけだった。

 同社との関係は、NRI時代にアナリストとして数年担当、また移動通信の調査で取材したことがあるが、当時は、説明会等はもちろんなく、IRにそれほど積極的ではなく、ある程度の決算数字の開示はあったが、技術戦略や、経営議論ができず、また投資家からの関心も少なかった。運用会社時代に再び説明会に参加、また個別取材の中で、IR体制が大幅に改善したことに驚いた。長い間の付き合いだが、決算時のみのInputであり、見学会等もないため、累計で20回程度であろうし、IR中心で幅も狭い。

 同社は、NTTドコモなどキャリア向け移動通信基地局や固定無線向けのアンテナ及びその工事からなる電気通信関連事業、クルマ部品等向け高周波焼入れ装置などの高周波関連事業の二本柱からなり、売上構成はほぼ8:2である。この10年どころか、30年間、不変であり、売上は300600億円前後、営業利益も数十億円で、安定している。国内中心であり、為替変動も影響が小さく、収益変動は基地局投資などである。ただ、業績計画は受注のずれのせいか、しばしば変更される。

 本来、技術力もあり、IoT8TV等話題性もあり、積極的な戦略展開をすれば、飛躍的に成長する可能性があると思われるが、ドコモの影響が強い上、社風が地味で役所的で、惜しい気がする。ただ、今後は、質問でも効いたが、ファーウェイなど海外勢の参入や、IoTの影響がマイナスとなる可能性もあろう。

 説明会では、2014年度は売上475億円、営業利益35億円は、計画比下ブレ、減収減益であった。ソーラ関連の減少が効いた。2015年度は微増ほぼ横ばい圏の売上490億円、営業利益36億円。

 中期見通しでは、事業別に経営環境が示された。

電気通信の中で4割を占める移動通信では、99年度は2Gピーク、2006年度は3GNMP制度導入で、基地局関連の鉄塔や工事特需があったが、それ以降は低迷、アンテナの売上があるが価格低下が厳しいようだ。今後は、3.5GHzアンテナ需要、マイクロセル化や2Gの更新需要、鉄塔メンテ等に期待。その中で、海外現地調達によるアンテナ低価格化対応や鉄塔メンテ強化に努める。

電気通信の中で固定無線(4)や放送(2)では、2010年度までの地上波デジタル特需や2015年度までの消防無線のデジタル特需で好調であったが、ピークアウトするため、今後期待される、防災無線の提案力向上による受注拡大、特に積算施工能力に努力、組織変更で対応。

高周波セグメントでは、クルマ向けに堅調に推移する模様。技術者の効率活用のための組織改革、装置のモジュール化による生産効率アップ、海外生産によるコストダウンを図る。

これまでになかった注目点としては、2020年オリンピックに向け、新規事業に特化した専門部署を新設、IoTやセンサーネット、ロボット、セキュリティ防災、ワイヤレス電力伝送、インフラ老朽などに注力するようだ。

質疑は、いずれも私からのものだが必ずしも満足のいく回答ではなかった。

、第一に、鉄塔や基地局の設置数を確認したが、業界全体で、鉄塔2-3万、基地局は不明なようだ。キャリアへの遠慮もあるが、メンテナンス強化なら必要だろう。

第二は、M2MIoTの中で、自販機に無線機を儲ける例があるが、その対応や、こうした工事に免許や資格はいるかどうかの確認をしたが、自販機のアンテナは同社と関係なく、またM2Mに絡んでは新規事業部門で対応するようだ。現在のアンテナはそうでも、5Gになり電波が届きにくくなれば、設置場所に困ることは認めたが、その辺の戦略は不明だった。

3はファーウェイとの潜在的な脅威である。既に海外では、ファーウェイなどが基地局から工事まで一括にとることがあり、低コスト高技術、かつスピーディな対応でシェアを伸ばしているが、将来は、競合してこないか、という問題意識だが、海外での趨勢は認めつつも、日本では、通信の品質レベルが異なるから大丈夫だろうというものだった。ある意味、ガラパゴス故に守られてるともいえるが、既に端末も基地局も海外からの参入が増えており、アンテナや工事も将来はどうなるかわからない。特に5G以降は大きな脅威ではないだろうか。

4は、中期では、ソフト無線の対応で、一つの設置場所で複数の周波数帯に対応したアンテナが必要になるがどうか、という質問だが、既に設置場所が不足しているので、2G3G兼用とかそういう対応をしているとのこと。ただ、5G以降、本格化すれば、質的に異なるアンテナ対応になる可能性もあり、再構築再配置も必要になるかと考える。

IoTM2Mは同社にも新しい成長機会であるが、ファーウェイなど本格参入すれば、大きな脅威でもある。4G5GIoTの時代も日本の移動通信がガラパゴスかどうかが、同社を占うことになる。

http://www.circle-cross.com/2015/04/30/2015430-iotm2mの周波数帯とプロトコル/