2015年9月7日 東芝の2014年度決算説明会報告と印象

17時より、第一部が室町社長と渡辺財務部長によるマスコミと投資家アナリスト合同の説明会とQ&A、第二部が渡辺財務部長のみの投資家アナリスト向けQ&A。決算直後で、また過去修正も多く、有報も出たばかりなので、消化不足の点も多かったが、これは仕方がないだろう。なお、最後に新CFO平田氏の紹介があった。

 全体的な印象は、以下だが、マスコミの関心も含め経営陣の責任問題や粉飾か不正といった話ではなく、今後の再生や、ポートフォリオ等に関心が移っているようだ。

第一に、自己資本は1兆円を維持、とりあえずは、財務危機はなくファイナンス等は不要だろう。繰税資産も2600億円まで減っている。ただ、これが「自己資本1兆円、D/E 1近辺」ありき、でないなら、この際、先憂後楽の精神で、繰税全額取崩しで身軽になって、ポートフォリオ構築の自由度を増してもよかったのではないか。

第二に、WHについては、経営環境の堅調さやこれまでの実績は分かったが、東芝からの債務保証5800億円強で前期から1000億円増加しておりB/Sも不明(暖簾3200億円、無形固定資産2000億円は開示)ゆえに、その実態や、他の事業でも、長期性資産の割引率等の開示はステイクホルダー安心のためには必要だろう。

第三に、ポートフォリオ見直しについては、慎重な物言いながら、「ヘルスケアが第3の柱」は白紙、PCTV、非メモリも見直しの対象であり、修正後の新ベースでポートを年内までに見直す方針のようである。

第四に、室町社長としては、今回、実態の営業利益3000億円以上であり、確かに、半導体の2000億円以上、電力等で1000億円、赤字さえなければ、そうなるが、これを実力として再成長に自信も示した。ただ、それを元に、トップダウンで決めることは、またチャレンジにならないか慎重であり、よく煮詰めて考えるようであり、理解できる。

ただ、今回の修正は、それほど重大なものはなく、中には後発事象でもいいものもあった。それゆえ、先日、なぜ、P/L開示に極めて慎重であったのかが不明である。大きな混乱の中で、社内でも、できるだけ開示というのと、出すからには正式なものを、というのは分かるし、監査法人や当局の意向もあろうが、周囲は振り回された。なお、過去の修正前の有報はHPで残されることは評価したい。

室町社長の説明の要旨

第一に、取締役などの人事(正式には月末の株主総会で決定であり現時点では予定)について、報道通り(8/18で質問も出た伊丹氏ではなく)、資生堂相談役前田氏の議長ほか社外役員、三委員会のメンバー、また、社内からはヘルスア担当の綱川氏、牛尾氏の代取就任、CFOの平田氏の新役員就任が示された。

三委員会はいずれも社外であり、7名が二委員会兼任、指名委員長は小林氏(三菱ケミカル会長)、報酬委員長は古田氏(弁護士)、監査委員長は佐藤氏(公認会計士)。伊丹氏は指名と監査の二委員だが、委員長は退いた。監督側の取締役会の三委員会に対しては、従来からの監査委員会室を強化、新たに内部監査部を設ける。執行側も新組織として経営刷新推進部、内部管理体制強化プロジェクトチーム、プロジェクト審査部を新設、コーポレートの立場から、工事進行基準案件の受注前審査や受注後のコスト妥当性のモニタリング等を行う。伊丹氏が議長に就任せず、委員長にもならなかったのは氏のケジメであり評価できるだろう。

第二は、決算であるが、今回またしても遅れた背景として税金の計算での確認が背景にあったこと、また8/18比では、6件の修正があり、大きいものは既に示された水力関連、WHのコストアップを織り込んだ。また、監査法人の強い要請で課徴金等の引当を積んだ。なお、懸案の海外でのWH繰税、単独の繰税に関して、監査法人と厳しくストレステストをしたが問題なかったことが強調された。

第三は、今後、CF経営を重視、問題だった社長月例を廃止、より少人数での業績報告会にし、議事録を監査委員会にも提出することとした。

渡辺財務部長の要旨

 2014年度は特別な要因を除くと営業利益は3454億円であり、実態比で600億円程度の増益であった。原子力は売上6200億円強と10%増収で営業利益は195億円であり、STPの減損を除くと410億円、電子デバイスもNAND好調持続でディクリートの減損を除けば増益。他方、ライフは1000億円の赤字。

FCF1000億円改善、また自己資本も1兆円、D/Eレシオもほぼ1であり、少なくとも監査法人も認めた数字である。なお、仮に繰税2600億円を全額取崩、WH5000億円全額減損しても、まだ3000億円程度は自己資本は残る計算だ。

質疑の要点は以下である

ガバナンスの問題点

制度の問題よりも、トップの関与との発言だった。これまでと、ややニュアンスが異なってきた印象、第三者委員会や当局等の見方に近いようだ。今回は、マスコミからは、あまり旧役員の責任問題などは無かった。また、過去の業績が前提となっている配当や役員報酬について、マスコミではなく、私があえて聞いたが、配当は戻せといえないし、役員報酬も個人の話だというコメントで、それ以上、マスコミも突っ込まなかった。

多くの識者も議論していない点だが、会社制度や組織設計が変わる中で、社長の役割も、監督なのか執行なのか、そもそも社長なるものに対する認識が、ステイクホルダーの中で異なるのに、同じものだとして認識していることが問題ではないか。資本家的社長、経営者的社長、事業家的社長と、CFO以上に異なっているのに、就任する社長自身が先輩の社長と同じように考えていることを改めなければならないだろう。そこにおもガバナンスの問題点があるだろう。

監査法人

 監査法人の責任問題については回答を避けた。また、印象では、今回減損となったSTPはじめ原子力には厳しく、PCには甘く、半導体についても社内ルールが違っていたのに、どこが監査法人との議論で意見が分れたものか、ついて聞いたが、様々で多くの内容というだけで、明らかにしなかった。今後、監査法人を替えるかどうかの点は、監査委員会の専権事項だとした。繰税の残額が2600億円まで減ったことであり、まだ自己資本も1兆円あるわけだから、この水準なら取崩せば、出尽くし感があるのだが、あくまで監査法人に従ったとした。前回、提案した記者会見については特になかった。

再生ポートフォリオ

 今後のポートフォリオに関しては、慎重な言い回しながら、セミコン、電力は、コアだが、田中前社長時代に第3の柱として期待されたヘルスケアについては白紙のようだ。もともと、M&Aも含め2017年に売上1兆円というものだったが、財務に余裕もそれほどなく、全事業を修正後のB/SP/Lで見直す必要があるからだろう。また、ライフスタイルのPCTVはリストラ、半導体でもディスクリートやシステムLSIは見直しの対象のようだ。これらに関しては、年内には方向性を出すようだ。

 今回は、ブログでも書き、日経ビジネスでも掲載された案「セミコン社のカーブアウト、テック取込みで、「I作戦2.0」でビッグデータ事業でシナジー、GE資本出資、場合によっては原発は東電等と垂直統合で国家管理」は、今回は、議論しなかった。

業績について開示

電力社会インフラの営業利益の内訳、STP減損を除くベースとして、原子力が400億円(増益)、火力200億円(減益)T&D赤字150億円、LG10億とされた。今期もインフラ関係は好調のようだ。

デバイスの営業利益の中身はストレージ130億円、NFT120億円、ディスクリートはやや赤、システムLSIは、やや黒、メモリ2300億円。なお、今期は、メモリのbit成長は市場並み、工場はフル稼働、1Qは好調だが2Qは、やや弱含み。非メモリは弱い。

ライフスタイルでは、リストラ費用を除くベースでは、前年はTV90億円の赤字、PC130億円の赤字まで改善はしたが、足元は円安もあり苦戦でライフスタイル全体では赤字傾向のようだ。TVPCも固定資産は減損しゼロであり、前期までの分は在庫も一掃したので、仮に撤退するとしても、人員以外は大きな特損は出ないだろう。PCにあった不良押し込み在庫などは完全に落して処理している。PCでの、もともとのリストラ費用600億円と、修正額が600億円で近かったことについては、偶然の一致ではあるが、リストラ費の中に、ODM在庫など不適切なものもかなりあったようだ。

2016年度IFRS導入は予定通り、その流れで会計処理をした面もあうようだ。また会計制度を厳しくしたことでのコスト増は特にないようだ。なおディスクリート減損中心に、他部門も含めてだが100億円程度の償却費が減る分、増益要因となる。

今期の見通しについては、上期決算の時にメッセージを出したいとのことだったが、1Qは、PCTV、白物など、例年より厳しく、中国関連のエレベータも不安がある。また今後、公共案件などでは指名停止などが顕在化すれば、そう楽観できないだろう。

新しい有報で記載された繰税に関連する欠損金だが、1兆円強を20152023年度で回収しなければならず、税前利益が1000億円は最低いるだろう。2014年度の「実力」営業利益3000億円強なら十分だが、20082014年度では、平均500億円、-3361億円から2018億円と分布し、1000億円を超えたのは7期中3期であり、十分ではない。この辺りを勘案してPCTVのリストラ費用も踏まえ、2015年度が計画されよう。

残された疑問点あるいは開示改善事項

長期資産に関連して、割引率が明示されていないが、最近、パナソニックの中計説明会でもあったように、割引率を考慮してポートフォリオ見直しや評価をするという方向性であり、特に多様な性格の異なるコアを持つ東芝の場合は、割引率も示すべきだろう。特に欧米企業に比べ日本企業の割引率は低い可能性がある。また、今後、IFRSが導入されれば、より時価会計的になり将来の見通しが現在の価値に反映される要素が増える。特に原発など長期の場合は、そこをコンマ数%変えるだけで大きく数値が異なってくる。簿価主義の場合は過去の実績を示すのがIRだったが、より将来の見通しを出すことが重要になるだろうし、そこに経営戦略の意思も反映される。

 コアである電力やセミコンでのJV、有報では想定最大損失額が示されているが、その中身を開示すべきだろう。電力では、STP減損の影響だと思われるが、その額が300億円以上減っているのに、セミコンでは、NANDのサンディスクとのJVが中心なのはわかるが、ディスリート減損もあるが1800億円弱もあり減っていない。グローバル化や提携が増える中で、ここも重要になる。

棚卸は流動資産ではあるが工事進行基準の対象1年以上ものもあるが、「産業界一般的慣行により全部含めている」が、これだけ問題になったのだから分けるべきだろう。なお、回答は800億円位と、全体の10%以下と少なく、これ以外に工事進行基準の資産計上はないようだ。なお、注記では、約1兆円の棚卸資産のうち、製品が3700億円、仕掛品のうち長期契約が827億円、その他が3486億円、原材料が1999億円となっており、この長期契約だろうが、製品の中にはないのかどうか。仮に、この827億円だけとすると、ほぼこの5年間800億円前後であり、累計では4000億円であるが、最初の特別調査委員会で出た工事進行基準で不適切案件が500億円であったことから、不適切会計の確率が10%もあったことになる。社会インフラの受注規模は1兆円規模だが、その中で、1年以上、2年以上がどういう分布になっているか開示してほしい。

 WHについては、8/18と同様の資料が示され、堅調な事業環境が強調されたが、東芝からの債務保証が前期の4920億円から5816億円(全体では8000億円超)へ更に拡大しており、違和感が残る、原子力で売上が6200億円とすると、海外が4000億円ゆえ、売上に比べ債務が、かなり多い印象である。10%増収に対し債務保証が20%増なのはどうしてだろうか。

 なお、8/18の質問でJDIセントラルの債務免除益1000億円弱の東芝側の損については、過去数年間で少しずつ引当処理をしていたようだ。非常に簡単にいえば、本来のTMDの価値をVとすると、TMDからシフトした際に、V1000億円 でのバリエーションで売買され、JDIに株を売ったことになる。JDI1000億円のバリエーション分だけ、割高に買ったが、それを1000億円弱の免除益で相殺していることになる。バリエーションが1であれば、まったくチャラであるが、そこで、やや議論があるとすると、INCJがその分は高めで買っていることになることだろう。この件については、まだ自分の中で完全に消化しきれていないが、20112012年度は、液晶、ケータイ、HDDLG買収と、INCJと富士通に関連してややこしい。日経ビジネスで指摘されていた富士通に譲渡したケータイ事業の不正会計の存在の是非も含めよく確認しつつ考えたい。