2015年8月31日 東芝は前例の無い二度の決算延期で深まる謎

20時から21時頃まで、東芝の説明会に出席した。マスコミとアナリストが合同、会社側は室町社長。説明10分、質問はマスコミ10問強、アナリスト5人くらいから10問弱(私は、2回で3問と2点のお願い)

マスコミの多くは、今回の遅延理由や責任論など、アナリスト側は中身の確認が中心。なお、お願いした点は、①東芝HPから過年度の有報が消されているが、アーカイブで残してほしい(これは、それを怖れて印刷しなければと思いつつ100P以上あるので1年分はしたが、プリンタが壊れた)、②今回の事件で、東芝だけでなく、第三者委員会も記者会見をしたが、新日本監査法人も、何か記者会見などをすべきではないか?あるいは決算発表時などに同席してほしい、という2点である。

以下、時系列と内容、その後、印象を記す。

時系列の整理

818日に、過年度と2014年度のP/L税前利益を公表後、新たな不適切会計の発見、減損の計算ミスが見つかった。それで、P/Lを修正作業。

827日まで遅延、税前利益までの修正の確定。

830日に、東芝としてP/LB/S等を完成、監査法人に提出。30日深夜まで、予定通り31日に有報提出、発表もしたかったようだ。しかし新日本監査法人が監査完了に7日程度を要する旨の連絡。

831日、当局(関東財務局、SESC)にも報告、承認も得て、夕刻に、再度の決算発表延期(97日)を公表した。

なお、97日はデッドラインゆえ、できる限り早めたい、とのことなので、可能性があるのは、14日、7日であり、常識的には、47日だろう。

914日の1Q決算発表は、厳しいところはあるが頑張り、進捗はフォローする。

9月末の臨時株主総会は予定通り、である。

発表内容と質疑の主なもの

発表資料や室町社長の説明では、①複数の上場子会社で、不適切性の可能性があり、調査が必要となった、②固定資産の減損で単純な計算ミス、③米国子会社で工事進行基準案件(水力発電であり、WHではない)、④米国子会社の監査長期化、である。

質疑では、以下が明らかになった。①818日の発表数字(2014年度の営業利益1700億円、税前利益1400億円、過年度修正額2100億円)から大きく変わるものではない、②件数は10件、メモリやヘルスケア、WHはない(ありそうなのは白物?)、時期は2010年度など過年度もあり、2014年度もある、③国内子会社の中で上場子会社があるかどうかは言えない、④内容は、第三者委員会で数字が出たものを修正したものも、新たなものもある、⑤東芝自身の内部通報などによるものや、監査法人のチェックで出たものもある、⑥WHや原子力に対する見方、8/18WHの数字など、不変である。

人事面で、今回重要だったのは、室町氏が「もし今度、万が一、遅延という事態があれば極めて責任は重く、進退を考える」と明言したことだ。一方、決算発表で同時に公表される予定の役員人事は特に問題はないようだが、同時としたいようだ。

残る謎、違和感、腑に落ちない

多くの方から質問も続出したが、なお腑に落ちない点も多く、あと1週間だが謎は深まる。なお、税前利益の修正は、それほど巨額ではない、というのは、今回WHOKであり、メモリも入ってないこと、など全体的な状況から、とりあえずは、そう捉えていいだろう。ただ、税金の計算は、出も入りもあり、税率もいろいろ変わっているのでややこしいし、減損計算も大変だろう。社内250人、監査法人など含め、できる限りのリソースを投入しているが作業量を適切に見積もれなかった点は反省の弁だった。

不思議なのは、①新日本監査法人、当局も含め、綿密に議論と会話もし、いわば、共同作業なのに、何故、1週間かかるのか、同時なので東芝が完成というのは監査法人も同様のはずだ。東芝はOKだと考えているのに、監査法人側が確認したい何点かがあり、何かを待っているのではないか。まさか日経ビジネスの通報を待っているわけではないだろうが、②8/18では、中途半端ながら、P/L税前利益までだけでも頑張って開示したのに、今回、なぜ、そうしなかったのか?それほど金額に差がないなら、いいような気もするが。当局、監査法人理事長とも打ち合わせ、大きくは合意している筈だろうが。

まさか細かい精査、通報待ち、計算チェックではあるまい、何かの確認か

 そこで推測すると、これまでは、通常、金曜夜だったが、月末で月曜である。欧米はまだ休みだ。何かをギリギリで待っており、それが間に合わなかったのではないか。そのエビデンスか何か、を監査法人はチェックしたいわけで、それがMAX7日、なるべく早く公表したい、と言った背景だろう。監査法人が、過去の有報にOKを出し、継続性の疑義などの記述も含め、どうするか、最終判断に必要な何かがあるのだろう。それは、東芝にも当局にも、歓迎すべきことかもしれないし、そうでもないかもしれないし、同時に発表したい、すべきことなのかもしれない。

 一番、懸念された債務超過ぎりぎりで、あたふたしている、ということだったが、それは今回はないのかもしれないし、そこは、東芝はもちろん、当局も監査法人も慎重に判断、議論したところだろうから、大所高所の判断、決着はついているのだろう。提出延期を7日まで認めたということはそういうことだろう。

社外役員就任の覚悟

社外役員も正式発表はまだだがマスコミ報道は出ており、就任を前提に発言している方もいるので、大筋は決まったと見ていい。当然、就任にあたり、B/Sの状態は、よく確認するだろうから、そこが大きく変わることはない、というのもわかる。

ガバナンスが厳しくなる中で、これまでと異なり、社外役員だから、責任が軽いということは全くないし、委員会のメンバーであれば、重さは同等以上かもしれない。本人の「責任」でない過去のことでも、一端、役員になれば、責任を負い、頭を一緒にマスコミに下げねばならないこともある。万が一、社外役員かつ監査委員や指名委員の一員に就任した後で、新たな不祥事が出れば、頭を下げるところか、法的責任もあり、過去のことだから関与しないし知らない、と言うわけにはいかない、ことは十分に承知のはずである。ただ、下馬評で有力だった伊丹氏ではなく、資生堂の前田氏などの名があがっており、流動的な面もあり、そこはやや腑に落ちない。

 そういう中で、室町氏の進退言及発言は、普通に考えると当然だが、それくらい重く受け止めBestを尽くす、ということだろう。ただ、一方で心身限界にあるようにも感じた。同情はするが頑張って欲しい。なお、前回8/18の複数の宿題については、今回は、当然だろうが、何もコメントは無かった。それどころではないだろうが、通常モードになったら確認したい。