19日17時半-21時位に開催された、「かわさき科学技術サロン」に参加した。このサロンは、研究所が多い川崎市の周辺で活動中の研究者技術者の交流の場である。http://ks-salon.com/ 主催は川崎市と先端技術産業戦略推進機構。今回は31回目で、10年目。年3回開催され、年の2回目は企業訪問。第29回目の日本電産中央モーター基礎技術研究所訪問から参加している。前回2月10日は、元宇宙飛行士、東京理科大学副学長の向井千秋先生による「"宇宙環境を利用した科学技術イノベーション」だったが、残念ながら決算期で参加できなかった。
メインテーマは、AI、ビッグデータ、IOTの現状と関係
今回は、国立情報科学研究所(NII)所長、東大生産技術研究所教授の喜連川優先生による「ビッグデータのインパクト~ビッグデータはAIの食糧、IOTはビッグデータの生成源」と題する基調講演。17時半か川崎市長の福田紀彦氏、場所を提供するNEDO理事の福田敦史氏、世話人を代表して、東京理科大学長、光触媒研究でノーベル賞候補とされる藤嶋昭先生の3名から挨拶、17時40分より喜連川先生より講演。19時より30分程度、神奈川科学技術アカデミー理事長の馬来義弘氏のコーディネートによる会場での質疑討論、19時半より会場を変えて立食パーティで自由討論。参加者は約120名で、最後まで多くの方々が参加した。喜連川先生はじめ、今回も素晴らしいサロンを提供して頂いた藤嶋先生、福永さん、馬来さん始め世話人の方々、川崎市の福田市長はじめ職員の皆さん、NEDOの方々に感謝したい。
講演要旨
喜連川先生の講演は、まず、NIIと100GネットSINET5の現状について紹介。その後、副題の「ビッグデータはAIの食糧、IOTはビッグデータの生成源」の中身について、多くの具体例も提示しながら、解説。囲碁での勝利、MSチャットでのヒトラー礼賛、テスラ事故などAIに関する重要な話題から、AIの限界、またAIとビッグデータの関係について、IBMのワトソンのアプローチから「ビッグデータこそAI」であると指摘された。次に、ビッグデータとIOTの関係についても、分かり易く関西弁でユーモラスに解説頂いた。AIが仕事を奪うとかの見方があるが、実際には、想定内のことが対象で、クローズドな世界で大きく成果を上げたが、想定外には対応できず、オープンな世界ではまだまだである、ということが解った。他方、ビッグデータをとることで、AIは賢くなり、ビッグデータ活用で、ヘルスケア分野はじめ多くの社会価値が生まれる、ということを実感した。最先端で最高峰のAIやビッグデータの研究者から、現状や問題点が明らかにされ、巷の極端な楽観・悲観論ではない、実態と可能性がよく解った。
質疑と討論
質問は、①藤嶋先生から、脳科学とビッグデータの関係、②福田川崎市長からは、地震予知の可能性、また、③私から、AIは麻雀で勝てるか、と、GDPなど経済指数予測への適用、④ロボットでインフラ老朽診断の企業からデータの取り方、⑤女性弁護士から、想定外と想定内の見分け方や教育の在り方、⑥子供にアニメを教えている教育関係者から、AI時代での子供の仕事について、であった。
素人からは簡単にみえて実は難しい質問もあったようだが、いずれも丁寧にユーモラスに回答された。AIやビッグデータに何でも期待するのは間違いで、単に闇雲にデータをとるだけでは、ダメであり、データの取り方が重要そうである。また、そもそもが、地震や急なゲリラ豪雨など、カオスティックなものは難しいそうだ。また、社会への適用では、ルール作りや新しい社会システムのデザインが必要のようだ。さらに、ビッグデータで、病気の予測もあるが、もっと大事なことは、ノーベル賞学者やオリンピック選手など一部の人の生き方は分かっているが、実は多くの普通の人の生き方の多様性が不明であり、それを知ることが、今後の職業などを予想するより重要だと強調された。まさに、AIやビッグデータで、人生の生き方を知り参考にする、というのは感銘を受けた。