2017年1月11日 東芝の損失を巡る報道

 

年末にS&W買収を巡る損失報道と説明会があったが、年明けも様々な憶測も含めた報道が飛び交っている。

 

5日は志賀会長会見、10日金融機関向け説明、11日損失額リーク、ぎりぎり、セーフか

 

5日は、JEMA会長でもある志賀会長が、新年挨拶で、記者団に対し、「数千億円の減損は覚悟だが金額は精査中で変動する可能性がある」と発言した模様。年末の説明会では海外現地で立ち合い精査中だったが、概要は東芝トップには伝わったのだろう。

 

10日は、会社側も開示しているように、金融機関を集めた説明会を行った。10日午後に、メインバンクをはじめ銀行、生保などの取引先が殆ど出席する中で、減損発生の経緯や会計処理の進捗状況などを説明。格付け会社による格下げによりコベナンツ条項に抵触するため、時限的な例外措置として2月末までの融資継続を要請、主力行は応じる模様。http://www.nikkei.com/article/DGXLZO11481270Q7A110C1MM0000/ 

 

連結自己資本は169月末約3632億円だが、NAND好調や円安、株価上昇もあり、包括利益が改善、損失計上前の自己資本は5000億円以上の可能性もある。それゆえ、現段階では、債務超過に陥るリスクは小さいとの金融機関の見方が多い模様。http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD10H6Y_Q7A110C1EA2000/

 

こういう見通しの中で、志賀会長が報告したと思われるレンジがある損失額でワーストでも、ぎりぎりセーフになりそうであり、そこを金融機関に説明し、金融機関も納得したのだろう。

 

なお、銀行団による東芝向けの融資残高は20169月末時点では8000億円、その他、大手行中心に約7000億円のコミットメントラインがある。損失額が確定した後、改めて説明会を開催する模様。

 

東芝では10005000億円、WH30004000億円

 

 ところが、11日、時事通信では、「WHの原発建設の費用が当初想定を30004000億円上回っていることが判明、これを受け、取引金融機関に対し、原発事業全体で損失が10005000億円の可能性があるとの見通しを伝えた」と報じた。http://sp.m.jiji.com/enterprisenews/article/id/1758928。他でも、減損判定で、従来よりも損失額が数百億円上回との報道もある。これらの報道が、昨年末の米国発の報道からの情報と同様なのか、10日の金融機関の説明会で出た情報かは不明だが、会社側が正式に発表したものではない。

 

 なお、上記で、「WH30004000億円、東芝の原発全体で、10005000億円」という件だが、最小値の2000億円差は、運転資本の差だろう。すなわち、S&W買収時に、東芝ベースでは、つなぎ資金の運転資本が2000億円入っているが、WHでは入っていないため、差引2000億円の差となる。また、最大値では、逆に1000億円、東芝側が多く、最小値と比べ差引3000億円の差があるのは、国内や中国も含め、また格付け悪化も考慮した割引率の変化も含めた原子力全体での減損だろう。場合によってはフリーポートの件などもオイル価格変動で少し引当が必要になった可能性もあろう。

 

https://www.circle-cross.com/2016/12/28/20161228-東芝の緊急説明会-s-w社買収に伴うノレン及び損失計上可能性/

 

 再度、説明すると、第一段階として、S&Wのノレン計上及び即減損が2000億円であり、第二段階として、その上で、原子力全体を3Qに減損判定するが、それがアウトだったという可能性だろう。その分が数百億円かもしれない。

 

今後の方向性

 

 あくまで想像だが、とりあえずの段階では、S&Wのノレン全額計上を踏まえ、志賀会長の報告は10005000億円、これを役員会や監査法人で精査し、発表するのだろう。通常、役員会は金曜が多く、13日の正式発表と説明会ではないか。また、その後の中期の財務改善計画も、当然ながら、この79日当たりの連休に検討され、今回ばかりは、セミコン社の早期上場を決断するのではないだろうか。

 

 その際に、あくまで仮定だが、INCJがでてきて、シャープ案件時のJDIとの合併案にように、ルネサスとセミコン社との統合案を打診されても、焦るあまりに、受け入れることは避けてほしい。上場なら2兆円が可能だが、INCJが出せるのは3-4千億円に過ぎないだろうし、7年後にEXITもあり、グローバルで競争する上で、いろいろな制限を受け、今後の展開が狭まる。最悪でも非メモリ位だが、それなら、ルネサス以外の、むしろアナログ国内再編に期するべきだろう。やはり、資金に余裕があり、グローバル展開ができる外資との提携が良策だろう。そこでは、対サムスン競争、中国勢台頭の中で中期的な資金力やコスト対応への方策あるいは解も、その条件だろう。

 

 何度も指摘しているが、セミコン社上場は、セミコン社にも、残る東芝本体にもプラスであり、経営重心®でもプラスである。そして、原発は外に出し、産業インフラの会社として、IOT中心に安定成長を目指すべきだろう。

 

https://www.circle-cross.com/2016/12/28/20161228-東芝-二つの危機への救済提案/