2015年8月25日 産業革新機構の折り返し点の評価

産業革新機構が2009年に誕生した際、生みと親ともいえる財務省や経産省の高官や、産業革新委員の方々に話を伺い、2011年初に(拙著「日本の電機産業はこうやって蘇る」から抜粋)にまとめた。大変期待を持ち、課題を指摘もしたが素晴らしいと考えていた。また、産業革新機構に対し技術評価をする中立シンクタンクNPO法人のETTの評価委員会のメンバーも経験したが、その評価システムは、徹底した中立性、高度かつ多様な委員会の構成など素晴らしいものであった(その中から成功し上場した例もある)。なお、このETTは、米国のブルッキングス、ドイツのマックス・プランク、イスラエルのワイズマンなどの研究所と同様のものであり、経験豊富な約1200名もの技術の目利き集団を擁している。

そういう意味では、外部者だが知人も多く関連の累積INPUT10以上はある。

春先から、JDIやルネサス、シャープや東芝の状況に関連して産業革新機構のあり方について考え直し、また最近の産業革新機構に対する批判も聞いた。発足以来のトップも交替し、再考するには、いいタイミングだろう。そこで、2009年の設立から5年を経て、残り10年弱、これからはEXITの検討も始まる中間時点の今、評価を試みたい。今回、OBの関係者や、現職の方も含め、10人弱の方と議論させて頂いた。

狭い意味のイノベーションではないが

「革新」とう名前がついているが、実際には、狭い意味のイノベーションだけではなく、業界再編やVB投資、カーブアウト、など様々である。再編は、タイミングはその時々であり、投資回収も5年以下のものもあろう。しかし、その中で、イノベーションというなら、実用化に5年~10年近くかかるため、遅くとも2010年頃までには投資をしていないといけない。実際にEXITの成功例もあるが、そろそろ、どの案件もEXITを考えるべきだし、これからの案件は一層そうであろう。そういう視点でも考えたい。

ポートフォリオの中身やNAVなど不明

ファンドである以上は、リターンが重要であることはいうまでもない。その意味では、JDI、ルネサスを始め産業再編・黒字化、上場や企業へ売却など「成功」例も多い。

ただ、全体としてプラスなのかマイナスなのか、どの位のリターンがあり、ポートフォリオがどういうリスクを取っているのか全体として定量的には不明である。