2015年10月28日 日立の説明会とグループ再編への私案

102817-18時でいつものように中村CFO以下説明。質疑は、セルサイドの細かな数十億円の数字の確認や、聞いても答えがないような子会社再編や来期の増益の可能性など。今回は残念ながら時間の関係もあり質問が回ってこなかった。

立派な業績だが

上期は6部門で640億円のOP上ブレで、OP2740億円だが、通期は下期の中国中心の不透明感を考慮し不変、OP6800億円。上期としても通期としても最高益更新。

上期のコアFCF888億円、通期は20002600億円いけそう。CCC74.5日と更に7日短縮でM&A資金が増えている。

セグメントで、情報通信の下期はややハードルが低くはないが、昨年のNW等のリストラ効果100億円や、サーバー堅調で、上期のIT受注も8%(金融20%)であり、プロマネがしっかりすればいけそう。上期は強いが下期下方修正はビルや一部プラント系。リーマンショックというような波乱は無いにせよ、子会社で建機や金属等が下方修正、エレベータ受注も10%減など中国景気が減速する中で、この成績は素晴らしい。

決算説明会で何を聞くべきか

決算説明会では確かに数字は重要だが、もはやOP6800億、中期では1兆円を目指す企業に数10億円を詰め、上ブレ下ブレ、などを聞いても仕方がないし、ガバナンスコードでも批判がある短期志向を助長するだけである。

さりとて、中期の視点で重要であり、皆が関心があるのに、それが不透明であるが故に株価の上値を抑えている来期動向やグループ再編について、直接聞いても答えが出てくる筈がない。

そこで、中期の方向性を探る変化球をどう投げるかがアナリストの腕前であり、そのわずかな反応やピースを組み立てていくのが本道だろう。あるいはせっかくCFOが登場しているのから通常IRでは答え難い質問や感想を聞くべきだ。

明日朝にレポートを出す事情はわかるが今日の説明会の質疑の大半はIRに聞いた方がいい内容だった。あるいは先日既に上方修正があったので聞ける話だろう。

聞きたかった4つのこと

私は聞く予定だったのは、①TPPで生産体制が変わるか(特にクルマ等)、②ストレージへの再編が大きいがどう考えるか、③金融や物流が上場修正だが商事機能、スマトラも含め、効果がどのように出ているか、④英国政府が中国製原子炉を導入との報道があるが、日立が英国で展開しているホライズン社への影響はないのか、である。

このうち、①と④は今ホットな話題であり、想定外かもしれないが答えられ、答えるべき内容だろう。②、③は再編にも関係はするが、上期を踏まえて、ある程度、回答は可能だろう。

特に、④については、誰も聞かなかったのが驚きであった。②も、デルがEMC買収、IBM不正会計事件もあり、それに絡めて、日立トップの見解を聞いておくべきだろう。残念だったが、急ぐ話でもないのでまたの機会に聞きたい。

それよりも、投資家も含め多くの関係者が気にしているのが、グループ再編である。リーマン後の第一次リストラから5年を経過、当初、全体を支えた材料や建機はピークアウト、当時、物足りなかった社会インフラは育ってきた。

2020年に向け、世の中が大きく動き、IT、半導体業界が再編の中、そろそろ日立も第二次リストラ、グループ再編が必要であることはトップも十二分に分っており作業も進んでいるだろう。そうでないと、中国が予想以上に悪化した場合は、建機や材料、装置系が手遅れになる。

そこで、30年の担当者としての知見と、IRデーや、決算から微かに見える状況をヒントに、大胆な再編の私案を示したい。これは、以前、会社側には伝えてあり、「仁義はきっている」が、当然といえば当然だが特にフィードバックもないので公表したい。

あくまで独断であり妄想も入っている。ただ、それによって、世の中に議論のたたき台を提供して、投資家はじめ関係者のビジビリティを高めることで中長期の株価形成や、戦略にもプラスになれば幸いである。

 

グループは、日立I、日立D、日立C、日立Sの4つに分ける

 日立は以下の、4グループ、日立I(インテグラル)、日立D(デファレンシャル)、日立C(コモデティ)、日立S(サポート)に再編すべきだろう。

第一は、日立I(インテグラル)。インテグラルは、総合、統合、積分、IにはITIも込めた。日立のコアであり、社会インフラ事業が中心である。情報、社会インフラ、電力、交通、都市、医療、場合によっては、情報と制御は横串でもある。

これは、垂直統合が生き、時間軸でも積分的であり、規制も鍵となる。量産とかコストダウンでなく、一品単位、一システムの受注であり、長期のプロマネ能力、顧客との共創能力、オープンイノベーション、契約力が鍵になる。まさに日立らしい事業。経営重心では、「ジャパンストライクゾーン」の左下。欧米が強く、韓国台湾中国が弱い領域である。

 第二は、日立D(デファンシャル)。デファレンシャルは微分、Dはデバイス(ハード)の意もある。ここには、NW、装置、建機、クルマ、などが入る。クルマはここか、次のところかは、分野にもよろう。材料もここに入れるべきものも多いだろう。

いずれも、NTTとかトヨタとか顧客が強く、微分産業で、顧客の設備投資依存型である。先行指標的な分野が多い。むしろ顧客の意図をどう理解し、形にするかであり、多くの日本企業が得意な分野でもある。NECや富士通等の電電ファミリーはここだ。

損はしないが10%以上のOPMも容易ではない。ここも共創だが、オープンイノベーションというより、セミオープンくらい。

中規模量産であり、在庫管理が鍵。ジャパンストライクゾーンの真中である。

第三は、日立C(コモデティ)、まさにコモデティであり、ボラが大きく、量産志向のものであり、BtoCが多い。材料の多くや、白物など、場合によっては、クルマ向けもあろう。

ここは、日立が不得意だが、子会社で手掛けてきた分野。ジャパンストレイクゾーンの右上の韓国台湾中国が強く、あるいは部品材料といった分野。設備投資などのタイミングが重要になる。撤退したDRAMやスマホ等もここである。コアでは無し、日立の管理経営では難しい場合もあるので、自由に経営を委ね、出資比率は少なくてもいいだろう。

 第四は、日立S(サポート)、横串の部門である。サポートのSであるが、スペシャルのSでもある。今後、日立の勝利の方程式は、ITといろんな分野の掛け算であるが、ITだけではなく、金融、流通、商事の4つが揃って有効になる。

元々の勝利の方程式 IT×(社会、交通、都市、農業。。。) 

本当の勝利の方程式(IT×金融×流通×商事)×(社会、交通、都市、農業。。。)

ここで、IT×金融は、流行のFintechIT×流通は、Googleであり、金融×商事は、ファンドである。このようにITだけでない横串要素を入れることで、ビジネスモデルが豊富になり、ITのライバルと比べ、日立の強みが生きる。他のIT企業にないのは社会や交通といった応用分野だけではなく、物流、金融、商事もである。

ある意味で、この横串が、再編のキモであり、IT部門をこちらに入れるか、最初の日立Iの方に入れるかは悩ましいところだし、社内にも議論が出よう。ITには、情報、通信、制御があるが、少なくとも、制御は、この横串であり、大みか工場を中心に日立の強みである。この制御だけでなく、情報の全体をいれるかどうかは難しい判断だろうし、時間軸でダイナミックに代わっていこう。横が強い場合、縦が強い場合、リソースをかえ、遊撃部隊的にすればいい。これは、金融である日立キャピタル、流通である日立物流も同様だろう。問題は商事機能の日立ハイテクであり、現在のハイテクを分割し、キャピタルと物流と統合することになる。

 

4部門の規模

 現実に、上場会社もあり、人事面もあるので、売上や利益のバランスも重要である。上記のように分けると、本体の日立Iに対し、子会社群の日立D、日立C、日立Sは、同規模となり、存続会社をどうするかの場合にも都合がいいだろう。

日立Dは、売上1.8兆円、営業利益1400億円。クルマをいれている。ここでは、建機、ハイテクの装置と医療、国際、産機などが中核になる。

日立Cコモデティは、売上2.3兆円、営業利益1500億円。家電は入れてもどちらでもいい。

日立Sは、売上14兆円営業利益700億円である。横串機能会社だが、日立ハイテクの商事部門が金融と物流と合体して、ITに強い総合金融商社を目ざすのである。

このように、ほぼ、同様の規模感であり、それぞれも、何となく落ち着きがよい。なお相殺消去は不明、クルマは未定である。

メリットと方向性

経営重心視点からも、スマトラ管理からも、コンとロールしやすい。建機、SPEは微分産業、先行指標なので、ここを強化すれば、景気遅行的なインテグラル系、ソリューションインフラ系とバランスがとれよう。

また、インダストリ4.0、ビッグデータ活用において、建機、国際、産機+プロダクツ、などでシナジーがあるだろう。日立国際のNW無線技術を他へ展開でき、SPEは拡散炉とエッチャ、SEM等、一層、シナジーと補完が可能で、KLALAMとの対抗手段になろう。さらに、まだ狭いが、ロボットやFAシステム全体へ広がる。

日立国際は、それだけだと建機にのみこまれる感じだが、ハイテクや産機などあれば、バランスがあある上、NWで貢献できる。建機も、コマツに近い規模となり、コマツに対しても、IT力やサポートの力も増すだろう。

ハイテクは、SPEはともかく、医療などを取られるのは嫌だろうが、キャピタルと物流いっしょで存在感を増し、本来の商事機能を発揮できよう。

これまでは、社会インフラとの掛け算を目指されていたが、本来、社会インフラはソリューション志向なので自身が商社的で直接、ユーザーと共創をやる。今は、社会インフラ向けだと、商事の存在意義が難しいが、コモデティも含め、多分野であれば、自由度も高まり、むしろ、コモデティや、中規模量産のほうが力を発揮できよう。

ITと物流、金融は、相性がいいが、金融と商事も、総合商社ではファンド機能として、必須でもある。合体する日立サポートは、総合商社、総合金融を目指してもいい。

 本体の日立Iと、傘下に3つのグローバルでも行き残れる規模の3社に再編することが今後の日立にとって不可欠だろうし、投資家からも理解しやすくなるだろう。