2016年9月25日 NewsPicksのユーザベースが上場へ、プロピッカーとして1年

 

NewsPicks」のプロピッカー(全体は100人、小生は電機業界専門)として1年が経過した。電機業界専門(当初は電機・自動車)5~10人だが1年続いているのは少なく、他分野も含めて長い方となった。

 

また、NewsPicks(以下NP)を運営しているユーザベースが、1021日に、マザーズ上場することになった。http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1BS0EM

 

 そこで、NPも含めて、今後のメディアの方向性や、ユーザベースについても考察したい。比較のために他のメデイアも、表にして比較している。それぞれ長年の愛読者ではあるが、読者としての感想・印象的な分析であり、実態は事実と異なる場合も多いだろう。

 

なお、NPについては、プロピッカーとして1か月たった時に、経営重心®からの分析も併せて、記している。http://www.circle-cross.com/2015/11/05/2015114-newspicks-プロピッカーとして1ヵ月/

 

ユーザベース社そのものの将来性等については、NP内で有名である「カイケイ」氏の分析が素晴らしいので、あえて、業績動向などには触れない。http://kaikeipro.com/2016/09/17/newspicks/。ユーザベースは人員178名、201412月期は売上11億円弱、経常赤字4億円弱、純損失4億円弱、201512月期は、売上20億円弱、経常赤字3.4億円、純利益1.1億円である。NP内でも議論されており、その方が参考になろう。https://newspicks.com/news/1784504?ref=user_848263

 

 NPは、経済に重きを置くネットメディアだが、ホリエモンや佐山教授等、政財界、官僚の有名人や専門家等100人の実名プロピッカーや、プロ以上の匿名専門家のピッカー、社内アナリスト、提携関係にあるロンジン等の独立系調査会社のアナリストがピックし、そのコメントが付加価値となっている。

 

 

ピッカーによる「オープンイノベーション」とエコシステム構築

 

また、ピッカー等による寄稿や独自の特集記事が増えており、注目を浴びている。連動するデータベースサービスのSPEEDA等も付加価値に寄与しているようだ。

 

 読者層は、若様ブログとあえて比べると、幅広いが、学生も多く、大臣クラスの政治家から現役官僚、大手企業やベンチャーのトップから現場の若手中堅まで幅広いが、ネット系、金融系が多く、エリート意識が高そうである。やや法律経済系が多く、理工系が少ない印象である。

 

 このピッカーだが、プロもアマも、フォロワー数とLIKES数が公表され、リアルタイムで更新されランキングが掲載される。読者・ピッカーは、それで記事を見て、参考にする。フォロワー数で10万を超えるとかなりの有名人であり、その3万前後が分岐点だろう。ただ、有名人でも、プロでも、ピックしない場合も多く、フォロワーは増えない。LIKESは、注目記事が多いと多くなり、10万を超えると人気者といえる。これも、3万当たりが分岐点だが、フォロワー数が少ないが多くのLIKE数がある場合もあり、面白い。フォロワー数が多くてLIKESが少ない場合もあるが、徐々にキャッチアップする。

 

 

これが、刺激となり、参加者がよい記事にピックし、よいコメントを残そうとして、一種の市場原理が働いている。他方、ランキングを意識しすぎて、一般的、大衆迎合的な記事が多くなり、それが上位ランクに並ぶと、ニッチだが重要なニュースや記事を見逃す場合もある。

 

メディアというよりクラブ活動

 

このピッカーの存在、また、ピッカー同士の交流の存在し、多くのピッカーの「俺が育てた」という自意識や、そこからくるNPへの愛情、求心力が強いのが、大きな特徴であり、他の既存メディアにはない。明治時代ならいざ知らず、今や一流の新聞・雑誌の読者であっても、そこにプライドを持ったり、編集方針に意見する人は少ないだろう。

 

 

他のメディアと比べて、可能性はあるが、コンテンツエリアをどうピッカーと築けるか

 

また、日経など既存の大手メディアと比べると、読者層も広く、内容も広い。ただ、最近、経済紙だった東洋経済やダイヤモンドが、週刊ポストや週刊現代のような人生問題(お受験、進学、就職、出世、結婚、節税、健康、老後など)に注力しており、そこが、まだ弱い。

 

コンテンツの3つの価値

 

 コンテンツ・情報には、①珍しい話、②独自の切り口、③時間差価値、という価値の在り方が考えられる。若様ブログでは、この3つの価値のバランスで情報を提供している。

 

経営重心®では数十分~1日、ロングテールにも強い

 

経営重心®視点からメディアを分析すると、重要なのは、コンテンツの経営重心®ポートフォリオ管理である。つまり、横軸に、情報の陳腐化度、縦軸に、情報のボリューム・流動性(一般度、オタク・ニッチ度)を意識して、編集すべきだろう。NPの経営重心®は、平均陳腐化時間(サイクル)が半日、ボリュームが500ピック位?であろうが、日経等既存媒体より、やや短く、ロングテールが強い印象だ。今後、電子化が進むと、週刊誌や月刊誌もますます厳しい。おそらく誰も、ビジネス週刊誌は読まなくなる。他方、電子媒体では、日経でも、新聞やビジネス、テック系など混在化し、ミスマッチであり、読者に分かり難い。

また、クイック・ブルンバーグや通信社はもう少し短く浅い。

 

ゆえに、1日以下の領域では、NPがかなり強いだろう。

 

ネット空間だけでなくリアル空間も

 

また、書籍は、どんどん、陳腐化が激しく、サイクルは3ヶ月くらいから、1か月くらいで、殆ど月刊誌化している。故に中身も、「生き方とか節税」、あとは恐怖煽り、であり、厳しく、広告収入が減っている印象だ。むしろ、これで空白になった3ヶ月~1年くらいのサイクルの領域が面白い。本来、クラブ的な要素があり、ネット空間だけに限定せず、リアル空間での活動も支援し、囲い込むような試み、集客力があれば、そこにも成長余地があるだろう。