2016年7月16日 筑波精工~静電チャックのベンチャー

 

3か月ほど前に、栃木県河内郡にある筑波精工を訪問、ラインや製品を見学した。最寄りの駅はJR宇都宮線石橋駅で日産栃木工場に近いが、筑波山が見えるので筑波精工という名になっている。

 

http://www.tsukubaseiko.co.jp/ 設立は1985年だが、元々は三洋電機の半導体の後工程を担う三洋シリコン電子の外販部門として設立され、後工程関係の設備を設計販売していた。

 

そもそも、技術は、90年代に東大とKAST(神奈川科学技術アカデミー)で開発したウェハや薄板ガラスの非接触搬送を目的とした静電浮上技術の研究に遡る。ガラスに静電吸引力を発生することを可能とする電極の構造を考案することにより、世界で初めて,ガラスの非接触浮上と搬送に成功した。この技術を基礎として,従来のものとは仕組みのことなる種々の静電チャックを展開している。

 

導体・半導体・絶縁体、多孔質、フィルム、紙なんでもOK

 

筑波精工の静電チャックの特徴は、薄型ガラス基板、絶縁フィルム、金属箔、半導体ウェハ、多孔質材、紙といった、バキュームチャックやメカチャックでは吸着が難しい対象にも適用を可能にしたことである。

 

積層されたワークでも1枚だけでも吸着、裏面に電界がないので、ゴミやホコリの吸い寄せもなく、裏面電離はゼロで裏面の半導体に影響を与えない。ロールtoロールや、OLED用の多数の穴があいた短冊状の蒸着マスクには有用だろう。

 

静電チャックも製品ラインを充実、真空中でのOLED基盤向け保持、8インチ-6インチのサポート用にウェハハンドや、プリンタやATM向けに静電ベルトにも拡大している。

 

デモを実際に見学したが、ウェハやガラスだけでなく、名刺や薄い紙も、ピタッと吸着し、不思議な感じだ。6インチを8インチサイズに乗せる装置や、G4OLEDガラスの真空(10Pa)デモは圧巻であった。なお、ガラス厚さは0.4mm、重さは0.5g/㎠だが、吸着力は50g/㎠と強い。

 

課題はコスト

 

これまで液晶関連の新ライン、特に真空中でのハンドリングが難しい工程が立ち上がる時には、採用が多いようだが、それ以外や、半導体では関心を持たれるものの実績がないのは、コストであろう。

 

その中で、キャリア型製品サポータは注目できる。MOSFETIGBT向け半導体は1年以内にウェハ50μm厚の製品が量産に入り、MEMSや他のスマホ向けRF半導体も100μmを下回る中で、キャリア型静電チャックは接着方式に代わる可能性が高い。キャリア型静電チャックの特徴は、無外部給電で半永久吸着保持、吸着解除は印加電圧制御で実現、0.6mmと薄く、プラズマやウェット環境にも適用可能である。課題の価格も近付いてきた。