ROE、成長率、R&D費、割引率の関係についての論考

 

ROEについての議論は、2000年以降、学会、金融、産業も含め、業界で多いに議論されている。成長率については、昔からマクロで、学会、役所でも、そうだ。割引率については、この数年、決算説明会や個別でも経営者の他、学会や東証等にも議論を投げかけているが、まだ認識は低い。R&Dについては、MOT学会その他で昔から主要な議論だが、企業が発表する数値を所与として分析しており、その中身については、議論が十分ではない。

 

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4つの変数の関係式

 

 この1-2年で、論考、悩んでいるのが、ROE、成長率g、R&D費、割引率rの関係が、何等かの式で表現できないか、ということだ。厳密にはP/Lだけなので、ROEより営業利益率等が適切だ。

 

 f(ROEgrR&D)=一定?

 

当然ながら、これらは、相互に関係していることは事実だが、例えば、ROEで必要とされている10%を所与とし、成長率を0%、割引率を多くの企業で使ってる5%前後(決算説明会の質疑、有報記載)とした場合に、R&Dは、売上の何%であるべきか、について、機会がある毎に、CTOはじめ多くの経営者やMOT学会で議論するが、回答できる方は皆無であり、そもそも、問題意識すら希薄であることが多い。

 

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R&D費の適正水準は

 

 R&D費の適正水準に関しては、NRI技術調査部での最初のテーマであり、研究所研究プロジェクト(30社程度の企業の研究所を訪問し分析、成果を当時のNRI サーチ誌 R&D ホットラインに執筆)の他、研究技術計画学会でも議論した。

 

ROEと成長率は利益の源泉、R&D費と割引率はイノベーションのリスクに関係

 

 この4つの変数の関係に戻ると、ROEと成長率は、利益の源泉であり、他方、R&Dや割引率は、イノベーションを起すための、必要なリソース配分やリスクの取り方に関係する。いわば、R&Dは、イノベーションのためのリスク費用、割引率は、その最低水準のリスクともいえよう。