2016年12月22日 ミツトヨ訪問記

 

少し前、中秋の頃、縁あって、溝の口のミツトヨ本社を訪問した。未上場企業なので、カバレッジはないが、大学時代に、精密学会関係で何度か訪問したことがある。それこそ30年ぶりだが、溝の口の本社の様子は記憶のままであった。

 

創業80年ノギスとマイクロメーターの老舗

 

創業は、沼田恵範氏により、1934年、会社設立は1936年なので既に80周年をこえ、マイクロメーターの国産化に成功、また、ノギス、三次元測定器の老舗である。

 

未上場なので、一般では有名ではないかもしれないが、生産現場で同社を知らない人は少ないだろうし、ノギスかマイクロメーターを使ったことの無い人もいないだろう。三次元測定器では東京精密、Zeiss、画像測定機ではニコンとライバルである。

 

科学技術振興にも積極的であり、本社にある博物館は、世界の精密測定機器が展示、かなり希少なものも多くあり圧巻だ。会社のパンフレットでも、経営や戦略については、あまりページを割いていないが、測定や品質などについては、詳細な記述がある。

 

経営理念

 

一般人でも、ホテルの客室に、聖書と並び、必ず置いてある仏教の本のことは知っている方が多いだろうが、これは同社の提供による。創業の理念が仏教伝道のためという珍しい会社であり、その一環がホテルの仏教の本であり、仏教伝道などにも、多大な貢献をしているようだ。

 

そういう経営理念もあり、株式公開には慎重なようだが、もちろん、社員や取引先に、仏教を強いることはない。ユーザーも工場、拠点等も、グローバルに広がっている。

 

社名の「ミツトヨ」は三豊であり、人間としての「智・仁・勇」、事業では「天・地・人」、仏教でも「仏法僧」キリスト教でも三位一体というが、そうした立派な人間が育ち、事業も繁栄し、正しい宗教も弘まって、世界が平和で各人楽しかれ、との願いがあるようだ。また、マイクロメーターやノギスにも刻印されている、三つの瓢箪から成るユニークなマークは、三つの豊、ということであり、豊臣秀吉の千成瓢箪の瓢箪からとったともいう。

 

80周年を機に「真面目だがやや内向き」からの脱却へ図る

 

社風は、非常に真面目だが、やや内向きであり、多様性は小さいようだ。いわば、昭和の高度成長期の真面目な製造業の良い点も欠点も、そのまま維持しているようだ。内製志向も強い。

 

しかしながら、80周年を機に、自動車や航空機業界向けのインラインソリューション対応、ロボットとの融合自動化、米港Tag Optics社やフィンランドのMapvision社への出資提携し、新分野への積極展開を図っている。

 

業績動向

 

業績は増収増益を続けている。2015年度(201512月期、2012年度より12月期決算に変更で同期は9か月、以前は3月期決算)は、売上1188億円、OP229億円、経常利益228億円、NP139億円。売上は過去最高、利益もピークに迫っている。

 

 

財務も健全で自己資本比率は80%近い。ROE9%弱まで改善している。

 

バランスがとれている

 

 有報によれば、売上は国内28%、欧25%、アジア26%、北米中南米21%、他、とほぼ均衡がとれている。日本の製造業10万社、100万に及ぶ工場が顧客である。世界に80拠点(代理店網を含み)は驚く。

 

B/S分析

 

 B/Sは健全であり、キャッシュも溜まっている。有効活用という点では、かつて明石製作所の他、直近では、検査機メーカーなどM&Aもしている。

 

見学

 

 溝の口本社にある8号館を簡単に見学した。

 

 展示室は、6000点に及ぶ製品があり、ノギスやマイクロメーター、ゲージブロックの工具系から、投影器、表面粗さ計、硬さ計、地震計、多様に進化した三次元測定機もあった。

 

 三豊計測学院(http://www.mitutoyo.co.jp/school/guidance/index.html)では、ユーザーのために、精密測定のための教育研修に努め、ミツトヨ測定博物館(http://www.mitutoyo.co.jp/corporate/hall/)では、会社の歴史だけでなく、他社製も含め、歴史的な価値も高い世界中の測定器を展示している。

 

経営重心®分析

 

 経営重心®は、ジャパンストライクゾーンにあるが、比較的、単価が安く、57年で買換え、即納で補充する、ゲージブロック、ダイヤルゲージ、ノギスやマイクロメーター、センサー、測長ユニットから、単価が高く、買換え年数が長い3D測定器や形状・画像測定器まである。他の計測メーカーと比べ、治具的な現場に必須な測定器があることが収益性の高い背景の一つであろう。