2016年11月25日 ビジネスモデル第三の道〜アップルとトヨタをこえる

 

経営重心®から、儲け方(実は、その裏腹であるリスクの取り方)を考えると、メモリー等、短期で流動性のある市場のボラに賭ける場合(経営重心®の右上、株や為替の短期売買が近いか)と、原子力等、長期の不確実性に賭ける場合がある(経営重心®の左下、ベンチャー投資も近いか)があるだろう。

 

これらに対し、ジャパンストライクゾーンは、それほどリスクはないが、それゆえに期待リターンも少ない。これは、圧倒的なプラットフォームで市場に君臨する欧米メーカーや、かつての電電公社などの下で、コストダウンに精進し、そこそこの利益を確保するという日本らしいやり方でもある。しかし、これでは、10%以上の営業利益率は容易ではない。

 

 

リターンの質

 

ヘッジファンドでは、リターンの「質」をシャープ・レシオ、リターン/リスク(=ボラ、σ)と定義して評価する。これが1ならまずまずだ(上方のボラは無視するソルチノ・レシオという考えもある)。これを参考にすると、ROEなり営業利益率を、割引率で割った値のレシオが一つのKPIになろうが、収益性は一桁%でも、このレシオで1程度なら上々で、ジャパンストライクゾーンには、多いだろう。それゆえ、日本企業向きだといえよう。しかし、このエリアで安住しても、いずれアジア企業も、ここに攻めてくる。

 

第三の道

 

 そこで、収益性とリスクのバランスを、もっと、うまいやり方、別の方法がないもの考えてみた。ヒントは、やや良いところだけを見すぎだが、アップルの疑似垂直統合モデルにある。

 

 

 多くのユーザーとベンダーと取引関係は、お互い、コスト構造を隠し厳しそうに見せて(注:故に敢えて収益性の低い分野に多角化したり、セグメント開示に消極的だったりする)、値下げを回避、その間に、量産効果や、生産性アップで、コストを下げて、収益を確保しようとする。製造業の場合は、習熟効果、限界利益効果で、予想以上、ユーザーが予期せぬ収益を上げる可能性がある。これはベンダー間でも、隠し、情報は共有されず、ライバルに如何に勝つかである。ユーザーは、ベンダーが類似業界なら平均的な収益状況は分かりるが異業種だと分かり難い。また、トップと下位で技術力、コスト力が大きく異なる場合には、トップの高収益は受け入れるしかなく、トップメーカーだけ値下げ要請というわけにはいかない。そうなれば下位は赤字になるからである。

 

これが、ケーレツなど下請けの場合は、多くの場合、大ユーザーが、ベンダーのコスト構造を熟知し、どの位、儲かっているかが分かるため、値下げを要求、また、下位メーカーにはある程度、指導してレベルアップさせる。それゆえ、生かさず殺さず、5%以上の収益性も容易ではないが、弱者でも、それなりに生きられ、故に、このケーレツから離れられない場合も多い。

 

これに対し、第三の道は、お互い丸裸でコスト構造をさらけ出し、いろいろな条件やケースを議論した上で、納得してお互いのあるべき収益性を出すというものだ。また、サプライヤー同士も、ある程度、情報交換や、ユーザーを介して技術を共有する(ユーザーも関与するので談合ではない)

 

実際にあるのは、社内事業部間の仕切り、特にIDMにおけるセットとデバイスの付加価値の配分や、大手二社の新規事業でのJVが相当しよう。やや近かったのが、かつてのDTI(東芝とIBMTFT液晶を立上げ)や、やはり東芝とソニーのプレステ向けチップ、などユーザーが社内にあり、早期にキーデバイスを起ち上げなければいけない場合である。GSユアサとホンダや、三菱自工とのリチウムイオン電池のJVも近いかもしれない。かつての任天堂と部品メーカーもそうだったかもしれない。

 

お互いの合意と理解の中での付加価値配分、過度な収益変動を抑え必要なR&Dと利益を維持

 

もっとも上手くいって進んでいるように見えるのは、アップルの場合であり、コスト構造を熟知の中で、ある程度の歩留まりやリスクをとって設備投資をすれば事業継続に最低限の収益は確保されるようだ。ベンダーの中でも技術移転を促し、必要な場合は、アップルから「助っ人」の技術屋集団も派遣され、共にイノベーションを起こし、技術を共有化する。特に、材料から部品など広い範囲のサプライヤーがいて、かち新技術を起ち上げる場合に有効だろう。また、今後、IoT分野で、オープンイノベーション、ユーザーとの共創の中で、システムを開発する場合には必要な仕組みだろう。

 

多くのサプライヤーが無駄に隠しあい、腹の内を探り合って、結果、ある場合には過大利益、逆に過小利益と、いう試行錯誤のプロセスは時間の無駄であり、それこそが人月コスト増加にもなるからだ。成功の鍵は、お互いの信頼関係と、契約条件だろう。もちろん、会計基準が同一であることも重要だ。特に日本と海外では、R&Dの定義や、粗利の水準が違いすぎる。日本でも、異なる基準で、コスト構造を開示しあっても却って誤解になる。

 

そして、古典的な会計の固定費・変動費分析でもなく、ネットワーク外部性効果でもなく、お互いが、事業の継続性や必要なR&Dを考慮した上で、客観的に付加価値のあるべき配分(例えば、このデバイスを供給するには、どの程度の技術者や人材、R&D投資や工場の投資が必要で、さらに、どういうイノベーションが必要か、継続には、最低、どの程度の収益性が必要か、など)から、収益性を決めるという新しい会計の考え方や発想が必要になろう。この第三の道が、限界利益効果やネットワーク外部性効果による過度な収益発生変動を抑え、お互いに、安定しリスクを減らせる一つのやり方ではないかと思う。