9月16日、取引終了後、村田製作所(以下、村田)と指月電機製作所(以下、指月)の資本業務提携の締結などを開示。
指月が保有する自己株式取得(第三者割当563円、総額約22億円)と資本業務提携に基づく合弁会社の設立(村田65%だが本社は秋田指月http://www.shizuki.co.jp/at/index.htmlの所在地)を発表。この結果、指月の株主は、1位の三菱電機の21.31%に次いで、2位が村田13.65%となる。開示資料によると、資本業務提携の狙いは、村田のセラミックコンデンサの要素技術と、指月のフィルムコンデンサの要素技術を融合させた新素材によるEV関連の事業機会。従来から共同開発を進めてきたが、15年に製品化に一定のメドがつき、2018年頃の量産化を目指す模様。
狙いはEVだけではない
狙いは、EVのモータ駆動回路のコンデンサだろうが、過去、村田の説明会でも、クルマ、パワー向けへの開発を進めていた。中期では、EVだけでなく、パワー系や、重電に近い分野も狙うだろう。
村田の経営重心®ベクトルは左下へシフト
経営重心®から見ると、指月は村田の左下、ニチコンやケミコンと比べても下にあり、ニチコン同様に、コンデンサ単体だけではなく、モジュールや電力機器等もある。この経営重心®から見ると、村田の経営重心®ベクトルは、左下へシフトしている。応用市場ではスマホからサイクルが長くボリュームが少ないクルマであり、ボリュームが少ないモジュールである。電池の強化も、ボリュームが小さい方向である。
村田の次の打ち手、指月の将来
村田については、「もはや部品メーカーではない」と主張してきたが、着々と、あるべき姿に向け、M&Aによりピースを埋めている印象だ。指月にとっては、成長資金が手に入り、プラスも大きいが、村田も含め、筆頭株主であり売上でも2割を占める三菱電機との関係をどうするかである。
タワー投資顧問
指月の業績と中期戦略
指月は、2015年度の業績は、減収減益であり、売上217億円、OP21億円、NP13億円だった。セグメント別では、コンデンサ・モジュールが、売上143億円、OP12億円、電力機器が売上71億円、OP24億円、情報機器が売上4億円、OP0.7億円、調整消去が15億円ある。
2016年度計画は、ほぼ横這いで、売上220億円、OP22億円、NP14億円。なお、中計のAIM2018では、売上280億円、OP30億円、NP18億円である。
2015年5月27日 14時~15時 指月電機の説明会(過去のものを再掲)
セルサイド時代は、存在も知らなかった。運用してから、誰もカバーしていない優良企業を見つけるべく、四季報を片っ端から見て、電機関連については、訪問、説明会にも行ける限り行ったが、その中で出会った会社である。独立系だが、やや三菱電機系(同社向けが約20%、資本も約20%)で、鉄道系など重電系や白物系のフィルムコンデンサが主力、そこから応用品を展開しており、コンデンサメーカーの電子部品の進化論のケースとして興味深い。部品メーカーではあるが重電メーカーのような社風である。なお社名は、創業者が出身地の萩の指月城からとったものであり、私は数カ月前に、休みを利用して萩を観光、指月城の城址も訪ね、思いをはせた。前職のCFOが愛社精神旺盛なIRに熱心であり、その影響でファンになった投資家も多い。説明会等で御土産に御菓子をくれることもある。
二部市場の小ぶりな企業であるが、工場見学などIRも熱心であり、また説明会も大物のFMが質問するので、一つの企業を深く分析するには勉強になろう。