2017年1月9日 鴻海・シャープのディスプレイ戦略を読む

 

シャープが鴻海傘下となった8月以降の半年足らずで、多岐に亘る幾つか重要な戦略を打ち出している。

 

主なものだけで10以上の戦略、日本企業では考えにくいものも

 

下記に示したもの以外にも幾つかあるが、これだけの大きな事案を、半年で進めるというのは、鴻海ならでは、であり、従来のシャープも含め日本メーカー主導では難しかっただろう。2QOP黒字化、3Qで当期黒字化も達成となった。

 

下記で、①は、日本の経営学の一部常識とは異なる垂直統合回帰、②も一度売ったものの買い戻しは例を見ない。④も海外ならではの施策であり、⑤、⑩も日本の経営者の常識からすればあまりないだろう。サプライチェーン管理や、資金調達、財務戦略はグローバル企業では当然だが、日本には弱いものだ。昨年初めより、シャープと鴻海のシナジーは、生産や調達、販売チャネル、企業文化など、幅広い。この2社は、ユニークなアイデア製品を出すが、資金、コスト力と量産力がなくシェア維持が長続きしないシャープと、EMSでコスト量産力に強みの鴻海は、補完し合ういい関係だと強調してきたが、日本企業同士なら出てこない経営戦略のシナジーも出てきている。

組織改革で、TVセットを、ディスプレイ部門に統合

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04938290V10C16A7TI1000/

②海外TVブランド買い戻し努力、欧州SUMCは合意だが、米のハイセンスは拒否

http://www.emsodm.com/gotonewsDetail.do?method=gotonewsDetail&id=057282125676262c0156ba8683fa003c

③OLED開発投資574億円発表、堺に蒸着開発ラインなど

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL30HAS_Q6A930C1000000/

④従業員に販売インセンティブ

http://www.emsodm.com/gotonewsDetail.do?method=gotonewsDetail&id=0572821257d22a460158418a36f4008f

⑤サムスン資本解消、サムスン向けTVパネル供給中止

 

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H4T_U6A211C1000000/

SDP増資により、SDPが鴻海子会社

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK29H0I_Z21C16A2000000/

⑦SDP上場示唆

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05H19_V00C17A1EAF000/

⑧広州に10.5Gパネル工場建設発表 1兆円を投じ、2018年秋稼働

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL04H3P_U7A100C1000000/

⑨OLED量産工場を鴻海のiPhone組立工場に近い河南省鄭州に建設、1000億円程度http://www.nikkei.com/article/DGXLZO11450070X00C17A1TJC000/

⑩部材供給各社に生産倍増を前提に20%値下げ要請

http://www.emsodm.com/html/vip/temp/2017/01/09/1483934639305.html 

 

SDPにシャープ内部やイノラックス等も含めディスプレイ部門を統合し上場

 これまで何度も示唆してきたが、中長期で考えた場合に、OLEDも含めたディスプレイ事業は、財務が弱いシャープにも、薄利多売であるEMSの鴻海にも、難しく、切り分け、上場させて、外部資本と独自戦略での成長を目指すべきだ。

 SDPも鴻海子会社となることで、説明会で何度も質問、指摘もしてきたが中途半端な資本構成がようやくクリアになる。次は、天理、三重、亀山、矢板等のパネルやTVをどうするかだが、少なくとも亀山、矢板はSDPに統合すべきだろう。天理や三重はセット向けの内製部門として一部、シャープ側に残してもいいだろう。あとは、持ち分法適用のイノラックスを子会社化すれば、形としては完成に近づこう。TVセット事業については、議論は分かれるが、キャプティブ必須、TV向けEMSは難しい

 鴻海が、TV向けEMSから手を引き、シャープ、SDPも含め、パネル内製の垂直統合モデルを志向するのは当然だろう。ただ、そこで、不安があるのが、10.5Gの広州パネル工場への1兆円投資である。2018年秋に稼働は、まさに、BOEはじめ多くの工場が立ち上がる後であり、供給過剰の恐れもある。

OLEDはまだ不明

 OLEDの鄭州工場投資については、現実には、堺での開発投資を見極めてからなので未確定要素も大きいが、1000億円というのは中途半端だろう。

技術者戦略とR&Dが鴻海の中長期でも鍵

 不足は技術者数、インセンティブ設計や、EMSとは異なる、中長期でのR&D戦略を描く必要があろう。