キヤノン2019経営方針説明会(3月1日)

 

キヤノン2019経営方針説明会が3114時から15時半まで、本社で開催され、参加、質問もした。1997年から数えて、23回目。プレゼンは、御手洗会長CEO、田中CFO、質疑も多数、今回は新規事業やM&Aに関するものが多く、今回は後継者についての質問は無かった。米中摩擦に関しては、中国は注意だが、引き上げるつもりはないとコメント。

 

その後、15時半より1645分まで、歴史や製品技術、企業活動を展示しているキヤノンギャラリーを見学。まず、1Fのオフィスソリューション、2Fのネットワークカメラ関係、3Fでは、VRARなど新技術を体験。展示見学は改めて述べたい。

 

グローバル優良企業グループ構想Phase V(20162020)

 

 グローバル優良企業グループ構想Phase Vの主要戦略は、①原価率45%へ、②新規事業の強化拡大、③全世界販売網の再構築、④オープンイノベーションによる研究開発、⑤世界三極体制の完成であったが、事業ポートフォリオ転換に向けたM&Aにより、新規事業比率は2015年の9%から201823%まで上昇、将来は30%へ。確かに、20052007年は、産機分野で、トッキ、アネルバ、マシナリー、2010年は商業印刷でオセ、2014-2015年はネットワークカメラでマイルストーン、アクシス(AXIS)2016年はメディカルで東芝メディカルと、大型のM&Aをタイミングよく実施して結果が出ている。

 

 現行事業でも、新製品投入で、2016年から2018年に、複合機でカラーのシェアは、1719%、半導体露光機でも2632%と上昇した。カメラでは、ミラーレスに傾注。組立自動化について、製品範囲と工程範囲を拡大させ、活人効果を倍増。

 

新規事業強化へM&A

 

 新規事業では、商業印刷で、技術トレンドはトナーからインクジェットへ変化という認識で、新製品を投入。ネットワークカメラでは、セキュリティ需要やデジタル対応、今後はマーケティング分析やエンタメも増え、ハードは8-9%成長(2017から2021)、映像解析ソフトは20%以上、全体で10%成長。

 

M&Aはソフトが増える

 

新規で10%成長、構成比30%とし、全体では5-6%以上の成長で2017年を超える売上を達成させるようだ。新規で1000億円の増収は、M&Aもあり、医療やネットワークカメラ等が多そう。

 

具体的には、ネットワークカメラでのアプリソフトやIoTAI、自動運転や工程管理等を強化。特に、ソフト会社のM&Aは毎年1社買っており、増える。M&Aの範囲が多様になる中で、気になるのは、バリュエーションだが、明確な回答はなく、NIDECのような強い基準があるいうではない印象。ただ、今後は、IFRSの中で、暖簾減損やR&D計上の問題もあり、重要だろう。

 

この3年間で、ポートフォリオ転換は一段落だが、今後は、こうしたソフト会社等がM&Aの中心となり、これらの補強に注力。ソフトエンジニアを強化。

 

資本財務戦略

 

業績は景気悪化の中で、相対的に堅調であり、市況変動に強いポートフォリオになってきたが、株価が弱いのは、Opm低下にある。ROE12%達成には、Opm10%が不可欠であり、原価率改善だけでなく、SGAが重くなっていることが課題であると認識しているようだ。

 

キャッシュの使い方に関しては、自己資本比率6070%までは、配当性向は30%程度、むしろ、M&Aや新規事業強化に使う方針。

 

R&Dとオープンイノベーション

 

R&Dとオープンイノベーションに関して、これまでは、全体で%を決め、その中で自由にテーマを設定させていたが、今回から大きく方針を変えた。

 

セグメント別

 

 産機については、露光機から、トッキ、アネルバのM&Aで拡大しているが、更に、他社をM&Aする可能性はないようであり、SPEでは、i線やKrFに傾注、ただ、ナノインプリントは強化。現在は、調整だが中期では伸びると確信。FPDでは検討はしたが、現在は想定外。

 

 メディカルでは、2020年のOpm10%と急改善する背景として、サービス収入が増えること、協業や、キヤノン本体の調達や生産技術の活用があるとした。治療部門強化は調査検討段階の模様。

 

 カメラについては、全方位でなく、ミラーレスに注力する。今後2-3年で、コンパクトは2017800万台前後だが、300万台位、一眼レフも、現在1000万台から500万台へ縮小、ただ、この程度で底打ちするとの認識。しかし、いろいろな固定費をどうするか、ここでミラーレスに先行投資は危険だろう。

 

 OAは、商業印刷を強化だが、印刷会社のM&Aや、いろいろな要素技術を強化する。LBPは、HPと二人三脚でいく、HPPC戦略ありきであり、シャアも47%を維持、キャッシュカウとの認識。

 

B2CからB2B

 

 M&Aの方向性を俯瞰すると、B2CからB2Bへシフトしている例が多い。OAでの商業印刷や、カメラでは、ネットワークカメラである。逆に、B2Bの産機や、メディカルでのB2Cシフトがあるがどうか、新分野のVRARなどエンタメ等の取り組みが重要だろう。