2016年11月17日 有機EL討論会(第23回 冨山)に参加

 

世界の有機EL関連の研究者など関係者が集う「有機EL討論会による公開シンポジウム」が1117日から18日、冨山市の市民プラザで開催、17日の発表と懇親会に参加した。発表会では質問もした。

 

会場はほぼ満員。発表は、NHK、九大、住化分析センター、日立造船など。参加者は、大学や官公庁研究所、JDIJOLED、シャープ、SDPなどパネルメーカー、素材、装置メーカー等。前回6月の第22(東工大)は、業界動向のパネル討論会が圧巻だったが、今回は、アカデミックな内容。

 

http://www.circle-cross.com/2016/06/24/2016623-有機el討論会に参加/

 

http://www.circle-cross.com/2016/06/24/2016623-有機el討論会-特別講演-サムスン-lg-アップル等obleeとサムスンobyi/

 

http://www.circle-cross.com/2016/06/24/2016624-有機elで日本の材料-装置メーカーに期待していいのか/

 

講演概況

 

本日は、まず、冨山大の岡田裕之教授による特別講演、同大学の研究成果である。非常に広範な実績だった。デバイス構造や解析、製造プロセスは、自己整合インクジェット、スプレー法、ペイント法、ローラー法、バーコード法と現在本命の蒸着以外、あらゆる候補に挑戦、また、デバイスも、センサ、発光素子、ソーラー、トランジスタとこれまた多岐に亘る。

 

次いで材料デバイス系が3テーマ、NHKによるTADF関連の基礎的なもの、九大による生体応用を考えた遠赤外、実際にデバイスを開発し脈拍など生態計測への応用例は船井電と共同開発で実用化が近そう。真空チャンバーの不純物解析は、有機光エレクトロニクス実用化センター、住化が連続して2セッションは、素晴らしい発表。日立造船による電子ビーム蒸着装置はアルミ膜を狙ったもの。そして、やや変わった切り口の分析報告が愛知工大、明治大、であった。下記コメントで不十分不正確な点は御容赦頂きたい。

 

有機ELという点では、一致しているが、バックグラウンドは異なっており、電機電子、応用物理、有機化学、工学的な実用なものから理学的な基礎まであり、アプローチも異なり、面白い。

 

発表会では、アナリスト・コンサルタントあるいは金融・行政系の類は、私のみ、懇親会では、かつてセルサイドアナリスト時代に良きライバルだった佐藤文昭氏。まさに、こういう、異業種での集いでこそ、オープンイノベーションが起こるのだろう。

 

S21 発光層ホストに類似TADF材料を用いたリン光素子の特性 NHK放送技研 岩崎 有希子、他

 

OLEDの高効率・長寿命化を目指して、燐光素子に適したTADFホストの条件を分析、発光挙動を明らかにし、ホストからゲストへの十分な単膜無放射失活を最適化することが、材料の設計指針を明らかにした前回の下記発表では1万時間だったが、更に20倍を可能にした。

 

S22 熱活性化遅延蛍光分子をホストとする近赤外燐光有機EL素子 九大・OPERA 永田亮、他

 

生体透過性や非侵襲性から、医療用に注目されている近赤外有機EL素子においては、TADF材料をホスト分子として用い、特に1μm発光帯における近赤外有機EL素子の高効率化に成功した。

 

S23 有機ELと有機太陽電池を用いた生体脈波センサ 九大 Shim Chang-Hoon、他

 

友田崇仁氏の研究だが、村田製作所に就職したため、Shim氏が発表、船井電機と開発の模様。脈拍、ストレス、血圧、血管分布、SpO2など測定できる。実用化に近いように思った。現状はガラスだが、実際にフレキシブルになれば更に普及が楽しみである。

 

S31 真空チャンバー内の微量不純物がOLEDの寿命に与える影響  九大 藤本氏、他

 

真空チャンバー内の不純物がOLEDの寿命に与える影響を評価で、S3-2と連続、住化分析センターと共同。

 

S32 真空チャンバー内の微量不純物の評価 住化分析センター 末包氏、他

 

真空チャンバー内に設置したSi基板上の付着物測定により、デバイスに混入し得るチャンバー内の不純物を評価。アカデミックでありながら、極めて実証的かつ現場に有用な分析であり、多くの関係者から高い評価を受けた。この研究により、OLEDの歩留まり、性能改善に期待したい。半導体と比べても、微小な物資の存在が影響し、OLEDの大変さを改めて認識した。

 

S3 - 3 低ダメージ電子ビーム蒸着装置の開発 日立造船 清水祐輔氏 他

 

EB蒸着法をOLED製造、特にアルミ電極成膜等に適用する際に、従来、問題の性能劣化の因子となるX線と反射電子を低減、低温・高速成膜が可能なメカ(ワイヤをターレット型ではなく、リール型)を備えた蒸着装置を開発した。

S41 インパルス応答によるTADF 素子の発光タイムパターン解析 愛知工大 森氏、他

 

S42 変位電流評価法による電気化学発光セルの動作機構解析 明治大学理工学部 野口、他

 

懇親会

 

1740分より懇親会。参加者は200名近い、大学などの研究者や、材料、装置メーカーが多い。今回は、パネルメーカーも多い。Vテクの縦型蒸着機は、コンセプトはよく、軽量化という点でFHMはいいが、実証が必要だという意見が多い。これまでの縦型の失敗は、FMMの重さのようだ。JDILCD戦略には疑問の声が多く、特に、日経の朝刊での折り畳み式には、懐疑的な意見が多い。また、改めて、サムスンの強さに対する声が多い。