2017年1月18日 東芝の分社化とサンディスクWD出資及び今後のケースの整理

 

日経その他で、東芝が半導体部門の分社化を決定、提携先のWD/サンディスクから出資を受ける交渉に入ったと報じている。新会社は早ければ2017年前半にも設立、WDの他、ファンドも出資に関心、出資比率は2割程度、出資額は20003000億円の模様。東芝が過半の出資を残して連結対象とし、将来のIPOも検討。分社により株式売却で短期資金が入る上、年間数千億円に及ぶCapexR&D資金も賄いやすく、NANDを軸とした成長戦略が描き易い。http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ17I5W_X10C17A1MM8000/

 

WD傘下のサンディスクとは長年の関係・Bestな相手

 

WD傘下のサンディスクとは90年代後半から長年の提携関係にあり、多値をはじめ多くのインターフェイス技術を要する提携は多いにプラスになった。また、四日市工場では、サンディスクと共同運営、3Dプロセス技術でもメリットが大きい。WDはサンディスクを190$で買収、傘下WDは一時、中国紫光が買収を目論んだが米政府の拒否で失敗した。サンディスクの日本法人のトップは、元トレセンティ社長の小池氏であり、東芝との関係を重視している。http://diamond.jp/articles/-/99847

 今回の決定が事実であれば、非常にプラスだろう。従来から主張しているように、東芝の再生にも、セミコン社の成長にも、分社化・IPOしかなく、その相手は従来からの関係からも、現時点ではサンディスクがbestだろう。 https://www.circle-cross.com/2016/12/28/20161228-東芝-二つの危機への救済提案/

 半導体分社化、出資受け入れ相手としては、サンディスク以外にも、幾つかの選択肢があっただろうが、①相性や長年の関係、②応用分野の広がり、③資金面、④国際関係、⑤技術からも、最良だろう。次図に示すように、マイクロン・インテル、ハイニクスなどは、所詮、技術・事業マップの中で、デバイス・レイヤーの中での水平統合という従来型の連携だが、WDと組むことで、将来のデーターセンターへの布石がうて、デバイス・レイヤーだけでの、資金投入コスト競争を回避できる。

  これが事実なら、メモリー・ストレージ業界の再編は一気に加速化、残るマイクロン・インテルとハイニクス、あとXMC(長江ストレージ)の動きが気になるが、WD/サンディスクをコアに、マイクロン・インテルなどDRAM、あるいはSCMを持つグループと組めれば最強になろう。その上で、非ノイマン時代のストレージ・アーキテクチャー時代の布石を打ってほしい。

 

 世界的な企業であり、システム的な視野もあるWDと組んだことで、経営陣も良い刺激を受けるだろうし、IOT、ビッグデーターは、東芝本体のIOT関連ともプラスだろう。

東芝の財務状況

 169月末で3500億円だった自己資本は、円安・株価上昇で、5000億円まで改善しているが、3月末にかけ、円高、株安が進めば、元に戻る。ここで±1000億円が不確定要因である。これに、原発・WH関連で、報道があった減損等▲1000〜▲5000億円、そして、今回の報道の20003000億円があれば、20007000億円とレンジはあるが、まず債務超過は避けられよう。更に、ファンドの出資などがあれば、一安心だろう。

 こういう状況の中で、金融機関も融資を増額でき、格上げなどがあれば、割引率も改善、更にプラスに働く。少し時間がかかろうが、今後、導入されるスピオフ制度もあり、IPOが成功すれば、一気に安全圏になり、そこで原発をカーブアウト、東電と一緒に再生とし、同時に、ランディスギアもINCJ等に売却すれば、通常の会社になろう。

 

DES・会社更生法

 目途はついてきたからこそ、最悪の事態も検討しておき、冷静にプラスとマイナスを整理しておきたい。あるとすると、DESや会社更生法だろう。まず、シャープでも使われたDESは、自己資本改善にはプラスだが、希薄化が大きく既存株主にはマイナス、また、資金繰り問題で破綻がない場合に、銀行側が応じないだろう。また、特設注意銘柄の状態ではあまり勧められないかもしれない。

 会社更生法は、メリットとしては、①銀行債権などがなくなり、再生しやすい、②会社の実態がクリアになる、③S&Wも含め原発の闇から足を洗える(大きな損失が想定されるプロジェクトは中止、WH以降の問題も裁判で争え、勝訴すれば、負担が軽減)などだろう。デメリットは、社会のユーザー、社員、銀行、株主にもマイナスだが、それ以上に、再生するとしても、現経営陣以外に、なかなか経営は容易ではない。

 いずれにせよ、異なるリスク、状況が混在化している現状では、再生する場合に、資金の出し手も難しく、現トップも把握できておらず、闇が深い原発と、状況がクリアな半導体などを分けることが先決である。原発以外なら、リスクに応じて資金の出し手も多く、再成長は容易だろうし、コングロマリットでの状態より、大きく改善される。また、原発にしても、別分けして、リスクがはっきりすれば、再生シナリオも描きやすい。

 つまり、会社更生法という最悪の事態も含め、先決は、コングロマリットの解体、あるいは、健全事業と不透明事業の切り分けである。そうであれば、健全な半導体などを分社化すれば、そこに資金の出し手もあり、財務もメドがたち、また現状、資金繰りが危機でないため、何も誰も喜ばない会社更生法は不要だということになる。

 

補足論考・メインバンクとは

  今回、DESを考える上で、日本において、株主以上に経営に影響を与えるメインバンクの存在は何だろうか、と考えた。DESすれば、貸付金は株式になり、経営に対する株主権利を有し、貸付金が業績により価値変動するが、そもそも、日本のメインバンクは、株主権利付き債権、あるいは無リスク価値固定型株券を保有しているようなものである。その意味では、メインバンクからの借入金は、DESをせずとも、自己資本に入れてもいいようなものだ。シャープ再建の場合も、銀行と株主の利益相反が問題視されたが、今回も、それが、構造改革の障害となっているならば(メインバンクはこれまで半導体切り出しに慎重だったという)、将来のためにも、制度設計を見なおすべきだろうし、経営陣の意識改革が必要だろう。