2016年7月1日 ソニーIRデーと中長期の生きる道

 

629日、1050分から1710分まで、経営説明会とIRデー。平井社長による説明会はテレコンで視聴、ゲームやエンタメは非参加、14時半からのエレキ分野、モバイル・コミュニケーション、イメージ・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテイメント&サウンド分野、半導体、に参加。

 

経営説明会では中身が変化、5000億円以上OPへ複雑な想い

 

 2015年度実績のOP2942億円、NP1478億円に対し、2016年度は震災の影響による被害や機会損失・カメラモジュール撤退もあり、OP3000億円、NP800億円だが、2017年度の中計目標については、前回と比べ、OP5000億円以上、ROE10%は不変だが、為替前提やセグメント変更もあり中身が下記のように変わっている。

 

基本方針やミッション、ロボット再参入も評価できる

 

 基本方針は不変で、①規模を追わない収益重視、②各事業ユニットの自立と株主重視、③各事業の位置づけの明確化。家電はTV黒字化、MCも黒字化、ゲーム好調、新しいネットワーク事業やデバイスは成長と総括した。

 

経営陣の役割分担、これまで空白だった資本家型トップ

 

想像だが、経営陣が、マネジメントの役割分担を明確にし、平井氏は、外部一般向けへの司祭的役割、吉田CFOが資本家としてのトップ、そして各事業はKPI管理をしっかりして各人に任せ、かつオープンイノベーションで補うのだろう。経営重心®でみれば、創業来、AVという比較的狭い事業ドメインで成長を続け、井深・盛田という稀有な経営も技術もわかるコンビが、事業家型トップとして牽引してきたが、90年代から多角化を模索する中で、トップが、事業型から資本家型にシフトすべきところを、大賀氏は、その延長線か、あるいは出井氏も含め、いきなり、司祭型に跳んでしまった。その後、平井氏が、調整や資本家としての役割も担いあるいはストリンガー時代までは、社長の機能のうち、調整評価や資本家型が空白であり、ポートフォリオ管理が不在だったように思う。それゆえの連続赤字であり、2007年度から2014年度は、累積OPと累積NPのベクトルが逆であり、OPの処理が不適正であったと推定できる。

 

 

 

経営重心®による分析と提言

 

経営重心®では、ソニーは、イメージセンサ、スマホ、デジカメなど、エレキ系中心に右上が多い。これまで、ジャパンストライクゾーンから外れ、苦戦だったスマホやTV、デジカメ等はウェイトが減り、PC等はカーブアウトした。更に、スマホ向けカメラモジュールも撤退した。つまり日本が弱い「ジャパンアウトゾーン(右上)」は、デバイスと外国人経営によるエンタメ事業だけである。

 

今後のソニー~出すセットと入れ直すセットやデバイス、サウンドやメカを強化

 

したがって、今後とるべき方策は、以下である。モバイル・コミュニケーション分野by十時

 

 今回、大きく下方修正したが、市場の見方を7%から1%強に下げ、単価ダウンも厳しくみたため。

 

IP&S分野by石塚

 

昨年と比べ、メディカルが加わり、クルマ向けが、デバイスに移った。製品軸と顧客軸で組織を再編。コンスーマー、プロ、メディカルとした。

 

HE&S分野by高木

 

 質疑の中で、将来性に期待がかかるサウンド分野についてはヒントがあった。サウンドは、ドメインを狭く限定せず、次期中計では、TVを大きく上回る売上や利益を期待したい。

半導体分野by清水

 

震災については、先日の業績説明会の話と併せて記す。大きな調整でリスクを感じたたろうが、これは半導体市況の常であり、逆張り、強気が重要である。その意味でも、カーブアウトし上場させた方がいいだろう。ただ、それにしても、ソニーの情報収集力はまだまだであり、決断も遅い。今回は、話がなかったが、デバイスの中での電池などの展開も鍵だろう。

 

補足~振り返って

 

ソニーの最高益は97年度の5200億円強であり、営業利益率も8%近いが89年度の10%には及ばなかった。

 

なぜスマホやTVを諦めないのか

 

アップル、サムスンなど世界の強豪が集う激戦区のスマホやタブレットで量を追うのは厳しいし、そもそも、台数成長率は鈍化し、中国ローカルの参入で、サムスンでさえ苦戦を強いられてきている。

 

遠因は80年代の大賀時代から~既に成長は終わっていた

 

90年代のポートフォリオ転換が不十分だったが、問題を遡ると、大賀時代、黄金の80年代を築き上げた森尾副社長が退任辺りに遠因があるような気がする。ストリンガー以前は、VAIOPSAIBO、など面白いものがあった。経営陣の中にも久多良木、近藤、などユニークは技術者もいた。しかし、その後は製品も人物も、魅力が失せていった。

 

技術の目利き、R&D体制の問題

 

90年代にポートフォリオの転換が遅れ、成長をけん引する新分野が少なかったという意味では、パナソニックに似た技術の目利きの悪さもあるのではないか。

 

研究開発で集中&選択?

 

また、昨年の中計では、将来の研究開発についても説明があったが失望させられた。キーワードは絞り込みであり従来の画像やデバイス分野が中心であり新規性が無かった。現在は、新技術はエレキだけでなく、メカやバイオエレクトロニクス、生物模倣、人文社会科学などダイバーシティ、あるいは研究開発のワイドバンド化が鍵だと思う。 

 

OBやソニーファンが会社の転換を遅らせたが

 

映画音楽金融の下支えがあり、外部からの間違ったソニーファンの声がある分だけ判断を誤ったのかもしれない。

 

ようやくスタートにたった

 

 今回の経営説明会、IRデーでは、まだ不十分な点が多いが、前回に比べれば、よく練られ評価できる。高齢化社会の中で、ソニーが与えなければならないのは、ワクワクするような感動ではなく、ジーンとくる深い感動、癒し、かもしれない。ソニーはソニーであっても、若く挫折がないソニーではなく、苦労もして燻し銀の味わいが出たソニーである。中長期での復活を信じたい。