2016年8月12日 東芝の1Q決算の真面目な開示に感動した

 

81216-17時過ぎ説明会に参加、平田CFOがプレゼンと質疑対応。HPで質疑も含め全部視聴できる。なお、夏休み投資家に配慮してか1715時半から東芝本社でもう一度同じ説明会がある。

 

真摯な開示

 

 冒頭、平田CFOより、決算期が遅れたことに関連して、前回決算修正があり、監査法人がPWCに変わったこともあり、レビュー報告書を貰い慎重にチェック、45日以内ではあるが、遅くなったと謝罪。

 

 プレゼン資料も、セグメントの詳細な売上内訳とOPに加え、今回は、それぞれのFCFまで開示され、またB/Sの詳細や暖簾・固定資産の状況、さらに、市場の関心事である、①CB&I社からのWEC訴訟、②フリーポート社のLNG事業の件、③PBOの割引率の内外内訳開示、など非常に真摯かつ分かり易い。

 

また、プレゼン自体も、資料の棒読みではなく、CFOとしてのポリシーと背景の説明まであった。FCFでは債券流動化を無くしている影響が1000億円の悪化要因としてあるが、これは運転資金の実態を正確に見てみたいという理由からだそうであり、素晴らしい。また、為替変動に対し、基本はフルに予約をいれヘッジしたいが、今回は急な円高で全部カバーできなかった。こういう方針も明示されると、よくわかる。質疑に関しても誠実な回答。

 

平田氏は、前職の東芝テックのCFO時代から実直な印象だったが、さらに誠実に真摯に開示しようという姿勢が滲みでている。もちろん、CFOだけでなく、CEOIR以下、会社の姿勢がそう変わってきているのだろう。915日の特設注意銘柄解除に向けてということもあるが、大きな変化を感じる。特設注意銘柄解除に向けては困難もあり、円高下でB/Sも安心できないが、こうした反省に基づいた真摯な姿勢は伝わるだろう。

 

1Q決算はNANDが想定以上で上ブレ上期上方修正

 

 1Q決算は売上1.2兆円、OP201億円、税前72億円、NPは白物家電売却益計上で798億円。上期を売上2.352.47兆円、OP赤字200億円→300億円、NP200700億円と500億円上方修正。1Q黒字も珍しいが、このタイミングでの上方修正は異例。なお、下期(8月以降)は為替100円に変更、通期は不変。

 

ほぼ全セグメントで改善

 

エネルギーシステムソリューション(以下、エネルギー、他セグメントも同様に略す)が、OP赤字18だが、原子力、火力水力、送変電配電、LGの全サブセグメントで改善、LGは黒字継続。FCFは赤字607億円と大幅マイナスだが前年4Qに前倒し入金があった反動

 

インフラはOP23億円の黒字はこの時期では異例だが緊急対策が大きく通常は50億円前後の赤字だろう。前年からも大幅改善、FCF112億円の黒字で前年からも大幅改善だが、コネ社の売却益があった前期を上回ったのは立派。

 

ストレージ&デバイスは、OP241億円、メモリがゼロで見ていたが173億円の黒字、Opm9%q/qでは悪化だが円高の中で踏みとどまった。y/yでは102億円減益だが117億円が円高、賞与カットの緊急施策55億円ゆえ、実態は50億円の減益

 

インダストリアルICTOP赤字9億円、FCF199億円、上期OP6535億円の評価は難しい。他部門とのシナジーが重要。

 

その他では、PCが黒転は立派、TVは赤字で今一歩だが大幅改善。やや下ブレの模様で上期はOPやや下方修正。

 

B/Sは円高で為替調整勘定悪化が足を引っ張る、PBO割引率は懸念払拭

 

B/Sは、株主資本比率が7%3361億円、D/E179%とまだ厳しい。株主資本では、q/qで資本金・剰余金は778億円改善したが、円高で為替調整勘定が812億円悪化したため。固定資産と暖簾も、主要な部門別に開示されたが、円高でやや減少したが、減損などはなく、実態変化なし。

 

トピックスでの開示では、CB&Iの訴訟は、どっちに転ぼうと影響なし。また、PBO割引率は、1.1%と他社に比べ高いことが懸念されていたが、今回、明確に、内外に分けて開示され、国内の加重平均は他社並の0.6%、海外が3.5%であることが明らかになり、これで懸念や不信は無くなっただろう。

 

今期は為替100円より円高でなければ上方修正だろう

 

前期に思い切って膿を出し、構造改革の効果が確認でき、円高とNAND市況のリスクはあるが、上期も実態はOP500億円、通期OPも会社側計画は1200億円だが1500億円は視野に入り、1800億円の可能性はあろう。この中で900億円が緊急措置なので、1800億円の場合も実力は900億円に過ぎない。来期以降は、その分が減益要素となる。まず、900億円のうち400億円は既に上期に実施されるので、のこりの500億円は期待せず、それで13001400億円程度を目指し、来年度の減益要素を400億円にとどめ、そこは実力で挽回、増益を維持したいところだ。

 

また、自力で黒字ベースになったとはいえ、PCTVの売却を進めたいところだ。特に、TVはなお、下ブレ気味であり、中国台湾でも起きているTV業界の再編を利用したい。さらに、デバイスのファウンドリは不安があり、一段の再構築を期待したい。

 

まず、915日の特設注意銘柄解除が当面の最重要課題だが、その後、2年くらいが重要だろう。東芝が実力ベースで、どの程度の業績が出せる会社であるかは、まだ分からない。ただ、開示姿勢や社内管理も含め大きく変わりつつあるのは事実だろう。