イノベーションの成功確率を高めるポートフォリオ

 

経営者や投資家などは、誰しも、イノベーションの成功確率を上げたいと思うだろうが、現実には、成功確率を上げようとすると、知らず知らずに安全なテーマを選び、リスク回避で、大きなイノベーションでなく、小さな成功になってしまうだろう。

 

 それゆえ、一般的に、イノベーションの大きさ度合と、成功確率は反比例するというのは、妥当な仮説だろう。ただ、その曲線の凹凸は不明であり、イノベーションのリスク(正確には、通常のリスクと不確実性(フランクナイトのリスク)の種類や戦略によるのだろう。

 

 よって、下手に、成功確率を上げるのではなく、回数を増やし、多様性を増すことが鍵だろう。質より量であり、最近のアジャイル開発なども、同類の傾向だろう。

 

では、イノベーションのリスクをコントロール方法する方法が全くないかというと、そうでもなく、金融のポートフォリオ管理での、「バーベル戦略」が有用である。バーベル戦略とは、安全な資産を70-90%とリスク資産10-30%を持ち、運用するやり方だ。安全資産で、安定収益を稼ぎつつ、タイミングを待ち、リスクの相対評価をするわけだ。

 

偉大なイノベーティブな業績は、喩えは、適切でないが安定した「暇」な仕事の傍らで達成された例も多い。株の運用でも、打率でなく、ホームランが大事だという。

 

 本来は、このリスク資産こそが、真のR&D(正確にはR)であり、R&D10%というのは、そういう、大きなリスク、不確実性、ナイトのリスクも含め、いつまでも待てるようなテーマを持つということなのだろう。これは、大企業や政府的な予算管理では到底無理であり、篤志家によるリターンを期待しない寄付などが望ましいのだろう。