ペーパーとテーマ

 

大学では、新年度を向かえるに際し、ゼミに配属となった10名のテーマを決めるため、個々に面接を行っている。

 ビジネススクール故に、アカデミックな論文よりも、実践に役立つ、企画提案書や、調査報告書もあるので、あえて、「ペーパー」と命名している。実際、過去は、もちろん、アカデミック的な大論文から、企画提案書、中には、ハードやソフトのプロトタイプと使用書、ビジネスモデルまで提案した例もあった。

 

シンセシシスを鍛える

 

MOTであれ、MBAであれ、ビジネススクールは、修士論文や、こうしたペーパーを課してきたが、社会人学生の負担も教員側の負担も多いので、廃止する例も増えている。しかし、1年あるいは、それ以上、一つのテーマを掘り下げ、深く考え、これまで学んだ理論を取り込み、ケースなどを参考にして、また、複数の教員からアドバイスを受け、同級生と相談しながら、知を総合化し、仕上げるプロセスや能力は、事業創出と共通点も多く、参考になるだろう。また、4万字以上の文章を書く作業も、そうあまり経験しないだろうが、自身のロジックを詰めることにもなり、知識が身につくことになる。そして、数回の発表会で、教員や他の学生の前で発表し、質疑を受け、議論する。多くの講義は、その時は、気づきがあり、感動しても、多くは、数年立てば、忘れるだろう。しかし、そうして、体を使って汗をかいて仕上げた知識は忘れない。

 

テーマで決まるが、あまりに広い

 

 一般的な論文、研究そのものも同様だが、かなりの部分がテーマで決まる。如何に、オリジナリティがあり、普遍性があり、多少、流行性があれば、なおいい。しかし、テーマが悪ければ、その後、いかに頑張っても難しい。いいと思ったが、最後になって、うまく検証できない場合もあり、見極め、また、目利きが鍵となる。

 

テーマで大事なのは、対象と切り口だ。対象は業界や企業、人物であり、その比較もある。切り口は、手法であり、新たな視点だ。この掛け算が、あまりに普通だと面白くなく、一見、異なるものから、共通点を見出すのが鍵であるが、これが、あまりに遠すぎ、かけ離れていると難しく、センスも重要だ。

これまでのMOTペーパーでは、自社の事例を深く調べ、そこから、理論や仮説を検証するというものが多い。特に、自社の新規事業や多角化、過去の研究開発テーマの成功事例と失敗事例はメインテーマとなっている。