2015年9月15日 東芝の1Q補足説明会で気がついた多くの事

投資家アナリスト向け補足説明会に参加した。とりあえず2013年度以降の数字の修正が多かったが、工事進行基準案件やライフスタイル等の内訳で金額が大きいものもあった。また、昨日の今日であり、多くの質問はまだ保留である。

セグメント別

電力社会インフラ

電力は、ほぼこれまでの説明の範囲内だった。20151Qの海外が物足りなかったが、たまたま、端境期だった上、燃料の期ズレもあったようだ。

社会インフラでは、サプライズがあったのが系統変電の悪化である。2013年度はこれまでの説明では黒字とされていたがかなりの赤字、三桁以上と推定され、2014年度も従来は黒字とされていたが、やはり、縮小はしたようだがかなりの赤字である。

新興国など案件の悪化や引当金の積み増し修正、材料の高騰などが背景ではあるが、まだ不明である。他方、ソーラーは三桁黒字で、系統変電を相殺するような印象。注目のLG社は黒字だが従来よりも少ない模様。

 特にネガティブサプライズだった系統変電は、スマグリッド、スマートメータ関連であり、世界的に、成長市場として、積極的に取り組んできた。

1900億円で買収したLGだけでなく、2008年にブラジルの変電メーカーCCES50億で買収、09年も落札はできなかったが、アレバの送変電部門の買収に意欲を示した。東光電気とJV、インド国営企業ともJV、イタリアのアンサルドT&D、オーストリアのVBも数十億円で買収している。当時、政府の政策もあり、内外で積極的にM&Aや提携を進めてきた。

しかし、その結果が、話題にもなった東電のスマートメータのトラブルや、多くの赤字受注であり、不正会計の元ともなった。今回の大幅な減額修正を見ても、その意味では、2006年辺りからの積極策が裏目に出た印象だ。あるいはまだ先行投資期間なのであろうか。

コミュニティソリューション

2013年度も2014年度も500億円を超える黒字であり、うち半分をテックが占め、新しい柱として注目しているが、テック以外でもビルが100億円以上、環境関連も数十億円で次ぐ。キャリア社の空調は黒字、ライテックの照明はスレスレである。ビルは黒字ではあるが、利益率は7%前後と、日立や三菱電に、やや劣り、空調も、M&Aで伸びてきたダイキンやM&Aで攻勢をかける三菱電機に比べ弱い。今後、エレベータや空調は、BEMSなど、ビルのトータルマネジメントの中でシナジーを追求すべきであり、強化したいところである。米UTC社との提携報道があったが、その成果や進捗はどうなったのだろうか。

ヘルスケア

コンスタントに200-300億円の利益は出ており、新規事業の先行投資分を補って伸長しているが、他社も強化しているところであり、M&A資金余力が無い中でどうするか注目である。

電子デバイス

過去分も、NAND中心に上方修正されている。その分は、今回の不祥事でも課題になったディスクリートとシステムLSIが減額となった。2013年度は説明会でもあったようにNAND30%近く、ディスクリート、システムLSI100億円近い赤字。2014年度はNAND25%前後で、ディスクリートはゼロ、システムLSIは数十億の赤字。

なお、説明会での20141Qの上方修正は連結のニューフレアテクノロジーの会計的調整によるものだったことが判明した。

ディスクリートは、これまでの戦略の成果が出ていない。

GaNに強い米ブリッジラックス社と提携、同社のLED開発部門も買収、白色LEDを強化、またGaNパワーやIGBTSiCなどを強化、加賀に数百億円の設備投資を行ってきた。2012年度には売上の半分の白色LEDとパワーを2015年に70%にする計画だったが、立ち上げが遅れ赤字で足を引っ張った。今回の減損処理を考えると、これらの積極策が裏目に出ている。

システムLSIは、むしろ、これまでアセットライト化、製品も絞り込みを進め、特にクルマ関係に集中する方針だったが、成果は出ていない。またCMOSセンサーももう一歩で優良顧客を確保できず楽ではない。かつては、アナログやセンサー等が6-7割、マイコンが3-4割だったが、現状は、CMOSセンサーが過半、アナログ等が3割、マイコンは1-2割くらいではないか。工場も償却は進む中で、黒字が出ないのは厳しい。開発費も負担できずより悪化しているのだろうか。CMOSセンサーはメモリの量産力に期待だったが、まだ赤字だろう。

NAND以外は成果でず

今回は、システムLSIは全額減損済、ディスクリートも減損実施というが有報では、大分工場、岩芝、加賀、いずれも設備は残っていることについては、今後確認。なお、現状は岩手は、マイコンとCCD、大分でCMOSセンサー、アナログ、一部SOCと考えられ、6φはない。

かつては、システムLSIでも先端をいき、ディスクリートも安定した収益性を維持していたが、システムLSIでは縮小均衡の中でなかなか成果も出ず、積極投資のディスクリートは裏目に出ており、うまくいっているのはNANDのみという状況である。

NANDの収益低下? 

ただ、そのNANDの収益性悪化は懸念事項である。2013年当時の為替は95/ドル前後であり、現在115-120円とすると、20%以上の円安である。四日市から輸出が多く、仮に8000億円規模で8割としても6000億円以上は円安メリットがあることになり、やや控えめに見ても、それだけで1000億円の利益増になる。2013年度の利益を2400億円とすると、2015年度は売上横ばいでも3400億円規模、営業利益率40%でもおかしくない。値下げや償却増があっても、今期の営業利益率20%、営業利益1600億円ならば、1800億円の差異がある。逆にいえば、為替が逆戻りすれば、営業利益は1000億円以下、10%強となり、30%から大きく低下していることになる。これが、為替の影響を避けるために、円建てを増やしたか、円安分、米系など値引きが厳しかったのか、不明である。あとは考えられるのが、特許収入のピークアウト、ミックス悪化、厳しいディスクリートやシステムLSIの開発や人件費など共通の部分の負担が増えているかもしれない。しかし、今、95年なら、どうなのか、競争力が落ちていないか、好業績の中で、水ぶくれになっていないか、再度、収益性の検証が必要だろう。

ライフスタイル

2013年度から、修正後はTVPCも、100億円どころか、200億円以上の赤字が続いており深刻である。他方、白物は2013年度50億円の赤字、2014年度は500億円の赤字だが、うち減損が400億円弱ある。今回、なぜ、ここまで減損が必要だったのかは不明。

在庫など

あと在庫については、まだ確認できていないが、今回の問題が発覚したのが4~5月であり、当初は工事進行基準が中心であったので、ライフスタイルも半導体も、ブレーキを効かせず、短期P/L拡大に突っ走っていた可能性はある。1QFCFの悪化がまさに、それを裏付けている。ただ、私の試算の5カ月の在庫という水準が正しいかどうか、あるいは、ブレーキを効かせるのが遅かったのか、あるいは半導体で撤退や工場閉鎖が近いので顧客の為に在庫を積んだのかは不明である。マーケットでは、東芝がアナログやパワーで安値投げ売り攻勢という話もあり、ブレーキを効かせるのが遅かったのだろう。9月末の在庫水準が注目される。また売掛急減も未確認。

2015年度は上期赤字の可能性、通期も1000億円もいかないのではないか

総括すると、2015年度決算は、在庫の多さに加え、系統変電の慢性赤字、NANDの収益力低下傾向、HDDも赤字拡大の可能性もあり、もし、CFを重視し、リストラを粛々とするのなら、上期は赤字が不可避ではないか。また年間でも、減益は避けられないどころか、NAND市況次第では、1000億円を割り込み、数百億円程度にとどまる可能性も出てきた。

少なくとも、四季報やコンセンサス予想の上期1000億円以上、通期3000億円以上はかなり難しいのでないか。これまで同社は、PCTVさえリストラすれば、3000億円は十分にいけるという見方が多かったが、第三の柱が見えないと、メモリ一本足であり、目線を1000~1500億円に下げなければいけないだろう。

なお、税前利益に関しては、コネ社売却益1128億円、トプコンで430490億円(税前で265300億円)があり、1500億円以上となるが、リストラ費用次第であるが、当期利益黒字は可能であろう。ただ、これらは包括利益では関係なく、株主資本改善への影響は少ない。

2005年以降M&Aに頼った分が裏目

改めて、感じたのが、系統変電関連のM&Aや提携、ディスクリートの積極投資が裏目に出ており、2005年以降、内部成長よりは、派手な提携やM&Aに頼る姿勢が増えたように思う。また、TVPC、システムLSIでは、逐次投入的なリストラで、却って傷口を広げた。こうした状況は、不正会計事件と、表理一体であり、経営姿勢あるいは風土というものが2005年頃からか大きく変わったといえよう。田中前社長は、M&Aでヘルスケアなど積極策をうつ姿勢であったが、今回の事件がなくとも、早晩、景気の変わり目には、大きく躓いていいたのではないか。その意味で今回の件をチャンスとして頑張って欲しい。同時に、不正会計だけでなく、この10年くらいのM&Aや提携も、見直し、評価や検証が必要だろう。