2015年9月1日 専門性と収益性のジレンマ、アナリシス・シンセシスのバランス~疑似垂直統合の勧め

東芝問題では、新日本監査法人やコンサルタント等の「専門家」が何故、粉飾を見破れなかったのか、ということが議論になっているようだ。高いコストを払ってバレバレの粉飾を見破れず、また、今回も決算発表延期に至る中で、何故、そうした「専門家」に高いコストを払っているのだろうか。

東芝については、その粉飾不正会計だけでなく、株主は、そうした点も批判すべきだろう。マスコミも何故か監査法人をあまり批判しないが、社会的公的責任からすれば、記者会見も必要だろう。

 今回、春先から、一連の不祥事を調べ、ガバナンスについても考える過程で、弁護士や会計士、企業の監査役や経験者にも教えて頂き、多くの書籍も読んだが、その中で、「企業不祥事の研究」(By井上泉 文真堂20157)は、名著であり参考になった。これを読んで、改めて、日本の監査法人やこれらの社外役員などは、何をやっているのだろうと驚いた。単なる社会的権威だけで、ハンコをおし、サインするだけで高報酬を得て、しかも、多くの場合、会社の役員と違って、あまり糾弾もされないのは不思議だ。

水平分業、アナリシスだけでは分析できない

 それは、さておき、彼らが粉飾を見破れないのは、会計や法律の専門家かもしれないが、対象企業の専門家でもなく、形式的なチェックでよしとするだけで、会社に関心があまりない、はっきり言えば、会社に愛も憎しみも拘りもないからではないか。

また、アナリストの世界でもそうだが、分業が進んでおり、彼らが、何かテーマや問題点をチェックする際に、専門家に、ただ意見を聞いて、適当に引用するだけで、自ら技術や産業構造を理解しようとしない傾向がある。関心も持たない。

これは間違った水平分業であり、あるいは日本の学会のタコつぼ社会、縦割り社会と同様に、それぞれ狭い専門に深く閉じ籠り、お互い不可侵で、関心をお互い持たない、というのに似ている。刑事でいえば、昔ながらの刑事は現場を大事にして、犯人に関心を持ち、全体感の中で犯人像を絞っていくが、今回、コンサルや会計士も含め、そういうアプローチをしているのだろうか。

自ら仕事を狭くしている

アナリストも昔は、仕事の領域が広く、①自ら技術予測をし、②市場予測をし、③業界構造を考え(また、それが楽しく面白いのだが)、その上で、④いろいろシナリオに基づいて、⑤業績予想をして、⑥株価判断をしたものだ。しかし、今は、①は外部専門家の受け売り、②、③はリサーチハウスの引用、④はIBか会社の受け売り、で⑤と⑥だけしかしない者が多く、そういう狭い仕事を、アナリストだと思っている人が、当のアナリストも周辺の関係者にも多い。