2016年12月12日 鴻海、シャープ、JDI、INCJ問題を振り返る

 

2016年を振り返る時、最も重要な話題であり、コメントも多くしたのが、シャープ再建を巡る鴻海、INCJJDIについてである。

 

2016年で最大のトピックスであり、2017年にも残る重大問題

 

シャープは鴻海傘下で一段落したが、JDIはまだ難しく、INCJの在り方もふくめ、2017年の大きな議論になろう。これまでならば、INCJ傘下でシャープ再生というのが日本の常識であったろうが、大方の予想と逆に鴻海傘下となった(これはBrexitやトランプ予想とも似ていて、マスコミや権威者のレベル低下と関連し、重要なのだが)

 

日本の歴史ある大手電機メーカーがアジアの新興しかもEMSの傘下で再生というのは初めてのケースであり、実務面でも、経営学的にも興味深く、現在進行形で、色々な課題もあり、改めて考えさせられる点も多く面白い。

 

OLEDの負け方は過去と異なるが、何故ここまでサムスンと差がついたのか

 

そもそも、OLEDでなぜ、ここまでサムスンに差がつけられたかの理由については、過去の半導体や液晶とやや状況が異なってきているように思う。これまでは、日本が先行はするが、市場が拡大するにつれて、コスト力で韓国や台湾に負けていき、装置や材料は一定の競争力は維持するというものであった。しかし、今回は、市場が離陸する前に負けており、装置や材料でも厳しい。つまり技術力で完敗なのである。

 

2000年あたりから液晶での技術革新が減り、コストや量産の勝負になる中で、日本メーカーもOLEDの技術開発を進め、2005年辺りまではトップであったと考える。しかし、応用分野は、当時スマホも無かったこともあるが、TVを意識しており、技術も蒸着よりインクジェット等であった。

 

2010年以降、スマホが離陸し、アップルがOLEDに強い関心を示し、日本企業にも期待していたようだが、なお、TV中心の発想が強かった。2014年辺りは、アップルがスマホ向けに蒸着OLED決めたことは、装置メーカー等サプライチェーンをチェックしていれば、推測はできた筈だが、何故かTVOLED、スマホは液晶と真逆であった(ppi等からは、それが想像できる)

 

ここでは、太平洋戦争をはじめ、多くのケースで伝統的にも、日本の問題点であるインテリジェンスの弱さと、方針を変更しない組織の重さが背景にあるのだ。

 

時計の針を戻して4つのケースを検証

 

さて、時計の針を戻すと、救済する側の鴻海、INCJと、される側のシャープ、JDIというふうに分けると、4パターンがあった。さらに、シャープにはディスプレイだけか全体か、という面もある。鴻海も、もともとはシャープの液晶に関心があったが、次第に白物家電等にも関心を高めたという点もあろう。

 

現実的にありえそうだったのは、①鴻海によるシャープ救済(実際に実現した)、②INCJによるシャープ救済(およびJDIとの統合、多くの関係者のコンセンサスだった)、③鴻海がJDIに出資、INCJがシャープに出資(東芝の白物家電も含め)、④鴻海がシャープのディスプレイとJDIに出資、INCJがシャープの非ディスプレイに出資(東芝の白物家電などと再編統合)

 

ケース1 鴻海によるシャープ救済

 

ケース2 INCJによるシャープ救済およびFPD部門のJDIとの統合

ケース3 鴻海がJDIに出資、INCJがシャープに出資

ケース4 鴻海がシャープのディスプレイ部門とJDIに出資

 

ソフトバンクがINCJの投資先とシャープを丸ごと買うか?

 

ならば、いっそ、鴻海がシャープもJDIも全部買う、あるいは、INCJ自体を鴻海に任せればよいということになる。おそらく、もっといいのは、ソフトバンクにでも買収してもらうことだろう。ただ、目利きの孫氏が、3兆円でARMを買っても、シャープとJDIにいくら出すかは不明だ。